AIブームの一方、AIバブル懸念、分かれる市場空気、引き続くAI連携
米国株式市場の現下の株価最高値更新にあらわれているように、AI(人工知能)関連の熱い活況がどこまでいくかという様相が続いている。ただ一方では、1990年代後半のドットコム時代のバブルを繰り返す可能性の懸念などあって、分かれる見方がこのところあらわされてきている。テスラが次期AIチップ「AI5」をあらわして、さらに焚きつける材料が見えている現時点である。AI連携も続いており、IBMがGroqの推論技術を活用する戦略的パートナーシップがあらわされ、GoogleはAnthropicに数兆円規模でAI半導体を供給する動きである。さらには、Nexperiaを巡るオランダと中国の対立から、欧州自動車メーカー向け半導体供給の緊急事態など、以下多々注目である。
≪随時更新を要する激動≫
AIブームの一方、AIバブル懸念、と以下の記事が見られている。
◇AI Bubble Or Boom?―GenAI value is creating a huge TAM and revenues are ramping at historically fast rates. (10月20日付け Semiconductor Engineering)
→投資家はAIがドットコムバブルの影を落とすかどうかを検討しているが、2000年とは異なり、今日のリーダー企業は力強い売上げ、利益、そして成長を示している。生成型AIの導入は急増しており、OpenAI、Microsoft、およびGoogleなどの企業が市場需要を牽引し、急速に拡大している。
◇Are we in an AI bubble? Here’s what analysts and experts are saying (10月22日付け CNBC)
→1)*AIへの熱狂の高まりは、AIブームがいずれ崩壊するバブルの兆しだとの懸念につながっている。
*この熱狂は、1990年代後半のドットコムバブルや2008年の金融危機と比較されている。
*一方で、旺盛な需要と「有効活用された」資金による技術革命を期待する声もある。
2)AIへの支出は過去最高を記録しており、1,300社以上のスタートアップ企業が$100 million以上の評価額を獲得し、巨大IT企業はデータセンターに数十億ドルを注ぎ込んでいる。専門家の見解は分かれており、歴史的な技術革命を予測する声がある一方で、ドットコム時代を彷彿とさせるバブルを警告する声もある。
メモリ半導体については、AI活況による価格高騰から「スーパーサイクル」というあらわし方となっている。
◇Chip crunch: how the AI boom is stoking prices of less trendy memory (10月21日付け Reuters)
→AIチップのブームにより、携帯電話やサーバーで使用される標準メモリチップの供給が逼迫し、パニック買いと価格高騰を引き起こしている。サムスン、SKハイニックス、およびマイクロンは需要の急増により利益を上げており、一時的な供給不足の警告にもかかわらず、「スーパーサイクル」の話題を呼んでいる。
このAI活況を受けて、先日のSEMICON West 2025の状況である。
◇Geopolitical Changes, Sustainability Progress, and Collaboration Efforts at SEMICON West 2025 (10月20日付け 3DInCites)
→AIによる成長が半導体業界を活性化させたため、SEMICON West 2025は記録的な来場者数を記録した。業界リーダーたちは、サプライチェーンの脆弱性からPFAS(パーフルオロアルキルスルホニルウレア)や持続可能性に至るまでの課題に取り組む一方で、協力体制、米国の投資障壁、そして緊急の気候変動対策を強調した。
◇Powering Efficiency: AI Transforms IC Manufacturing As ICs Fuel AI―AI accelerates automation, efficiency in semiconductor fabs―Smarter manufacturing of smarter chips dominated the agenda at this year’s SEMICON West. (10月23日付け Semiconductor Engineering)
