Nvidiaの2〜4月期決算、2〜3年前の1年分の売上を四半期で稼ぐ
5月22日、Nvidiaの2025年度第1四半期(2024年2月〜4月期)における決算が発表され、日本経済新聞も報じた。それによると、売上額は前年同期比3.62倍の260.44億ドルと大きく伸びた。Nvidiaのチップはクラウド向けの生成AI向けだが、エッジAI用のチップに関してAppleに続き Google、Microsoftからも発表された。日経はまた半導体製造装置の底入れに関しても報じた。
![FY20 - YTD FY25 Revenue($M) / Nvidia](/archive/editorial/recent-news/img/20240527-Nvidia_Revenue.png)
図1 今期の売上額は2年前の1年分に匹敵 出典:Nvidia
Nvidiaの第1四半期における売り上げは、同社の2年前、3年前の年間売上額に匹敵する金額であった。2023年度の年間売上額269.74億ドル、2022年度の269.14億ドルだった(図1)。もちろん、これまで発表された他の企業の2024年1〜3月期売上額と比べても、圧倒的に大きく、2位のSamsungが174億ドルにとどまっている(参考資料1)。
一般に半導体産業では毎年の第1四半期の売上額は、前年の第4四半期よりもやや少ない。しかし、Nvidiaの今期は前四半期比でも18%増と伸びている。好調な原因は明確で、生成AI向けのクラウドで使われるデータセンター向けが前年同期比5.27倍、前四半期比23%増の226億ドルの売り上げだった。生成AIは、Google、Amazon、Microsoftなどを代表とするCSP(Cloud Service Provider)がデータセンター内に独自の学習用と推論用のGPUなどのチップを求めており、それも生成AIでは数千個ものチップを使って学習させているからだ(図2)。
図2 Nvidiaの営業利益率は69%、用途はゲームから生成AIへ
図2(下)からNvidiaの大きな変化を読み取ることができる。3年前の22年度1Qでは、全売上額の36%しかなかったデータセンター向けのGPUが今期には87%も占めるようになっている。これに対して、従来Nvidiaの売り上げをけん引してきたゲーム向けが3年前には49%と最大だったのに対して、今期はわずか10%に後退した。Nvidiaはもはやデータセンター向けのAIチップの会社に変貌したといえる。
利益に関しては、本業のファブレス半導体事業を示す営業利益は、売上額の69%にも達する。前年同期でも61%の営業利益率であったため、1年前からAI向けのGPUへの需要が高かったことを示している(図2上)。2年前や3年前は、営業利益率は34%、47%と健全だったが、生成AI向けの需要増によって単価が上がり、利益率も急増した。
ただ、Nvidiaは儲けすぎているわけではなく、妥当な利益・売上額のようで、最新のGPU「H100」を16個使ったシステムHGX2台は40万ドルだが、このシステムはCPUを960個使った1000万ドルのシステムと同等で、同じようなLLM(大規模言語モデル)処理をさせることができるという。つまり、従来の1/25という安いコストで生成AIを動かすことができるとしている。
AIは、過去の学習データに独自データを追加するだけで独自仕様の学習が可能になる追加学習ができるようになっている。生成AIでさえも同様で追加学習が有効だ。このためパソコンやタブレットのようなエッジでの学習と推論のAIも可能になって来ている。Microsoftが最近発表したパソコンには、CPUとGPU、AI専用回路を集積したSoCを開発しており、負荷に応じて、CPUとGPUとAI回路を使い分ける。Appleが5月15日に発売した新型iPad用の新しいM4チップでもAI専用のニューラルエンジンと呼ぶ回路を集積しており、エッジAI処理ができる。
5月22日の日経は、半導体製造装置大手9社の業績が底入れするとして、この第2四半期(4〜6月期)には、6社が減収だった1〜3月期から一転する、と報じた。Applied Materialsは、5〜7月期には前年同期比4%増(中央値で)の62.5億ドル〜70.5億ドルになりそうだという見込みを24年2〜4月期の決算報告会で発表した。東京エレクトロンも4~6月期に同3割増収の見込みだという。ただ。オランダのASMLだけが回復が遅れ、4〜6月は同14%の減収を見込んでいるが、後半には回復する見込みとなっている。
NANDフラッシュで必要な細くて深いアスペクト比の大きな穴をあけるためのエッチング技術として、新たにクライオエッチングと呼ばれる低温で処理するエッチング技術をキオクシアが速ければ2026年にも量産に使う方針を23日の日刊工業新聞が報じた。東京エレクトロンがすでに開発しており、顧客の評価を受けているようだ。これが出来ればNANDフラッシュの生産性が高まり、400層のメモリセル構造が視野に入る。
参考資料
1. 「直近の世界半導体ランキングでは、Nvidiaがダントツのトップ」、セミコンポータル、 (2024/05/24)