今年の世界半導体市場、AI関連以外は下降局面に
今年の半導体市場は、3月26日のSPIウェビナーで示したように(参考資料1)、下降局面が見えてきた。29日の日本経済新聞は、TSMCが熊本工場で製造装置の搬入を抑えていると報じた。ルネサスも人員削減と定期昇給に停止に踏み切る。1〜3月のSSDが8%安くなった。後工程企業20社強が生産・調達で連携する。一方で先端品の開発は足下の景況とは別に投資に力を入れる。

図1 JASMの全景 出典:JASM、TSMC
どうやら今年の世界半導体市場は低成長になりそうだ。29日の日経によるとTSMCが熊本にあるJASMへの製造装置の搬入ペースを抑えていることを報じた上に、米国において成熟世代の半導体の需要低迷とトランプ米政権の関税政策への懸念が出てきていると報じた。Intelがマレーシアに先端パッケージの工場を計画していたが、同社の財務状況の悪化もあり装置の立ち上げや発注が遅れている。OSATトップの台湾ASE傘下の企業もマレーシアでの拡張工事を一時停止すると複数のサプライヤーに通知したという。
27日の日経は、NANDフラッシュを搭載しているSSD(半導体ディスク)の大口取引価格が2四半期連続で下落し、1〜3月期の価格は前四半期比で8%安くなったと報じた。パソコン向けだけではなくサーバー向けの勢いも鈍ったとしている。TLC(3ビット/セル)256GB品の単価が29.9ドル前後。容量が大きい512GB品は56.0ドル前後だった。いずれも2024年10〜12月期比で8%ほど安いという。パソコン向けの停滞が続いて想定通りの引き合いにならず、現時点では全般に「昨年と比べて回復基調が弱い」(大手パソコンメーカー)。
ルネサスエレクトロニクスは、オンライン株主総会において、人員削減や定期昇給の停止について、柴田英利社長は「勝ち残るのに必要な施策だ。今の状況ではどうしてもやる必要がある」と述べた。これは27日の日経が報じたもの。海外の同業企業もリストラや投資計画の見直しを相次ぎ公表している。
米中関係の悪化によって半導体や製造装置の輸出を制限している関係から、中国半導体市場は大きく成長した。2024年の中国内の半導体販売額は前年比17%増の1兆4300億元(約30兆円)だったと28日の日経が報じた。25年も良好な立ち上がりとなったとしている。これは26日に上海市で開幕したセミコン・チャイナのフォーラムで中国半導体行業協会の張立副理事長が明らかにしたもの。
日本国内では、生き残っている後工程のOSAT(後工程専門の請負企業)20社強が生産・調達で連携するため、「日本OSAT連合会」を4月21日に設立する予定となっている、と26日の日経が報じた。大分にあるアムコー・テクノロジー・ジャパンやアオイ電子などが生産体制の相互補完や部材の共同調達する枠組みを立ち上げる。各社の生産拠点の稼働状況などをまとめたデータベースを構築するという。4月21日は設立総会を都内や福岡で開催する予定。
一方で先端技術は足元の不況とは別に動いている。北海道のほくほくフィナンシャルグループは、2028年3月期までに北海道で次世代半導体や洋上風力発電などの分野で累計およそ1兆円の投融資を目指すと28日の日経地方版が伝えた。23年度〜25年度の関連投融資は5500億円だった。
広島県では、半導体産業の競争力強化や自動車の電動化を後押しするため、局長級の「産業政策審議官」ポストを設け、その専属組織として半導体産業課や自動車・新産業課などを新設する。これも28日の日経地方版が報じた。広島ではMicronの工場と広島大学などが組み産官学の連携モデルを提案している。
参考資料
1. 「[動画] 今、世界の半導体に何が起きているか、整理する(3/26)」、セミコンポータル、(2025/03/28)