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パイロットラインの利用が始まったラピダス

ラピダスの北海道工場に製造装置が続々と入っており、4月1日からようやく装置やラインなどを試してみることのできる段階に入った。いわばパイロットラインの利用が始まったと言える。石破内閣の提案した2025年度予算が議会を通り、経済産業省傘下のNEDOが補助金を提供できるようになった。これによりラピダスが本格的にラインを使えるようになる。

ラピダス北海道工場建設現場 / ラピダス

図1 最近のラピダス北海道工場建設現場 出典:ラピダス(2025年3月27日撮影)


ただし、「パイロットラインといってもその厳密な定義は難しい」(ラピダス代表取締役社長兼CEOの小池淳義氏)としながらも、「さまざまなプロセス製造装置の条件出しをすることが始まった」段階だ。テストチップや試作チップをラインに流すという意味ではない。装置の条件出しの段階とは、ウェーハを入れてプロセス条件を求めるわけで、集積回路を作る段階ではない。

しかもラピダスの製造ラインは枚葉式(ウェーハを1枚ずつ処理する方式で、主流のバッチ処理ではない)であるため、バッチ式とは違い枚葉式では装置の履歴がどうなるか、メインテナンスやそこからのデータ解析も含め、プロセスラインとしても枚葉式の条件出しは初めての経験となる。予定している量産は2027年であるが、それまでにテストチップの製造を始め、しかも数百枚以上ラインに流すことによって、条件の変化動向を探り、ビッグデータをどう扱うべきか、これでのバッチ処理とは異なることが予想される。

ただ、小池氏が頭に描く枚葉式は、かつて日立製作所と台湾UMCとの合弁企業(2000年3月設立)であったトレセンティテクノロジーズで使おうとした技術。「枚葉式のプロセス技術は、トレセンティを通して小池氏には十分な経験があると思っている」と見る業界人もいる。2002年にはトレセンティのUMCが持つ株式の40%を全て日立が買うことになり合弁は解消されたものの(参考資料1)、2年間トレセンティでは量産経験がある。確かに、枚葉式は現在主流のバッチ式製造装置に付随する各種のデータがすぐには適用しづらく、新たな条件出しなどが必要になるが、この点、小池氏にはトレセンティの経験がモノをいう可能性もある。

ラピダスのニュースリリースによると、今後、300mmウェーハに2nmプロセスのGAA(Gate All Around)トランジスタを集積するテストチップの試作開発作業を進めていくと共に、先行顧客向けにPDK(プロセス開発キット)を提供していく。PDKはファンドリの提供するMOSFETのゲートしきい電圧Vthの種類などを定義したもので、ファンドリの作るMOSFETの定義に従うことを顧客に求める。小池氏によると、すでに30〜40社と連携しているという。

ラピダスはさらにパッケージ工程に関しても、4月から製造装置の搬入を開始し、パイロットラインの構築を始める。ここでは、先端パッケージ技術によってチップを実装することになる。RDL(再配線層)を設けるインターポーザや、3D-ICパッケージ技術の開発などが行われる。さらに先端パッケージの仕様をラピダスが定義するADK(Assembly Design Kit)の構築を進める。KGD(Known Good Die)を選別するラインの開発も進めていくという。

参考資料
1. 「日立とUMCが300mm製造会社合弁契約を解消」、日立製作所/UMCニュースリリース、(2002/02/19)
2. 「『トレセンティテクノロジーズ株式会社』を設立」、日立製作所/UMCニュースリリース、(2000/03/21)

(2025/04/02)
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