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シムドライブ、ダッソーとの提携で航続距離の長いEV車の商用化急ぐ

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電気自動車の車輪1個ずつに1個のモーターを直結する、インホイールモータ方式の電気自動車(EV)を開発するR&D会社であるシムドライブ(SIM-Drive)が3次元CADツールを提供するダッソー・システムズ(Dassault Systemes)社と業務提携した。インホイールモータ車の普及促進が狙いである。

図1 R&D会社のシムドライブが計画するインホイールモータ車開発ロードマップ

図1 R&D会社のシムドライブが計画するインホイールモータ車開発ロードマップ


慶應義塾大学の教授でもある清水浩代表取締役社長が経営するシムドライブは、事業化のための3段階のロードマップを描く(図1)。最初の段階は先行車開発事業であり、会員を募り会員企業が欲するEVを開発する。次の段階はこの先行車開発の技術を各社に移転する。第3番目の事業フェーズがその量産化を支援するターンキー事業となる。第1号のプロジェクトで開発したEVは、日産自動車のEV「リーフ」とほぼ同じバッテリー容量ながら、1.6倍の航続距離を達成した(参考資料1)。

この第1号プロジェクトには、いすゞ自動車、三菱自動車工業をはじめ、IHI、NTT東日本、パイオニア、日本航空電子工業など34社が参加した。2011年2月から始まった第2号プロジェクトでも別の34社を集めた。ここにはプジョーシトロエンやボッシュ、日立アドバンストデジタル、アドバンテストなどが参加している。2012年2月から始まる第3号プロジェクトに参加する企業の募集をこのほど開始した。参加会費は1社当たり2000万円だが、インホイールモータ車を開発するコストを考えると安い。

この第2号プロジェクトでダッソーが参加し、3次元CADツールであるCATIA V5を導入した。電気自動車の設計には3D CADは欠かせない。シムドライブのプロジェクトは単なる開発だけには終わらない。各社が持ち帰り生産試作をする場合でも3D CADは開発期間の短縮に役に立つ。

今回の提携では、さらに量産時期を早めるためにCATIA V6を導入することをうたっている。CATIA V6は実は単なる3D CADではない。CADの中に流体力学を用いた空気抵抗を推し測るシミュレーションや生産ラインのモデル化、光の陰影までも考慮するリアリスティックシミュレーション、電気回路モデルなどもインポートされており、3D CADで解析した様子を見ることができる。加えて、ゆりかごから墓場までと称されるPLM(product life-cycle management)ソフトウエアまでも組み込んでいる。この巨大ソフトは、生産ラインをモデル化し、工場を設計する期間を短縮する上に、設計開発時に使用した多数の部品の管理から、量産での生産管理、生産終了となる製品のスペアパーツ管理まで行う。試作から量産終了まで、さらに工程設計から部品まで全てを1本のソフトで管理する。

V5までは3D CADソフトにすぎなかったが、V6は単なるバージョンアップではなく、別物と考えるべきソフトだと、ダッソー・システムズ社日本法人代表取締役社長の末次朝彦氏は述べる。ダッソーは、CATIA シリーズが大きく変わる時にVという名称を使っているが、最初にV6を発表した2008年からリリース#という呼び名で毎年数回バージョンアップしてきたとしている。

シムドライブがV6を導入する狙いはインホイールモータ車の商用化を早めるためだ。V6によって開発速度が増すだけではなく、生産へも移行しやすく、しかも量産移行も容易になる。


図2 共通のプラットフォームを作り車体は各社でカスタマイズ

図2 共通のプラットフォームを作り車体は各社でカスタマイズ


シムドライブの基本アーキテクチャは、電池とインバータ、さらには車輪までも共通プラットフォームと考え、その上にカローラでもセリカでもどのようなデザインの車体でものせて差別化できるようにする概念だ(図2)。電気自動車の開発を30年手掛けてきた清水社長は、EVのスペシャリストであり、この基本アーキテクチャに沿って、セダンやフルフラット床のバス、8輪車のリムジンも試作している(図3)。


図3 清水教授が手掛けてきたさまざまなインホイールモータ車

図3 清水教授が手掛けてきたさまざまなインホイールモータ車


図3 清水教授が手掛けてきたさまざまなインホイールモータ車

ダッソーのCATIA V6を有料でシムドライブが購入し、シムドライブのサーバーで設計から試作まで参加企業が利用できるようにする。シムドライブのサーバーがV6を一元管理することで、参加企業はV6を使うことができ、生産移転が極めて容易にできるようになる。提携期間は3年間。ダッソーにとってもV6のユーザー開拓ができるため提携のメリットは大きい。

参考資料
1. インホイールモータEVは日産リーフと同じ容量で1.6倍の航続距離を達成 (2011/06/17)

(2011/09/16)

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