→半導体業界が年間売上高1兆ドルを目指す中、AIは半導体製造に革命をもたらしていると、SEMICON Westで幹部らが語った。NVIDIAのgeneral manager of industrial and computational engineering、Timothy Costa氏は、製造工場の自動化と欠陥検出の強化におけるAIの役割を強調した。一方、IBM Research、Lam ResearchおよびMerck KGaAの幹部らは、持続可能性と協業の重要性を強調した。デジタルツインとAIの統合は歩留まりと運用効率の向上にもつながっており、AIと半導体技術の間にイノベーションの好循環が生まれていることを示している。
新たな焚きつけ材料となるか、テスラのAI半導体である。
◇Tesla ‘not about to replace Nvidia’ as EV maker develops chips for cars, robots, Musk says (10月22日付け CNBC)
→1)*テスラの次期AIチップ「AI5」は、テキサス州のサムスンとアリゾナ州のTSMCで製造される。
*テスラは「過剰生産」を目指しているため、両ファウンドリーでチップを製造する。
*「自動車やロボット用のAI5チップが余った場合は、いつでもデータセンターに投入できる」と、CEOのイーロン・マスク氏は述べた。
2)テスラは、自動車、ロボット、およびデータセンターへの供給に向けて、サムスンとTSMCと共同で米国でAI5チップを製造し、過剰生産を目指す。イーロン・マスクCEOは、このチップの簡素化された設計、コスト効率、そして優れたAI性能を強調した。
一方では、AIの導入、AIのインパクトについて、問題意識の高まりがあらわされている。
◇What Too Many Enterprises Get Wrong About AI (10月23日付け EE Times)
→世界中の企業がAI導入に急速に取り組んでいるが、多くの企業は戦略、インフラ、そして熟練したチームを欠いており、無駄な支出とROIの遅延につながっている。成功には、スケーラブルなテクノロジー、信頼できるデータプラクティス、専用コンピューティング、そして倫理的かつ安全なAIの目標に沿ったスキルアップした従業員が必要である。
◇AI席巻の米国、ブルーカラーを選ぶ若者たち 電気料金2倍が現実に―AIが変えるアメリカ (10月24日付け 日経 電子版 05:00)
→・「AIによる雇用喪失の初期段階」との見方
・データセンター建設が奪う他業種の労働力
・吸収される電力、家庭電気料金は月1万円増へ
AIと生きる日常はもはや未来の絵物語ではない。AIが知的労働を担うことで大卒の就職難が深刻になり、電力の大量消費はデータセンターに近い地域の電気料金を急速に押し上げている。
次に、引き続くAI連携について。まずは、IBMとGroqの戦略的パートナーシップ締結が、以下の通りである。
◇IBM, Groq Partner to Offer High-Speed Inference―IBM, Groq partner to speed agentic AI deployment (10月20日付け Bloomberg)
→1)IBMとGroqは、Groqの推論技術を活用し、超高速かつ低遅延のAI機能を顧客に提供する新たな戦略的パートナーシップを締結した。IBMのソフトウェア担当シニアバイスプレジデントであるRob Thomas氏とGroqのCEOであるJonathan Ross氏が「Bloomberg Tech」に出演し、このパートナーシップが顧客にどのように役立つかについて議論した。
2)IBMはGroqと提携し、Groqの大規模言語モデル(LLM)推論技術をIBMのWatsonX Orchestrateに統合する。IBM GraniteモデルはGroqCloudでもサポートされる。この協業の目的は、より高速でコスト効率の高いAI推論を提供することで、エージェント型AIの導入を加速し、特に医療、金融および製造業などの分野にメリットをもたらすことである。
◇IBM thinks Groq’s chips could make all the difference for enterprise AI (10月20日付け Fierce Network)
→*IBMの最新のAIパートナーシップは、AIインフラストラクチャおよびチッププロバイダーであるGroqとの提携である。
*Groqの言語処理ユニット(LPU)は、推論ワークロード向けに特別に構築されている。
