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LEDをフリッカーなしで認識できる車載用CMOSセンサをON Semiが開発

CMOSイメージセンサはスマートフォン市場が最大だが、今後クルマのADAS(先進ドライバー支援システム)にも10個程度使われそうだ。この市場を狙い、ON Semiconductorが攻勢をかけている。交通のLED信号のフリッカーを抑え、色を認識できる機能を備え、ダイナミックレンジ120dB以上と広いCMOSセンサAR0231ATをサンプル出荷していることを発表した。

図1 クルマに使われるCMOSカメラ数は今後も増えそうだ 出典:ON Semiconductor

図1 クルマに使われるCMOSカメラ数は今後も増えそうだ 出典:ON Semiconductor


クルマ用のCMOSセンサがスマホなどの民生用のセンサと最も違うことは、LEDを使った交通標識やヘッドランプ/テールランプの認識、さらには暗いトンネルや車庫と明るい外の両方をはっきり見えるような広いダイナミックレンジなどが求められる点だ。加えて、一般的な車載用半導体と同様に、広い温度範囲やノイズ耐性なども要求される。

クルマ用のCMOSカメラは、バックモニターとフロントモニターで2個、右ハンドル車なら左の前輪付近を見るためのカメラなどが最低必要で、サラウンドビューモニター機能を付ける場合には、前後左右の4画面の合成グラフィックスを作らなければならないため4個はいる。現在のADAS機能ではクルマ1台当たり6個のカメラが必要で、将来はさらにモニターやARなどの機能が付くことなどで10個に増えるとON Semiは見ている(図1)。

しかし、前後のカメラを兼用する場合には、Ethernetコントローラなどでビデオデータを切り替える必要がある。このため、コストに見合ったカメラ台数の最適値があるはずで、機能ごとにカメラを次々に追加していく訳ではない。

今回ON Semiが発表したCMOSイメージセンサ「AR0231AT」には、センサ機能に加え、LFM(LED Flicker Mitigation:LEDフリッカー抑制)やHDR(High Dynamic Range:広いダイナミックレンジ)などの機能を1チップに集積した。センサそのものの解像度は1928H×1208Vで、裏面照射型である。

LFM機能は、交通信号やクルマのLEDのちらつきを解消してLEDの光を正確に認識するもので、特許申請中である。通常、LEDは複数個直並列接続しており、パルスで各LEDストリングスを順次動作させている。人間に目は光に対する反応が遅いため、パルスとは感じずLEDランプがずっとつきっぱなしのように見えている。しかし、センサは一瞬を捉えるためパルスを認識してしまう。このため、図2の左の写真のようにカメラのシャッターを切ると、点灯している部分と消えている部分が見えてしまう。クルマ用で、交通標識や前方、後方のクルマのLEDを正確に認識できなければ、事故につながる恐れがある。

そこで、LFM機能を設けていると図2の右の図のように見える。これはセンサで捉えた2次元画像のピクセル感度を電子的に調整する。オン部分を暗くしておき、絵を数枚重ねていくようだが、これ以上の詳細は明らかにしていない。


図2 LEDランプはオン/オフ動作をしているためカメラで一瞬を映すとフリッカーが現れる(左)。LFM機能でフリッカーを抑えた(右) 出典:ON Semiconductor

図2 LEDランプはオン/オフ動作をしているためカメラで一瞬を映すとフリッカーが現れる(左)。LFM機能でフリッカーを抑えた(右) 出典:ON Semiconductor


ダイナミックレンジを広げる技術もクルマには欠かせない。図3の左の写真のように照度のダイナミックレンジが狭い一般のカメラだと、暗い車庫から明るい外を見ると、外の様子は明るすぎて見えない。ダイナミックレンジを広げると、明るい外も暗い内部も共にはっきり見えるようになる(図3の右)。


図3 通常のカメラだと暗い所から明るい所を映すと明るすぎて見えなくなる(左)。ダイナミックレンジを広げると共に見えるようになる(右) 出典:ON Semiconductor

図3 通常のカメラだと暗い所から明るい所を映すと明るすぎて見えなくなる(左)。ダイナミックレンジを広げると共に見えるようになる(右) 出典:ON Semiconductor


ダイナミックレンジを広げる技術も実はLFM機能と似ている。ここでは4重露光で暗い所の露出と明るい所の露出で写した画像を重ねることでダイナミックレンジを広げている。このため、1枚の画像(フレーム)を得る時間が限られており、1928×1208ピクセルの画面では、30フレーム/秒のビデオ映像で最大4重露光まで、40フレーム/秒だと3重露光まで露光可能である。

これらのLFM機能とHDR機能を同時に使うことはできないが、それぞれのモードを切り替えられるようになっている。例えば、暗い路面での白線検出から交通標識を見るような場合には即時に切り替えられるようになっている。これは1フレームから次のフレームを切り替えるほどの速度だとしている。加えて、クルマ用の安全規格ASIL Bをサポートするための機能を備えている。(編集室注)

(2015/10/27)

編集室注)当初、「サポートしている」と記述していましたが、オンセミコンダクターより、「サポートするための機能を備えている」という申し出がありました。

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