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Micron、84GB/sの超高速GDDR6Xをサンプル出荷、PAM4で2ビット同時伝送

Micron Technologyが最も高速のメモリ、GDDR6X DRAMをサンプル出荷した。NvidiaのGPUと共に使うことでゲーム用のレンダリンググラフィックスメモリとしてだけではなく、AI(機械学習やディープラーニング)、HPC(High-Performance Computing)にも使える。グラフィックスでは、リルタイムのレイトレーシングが可能になるという。

Micron GDDR6X

図1 新開発のGDDR6XはGPUとのアクセスを短縮する 出典:Micron Technology


MicronのGDDR6Xは×32ビット構成の8Gビット製品で、IOピン当たりのデータレートが21 Gビット/秒と超高速になった(図2)。このため、32ビットのIOピン全てを並列に動かすと、84 GB/sにも達する。この同期型DRAMをGPUの周りに16個配置するとなると、システムとしてのバンド幅は1TB/sを軽く超えてしまうほどの超高速を実現できるようになる。


Delivering Ultra-Bandwidth

図2 データレートはこれまで最高の21Gbps/ピン 出典:Micron Technology


これだけ高速にメモリにアクセスできるようになると、リアルタイムのレイトレーシングを使えるようになるという。レイトレーシングは、絵か写真か見分けられないほどの現実感を生み出す技術。壁や物体など描く物体に当たる全ての反射光線を考慮した計算を行うため、スーパーコンピュータを専用に使わなければならないほどの技術であった。メモリをGPUの周りに配置することで、Nvidiaは2018年にリアルタイムでのレイトレーシングが使えることを示していた。しかしメモリは高価なHBM2Eを使わなければ実現できなかった。

今回、一般的なDRAMメモリとしてのGDDR6X製品チップとなるとHBM2Eよりも安いコストで入手可能になるため、ゲーム機に使うと映画と区別がつきにくいほどの映像を作り出すことができる。また、映画製造にももっと手軽に使えるようになり、俳優・女優が失業する時代が来るかもしれない。新型コロナウイルスの伝わり方を示すため、咳をすると飛沫がどのように飛散していくかを可視化するコンピュータシミュレーションにももちろん使える。


Doubling Data Down Every Wire

図3 信号振幅を2ビットにするPAM4技術 出典Micron Technology


これほどのデータレートを実現したのは、PAM4(4-level Pulse Amplitude Modulation)技術だ。これは信号振幅を多値にして送るべきデータを増加させる方法(図3)。PAM4は、4つのレベルに分解する2ビット(00, 01, 10, 11)分のデータを一度に送る変調方法で、NANDフラッシュの2ビット/セルと似た考え方だ。1回の伝送で1ビット分を送れるため、データレートを2倍に増やすことができる。図4に示すように、振幅を従来の0と1しか表せない一つのパルスを、半分の信号レベルでも表示できるようにしておけば、00、01、10、11の4つの状態を2ビットで表示できる(参考資料1)。


図4 多値伝送は振幅を半分にして分割 出典:Micron Technology

図4 多値伝送は振幅を半分にして分割 出典:Micron Technology


PAM4の出力ドライバ回路は小さな回路(プルアップとプルダウンの電圧分割)で実現できるため、DRAMに集積できる。つまり、GDDR6Xチップは従来のGDDR6に若干の回路を追加するだけで実現できる。コスト的にはHBM2Eよりも圧倒的に有利である。

Micronは、Nvidiaと共同でシステム性能を確認している所で、NvidiaのGPUである「GeForce RTX 3090」と「GeForce RTX 3080」に搭載しており、高性能ゲーム機に使われることになる。今回、サンプル出荷しているのは8Gビット製品だが、今後GDDR6Xの16Gビット版も計画している。

参考資料
1. Doubling I/O Performance with PAM4

(2020/09/04)

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