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SIM-Driveが先行開発4号車を発表、400kmの航続距離へ

電気自動車の売れ行きがやや停滞し、燃料電池自動車にトヨタ、ホンダ、日産が力を入れている中、400km程度の航続距離(JC08モードでの計算値)を実現できそうな電気自動車が試作された。モータを車輪ごとに組み込む、インホィールモータ方式のクルマを開発しているSIM-Driveが発表した4番目の先行開発車SIM-HALがそれだ(図1)。

図1 SIM-Driveが発表したインホィールモータ方式採用の先行開発4号車、SIM-HAL

図1 SIM-Driveが発表したインホィールモータ方式採用の先行開発4号車、SIM-HAL


SIM-HALがこれまでのクルマ(参考資料12)と大きく違う点は、開発チームが3号までの30数社から8社と激減したこと、そのメンバーと予算で開発することを心掛けたことだ。今回は、性能を上げるためモータの開発にも取り組んだ。さらに、このコンソーシアムとしてこれまでの研究開発フェーズから実用化のフェーズに移る、とSIM-Drive代表取締役社長の田嶋伸博氏は述べた。

電気自動車は、航続距離が今の所ボトルネックになっている。このため、今回はフル充電(100%から0%まで)で400km以上走行することを目標に定めた(図2)。このために車体の軽量化とモータの効率改善、電池容量の増強を行い、3号車での324kmを超すことを狙った。急速充電(80%から10%まで)でさえ、200km以上を目標とした。3号車では考慮していなかった、実用的な走行時の電力、例えばエアコンやフロントライト点灯なども考慮した。さらに熱管理に工夫を凝らし、急速充電の場合3号車の229kmに対して、4号車では200km以上とした。


図2 目標はフル充電で400km以上の走行 出典:SIM-Drive

図2 目標はフル充電で400km以上の走行 出典:SIM-Drive


車体そのものは3号車(SIM-CEL)のボディ形状を踏襲し、全長と全高を少し長くしている(図3)。このままでは重量が増えそうだが、CFRP樹脂を全面に採用することで、3号車では1580kgという重量を、4号車では1510kgと軽量化した。モータの性能を上げるための構造上の理由から、車輪のサイズを3号車の16インチから17インチへと大きくした。


図3 車体は3号車を踏襲しながらわずかに大きい タイヤは17インチ 出典:SIM-Drive

図3 車体は3号車を踏襲しながらわずかに大きい タイヤは17インチ 出典:SIM-Drive

図4 モータ改善目標と結果 出典:SIM-Drive


図4 モータ改善目標と結果 出典:SIM-Drive


モータの改善では、3号車と比べ、定格出力が20kWから25kW以上に上がり(図4)、モータの厚みは3号車の144mmから90.7mmに、重量は51.1kgから33kgにそれぞれ減らした。最大トルクは3号車の850Nm@600Armsから620Nm@500Armsへと少し低下したものの、電流密度当たりで評価すると、110Arms/mm2当たりのトルク重量比は19Nm/kgとなり、3号車の320Arms/mm2当たり17Nm/kgよりも勝っている。この結果、1〜3号車のモータと比べ、性能は2倍以上と見積もっている(図5)。開発したモータをSS(Super SIM-Drive)と名付けている。


図5 新開発のモータは性能2倍に 出典:SIM-Drive

図5 新開発のモータは性能2倍に 出典:SIM-Drive


電気自動車は、モータの回転振動ムラであるコギングが起きやすいと言われている。3号車ではコギングトルクが13.2Nmあったが、新型車では1Nm以下で測定できないほど小さかった。このため安定感のある乗り心地が得られたという。ただし、この実験車で400kmの航続距離の確認はまだとれていない。

SIM-Driveの先行開発車のプロジェクトは、4号車で終了し、この後は実用化のためのパートナーシップ作りに入る。まずは、SIM-Driveの田嶋伸博氏が、会長を務めるタジマモーターコーポレーショングループと共同で実用化のための開発を行う。SIM-Driveが新型モータの開発と、4輪独立制御技術を中心に担当し、タジマは機械加工や車体の開発、組み立て、実験などを担当する。

参考資料
1. シムドライブ、ダッソーとの提携で航続距離の長いEV車の商用化急ぐ (2011/09/11)
2. インホイールモータEVは日産リーフと同じ電池容量で1.6倍の航続距離を達成 (2011/06/17)

(2014/04/04)

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