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ams OSRAM、光照射とセンサでこれからの自動車やロボットをスマートに

LED照明など積極的に照明分野に注力してきたOSRAMと、センサやその周辺ICを得意としてきたams(旧Austria Micro Systems)は2020年7月に合併したが、その後の活動について日本ではほとんど知られなかった。ams OSRAMの CEO兼取締役会会長であるAldo Kamper氏(図1)がこのほど来日し、今後の戦略について語った。狙う分野は、自動車、産業、医療、モバイル、である。

ams OSRAMジャパン 針田靖久代表取締役社長とams OSRAM Aldo Kamper CEOが並んで立っている

図1 ams OSRAMのAldo Kamper CEO(右)とams OSRAMジャパンの針田靖久代表取締役社長(左)


狙う分野の中でも先行しているのは自動車である。元々amsもOSRAMも自動車分野は強い。2024年度の全社売上額は34.3億ユーロ(約5400億円)だが、そのうちの70%がLEDやセンサ、ICを含めた半導体であり、残りの30%が自動車向けの照明ランプ事業だ。

今後の伸びが期待される自動車用では、図2のような5分野の応用がある。フロントライト(前照灯)と車外へのメッセージ(信号)、車内の照明(アンビエント照明)、スマートな操作盤、各種センサ(ドライバモニターや座席のポジション制御など)などだ。車外へのメッセージとはLEDによる簡単なテキスト表示が可能で、例えば道を譲るときの「ありがとう」や「お先にどうぞ」などの簡単なメッセージを表示して知らせることができる。もちろん道路交通法などの法的な措置は必須だが、中国ではすでに使われているという。


革新的なライトとセンサソリューションで未来のモビリティを推進 / ams OSRAM

図2 さまざまな自動車向けソリューション 出典:amsOSRAM


AmsとOSRAMの協働で威力を発揮したのが、白色LEDを25,600個マトリックス状に並べたマイクロLEDの応用である。欧州の夜間走行では、通常ハイビームで前方を照らす。対向車が来た時だけロービームに落として相手のまぶしさを軽減してきた。マイクロLEDと光センサを使って、対向車の顔の部分を検出し、相手の顔に当たるビームの個所だけ自動的にロービームに落とす。フロントライトがマトリクス上に並んでいるからこそ可能になる応用である。実はこのシステムは高級車Audiのハイエンド車種(Audi e-tron Sportback)に使われている。Kamper CEOは、「画素数をもっと増やし100万画素にするとさらに精度が上がる」として開発中のようだ。

産業用ではロボティクスが将来の新しいヒューマン-マシン・インターフェイス(HMI)として、光をふんだんに使った応用が検討されている。特に工場内の無人走行車などの応用では、自動運転車のようにぶつからないためのセンサと走行処理にセンサとアクチュエータが重要になる。例えば3次元物体を検出する場合、レーザーによって奥行きを測定する。周囲の光が邪魔をする場合には近接センサで検出して、データ処理で打ち消すことも可能だ。接触あるいは非接触センシングという利用もある。


キーポートフォリオを持つams OSRAM、始まったロボティクスメガトレンドの波に乗る / ams OSRAM

図3 ロボットに使われるさまざまなセンサ 出典:amsOSRAM


またモバイルやウェアラブル機器でもLEDによる脈拍測定や近接センサによる画面のオンオフなども応用があり、都市の照明でもセンサと組み合わせて高効率化したり、医療機器の画像処理や内視鏡カメラ、バイタルサインに応用したりするなど、これからもっと普及していくと見ている。Kamper CEOは、今後自動車分野以外をもっと強くすることで売り上げを伸ばし成長していきたいとしている。

(2025/03/05)
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