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富士通セミコン、360度の視点で映像を合成するSoC、クルマ用途狙う

富士通セミコンダクターは、画像映像合成用のグラフィックスシステムLSIを開発、自動車のティア1メーカー向けに8月からサンプル出荷していく。4方向、合計4台のカメラからの映像(動画)を合成し表示する機能を持つ。クルマの上の視線からだけではなく、360度周囲からクルマを見たような映像を作り出す(図1)。

図1 カメラ4台で360度の画像を合成する 出典:富士通セミコンダクター

図1 カメラ4台で360度の画像を合成する 出典:富士通セミコンダクター


開発したのは、富士通セミコンの映像ソリューション事業部。自動車のダッシュボードやカメラシステム、家庭でのホームセキュリティや各種のスマート端末への応用を考えている。これらの応用は、さまざまなデータを可視化する用途である。

特にクルマの応用では、追い風が吹く。米国でKT(Kids Transportation Safety Act)法が成立し、2014年以降に米国で販売される全ての新車にバックモニター装着が義務付けられることになった(参考資料1)。このため、カメラは最低でも1台、死角を全てなくすことであれば4台は必要で、それらの映像を処理する回路も求められる。

この新製品MB86R24は、カメラの画像を3次元モデルで合成するアルゴリズムを富士通研究所が開発し、それを採り入れたもの。このため、Imagination Technologiesの3次元グラフィックスコアPowerVR SGX543-MP1をシェーダーエンジン用に集積、さらに演算用にARM Cortex-A9デュアルコアを集積した。クルマの周囲360度からクルマを見るような映像を作成する(図1)。

カメラからの映像を採り入れるビデオ入力は6本、ディスプレイへの出力は3本、それぞれ用意した。クルマに応用すれば、4台のカメラからの映像合成画面(図2のセンターディスプレイ)、液晶のメータディスプレイ画面、ヘッドアップディスプレイへの表示画面、と三つの画面を見られるようになる。クルマでは、ヘッドアップディスプレイに代わってフロントガラスに表示するようなディスプレイでも可能になる。


図2 360度視点表示画面を含む三つの画面へ出力する 出典:富士通セミコンダクター

図2 360度視点表示画面を含む三つの画面へ出力する 出典:富士通セミコンダクター


さらに、このハードウエアプラットフォームに、ライブラリとして用意した接近物検知用のソフトウエアをミドルウエアとして組み込んだ。この結果、人やクルマが近付くとカメラ映像に四角い線でそれらを囲むという表示も可能になる。このためには、右側からの移動体、左側からの移動体、それぞれを追尾するためのカメラも2台使えるポートが必要になり、それをチップに組み込み、入力を6本としている。

同社は、オーサリングツールCGI Studioを従来から販売していたが、今回は全周囲立体モニターや接近物検知ライブラリも追加した。このため、機能追加が容易になった。

また、デモンストレーション用のハードウエアボードも作成しており、ダッシュボード画面上にクルマが360度回転するという映像を記者発表の席上で見せている(図3)。


図3 MB86R24チップ(真中にある白いチップ)を搭載したデモボード

図3 MB86R24チップ(真中にある白いチップ)を搭載したデモボード


富士通セミコンは5月22日から始まる「人とくるまのテクノロジー展2013」において、動作のデモを行い、半導体を紹介する予定だ。

参考資料
1. 米アナログ半導体メーカーがカーエレ市場にトップギアチェンジ(Intersil編) (2011/11/07)

(2013/05/17)

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