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Bluetooth Mesh、IoTメッシュネットワークの主役を狙う

Bluetoothデバイスを数千台もつなげられる新規格Bluetooth Meshは、2017年7月にその仕様が公開され、相互運用性(インターオペラビリティ)のテストが完了した。このほど、Bluetooth SIGのマーケティング担当VPのKen Kolderup氏が来日、デモ企業と共にBluetooth MeshをIoTに有力なネットワークであると強調した。

図1 Bluetooth SIGのマーケティング担当VPのKen Kolderup氏

図1 Bluetooth SIGのマーケティング担当VPのKen Kolderup氏


Bluetoothはこれまで、1対1の接続で、1台の親機に対して最大8台の子機しかつなげられなかった。これに対し、Bluetooth Meshは多対多という接続が可能でこれまでのワイヤレスセンサネットワークで使われてきたZigBeeやIEEE802.15などと同じ、メッシュネットワークトポロジー構成を採っている。1対1の接続で用いてきたような親機と子機の関係はなく、すべてがメッシュのノードとして扱う。このため、ノードからノードへデータを送る際にデータを中継するだけのノードも出てくる。

Bluetooth Meshの最大のメリットは、Bluetooth内蔵機器を最大32,000台もつなげられること。このためビルやオフィスの照明などで使えば、粒度の細かい調整が可能になる。広い室内なら、窓の近くは自然光がたくさん入るので照明の照度を下げ、部屋の奥や何かの陰になるような場所の照明は明るくする。このような細かく制御するスマート照明にはピッタリの応用ができる。IoTデバイスにBluetooth Meshの送受信機を搭載し、多数の照明器具を細かく調整することで、明るさの確保と消費電力の削減を同時に達成できる。

また、Bluetooth Meshと同じようなメッシュネットワーク構成のZigBeeは途中で切断することが多いと言われるが、Bluetooth MeshではManaged Floodingと呼ばれるマルチパスの通信を行うため、接続性がよくメッセージの伝達の信頼性も高くなる。従来のZigBeeだと1チャンネルしか通信しないが、Bluetooth Meshは例えば3チャンネルの送信が可能だという。またDust Networkのメッシュネットワークは、ハイパーバイザーが各ノードを管理し、通信ルートをスケジューリングし、さらに同じルートを通らないという秘匿性を持つ。このためセキュリティは高いが、ネットワーク管理が複雑になる。

これに対してBluetooth Meshは、すべてのデバイスに256ビットの楕円曲線暗号を適用し、128ビットの暗号化キーを使ってデータを送受信する。これらのBluetoothデバイスをスマートフォンやタブレットで管理する(プロビジョニングするという)場合でもOOB(Out of Band)認証を利用して、セキュアにしておく。

Bluetooth Meshは、元々Bluetoothのリーダー的な存在であった英CSR社(現在はQualcomm社の一部門)が提案していたCSR Meshをベースにしており、細かい仕様を改良したという。

Bluetoothは、最近はビーコンで利用するケースも増えている。この場合は1対多となる。Bluetoothビーコンは常にBluetoothの信号電波を発信しており、スマホなどでそれを受信すると、ビーコンがそのスマホ所有者に買い物情報などを流すサービスや、地下街や屋内など衛星からのGPS信号が届かない所ではGPS代わり働くという応用に使われている。GPS代わりの用途では、例えば2台のBluetoothビーコンを使って、データのやり取りではなく、単なる電波を送りその信号強度の変化で距離を算出している。

Bluetoothは当初、クルマでの使用によって欧州で普及した。欧州では携帯電話を持ちながらのクルマの運転は酔っ払い運転と同程度の厳しい罰則があるためだ。耳にかけるヘッドセットと携帯電話をつなげば、電話を手で持つことなくハンズフリーで話しながらハンドルを握れる。Bluetooth機能を搭載したクルマだと、スマホや携帯電話を無線でつなぎ、ヘッドセットさえ使わなくても通話したまま両手でハンドルを握れる。Bluetoothは、スマホとワイヤレスヘッドフォンを無線でつなぐ用途が増えている。ワイヤレスオーディオ市場では2016年の段階ですでに6.47億台/年に達し、2020年には10億台/年に達すると予想されている。

最新のBluetooth5.0規格では通信速度は従来の1Mbpsから2Mbpsに倍増し、通信距離は4倍に伸びた。Bluetoothは従来の1対1から、ビーコン、さらにはメッシュへと進展している。Bluetooth Meshは、スマートオフィスやスマートビルでの応用が普及のカギを握るだろう。

(2017/09/20)

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