*IBMのエンタープライズノウハウとGroqの高速LPUを組み合わせることで、より多くのAIパイロットを本番環境に移行できる可能性がある。
◇IBM and Groq Partner to Accelerate Enterprise AI Deployment (10月20日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→IBMとGroqは本日、Watsonx Orchestrate上でGroqの推論テクノロジーであるGroqCloudをお客様に即時にご利用いただけるよう、戦略的な市場開拓および技術提携を発表した。これにより、エージェント型AIの導入を加速させるコストで、お客様に高速AI推論機能を提供する。この提携の一環として、GroqとIBMは、Red HatのオープンソースvLLMテクノロジーをGroqのLPUアーキテクチャーに統合・強化する予定である。また、IBMのお客様向けに、IBM GraniteモデルもGroqCloudでサポートされる予定である。
◇IBM and Groq announce partnership to deliver faster agentic AI capabilities (10月21日付け New Electronics (UK))
→IBMとGroqは、企業がwatsonx Orchestrate上でGroqの推論テクノロジーであるGroqCloudにすぐにアクセスできるように設計された戦略的な市場開拓およびテクノロジー パートナーシップを発表した。
これも注目、GoogleのAnthropicに対するAI半導体供給である。
◇Google、米アンソロピックにAI半導体を供給 数兆円規模 (10月24日付け 日経 電子版 10:18)
→米グーグルは23日、AI開発の米新興アンソロピックに、クラウドコンピューティングで使うAI半導体を最大100万個供給すると発表した。取引額は数百億ドル(数兆円)規模にのぼる。アンソロピックはAI開発に必要なインフラ確保を急ぐ。
AI活況関連の非常に目まぐるしい動き、展開に、どこまで追いつけられるか、持久戦の様相を感じている。
激動の世界の概況について、以下日々の政治経済の動きの記事からの抽出であり、発信日で示している。
□10月20日(月)
中国の「4中全会」であるが、以下に示す通り、今後の5カ年計画に半導体も盛り込まれている。
◇中国、20〜23日に「4中全会」開催 内需拡大へ5カ年計画議論 (日経 電子版 05:00)
→中国共産党は20〜23日に重要会議である第20期中央委員会第4回全体会議(4中全会)を北京で開く。2026〜30年の経済政策の運営方針を定める第15次5カ年計画を決める。不動産不況で落ち込む内需の拡大や、米中対立の下で独自のサプライチェーンをどう確立するかなどが柱となる。
その中国、GDPが減速している。
◇中国実質GDP、7〜9月4.8%増に減速 内需不足が影響 (日経 電子版 11:42)
→中国国家統計局が20日発表した2025年7〜9月の国内総生産(GDP)は、物価の変動を調整した実質で前年同期比4.8%増えた。4〜6月の5.2%増より伸びは縮小した。不動産不況により長引く内需不足が影響した。
□10月21日(火)
AI活況、米中摩擦の警戒後退など受けて、上げが優勢、4万7000ドルの大台突破の最高値更新で締めた今週の米国株式市場である。
◇NYダウ続伸、515ドル高 米中貿易戦争への警戒が後退 (日経 電子版 06:04)
→20日の米株式市場でダウ工業株30種平均は続伸し、終値は前週末比515ドル97セント(1.11%)高の4万6706ドル58セントだった。貿易問題を巡る米中の対立が緩和に向かうとの見方が広がった。米連邦政府機関の一部閉鎖の解除が近いとの思惑も買いを誘った。
米中貿易摩擦への警戒が後退している。トランプ米大統領は20日、記者団に対して改めて中国との関係が良好だとして、貿易協定締結への楽観的な見方を示した。
□10月22日(水)
◇NYダウ218ドル高で最高値 好決算支え、銀行不安への警戒も後退 (日経 電子版 06:38)
→21日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3日続伸し、前日比218ドル高の4万6924ドルで取引を終えた。10月3日以来の最高値を更新した。好調な四半期決算を発表する企業が相次いだほか、米銀行を中心とした信用不安への警戒が後退したことも投資家心理を支えている。
