ラピダス始動、TSMCの高雄2nm新工場など活発になってきた半導体産業
4月3日にトランプ大統領が関税を発令宣言した。影響力が最も大きい産業は自動車だ。ラピダスが始動したことによってASMLが保守要員数を5倍に増加、札幌に半導体支援のコンサルが事務所を構えた。JASMに527人が入社、東京エレクトロンがIBMとの共同研究を5年延期に。海外ではTSMCがIntelに出資することで合意、TSMCは高雄に最新工場完成、UMCとGlobalFoundriesと合弁、など動きが激しい。
トランプ関税は相互関税でのクルマ産業への打撃となる。財務省の貿易統計によると、2024年の米国向け輸出額は、日本全体の輸出額の20%を占め、21兆2947億円だった。このうち自動車は6兆円超である。トヨタ自動車は米国にも工場を持つためか、米国知人が「トヨタはアメ車だよ、米国で作っているから。でもFordはメキシコ製だからアメ車じゃない」と言っていたことを思い出す。ただ、米国に工場を持っていない日本の自動車企業には大きな打撃となろう。
図1 ASMLのEUV装置 極めて複雑 出典:ASML
ラピダスが始動したが、その詳細はすでにセミコンポータルでも報じている(参考資料1,2)。ラピダスと広島にメモリ工場を持つMicron TechnologyがEUV装置を設置するため、ASMLは日本法人の保守人員を2027年までに現在の5倍にあたる100名に増やす。ラピダスにはEUV装置をすでに設置済みだが、広島工場は25年内に設置する予定だ。
ラピダスは2nmプロセスの開発と製造だけではなく、先端パッケージング技術の開発にも取り組んでおり、東京エレクトロンとIBMも先端パッケージング技術の共同研究を5年間延長した。チップレットやWoW(Wafer on Wafer)を利用する先端パッケージ技術を開発する訳だが、TELは、加工した1枚のウェーハにレーザー光を20µm程度の深さに焦点を当て、薄い20µm厚のウェーハを取り出す技術をすでに開発している。今後は、AIの進展で半導体に必要な技術を開発することになる。
ラピダスのライバルであるTSMCの動きも活発だ。TSMCの熊本工場であるJASMが昨年12月から量産を開始、大学や大学院などを卒業した新入社員527人が入社した、と4月3日の日本経済新聞が報じた。すでに1700名が熊本工場で働いていると言われ、昨年は256名を採用した。従業員にはソニーやデンソーからの出向者も含まれている。
TSMCはIntelに出資するようトランプ大統領が要請していたが、IntelがTSMCの出資を受け入れることで暫定合意したと5日の日経が報じた。TSMCは合弁には20%出資することで協議しているという。IntelはTSMCのほかに、米国の半導体企業とも生産合弁で組むとしている。調整にはまだ時間がかかりそうで、決定すれば正式に発表されるだろう。今回の報道は、The Informationからの情報。
TSMCは先端工場を台湾に残すという方針を堅持しているが、このほど2nmの量産工場を完成させた。新竹工場に次ぐ2nm工場となる。この高雄工場には3棟計画しており、その1棟がこのほど完成した。台湾に先端工場を設置しておけば、中国が台湾を欲しがっても米国が黙っていない、との読みがある、このため米中ににらみ合いが続く状況を維持するために先端工場が必要との認識だ。
もう一つ大きな話としてGFとUMCが合弁を検討しているという報道がある(2日の日経)。第一期トランプ政権時代は半導体にそっぽを向いていたため、GFは米国にあまり重きを置かずドイツのドレスデンを中心に活動していたが、バイデン政権になり米国回帰を進めた。アルバニー近くのマルタ市に本社を移し、新工場を増設する計画を打ち上げた。ただ、この所、売上額がまだ回復していないようで2022年の81億ドルをピークに24年は67.5億ドルまで落ちていた。UMCも同様で、売上額のピークの22年にはまだ達していない。
GFは16nmバルクCMOSプロセス相当の22nmFDSOI技術を量産しており、欧州メーカーに提供していた。先端プロセスを持たなかったUMCもシンガポールに22〜28nmの先端プロセスを使う工場を新設した。試験生産を経て2026年に量産を始める。第1段階の総投資額は最大50億米ドルで、月産能力は3万枚を予定する。UMCは、Intelとも提携して27年に米国で回路線幅12nmプロセスの半導体生産も目指している。
参考資料
1. 「パイロットラインの利用が始まったラピダス」、セミコンポータル、(2025/04/02)
2. 「人材供給会社から半導体設計者を調達するラピダスの勝算は?」、セミコンポータル、(2025/04/02)