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CypressがUSB-Cチップを続々発売できる理由

USB Type-Cは、iPhoneのケーブルのように裏表を逆にしても接続でき、しかも電力を100Wまで供給できるというメリットがある。ディスプレイのHDMIやDisplayPortなどもType-CのAltモードで使えるようになり、パソコンやスマートフォンのケーブルはType-C1本ですむようになる。USB Type-Cの認証チップを最も多くそろえているCypressがUSB-Cチップを続々出せる理由は何か。

図1 Cypress Semiconductor Sr. Marketing Director of Wired Connectivity DivisionのMark Fu氏

図1 Cypress Semiconductor Sr. Marketing Director of Wired Connectivity DivisionのMark Fu氏


「Cypressはチップを供給するだけではなく、システム指向でトータルソリューションを提供する」と同社有線接続部門シニアマーケティングディレクタのMark Fu氏は語る。USBの規格を決めたり標準化したりするための委員会などに最初から参加してきたCypressのFu氏はUSBがType-C時代を迎え、USBケーブル1本で電源ケーブルからディスプレイやプロジェクタのコードまで全ての接続ができるようになると期待する。例えばディスプレイ関係では、DisplayPortやHDMIのような高速シリアルインターフェースが将来、Thunderboltになっても対応していける。そのためのチップ開発手法を公開した。

USB-C(Type-Cを省略してこう表現する)は、全ての有線ケーブルに対応するプロトコルやシステム仕様を持っていれば、どのようなケーブルでもそのチップを搭載せざるを得ない。つまり大きな市場を狙える訳だ。これには、Mark氏は「Cypressはシリコンにタッチできる(半導体のことを熟知しているという意味)ので強い立場にいる」、と半導体を握っていることがUSB Type-Cを進化させていくうえで、システムメーカーよりもイニシアティブを握れると自信満々だ。半導体メーカーがシステムソリューションを押さえておけば、実はシステムに負けないのである。

同社はこれまでpSoC(programmable SoC)と呼ぶ、アナログ回路を集積している8ビット/32ビットマイコンに力を入れていたが、BroadcomからIoT部門を買収し、IoT向けの32ビットpSoCマイコンをプラットフォームとする戦略を推進している。IoT向けの開発ソリューションWICED(悪ふざけの魔女を意味するWickedと同じウィキッドと発音)も揃え、pSoCの開発ツールpSoC CreatorというIDE(統合開発環境)を充実させている。システムメーカーよりもシステムに強い半導体企業を目指してきた。

Cypressは、USB-Cのクライアントチップへの導入を目指し、Power Delivery機能を集積した、製品名CCG3PAをこのほどサンプル出荷を始め、2017年第4四半期の量産に備えている。CCG3PAという製品名は、Type-CのControllerでGen3のPower Adaptorから採っている。Power Delivery 3.0とQualcommの急速充電プロトコルQuick Charge 4.0にも対応しており、100Wの電力が扱えるデザインになっている。


図2 USB-Cポートに関係する回路ブロック チップの仕様によってそれぞれ3つのピンに関係する回路ブロックを選択する これをプラットフォームとして持っている 出典:Cypress Semiconductor

図2 USB-Cポートに関係する回路ブロック チップの仕様によってそれぞれ3つのピンに関係する回路ブロックを選択する これをプラットフォームとして持っている 出典:Cypress Semiconductor


USB-Cの電源や充電機能は、今後も性能向上、機能向上があると見込まれているため、今後のバージョンアップにも対応できるようなチップアーキテクチャになっている。このUSB-Cチップでは、内部源関係の多数の回路ブロックを集めたVBusピン、新しい信号線CCと電源ピンVconn、そしてUSB2.0との互換性やUSB 3.1やAltモードなどのプロトコルやハードウエア回路を集めたデータピン、を基本とし、それぞれの回路ブロックを用途やバージョンに応じて選択する方式を採る(図2)。現在のCCG3PAチップは、CCG4にもCCG5にもさらに将来のCCGにも対応できるような設計だ。電源には、将来の製品を見込んだプログラマブル電源を集積している。

これらの回路をコントロールするのは、これまでのpSoCと同様、ARM Cortex-M0だ(図3)。ここに電源特有の過電流・過電圧保護回路や、静電破壊(ESD)保護回路、ショート保護回路などを周辺回路としてハードウエアとして集積している。Power Deliveryでは5V〜20Vの電圧を出力するように、30V耐圧のレギュレータ回路やパワーFETドライバ回路も集積しているが、電源回路のパワーFETは外付けにしている。100Wの電力は20V/5Aで設計している。今後のファームウエアのアップグレードのために64Kバイトのフラッシュメモリも集積している。


図3 CCG3PAチップの内部ブロック(青とグレーの部分)と外付け部品 出典:Cypress Semiconductor

図3 CCG3PAチップの内部ブロック(青とグレーの部分)と外付け部品 出典:Cypress Semiconductor


USB-Cは、パソコンやサーバー、スマートフォン、タブレットなどさまざまな機器に使えるようにするため、ケーブルにこのチップを組み込んでからも他社の機器とつながるかどうかのテスト(インターオペラビリティ試験)を行わなければならない。そして第3者機関であるUSB-IF(Implementers Forum)から認証を受けておくと、市場で受け入れられやすくなる。CypressはPSB-CとPower Delivery機能で最も多くの認証を受けた製品を出しているという(図4)。


図4 Cypressは19の製品がUSB-Cの認定を受けている 出典:Cypress Semiconductor

図4 Cypressは19の製品がUSB-Cの認定を受けている 出典:Cypress Semiconductor

CypressがUSB-Cに力を入れ、他社に負けないチップを揃えるようになったのは、USB1.0の最初の標準化会議から参加しているためだ。このため、USBの新規格チップをほとんど最初に出せ、ビジネス機会をとらえることができた。しかも彼らは市場がホスト側ではなく、クライアント側に大きく広がっていることを知っている。コネクタ/ケーブルメーカーは当然顧客である。すべてのUSB-Cコネクタ側が対象となる。現時点で19製品にUSB-Cの認証を受けているが、この中には最初に認証を受けた製品でも、異なるアプリケーションを追加したことで再度認証を受けた製品も含むという。

(2017/07/20)

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