□10月23日(木)
◇NYダウ反落334ドル安、米中対立を警戒 Netflix大幅安 (日経 電子版 05:58)
→22日の米株式市場でダウ工業株30種平均は4営業日ぶりに反落し、終値は前日比334ドル33セント(0.71%)安の4万6590ドル41セントだった。貿易問題を巡る米中対立への警戒から、ハイテク株を中心に売りが出た。ダウ平均の下げ幅は460ドルを超える場面があった。
□10月24日(金)
◇中国「国際影響力を拡大」 米と長期対立念頭 4中全会閉幕 半導体「自立」へ集中投資 (日経)
→中国共産党の重要会議、4中全会が23日に閉幕した。2026〜30年の中国の5カ年計画の骨格を固めた。半導体などハイテク分野の水準を高める。米国との長期対立を念頭に「国際影響力を大幅に引き上げる」方針も示した。
◇NYダウ、反発し144ドル高 米中対立への警戒薄れる (日経 電子版 06:00)
→23日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反発し、終値は前日比144ドル20セント(0.30%)高の4万6734ドル61セントだった。主要企業による2025年7〜9月期決算の発表が本格化するなか、業績が良好な銘柄に買いが入った。米中貿易摩擦を巡る過度な警戒が薄れ、投資家心理が強気に傾いた。
摩擦対立解消が図られるか、米中首脳会談開催である。
◇米中首脳会談、韓国で30日開催 レアアース規制などで妥協探る (日経 電子版 07:54)
→米ホワイトハウスは23日、トランプ米大統領と中国の習近平国家主席が30日に韓国で首脳会談を開くと発表した。米中両政府は首脳会談に先立ち閣僚級協議も実施し、双方の輸出規制や高関税政策を巡り緊張緩和を探る。
AIはじめ日米の協力合意の取り組みである。
◇日米がAIや6Gなど先端7分野で協力合意へ 中国に対抗、新興国輸出―【イブニングスクープ】 (日経 電子版 18:00)
→日米両政府はAIや次世代通信規格など7分野の科学技術協力に合意する。信頼性の高いAIインフラや通信網を新興国に普及させるため、研究開発や国際規格づくりに取り組む。先端分野の国際的な影響力を強める中国に対抗する。
□10月25日(土)
◇米株3指数そろって最高値 強まる利下げ観測、ITや金融に買い (日経 電子版 05:49)
→24日の米株式相場は大幅に上昇し、ダウ工業株30種平均の終値は前日比472ドル高の4万7207ドルだった。初めて4万7000ドル台の大台を突破した。S&P500種株価指数やナスダック総合株価指数も最高値をつけた。インフレ率が市場予想ほど上昇せず、追加利下げへの期待が拡大。金利の低下観測を追い風にテックや金融株が大きく上昇した。
米労働省が同日に発表した9月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比で3.0%上昇した。伸びは8月の2.9%から加速したものの、市場予想の3.1%は下回った。
≪市場実態PickUp≫
【インテル関連】
以下の取り出しであるが、注目は直近四半期業績発表であり、7四半期ぶりの黒字転換とあらわされている。最先端半導体の立ち上げおよび先行性に、引き続き注目である。
◇Intel’s CEO Lip-Bu Tan Meets Saudi Official For a Potential Chip Partnership - Can Gulf Capital Power Team Blue’s Semiconductor Comeback?―Reports: Intel explores chip, AI ties with Saudi Arabia (10月19日付け Wccftech)
→報道によると、インテルのリップ・ブー・タンCEOは最近、サウジアラビアの通信情報技術大臣、Abdullah Al-Swaha氏と会談し、半導体とAI分野における可能性に向けた提携について協議した。一方、サウジアラビアとUAEは経済の重点をテクノロジーへと移行させている。
◇Intel beats on sales in first earnings report since U.S. government became top shareholder (10月23日付け CNBC)
→1)*インテルは第3四半期の売上高が予想を上回ったと発表し、PCs向けコアx86プロセッサの需要回復を示唆した。
