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サイプレス、16/32ビットのPSoCマイコンを開発、やや高機能な用途に対応

米サイプレスセミコンダクタ(Cypress Semiconductor)社は、プログラマブルなアナログ回路とデジタル回路を集積した8ビットのマイコン、すなわちマイクロコントローラである、pSoCの上位版16ビットおよび32ビットのpSoCマイコンの製品アーキテクチャを発表した。チップと同時に開発ツールも発売する。

これまでの8ビットマイコンpSoCは、簡単なプログラム可能な制御回路として幅広く使われてきた。特に、プログラム可能なアナログとデジタル回路を集積したマイコンはこれしかない。個別のアナログ部品やマイコン、パワーマネジメント回路などを別々にプリント基板に搭載していた従来のボードと比べ、1チップに集積しているため電子回路部分を小さくできるというメリットに加え、プログラム可能であるためフィールドでもプログラムを修正できるという利点もある。さらに多数のセンサーからのノイズの多い信号を取り扱うことのできるインターフェースも強みである。


サイプレスのPSoCプラットフォームVPのGahan Richardson氏
サイプレスのPSoCプラットフォームVPのGahan Richardson氏


静電容量型タッチパネルのコントローラをはじめ、手振れ防止回路のコントローラ、ゲーム機など発売以来6年超で累計5億個をサイプレスは出荷してきた。性能的には4MIPSの計算能力を持ち、価格は量産時で購入数や使用によって大きな幅はあるが、1ドル弱から10ドル弱と比較的安価な用途に使われてきた。8ビットマイコン市場では2003〜2004年ころはランキングの41位だったが、2005〜2006年に15位に浮上、2007〜2008年には11位まで上がってきた。

しかし、もう少しだけ機能を増やしたい場合には8ビットでは能力不足になる。例えば、「タッチスクリーン操作しながらボタンも一緒に動かしたいような、ちょっとした用途にも対応したいと考え、16ビット/32ビットアーキテクチャを採用することにした」と同社pSoCプラットフォーム部門バイスプレジデントのGahan Richardson氏は言う。アナログの精度とシステム性能を上げるため、アドレッシングを8ビットだけではなく、16ビットおよび32ビットに今回拡張した。

これまでのpSoCである、pSoC1に使っているプロセッサ8051コアを使いながらバス幅を広げるなど、計算能力を8倍強の33MIPSに上げたpSoC3、プロセッサコアに英ARMのCortex-M3を用いるpSoC5の2シリーズを今回リリースした。pSoC3はサンプル出荷を始めたばかりで、pSoC5はごく少量のサンプルを配布するのが今年の第4四半期で、一般ユーザーにもサンプル出荷するのが2010年の第1四半期を予定している。半導体チップのサンプル出荷に合わせ、開発ツールも発売する。

今回の2製品シリーズはアナログの入力オフセットを小さくできる技術(詳細は明らかにしない)を導入しており、最大20ビットの分解能までA-D変換できる。機能、性能を向上させただけではなく、消費電力の低減化も図っている。pSoC3での消費電流はスリープモードで1μA以下、休止モードでは200nAと極めて小さい。しかも電源電圧は、太陽電池の基本1セルでも動作できるように最小0.5Vで動く。


PSoC(R)3/PSoC(R) 5 Platform Architecture


消費電力を下げるためにはゲートしきい電圧を大きくする必要があるが、そうすると0.5Vのような低い電圧では動作しない。このため、太陽電池出力電圧0.5Vを昇圧する回路と通常のパワーマネジメント回路を内蔵した。このようにして低消費電力と低電圧を両立させた。

内部のアーキテクチャはアナログの基本回路は、オペアンプやコンパレータ、A-Dコンバータ、D-Aコンバータをはじめ、さまざまなアナログブロックがある。専用ブロック回路とコンフィギュアラブルなブロック回路を持つ。例えばA-Dコンバータでは、サンプルアンドホールド(S&H)回路も内蔵しているが、この回路はスイッチトキャパシタ回路でコンフィギュアラブルにS&H回路を設定する。

デジタルブロックは、小さな8ビットALUをUDB(単位デジタルブロック)として多数個並べ、ステータスやコントロールレジスタを設定する。またタイマーやカウンタ、PWMなどの回路も集積している。製品シリーズは、16個から20個、24個のUDBを持つグループと、アナログ部分で20ビットと12ビットのA-Dコンバータ、12ビットの逐次比較A-Dコンバータなどの数やそれらの組み合わせのグループによって成り立っている。

コントローラブロックには、24チャンネル分のDMAを搭載しているためCPUの負荷を軽減している。8051コアは動作周波数67MHz、性能は33MIPSであり、Cortex-M3は80MHz動作で100DMIPSの性能を持つ。


PSoC Creatorのスケマティック入力画面
PSoC Creatorのスケマティック入力画面


ユーザーは、開発ツールであるPSoC Creatorを使い、構成したい回路を選択する。これまでのPSoC Designer開発ツールでは、ライブラリから選択した回路ブロックを配置する場所を指定しなければならなかった。このため回路構成に制約があった。今回のPSoC Creatorは回路の大きさは気にせず設計できるというメリットがある。配線形成やI/Oピン配置もPSoC Creatorを使って設計する。

さらにハードウエアだけではなくソフトウエアも同時に開発できるようになっている。この開発ツールはまだPSoC3用しか入手できないが、今2種類の開発キットが入手可能であり、それぞれ廉価版のPSoC FirstTouchスターターキット(49ドル)と、フレキシブルなPSoC開発キット(249ドル)である。PSoC5向けのチップが提供できるようなころにPSoC5用の開発ツールが入手可能ななる見込みだ。

(2009/09/14)
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