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シリコンシーベルトサミット福岡2008レポート(4)

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シリコンシーベルトサミット福岡2008レポート(4)

福田悦生

東芝 セミコンダクター社
システムLSI事業部先端SoC応用技術部


セッション1では、日本自動車研究所の森田康裕ITSセンター長が日本におけるITSについて講演し、続いてドイツESG Eleltroniksysytem-und Logistik社シニアバイスプレジデントのWolfgang Scyzgiol氏が欧州のソフトウエアプラットフォームであるAUTOSARについて解説した。以下、その現状についてレポートする。

セッション1 日本におけるITSの開発状況と今後の方向性
財団法人日本自動車研究所(JARI)
ITSセンター長 森田 康裕氏

JARIとは
 JARIは、1968年に発足し、車と社会に貢献できる研究開発を行っている。JARIは、以下の範囲の研究を担当している。

・環境とエネルギー
・ハイブリット車、水素自動車、電気自動車、燃料電池自動車
・インテリジェント走行システム
・Active/Crash安全

ITSとは
 ITSとは、Intelligent Transport Systemsの略で、高度な人と車と道路を一体として扱い、安全性と人との調和を目指している。ITSにより、交通事故や交通渋滞の削減、環境保全を行う。
 ITSは、下記の9つの開発領域を持っている。
 1)Increasing efficiency in COmmercial vehicle operations
 2)Support for public transport
 3)Increasing efficiency in road management
 4)Optimization of traffic management
 5)Assistance for safe driving
 6)Electronic toll COllection systems
 7)Advances in navigation systems
 8)Support for emergency vehicle operations
 9)Support for pedestrians
 次に、ITSの歴史を説明する。
 1960年代にUSAでERGSが世界で最初に開発された。情報通信技術を用いて様々な努力を行い1994年からは、様々な会合が、米国欧州アジアで開催されるようになった。ITSの始まりは、第1回のパリ大会であった。日本では、1996年にITSセンター推進全体構造ができたIT自体は、2000年にITの基本法、2001年にe-Japan Priority Policy Programが成立した。ITSは、現在第2ステージに入っており、安全、国際標準等の目的指向が切り口となっている。


PRESENT DIFFUSION OF ITS


 上の図にITSの市場予測を示す。ITS市場は、現在約20兆円となっており、2020年には、5倍の100兆円になると予想されている。
 下の図に、カーナビとVICSの普及台数を示す。カーナビは2007年には2,700万台に搭載され、VICSも年間2,000万台が出荷された。ETCの普及率は、70%になり、特に首都高では80%の利用率となった。


Car Navigation and VICS


【新たな変革】
 2006年1月に、何時でも・どこでも・誰でも実現できる社会の実現を目指すことが提唱された。新たなIT戦略を用いて、交通事故死者数年間5,000人以下を目指す。
 官民で行われていたITS実験計画を統合し、昨年は、総合技術実験をした。今年は、さらに大規模な実証実験を行う予定であり、2010年以降に実用化と全国展開を行う計画である。
 次の図にASVのシステムイメージを示す。


ASV Systems


 ASVコンピュータを主体として、オレンジがセンサー類、緑が制御ユニット類を示している。
 以下の図にスマートウェイを示す。スマートウェイは、先の渋滞や停止車両を道路側のシステムで検知し、社内のカーナビに注意を促すシステムである。首都高最も事故率の大きな場所で実証実験を行った。スマートウェイの利用とつなぎ目の対策をした結果、事故件数は8割減る結果を得た。


Smartway trial field on MEX
DSSS:Driving Safety Support Systems


 上の図に、Driving Safety Support System(DSSS)のイメージを示す。2007年11月に栃木県で実証実験した例である。将来は、光ビーコン5,000万機を設置し、交差点の二輪車、前を走る車の情報、渋滞の情報等を提供する。また、光ビーコンのみならず、ブログ情報なども提供することも検討している。

【ITSの課題】
 ITSには幾つかの課題が存在する。
1)Changing Societal Sense
2)Integrated Development COnsidering users, vehicles and roads
3)COping with the rapid increase in electronic COntent of vehicles
 安全については、ある程度進められているが、環境や、高齢化対策等に関しては、手がついていない。これらを解決するITSはさらに、人・車・道路の総合的な対策と、急速な電子化の採用が不可欠となっている。
 環境対策においては、世界経済における成長とその責任として、世界的な協力が必要である。CO2はエネルギー問題だけではなく、Traffic eCO point, Integrated information Service, COmmuting time management, P-DRGS等が宣言されている。京都議定書において、CO2排出の20%強を運輸が占めているが、今後5500万トンのCO2を削減することになっている。モーダルシート、自動車、飛行機、鉄道の内、7〜8割が自動車であり、このうち車両が63%、交通が34%を占めるが、この交通物流の対策が少ないのが、現状である。

【ITSの将来方向】
 Energy ITSとは、道路交通ネットワークの活用及び交通機関の活用と言う2つの軸を中心に活動し、交通渋滞の緩和とロジスティクスの改善への貢献を目指し検討をスタートした。
 下の図に技術の変遷マップを示す。


Autonomours Driveing & Platoon Driving


 ACC lane keeping技術から、今後は、エコドライブ+自動運転車、信号と連動した車を開発する予定である。また、その延長戦上には協調走行があり、パーソナルビークルやPlatoon走行などが存在する。特に、エコドライブについては、先ほどの京都議定書の数値を活用し、自動化することでCO25,000万トンの削減効果があると予想されている。まずは、5年後の目標は自律走行であり、さらに対立走行を目標に置いている。

 下の図に示す協調走行は、イルカがぶつからないように泳ぐ事の発想から生まれた。これを応用して、車同士が、協調して走ることを目指す。協調走行には、以下の3つの技術が存在する。


Inter-Vehicle Communications for Cooperative Driving


  1. Information Provision
    道路状況などの交通情報を知らせる機能
    車間でメッセージ通信を行う機能
  2. Driving Support
    お互いに自分の状況を教え合う機能
    交差点でお互いの情報を教え合う機能
  3. Autonomous Driving
    合流をスムーズにする機能
    前後左右状況の制御機能

 もう一つは、信号制御をさらに高度化した研究開発。
 3つめは、CO2のモニタリング、予測、排出を国際的に信用される評価方法をつくる;
1と3は、国際連携が重要と思っている。


【まとめ】
 ITSは、安全、環境を考慮すると通信(ネットワーク)が必要になる。自動車では、今後電子化が益々広がるため、これらを支える基板整備が重要となる。また、この基板整備には、国際協調が不可欠と言える。しかしながら、自動車の自動化とは言え、主体はあくまでも人間である。理想的な車は、孫悟空の「きんとん雲」であり、スーパージェッターの「流星号」である。これを目指して、開発を続けて行く。

(続く)

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