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3D構造体に沿った配線回路を簡単に形成する新インモールド技術

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オランダ応用科学研究機構(TNO: The Netherlands Organization for Applied Scientific Research)はベルギーのIMECと共にフレキシブルエレクトロニクスに力を入れてきたが、筐体や3次元構造に配線を簡単に描くことのできるインモールド技術をこのほど開発した。コストが安く、これまでの3D配線技術を置き換えられる可能性がある。

図1 3D形状の構造物に回路配線を形成できるFHE技術 出典:TNO

図1 3D形状の構造物に回路配線を形成できるFHE技術 出典:TNO


インモールド技術はインクジェット技術などで3次元構造のプラスチック筐体やパッケージでも配線を描くことのできる技術(図1)であったが、ほとんど普及できなかった。あまりにもカスタマイズが必要な技術だったからだ。

今回TNOが開発した技術は、従来のフレキシブルハイブリッドエレクトロニクス(FHE)と呼ばれる技術をベースにしたもの。従来のフレキシブルエレクトロニクスは半導体ICのトランジスタまで有機材料で構成しようとしていたため、いつまで経っても実用化できなかった。有機トランジスタは開発初期から20年、30年経っても電子移動度が1cm2/Vs程度しかなく、シリコンには到底かなわなかった。この有機トランジスタはHoly Grail(聖杯)とも一部の研究者に言われ、やってもムダとなる手の届かない技術の象徴でもあった。

ところが、有機トランジスタを無理に使わず、能動デバイスには一般的なシリコンのCMOS LSIチップを使い、配線だけフレキシブル基板にスクリーン印刷技術すればよい、という考え方が出てきた。これがFHEである。この考えを進めることでフレキシブルな回路はがぜん現実味を帯びてきた。シリコンLSIのウェーハは、ダイシングしてチップに切り分ける時に、工程時間の短縮のために薄く削り、まるで紙のようにペラペラになる。WLP(Wafer Level Package)だとフレキシブル基板に載せられる。

FHEでは、有機材料を使ったソーラーセルや、OLEDディスプレイ、さらには2次元平面に敷き詰められるセンサなども可能になり、それらを駆動するICを表面実装で搭載する。LSIチップも基板同様薄く、しかもチップ面積はそれほど大きくなければ、フレキシブルプリント基板にそれらを搭載しても、筐体の曲面に沿って張り付けることができる。

TNOが開発したインモールド技術は、これまでの技術とは工程が異なる。従来は3次元構造物に回路配線を描き、その上にチップを実装していた。これを逆にして、ポリマーシートに載せた基板に回路配線を描き、半導体ICや部品を載せた後に、基板をまげて3次元構造物を作るのである(図2)。この方法だと、安価な従来技術であるスクリーン印刷が使える。


図2 先に回路配線やICを実装してから(写真上)、筐体や3D構造物を形成する(写真下) 出典:TNO

図2 先に回路配線やICを実装してから(写真上)、筐体や3D構造物を形成する(写真下) 出典:TNO


この方法だと、先に回路を形成してしまうので、従来の技術をそのまま使えるため、3次元構造への応用は広がってくる。TNOでは、効率十数%のペロブスカイト構造のソーラーセルや、2次元のセンサアレイなどをFHEで試作しており、それらのデバイスと、3次元インモールド技術を組み合わせることで、さまざまなフレキシブル基板の応用ができるようになる。

(2019/02/20)

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