*インテルの株価は年初来で87%以上上昇している。
*これは、米国政府が8月に10%の株式を保有する筆頭株主になって以来、インテルにとって初めての発表となる。
2)PCプロセッサの需要回復を受け、インテルは予想を上回る売上高を計上し、株価は6%上昇した。同社は$4.1 billionの純利益を計上し、政府およびNVIDIAからの投資を確保したほか、供給制約にもかかわらずチップ事業の継続的な成長を強調した。
◇インテルが7四半期ぶり黒字転換 7〜9月、過剰投資見直しで再建急ぐ (10月24日付け 日経 電子版 05:52)
→米インテルが23日発表した2025年7〜9月期決算は、最終損益が$4.063 billion(約6200億円)の黒字(前年同期は$16.639 billionの赤字)だった。最終黒字は7四半期ぶり。工場への投資額を減らしたことで、課題となってきた他社から半導体の製造を受託する事業の赤字幅が縮小した。
7〜9月期は売上高が前年同期比で3%増の$13.653 billionだった。
◇インテル、黒字転換も再建遠く 「先端半導体量産」に顧客は半信半疑 (10月24日付け 日経 電子版 11:40)
→米インテルは23日、2025年7〜9月期決算が7四半期ぶりに最終黒字になったと発表した。人員削減や工場の投資縮小によってコストを下げた。復活を託す先端半導体の受託生産ビジネスでは顧客獲得が進んでおらず、再建に向けた道のりは険しいままだ。
【Nexperiaをめぐる動き】
中国とオランダの対立で、自動車用半導体の供給問題に広がって、慌ただしさを増している関係各国間の動きが以下の通りである。
◇Europe Auto Industry Braces for Chip Disruption Within Days (10月21日付け Bloomberg)
→欧州の自動車業界は、ネクスペリア社製半導体に対する中国の輸出制限により、数日以内に生産が中断される事態に備えている。事情に詳しい関係者によると、半導体不足は1週間以内に主要サプライヤーに影響を及ぼす可能性があり、その影響は10〜20日以内に自動車業界全体に広がる可能性があるという。関係者は、協議が非公開であることを理由に匿名を条件に語った。
◇Auto giant Volkswagen warns of output stoppages amid Nexperia chip disruption (10月22日付け CNBC)
→1)*フォルクスワーゲンは水曜22日、中国とオランダのネクスペリア社をめぐる紛争が、短期的な生産活動への影響につながる可能性があると警告した。
*同社の株価は午後の取引で2%以上下落した。
*オランダ政府は最近、オランダに拠点を置く中国系半導体メーカー、ネクスペリア社の経営権を掌握したが、これは極めて異例の動きとみられている。
2)フォルクスワーゲンは、中国がオランダの半導体メーカー、ネクスペリア社の輸出を制限していることを受け、短期的な生産停止の可能性を警告した。生産量は安定しているものの、フォルクスワーゲンはサプライヤーを綿密に監視しており、緊張が高まる中で半導体不足が再び深刻化するのではないかとの業界の懸念を浮き彫りにしている。
◇Nexperia crisis: how US-China tensions disrupt a global chip supply chain (10月22日付け South China Morning Post)
→1)アナリストによると、半導体メーカーの「欧州開発、中国製造」というビジネスモデルは「持続不可能」になっている。
2)オランダ政府による中国系半導体メーカーNexperiaの接収は、同社のグローバルサプライチェーンに亀裂を生じさせている。中国工場は欧州の監視に抵抗し、生産量を抑制し、出荷を制限している。これにより、地政学的緊張が高まり、テクノロジーサプライチェーンの分断が加速している。
◇車産業に半導体不足の懸念 中国オランダ対立で出荷停止、ホンダなど調査 (10月22日付け 日経 電子版 17:02)
→日本の自動車産業に新たな半導体の調達懸念が浮上している。中国資本の半導体メーカー、ネクスペリアをめぐるオランダと中国の対立を受け、日本メーカーに納める複数の商社が出荷停止の通告を受けたことが22日までにわかった。生産の停止を回避すべくホンダなどが調査に入った。
ネクスペリアはオランダに本社を置く、フィリップスを源流に持つ半導体メーカー。
