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ファブレス半導体、トップはNvidiaの前年比125 %増〜Qualcomm、Broadcom、AMDも健闘、AIサーバが柱

ファブレス半導体メーカーの動きが急ピッチで再成長軌道に乗り始めた。業界トップを行くNvidiaは実に2024年のファブレス企業トップ10(編集注1)におけるシェアの50%を占めており2番手のQualcommも健闘し、シェア14%。三番手のBroadcomもシェア12%を保持している。

電子デバイス産業新聞によれば、海外主要半導体ファブレス企業の売上高は、23年において前年比14%増の2042億ドルであった。33社のうち22社がマイナスとなり、半導体市場が低迷した影響を受けた形であった。

こうした中にあって、GPUと言う黄金武器を持つNvidiaは2022年に269億ドル、2023年に600億ドルというサプライズの成長を遂げ、2024年は実に前年比125%増となり、1350億ドルを達成、AIチップを独占する強さを見せつけた。同社は2025年にIntel、Samsungを抑えて、ぶっちぎりの半導体世界1のチャンピオンベルトを巻くことになるだろう。

Nvidiaは生成AI関連市場の高まりを受けて、AIサーバが急伸、その中核デバイスを担うだけに今後も爆発的成長を続けると見られている。Nvidiaの株式時価総額は2023年5月末には1億ドルを突破したが、この水準を記録したのは、Apple、Saudi Aramco、Microsoft、Alphabet、Amazon、Tesla、Metaのみであり、世界的な超一流企業となったことを意味する。そして2024年6月には時価総額625兆円となり、半導体企業として初めてトップの座を占めたのである。

2番手のQualcommはスマホの需要低迷をまともに受ける形で2023年には売り上げマイナス15.5%の362億ドルとなったが、2024年については前年比13 %増となり、トップ10に占めるシェアは14%となった。スマホの回復基調そして車載向けが伸びてきたことが背景にあるのだ。同社のスマホ向けモバイルプロセッサは圧倒的なシェアを持つが、最近では自動運転に必要なチップセットにも注力しており、スマート交通システムの試乗も狙い始めている。

3番手のBroadcomは前年比8%増、トップ10に占めるシェアは12%を保持している。同社は世界屈指の規模を誇る無線ブロードバンド通信向けの半導体大手である。最近ではAI向けに力を入れており、業界最高性能のファブリックを実現する半導体を投入、ギガビットあたりの消費電力40%削減にも成功している。

4番手を行くAMDは前年比14%増を記録、シェア10%と伸ばしてきた。サーバ及びパソコン向けCPUの両方で成長している。同社は、CPUの分野において、台湾TSMCの微細加工プロセスをフル活用し、ライバルのIntelを猛追している。またFPGA最大手のXilinxの買収にも成功した。AI向けにAIエンジンを集積した「Ryzen」CPUもラインアップしており、時代に合わせた商品群の開発に総力を上げているのだ。またSUBARUにFPGAベースのSoCを納入し、自動運転システムに貢献する半導体開発も視野に入れ始めた。

5番手のMediaTekは前年比19%増と絶好調であり、トップ10に占めるシェアは7%、スマホ市場の低迷から長らく苦戦していたが、PMICやスマートエッジソリューションへの展開で、新たな成長のコアを作りつつあるのだ。

世界の半導体企業のスタイルを見れば、IDMは既に50%大きく割り込み、さらにトーンダウンしている。ファブレスは全体の3分の1以上を占める勢いであり、これに合わせてファンドリも全体の2割まで来つつある。時代は大きく変わった!というべきであろう。

産業タイムズ社 取締役会長 泉谷渉

編集注)
1. セミコンポータルでもファブレス半導体企業のトップランキングを報道している。「最新の世界ファブレス半導体ランキング、AI関連企業が急伸」(2025/03/21)

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