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TELの業績回復と、半導体企業にも新ビジネスモデル構築の一大チャンス到来

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先週のニュースは東京エレクトロンの業績が回復していることがはっきりしたことが最も大きい。同社は、28日の日曜朝の日本経済新聞に中途採用の1ページ全面広告を打った。また、台湾TSMCが照明用LED市場に参入することを発表した。

東京エレクトロンは、2010年3月期の連結最終損益が従来の170億円の赤字から110億円の赤字にとどまりそうなことを発表した。台湾、韓国向けの製造装置が予想外に売れたらしい。10年1〜3月における同社の半導体製造装置の売り上げは、前期(09年10〜12月)比32%増となり、営業利益も116億円になる見込みだ。半導体製造装置が着実に売れ行きを伸ばしてきている。

4月以降の販売も好調だと見え、日曜朝の日経に1ページ全面広告で中途採用を呼び掛けている。募集している職種は、半導体と太陽電池の製造装置エンジニアだ。東京エレクトロンのホームページでは、フラットパネルディスプレイ製造装置のエンジニアは募集していない。逆にみると、TELはこれからの成長産業として太陽電池と半導体を位置付けているといえよう。

TSMCは160億円を投資して、LED用の工場を新設、2011年の第1四半期に参入すると日経が報じている。新聞では、200mmのシリコンウェーハを使う生産設備を導入するとあるため、シリコンウェーハ上にGaN結晶を積む技術を採用するようだ。


英プラスチックロジック社が開発した印刷技術による電子ブック/厚さは数mm。

英プラスチックロジック社が開発した印刷技術による電子ブック
厚さは数mm。


もう一つ気になる話題は、出版界の電子書籍への対抗策として大手31社が「日本電子書籍出版社協会」を立ち上げたことだ。3月25日の日経新聞が報じているが、背景にはアマゾンのキンドルやアップルのiPadの存在がある。インターネット出版のアマゾンやコンピュータと携帯機器のアップルは、単にコンテンツ販売やハードウエア販売だけではなく、自ら書籍コンテンツを持とうとしている。すなわち出版事業に相当するビジネスをネット上で行おうとしているのである。

アマゾンやアップルが書籍を執筆する作家に直接コンタクトできるようになれば、出版社を飛び越えて直接コンテンツを支給してもらえるという可能性がある。作家は現在10%程度の印税(ロイヤルティ)を原稿料として出版社からもらっているが、もしアマゾンやアップルのような新規参入ネットビジネス組が印税を例えば30%に上げるとすると作家を新参組に取られかねない。製本コストや流通コストはかからない。その危機感が出版社側にある。

日本電子書籍出版社協会は、その設立の狙いを、著作者の利益や権利の確保、読者の利便性などとあるが、アマゾンやアップルが高い印税を作家に与えるとなると、これらの点はほとんど意味をなさなくなる。つまり、日本の出版社はまだ手も足も出ない状態だといえる。

ここへきて、かつてアスキーの創業者である西和彦氏が動いた。電子書籍のベンチャーを設立、4月からアップルのiPadで読める配信サービスを始めるとしている。しかも「クラウドコンピューティング」の手法を使って配信するとあるので、大型コンピュータは自社で持たない仕組みを使うようだ。

電子ブック市場はしばらくの間、「台風の目」となるかもしれない。この市場は半導体メーカー、ディスプレイメーカーが、電子機器メーカーやインターネット配信企業、通信キャリヤを飛び越えてビジネスのイニシアティブを握る、新しいビジネスモデルを構築できるチャンスでもある。もはや部品メーカーではなく、もっとも上のサービスビジネスのカギを握る産業となる可能性は十分ある。ただし、これをモノにできるかどうかはメーカー次第であろう。写真のプラスチックエレクトロニクスの英国ベンチャーであるプラスチックロジック社(後日、英国特集で報道)は、ディスプレイの開発・生産だけではなく、電子ブックそのものまで開発している。

(2010/03/29)

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