◇Exclusive: Nexperia's China unit resumes chip sales to domestic distributors, sources say (10月23日付け Reuters)
→オランダの半導体メーカー、ネクスペリア社の中国法人は、所有権をめぐる争いを受けて中国政府が輸出を禁止した際に全ての出荷を停止していたが、事情に詳しい関係者2人によると、現地の販売代理店への半導体供給を再開した。しかし、国内取引に限定された今回の供給再開に伴い、販売代理店への全ての売上はこれまで米ドルなどの外貨建て決済のみだったが、今後は人民元建て決済が義務付けられると関係者らは述べた。
◇German foreign minister to press China on semiconductors on Beijing trip (10月23日付け Reuters)
→ドイツのJohann Wadephul外相は、日曜日から始まる北京訪問において、中国に対し、レアアースと半導体に関する輸出規制の緩和を強く求め、公正な貿易が両国関係の成功の礎であると強調すると、ロイター通信に語った。ヴァーデフル外相の訪問は、今年後半に予定されているFriedrich Merz首相の訪中を前に、現ドイツ政府の閣僚による初の訪問となる。
◇オランダ社の半導体供給停止、自動車産業に打撃 中国リスク顕在化 (10月24日付け 日刊工業)
→蘭半導体メーカーのネクスペリアをめぐる中国とオランダの対立が世界の自動車産業に影を落とす。ネクスペリアの半導体供給停止を受け、欧自動車メーカーが生産停止に追い込まれ、国内部品メーカーにも納品懸念が浮上。中国リスクがあらためて顕在化しており、サプライチェーン強靱化の重要性を浮き彫りにする。
◇ドイツ政府、中国に半導体輸出の再開を要請 ネクスペリア巡る対立で (10月25日付け 日経 電子版 01:35)
→オランダに本社を置く中国資本の半導体大手ネクスペリアを巡る両国の対立を受け、ドイツ政府は中国に半導体輸出の再開を求めた。ライヒェ経済相が24日、明らかにした。自動車業界で調達への懸念が浮上しており、政治問題に発展してきた。
【Nvidia関連】
AI半導体を牽引するNvidia、および同社CEO、Jensen Huang氏の動きも定点観測の趣き、以下の通りである。
◇‘What harms China could oftentimes also harm America, and even worse,’ says Nvidia CEO Jensen Huang, as ‘China market share drops to 0 from 95%’ (10月18日付け Global Times)
→エヌビディアのジェンスン・フアンCEOは、米国の輸出禁止措置により中国本土企業への販売が遮断されたため、中国の先端半導体市場における同社のシェアが95%からゼロに急落したと述べた。ニューヨークで講演した同氏は、米国の制限措置は両国に悪影響を及ぼし、市場を中国のライバル企業に明け渡すリスクがあると警告した。
◇Nvidia’s Jensen Huang, TSMC celebrate first US-made Blackwell chip (10月19日付け Taipei Times)
→NvidiaとTSMCは、TSMCアリゾナ工場で製造された初の米国製Blackwell GPUで画期的な成果を上げた。TSMCの4NPプロセスを採用したこの208Bトランジスタチップは、米国のAIサプライチェーンを強化し、国内製造業の発展を促し、生成型AIの性能と規模を飛躍的に向上させる。
◇Jensen Huang, global tech leaders to attend APEC CEO Summit―Nvidia CEO to join global tech leaders at APAC summit (10月19日付け The Korea Times (Seoul))
→エヌビディアのCEO、ジェンスン・フアン氏は、韓国で開催されるアジア太平洋経済協力(APEC)のCEOサミットに出席する予定。フアン氏にとって初の韓国訪問となる。フアン氏は、サムスン電子とSKグループのリーダーらとAI分野におけるパートナーシップについて協議する予定。$5.2 billionの経済効果を生み出すと見込まれるこのサミットでは、AI、持続可能なバリューチェーン、そしてカーボンニュートラルが焦点となる。
