セミコンジャパンに合わせ、新しい市場、ビジネスを模索するニュースが満載
セミコンジャパンが先週金曜日に閉幕した。出展社数、出展小間数は若干の減少は見られたものの、参加者は10%以上の減少になった模様だ。正式な集計はもう少し時間がかかるとのことだが、SEMIジャパンの速報値として今年は9万7000人で、昨年の11万人から1割以上減少したようだ。先週のニュースでセミコンジャパン開幕に合わせた製造装置市場の見通しが発表されたが、2009年は21%減と2年連続2ケタ減少という見込みであった。

来年の装置市場減少見通しを受けて、装置各社は半導体技術を生かしながら半導体メーカー向けではない装置の開発に力をシフトしている。フラットパネルディスプレイも半導体技術を使いながら半導体ではない応用に市場がある。このフラットパネル市場も同様にパッとしない。装置各社の力点は広い意味でズバリ環境にシフトしている。太陽電池、LED、あるいはガスや材料使用量の削減による生産効率向上、といった分野である。
太陽電池という名称だが、事実はたんなるフォトダイオードである。光がなければ電気が流れない。つまり発電しない。電池とは違い、電気を貯めない。しかし本質は半導体である。超音波技術をベースに半導体市場で活躍してきたカイジョーが太陽電池向けの超音波洗浄機に力を入れ、コマツNTCが太陽電池向けシリコンを150ミクロンという薄さに切断できる装置を開発している。半導体と同じ装置の改良で開発できるため、参入しやすいという利点がある。ただし、この150μmのウェーハ切断技術は半導体にも応用できる可能性を秘めている。
一方で、台湾の太陽電池メーカー、ジンテックが新工場建設を1年延期したというニュースも先週流れた。世界的な需要が伸び悩むと判断したと書かれているが、台湾メーカーはキャッシュが手元にない、あるいは設備投資のための融資が受けられないとなると、無理な投資はしないことが多い。いまだに補助金に頼っている太陽電池市場の需要が落ち込むとは思えない。補助金ビジネスである以上、市場経済ではなく社会主義的な統制経済であるため、需給関係は成り立たないからだ。
発光ダイオードLED向けの装置が続々出てきているというニュースもあった。LEDももちろん半導体デバイスである。順方向に電流を流すと光るというデバイスだ。従来の電球と比べ消費電力が数分の1とぐっと少ないため、省エネデバイスとして注目されている。電光サインや照明、液晶バックライトなど大きな市場が見込まれているLEDに向け、ディスコが高輝度LEDに基板を切断したり切り込み溝を入れたりするレーザーソーの床面積を減らした装置を販売する。新川は結線数の少ないボンディング装置を発売する。成長産業への布石は忘れない。
LED市場は日本だけではない。アルバックは中国蘇州の生産子会社にクリーンルームを設置、LED用の装置を揃え、サンプル製造まで請け負うとしている。ディスコは台湾にLED販売のための代理店契約を行い、トプコンは台湾に駐在員事務所を開設した。
環境という視点から省エネ、ロスを減らすという以外に、生産性を上げスループットを高めることで1枚ウェーハ生産に必要な電力量や材料を減らすという試みも装置メーカーが発表している。日立国際電気が100枚ウェーハ生産に7時間かかっていた工程を4時間に短縮できる装置、大日本スクリーン製造がIPAを使わず蒸気を利用する洗浄法で洗浄時間を半減、東京エレクトロンが表面処理枚数を320枚/時とスループットを2倍に向上、などのニュースがセミコンジャパンで登場している。
昭和電工がSiCウェーハ事業に参入することを発表している。SiCは高温まで使えるエネルギーバンドギャップの広い半導体だから、パワーデバイスやLEDにも使えると期待されている。反面、2400℃という高温で昇華してしまうため、エピタキシャル気相成長しかできない。つまりコスト的には決して安くならないという弱点がある。自動車用パワー半導体などが有望市場だと見られている。
最後に面白いビジネスモデルを紹介しよう。シリコンのIP(知的財産)をメーカーに代わって販売するというIPのディストリビュータが現れたというニュースがあった。ChipStart社は小さなベンチャー5社のIPを売って歩くIPのディストリビュータだ。米国、英国にオフィスを構える。IPはよほど進んだ回路ではなければ、半導体メーカーに使ってもらい、その先のセットメーカーの差別化商品につなげられなければ成り立たないビジネスであるため、知的に優れたIPが求められる。その開発者が販売方法、流通チャンネルを知らなければこういった流通業者にゆだねてこそ、ビジネスが花開くことになる。