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海外勢と組んだり、自社のコアコンピタンスに集中して未来を拓く取り組み

出口の見えない経済状況の中で何とかして活路を見出そうとする半導体メーカーの努力がしのばれるような記事が先週はいくつかあった。ガラパゴス現象を何としても避けるため、大きな市場が見込まれる海外への展開をいかに進めるか、自社のコアコンピタンスをどう生かして攻めていくか、などいろいろな戦略が見え隠れする中、先週のニュースからいくつか紹介したい。

大きな話題をさらったのはシャープと東芝。実は他にも、べた記事で目を引くものがあった。まず、シャープがイタリアのエネル社と合弁で太陽電池の生産工場を設立するという話題。ドイツやスペイン、イタリアなどの欧州では政府からの補助金や、電力会社からの高額の買い取り制度など、援助という仕組みの中で成長している太陽電池ビジネスだが、見方によっては援助がなくなれば成長が止まるともいわれている。しかし、今成長している市場に参入することは少なくとも数年は稼げることになる。と同時に、日本の成功を見習ったこれらの欧州諸国が「援助ビジネス」ながらも、援助する仕組みを導入する国が他にも出てくれば、ビジネスは継続できる。大面積の太陽電池の効率が今以上に上がり、援助なしのグリッドパリティが達成されれば、太陽電池ビジネスはテイクオフすることになる。

日本の太陽電池市場は政府の補助金が途切れた途端、2年連続マイナス成長と落ち込んでいる。援助の打ち切りが早すぎたのである。シャープがいま大市場と見る欧州へ進出するため、現地企業と手を組み合弁で生産することは大きな意味がある。今はドイツとスペイン、イタリアが太陽電池を推進しているが、いずれ他の国にも普及する。欧州に拠点を構えていれば今後の成長が期待できる。

合弁相手のイタリアには、実は電力泥棒、すなわち地域の電力線を引き込んで使う人たちが多い。このため世界に先駆けて無線メータリングビジネスが立ち上がっている。これは電力の検針を無線で行うシステムで、RFとモデムという携帯電話の音声なし部分(無線通信モジュール)を搭載したもの。太陽電池により各家庭が電力を生産し、この無線メータリングと組み合わせれば電力泥棒の減少につながるかもしれない。

東芝は、NANDフラッシュメモリーを使ってHDDと同じサイズに収めるソリッドステートディスク(SSD)の増産計画を発表した。サンディスクと共同で持っていた工場を東芝が買い取り、SSDの得意なサンディスクと同じ種類の製品を作り、伸ばしていくという戦略だ。2010年度に1000億円を目指すという。チップ販売と、SSDの両方を持つことでチップだけが安く買いたたかれるとしても、SSDはチップからモジュールまで一貫して生産できるため低コスト化が図れる。

SSDはパソコンのHDDに替わるストレージで、UMPC(超モバイルPC)や持ち運びタイプのPC、MID(モバイルインターネットデバイス)などに使われる見通しだ。そのようなモバイルPCの心臓部になるインテルのAtomプロセッサが、予想の倍も売れている現状から、モバイルPCは発展途上国だけではなく、先進国の2台目用途にも使われると見られる。

べた記事だが、米マイクロンが台湾プラスチックから短期融資を受けるという記事があった。大企業である台湾プラスチックがマイクロンを支援し、その見返りとして傘下の台湾Inotera Memoriesへの出資を実現させる狙い。資金不足に陥っているマイクロンにとっては工場を拡張することと同じメリットがある。

一方、エルピーダメモリが台湾のパワーチップセミコンダクタと合弁のRexchip Electronicsの出資比率を48.8%から52%に引き上げるというニュースもある。これは、Rexchipへの出資を過半にして子会社化し、少ない出資金で純資産を増やす手法である。純資産を増やせば融資金額を増やすことができる。DRAMメーカーは資金不足のため、あの手この手でFinancial engineeringを仕掛けている。

最後に、日東電工がシンガポールに材料の研究拠点を設けたと発表した。シンガポール政府の科学技術庁、南洋工科大学と共同で、日東電工のポリマー技術を応用し光導波路センサーの開発を目指す。国民一人当たりのGDPが日本を上回った豊かなシンガポールのインフラを利用すると同時に、理科系の優秀な学生の確保もできるため、シンガポールに開発センターを作るという手は面白い。シンガポール政府のインセンティブもある。

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