◇Nvidia still needs Taiwan even as TSMC ramps Blackwell production in Arizona―US production of Nvidia GPUs relies on Taiwanese packaging―AI arms dealer relies on Taiwanese advanced packaging plants for top-specced GPUs (10月20日付け The Register (UK))
→NVIDIAは、TSMCのアリゾナ工場で米国におけるGPUsの生産を開始した。しかし、Blackwellシリーズなどの最高性能GPUsの組み立ては、依然として台湾のパッケージング工場に依存している。アムコーは米国に先進的なパッケージング工場を建設中であるが、稼働開始は2027年または2028年以降となる見込みである。
◇Nvidia's homegrown memory design is almost standardized and ready for everyone to use - JEDEC says SOCAMM2 compact DRAM module for AI servers boasts higher speeds and broader compatibility―JEDEC nears completion of SOCAMM2 memory standard―Nvidia-backed SOCAMM needed more refinement to be (10月22日付け Tom's Hardware)
→JEDECは、NVIDIAの設計をベースにしながらも、より広範な業界普及を目指して拡張されたSOCAMM2メモリ規格の完成に近づいている。SOCAMM2はLPDDR5Xメモリを使用し、最大9,600メガトランスファー/秒という高い転送速度を実現する。仕様は数ヶ月以内に完成すると予想されており、主要メモリメーカーは生産と統合を開始できるようになる。
【TSMC関連】
AI活況を受けてどこまで続くか、最高の業況、そして熊本第2工場など、これも定点観測。現下の取り出し、以下の通りである。
◇TSMC raises full-year growth outlook (10月17日付け Taipei Times)
→1)「劇的で前向き」:AI事業の成長は従来の予測を上回り、中国市場への顧客アクセスが制限された場合でも堅調に推移すると同社は述べた。
2)TSMCは、AIチップ需要の急増を受け、過去最高の4,523億台湾ドルの利益を計上したことを受け、通期売上高予想を35%引き上げた。CEOのC.C. Wei氏は、TSMCが2nmプロセスの展開を加速し、アリゾナ州での拡張によって生産能力を増強しているため、AI事業の成長は予想を上回っていると述べた。
◇TSMC moves up 2nm production plans in Arizona - CEO also hints at further site expansion beyond $165 billion commitment―Strong AI data center demand is pushing TSMC to build faster. (10月17日付け Tom's Harware)
→TSMCは、Nvidia、AMD、およびAppleといった米国顧客からのAI需要の急増を受け、アリゾナ州での2nmチップ生産を加速させている。CEOのC.C. Wei氏は、月間10万枚のウェハを生産できるギガファブ・クラスター用の新施設を建設し、$165B規模の計画をさらに拡大する可能性があると述べた。
◇TSMC gives an ultra-rare video look inside its fabs - 'Silver Highway' and fab tools revealed in flyby video of company's US Arizona Fab 21―TSMC video shows inside of Arizona Fab 21―A rare glimpse inside the fully operational N4/N5 cleanroom. (10月19日付け Tom's Hardware)
