onsemiに見るサステナビリティ・脱カーボン戦略
ESGや気候変動に対するサステナビリティは半導体工場でも重要なテーマとなっている。パワー半導体とセンサのonsemiは、2030年までに工場で使う全エネルギーの50%を再生可能エネルギーに代えていく目標を持ち、脱カーボンに注力し効率アップを目指している。このほど来日した同社シニアVPでCMO(Chief Marketing Officer)のFelicity Carson氏にonsemiの脱カーボン戦略を聞いた。

図1 onsemiシニアVPでCMOのFelicity Carson氏
パワー半導体とセンサに力を入れているonsemiは4つの分野に価値を持たせている。インテリジェント技術と、イノベーションをリードすること、サステナブルな結果をもたらすこと、付加価値のある文化を作り上げること、の4つだ。同社の得意なパワー半導体とセンサを利用してインテリジェント技術を構成する訳だが、重要となるのが集積化技術である。集積化技術を通してインテリジェンスを加え、顧客に価値のあるソリューションを創り出す、としている。
インテリジェンスは最近のシステムではよく聞かされる言葉であるが、onsemiがなぜサステナビリティ(持続可能性)を重視するのか。onsemiが係る製品と、工場運営、そしてブランド力の3つをサステナビリティの柱としている。
製品は言うまでもなく、パワー半導体によってエネルギー効率を上げることができるため、エネルギー効率を指標として用いサステナブルの価値を推進していく。このためにPCF(製品のカーボンプットプリント)を定義していき、重要な戦略製品に適用する。新製品開発全てにわたり、サステナブルな価値を推進していくとしている。つまり新製品にはエネルギー効率、電力効率を明記する、とCarson氏は語る。
工場運営では、Science Based Targets Initiative(科学に基づく目標のイニシアチブ)による近未来の目標を立てることを2024年末までに行うという。2022年の12月にCEOのHassane El-Khoury(ハッサン・エルコリー)氏がこのSBTイニシアチブ文書に署名した。2040年の最終目標であるカーボンニュートラルを実現させるための近未来の目標をコミットしている。加えて、自社工場内での脱カーボンのロードマップを、スコープ1、2、3をベースに作成中だという(図2)。製造工場が各地で特有の仕様を作りカーボン削減計画、実行計画を進めていく。再生可能エネルギーの利用目標は2030年までに50%に、40年までに100%に持っていく。
図2 onsemiは2023年度に脱カーボンを大きく進展させた 出典:onsemi
企業全体のブランドとして、欧州のCSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive:企業サステナビリティ報告指令)に準拠するための準備を始める。これはかつてのRoHS指令のように、欧州市場に入る以上、全世界の企業が準拠しなければならない仕様になる。
onsemiはそのCSRDに準拠するために必要な全ての文書とデータをまとめる作業に入っているという。これは2025年のデータをベースにして2026年に申請することが求められている。同社はこれまでの活動からESGとサステナビリティに関するさまざまな賞を受賞している(図3)。同社の最新のサステナビリティ活動の詳細は、「2023 Sustainability Report」に掲載されている。
図3 サステナビリティを含むさまざまな賞を受賞したことが価値になる 出典:onsemi
onsemiはCMOが女性であることからもわかるように女性の比率が高く、世界各地に広がる同社(日本は会津工場や東京・大阪・名古屋営業所、群馬・岐阜のデザインセンター)の従業員の45%が女性であり、取締役の内の30%が女性である。ダイバーシティが同社の力になっている。