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ホンダ、未来のSDVに向け高集積IC・先端パッケージに注力

クルマが走るコンピュータとなり、半導体の一大消費デバイスへと向かっている中、ホンダはEV(電気自動車)やそのソフトウエアに10兆円を投じ、将来のSDV(ソフトウエア定義のクルマ)実現に向けIBMと次世代半導体などで提携する、と発表、日経などが報じた。スーパーコンピュータのトップランキングが発表され、NvidiaのGPUをフルに採用している姿が浮かび上がった。

ホンダは5月16日、電動化に向けた説明会において、中国などでEV市場の減速感が見られるものの、「二輪。四輪などの小型モビリティについてはEVが最も有効なソリューションである」という姿勢は変わらない、と同社取締役代表執行役社長の三部敏宏氏が述べた。2030年にはグローバルでのEV・FCEV販売比率は40%と高め、2000万台以上のEVを生産する計画だとしている。

そのために2025年以降には米国においてLGエナジーソリューションとの合弁工場が稼働し始め、年間40GWh分のバッテリを生産、さらにバッテリパックの軽量・コンパクト化に力を入れる。EV普及期となる20年代後半以降には、原材料の調達から完成車生産、バッテリの二次利用、リサイクルまで含む、バッテリを中心としたEVの垂直統合型バリューチェーンの構築を目指す。2030年には200万台分のバッテリ調達のメドはすでに立っているとしている。

10兆円投資の中身については、SDV実現のための研究開発費2兆円、米国・カナダ・日本などでのEVの包括的バリューチェーンの構築に2兆円、EV専用工場を含む生産領域で開発に3兆円、投資・出資3兆円となっている。これらのキャピタルアロケーションに関しても言及している。内燃エンジン車からEVへの本格的な事業転換フェーズは2026年度から30年度までの計画だ。

ホンダはさらに、SDV実現に向けIBMとも協業する。SDVでは高集積のLSIやチップレット、2.5D/3D-ICなどの先端パッケージ技術が欠かせない。IBMとの協業では高集積LSIと、チップに実装するソフトウエア開発、ハードとソフトの協調設計など世界最高レベルの処理性能と省電力なSDV実現を目指すとしている。


また、先週、スーパーコンピュータのベンチマークからその性能を評価する団体TOP500から最新のスパコンの順位が発表された(表1)。これによると、1位の米Oak Ridge国立研究所のスパコン「Frontier」から5位のフィンランドにあるEuroHPC/CSCの「LUMI」までの順位は変わらないが、これらの性能は一段と上がったものはある。特に2位のArgonne国立研究所の「Aurora」は昨年11月のベンチマークテストからほぼ2倍の1.012 Eflopsとなった。1位Frontierの性能も前回の1.194 Eflopsから1.206 Eflopsへとわずか1%だが上がっている。EflopsはExa flopsを示し、1Exa=1000Petaであり、1Peta=1000Tera、1Tera=1000Giga、である。

The 63rd edition of the TOP10

表1 スーパーコンピュータのランキングを示すTOP500が発表した2024年6月版の上位10台 出典:TOP500の発表したリストをセミコンポータルが整理


CPUにはIntel のXeon Platinumが多く使われており、AMDのEPYCも2社が使っている。前回と比べてGPUをA100からより高性能なH100に代えたところが多い。日本の富岳だけがGPUを使わず、しかもCPUはArm 64のCPUコアをベースにしている。富岳の性能は前回と同じ。

前回、圏外から6位に入ったスイスCSCS(Swiss National Supercomputing Centre)の「Alps」は、Nvidiaが昨年発表した最新AIチップのGH200を使っている。

スパコンに使われるHBM(High Bandwidth Memory)メモリは3D-ICなどの先端パッケージング技術を使う好例だが、DRAMを4枚あるいは8枚積層するHBMの最後にモールド樹脂で保護するモールディング機械のTOWAが、コンプレッション方式のモールド装置への受注が増えていることを明らかにした。特にHBMのトップを行くSK hynixと、追いかけるSamsungがいる韓国にモールド機械用の工場を取得したという。年度の第2四半期から稼働し始める予定。

(2024/05/20)
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