→TSMCは、アリゾナ州にあるFab 21の内部を紹介するビデオを公開した。ビデオでは、N4およびN5プロセス技術を用いたチップ製造の様子を紹介し、「シルバーハイウェイ」と呼ばれる自動材料搬送システムと、ASMLのTwinscan NXE極端紫外線(EUV)リソグラフィー装置が紹介されている。TSMCは、N3およびN2プロセス技術を用いたチップ製造のため、Fab 21の第2期棟を建設中である。
◇TSMC planning new plant in Taichung (10月19日付け Taipei Times)
→1)1.4nmウェハ:TSMCは海外生産の拡大に向けて準備を進めているが、台湾への投資も継続すると、同社会長兼CEOのC.C. Wei氏は述べた。
2)台湾のTSMCは、Central Taiwan Science Parkに$49B規模のA14ファブを建設する申請を行った。このファブは、2nmプロセスと比較して15%高速化、または30%低消費電力を実現する1.4nmチップの生産を目的としている。建設は年末に開始され、2028年後半には量産開始となる見込みで、4,500人の雇用を創出し、AIチップの生産量を増加させる。
◇TSMC、熊本で6ナノ半導体製造へ 第2工場27年12月稼働―新生シリコンアイランド (10月24日付け 日経 電子版 12:46)
→TSMCの熊本工場を運営する子会社のJASM(熊本県菊陽町)は24日、第2工場建設地の菊陽町と立地協定を締結した。2027年12月に稼働させ、第1工場よりも先端の回路線幅6ナノメートルの半導体を主に製造する計画だ。投資額は約$13.9 billion(約2兆1000億円)で、経済産業省から巨額の支援を受ける。
◇TSMC熊本第2工場、立地協定「4度目の正直」 需要には不透明感―新生シリコンアイランド (10月24日付け 日経 電子版 15:00)
→TSMCの熊本第2工場(熊本県菊陽町)の建設が本格的に始まった。24日、工場を運営する子会社のJASMが菊陽町と立地協定を結んだ。九州での半導体産業のさらなる集積のきっかけとして期待される。2024年末に量産を始めた第1工場は需要が伸び悩み稼働率はあまり高くないとの見方があり、巨大工場の先行きには不透明感もある。
【Apple関連】
iPhone 17、中国対応など、Appleについて現下の取り出しである。AI活況のこの頃、2番手の取り上げになりがちである。
◇Apple CEO Tim Cook pushes AI system launch in China after iPhone Air release (10月20日付け South China Morning Post)
→1)コンサルティング会社、M360は、「クック氏は自身のパーソナルブランドを活用し、Appleを『地域のニーズに寄り添う、積極的な参加者』へと変革させた」と述べている。
2)AppleのCEO、ティム・クック氏は、iPhone Airの発売に続き、中国におけるApple Intelligenceの展開を推進している。6日間の訪問中、クック氏は開発者、消費者、そして政府関係者と交流し、AIがもたらす変革の可能性を強調し、市場への投資拡大を約束した。
◇iPhone 17シリーズ分解 メイン基板の形状いびつ、カメラと電池優先 (10月20日付け 日経 電子版 05:00)
→メイン基板の存在感がどんどん薄くなってきている――。こう感じたのが、米アップルの新型スマートフォン「iPhone 17」シリーズだ。日経クロステック分解班による「iPhone」の分解に立ち会った。電池やカメラモジュールが重要視され、半導体を搭載したメイン基板が隅に追いやられる様子が見て取れた。・・・・・
◇New iPhone selling 14% better than predecessor (10月21日付け Taipei Times)
→AppleのiPhone 17シリーズは好調なスタートを切り、米国と中国でiPhone 16を14%上回る販売台数を記録した。ベースモデルはディスプレイ、ストレージ、およびA19チップのアップグレードにより需要が高まり、Pro Maxはパンデミック期のアップグレードユーザーを惹きつけている。
◇Apple、英国の集団訴訟で敗訴 アプリ手数料巡り「地位の乱用」 (10月24日付け 日経 電子版 04:21)
→英競争審判所は23日、米アップルがアプリ開発事業者に対して不当な手数料を課していたとする集団訴訟に関し、原告側の主張を認める判決を出した。原告の英国の研究者はアップルのユーザーを代表する形で、アプリ開発者への手数料が消費者にも不利益をもたらしていると主張していた。


