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Infineon、車載向けドメインコントローラAurix TC4xをサンプル出荷

自動車のECUをいくつか束ねるドメインアーキテクチャ向けのマイコン(マイクロコントローラ)が登場した。Infineon TechnologiesがAurix TC4xファミリとして発表したマイコンをCES 2022で発表し、このほど日本でも紹介した。このチップは、最大6CPUコアを集積、コア当たり最大8個のVM(仮想マシン)をサポートできる。

図1 新しいドメインコントローラのAurix TC4xファミリ 出典:Infineon Technologies

図1 新しいドメインコントローラのAurix TC4xファミリ 出典:Infineon Technologies


クルマのECUは高級車では80〜100個搭載されているといわれており、機能を高めると共にECUの数は増加の一途をたどってきた。このため、ECUの装置だけではなく配線のワイヤーハーネスの重量が重くなってくる。クルマ技術はできるだけ軽量化し、燃費や電費を改善したいことと反する。そこで、データセンターで大量のコンピュータを仮想化していることと同様、クルマでも仮想化することによってECUの数を減らそうというドメインアーキテクチャ(あるいはゾーンアーキテクチャ)が注目されてきている。

今回Infineonは初めて仮想マシンを当てはめて、ECUを減らすためのマイコンを開発した。ここでは、独自アーキテクチャのCPUコアを最大6コア集積可能で、1CPUコア当たりハーパーバイザと最大8個のVMを形成できるため、理論上は48個のVMを6個のハイパーバイザで切り替え制御できることになる。

ドメインアーキテクチャでは、これからのコネクテッドカーを配慮し、外部通信からクルマ内に入るゲートウェイをセキュアな環境にする必要がある。特にソフトウエアをOTA(Over the Air)でダウンロード、アップデートは欠かせない。ドメインコントローラはこのためゲートウェイ部分から始まることを考慮する必要がある。このため、セキュリティ回路の集積はマストになる。

さらに、ドメインコントローラは、自動ブレーキなどのADAS(先進ドライバー支援システム)を見越したAI演算機能なども、インフォテインメントドメインなどの制御では欠かせない。そのためのAI機能も設けている。

ドメインコントローラ、Aurix TC4xファミリは、同社がこれまで販売してきたハイエンドマイコンAurixシリーズとしての互換性も揃えている。元々Aurixは、1999年にTriCoreと呼ぶブランドのマイコンとして生まれた。TriCoreは3CPUコアではなく、MCU機能、RISCアーキテクチャ、DSPコアという3つの機能を搭載したマイコンという意味だった。このTriCoreの製品は現在までに累計8.45億個、2014年にAurixというブランドに変えてからも3.2億個を販売してきた。

最初から車載用のECUのコントローラとしての使用を見込んできただけに、機能安全のISO26262のASIL-Dに準拠していることは言うまでもなく、セキュリティも強化した。従来はHSM(Hardware Security Module)を実装していただけだが、今回のTC4xファミリでは、従来よりも5〜15倍もセキュアなCSRM(Cyber Security Real-time Module)モジュールおよびCSS(Cyber Security Satellite)を集積、CSRMでは今回もアプリケーションに関係なく、セキュアなソフトウエアアップートをサポート、暗号や乱数発生器などのハードウエアでセキュアにするという環境にした。またCSSでは、異なる信頼度のアプリを使えるようにするための複数のチャンネルを用意、ハードウエアアクセラレータを並列動作できるように性能のボトルネックを避けている。


図2 PPUはSIMDコアとL1キャッシュメモリでAI処理 出典:Infineon Technologies

図2 PPUはSIMDコアとL1キャッシュメモリでAI処理 出典:Infineon Technologies


AI関係に対しては、PPU(並列処理ユニット)を集積しており、ここにはSIMD(Single Instruction Multiple Data)コアとL1キャッシュメモリ等からなる(図2)。SIMDコアは単精度の浮動小数点命令を最大512ビット幅まで並列実行できるベクトルDSPとなっている。

28nmプロセスノードで製造されたAurix TC4xファミリの内、Aurix TC49xは現在、サンプル出荷を始めたところであり、量産は2024年後半を予定している。

(2022/01/25)

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