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LED市場を加速するスマートライティング

LED照明は2020年を超えても成長する。その原動力となるのはスマートライティングである。ON SemiconductorのCorporate Marketing部、Lighting SegmentのDirectorであるSri Jandhyala氏(図1)は、今は白熱灯や蛍光灯の置き換えにすぎないが、センサと制御、通信を使ったスマートライティングは今後成長のフェーズに入るとする。

図1 ON SemiconductorのSri Jandhyala氏

図1 ON SemiconductorのSri Jandhyala氏


LED照明を従来照明の置き換えと捉え次に有機ELが来る、というシナリオを国内メーカーは描いていた。2015〜16年ごろからLED照明市場は下がっていくという予測もあった。しかし、LEDだからこそできるというスマートライティングによって、省エネ化、便利・快適な生活を実現できるようになる。LEDが蛍光灯と決定的に違うことは、電流駆動のため明るさを連続的に変えられるという点だ。蛍光灯は放電を利用するため、ある程度の電圧と電流が必要で、連続的に変えることはできない。LEDが調光という機能をフル活用すれば、これまでにない極めてインテリジェント(スマートと同意語)な照明ができる。

調光は明るさを連続的に調節できるだけだが、これにセンサと通信を組み合わせると「賢く」なる。例えば、台湾のMoons’社が開発しているLED照明は、トンネル灯や街灯での用途を考えたスマートライティング製品だ。周囲の明るさ(日中、夕方、夜間など)に応じてLEDの明るさを自動的に変える。例えば、オフィス内で太陽光が差し込む窓側と外光が入らない奥側でLEDの明るさを自動的に変えることで省エネ化を図る。クルマがトンネルの手前に来るとトンネル内を明るく照らし、クルマからトンネル内を良く見えるようにしておく。トンネルから出るときは外光が眩しいくらい明暗の差が大きくなるため、あらかじめトンネル内の照明も明るくしておく。「このようにして事故を防ぐ手助けになる」とMoons’社の日本法人であるMoons’ Industries Japan代表取締役の陳嘉氏は語る。

Moons’社はセンサをつなげるインタフェース付きのインテリジェントLEDドライバや、調光機能と通信機を内蔵したランプコントローラ、現場でプログラム可能なLEDドライバなどを開発している。3月4-7日、東京ビッグサイトで開かれたLED Next Stageにおいて、同社は、通信方式として、有線のPLCを使ったネットワークや無線のZigBeeを使うLEDコントローラを展示、さらにRS485インタフェースを使い有線でも、携帯の無線モバイルネットワークでも可能なシステムも展示した。

ON Semiconductorは、2011年の三洋電機、Cypress SemiconductorのCMOSイメージセンサ部門、2010年のCMD(California Micro Devices)のそれぞれの買収により、製品のポートフォリオを広げている。三洋はパワーマネジメント、Cypressのセンサ技術はIoT、CMDは保護回路素子やアナログ技術をそれぞれ活かし、スマートライティングへの準備を着々と進めてきた。LED照明の売り上げが2015年ごろから鈍化するというコンサルティング会社の予測がかつてあったが、ON Semiconductor は、2020年を超えても伸び続けると見ている。


図2 2020年でも伸び続けるLED照明 出典:ON Semiconductor

図2 2020年でも伸び続けるLED照明 出典:ON Semiconductor


スマートライティングは、始まったばかりである。そのはしりをPhilips社のhue製品に見ることができる(参考資料1)とJandhyala氏は言う。これは、調光と色調を自由に変えられる照明器具であり、そのモニターとコントロールをスマホやタブレットで行うもの。人間の好みとシーンに応じて明るさと色合いを変える。Apple Storeから購入できる。

今後は、人間が変えるだけではなく、自動的に明るさに応じて変えたり、フィールドプログラム可能にもなる。センサとネットワークによるスマートライティングを目指し、ON SemiconductorはLEDドライバやパワーMOSFET、マイコン、センサ、RF/モデム回路をセットにしたソリューションビジネスを加速していくという。

参考資料
1. hueってなに?

(2014/03/07)
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