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NVIDIA、Computexでの発表相次ぎ、企業価値1兆ドルに自信

コンピュータの総合展示会として、今や世界が注目するようになったComputex Taipei 2023が先週、台北市で開かれ、NVIDIA一色の様相がうかがわれた。NVIDIAは、スマートフォン用APUのMediaTekとクルマ用チップで、ソフトバンクとも生成AIの次世代データセンター向けCPUで提携する姿勢などのビジネスだけではなく、スパコン向けや生成AIやメタバース向け製品も発表した。

Grace Hopper Image / NVIDIA

図1 NVIDIAのスパコン向けGH200 Grace Hopper Superchip 出典:NVIDIA


NVIDIAとMediaTekとの提携はセミコンポータルでも報じたように記者会見を生中継した(参考資料1)。NVIDIAはさらにソフトバンクとも提携し、AIと5G/6Gに向けた次世代の基地局プラットフォーム構築を協業すると発表した。このプラットフォームにはArm NeoverseベースのCPUコアをベースにしたNVIDIA GH200 Grace Hopper Superchip(図1)と呼ばれるSoCが使われ、GPUを制御する。この新チップを搭載したリファレンスアーキテクチャNVIDIA MGXも提供する。ソフトバンクは通信基地局のRAN(Radi Access Network)の最適化や、通信設備の性能向上や消費電力の削減、生成AIアプリの実装、データセンターへの相互接続の実現も目指すとしている。基地局では通信トラフィックの最適化のためにAIを使う例が増えている。

NVIDIAは、24日の決算発表(2023年2〜4月期)で売上額が前年同期比13%減だったのにもかかわらず株価が上昇し1兆ドル近くまで上昇したのは、売上額が前期比で19%上昇しただけではなかった。GPUが今や品薄で、TSMCがNVIDIA向けに生産しているCoWoS(Chip on wafer on Substrate)パッケージの生産が追い付いていなかったためらしい。生成AIには数千個以上の大量のGPUが使われていることがChatGPTへの質問で明らかになったが、生成AI用のソフトウエア開発企業やスタートアップがGPUチップを求めて群がっているとDigitimesで紹介されたこともNVIDIAの株価を押し上げたようだ。

NVIDIAは自社製品のリリースにも余念がない。ソフトバンクとの協業で使われるNVIDIA GH200 Grace Hopper Superchipの量産が始まったことも発表した。このチップは、NVIDIA NVLink-C2C インターコネクト技術を使用し、Arm ベースの NVIDIA Grace CPU と Hopper GPU アーキテクチャを接続するもの。これにより、最大 900 GB/秒の総帯域幅が実現できるとしている。CPUは単純にこれまでのバス方式で多数並列接続するとCPUが数個〜10個程度で性能が飽和してしまうというアムダールの法則を超えなければならない。このためスーパーコンピュータではバス方式は使えず、代わりに多数のCPUから送出されるデータを整理・調整しなければならない。これがインターコネクト技術である。

NVIDIAは、Grace Hopper Superchipを256基を搭載した、1E(エクサ)FLOPSのAIスパコンも発表した。現在、スパコントップの米Oakridge National Laboratoryのスパコン「Frontier」の性能が1.1EFLOPSで、富岳のそれは0.44EFLOPSだから、NVIDIAのスパコンはほぼトップに並んだと言えそうだ。Grace Hopper Superchipには、Grace CPUに加えNVIDIAのH100 TensorコアGPUも同一パッケージに集積しており、インターコネクトチップNVIDIA NVLink-C2Cで接続している。

NVIDIA はさらに、世界のデータセンターのアクセラレーテッドコンピューティングのニーズを満たすために、NVIDIA MGX サーバーの仕様を発表、モジュラー式のリファレンスデザインを提供する。これにより、システム メーカーには幅広い AI、HPC(High Performance Computing)、Omniverse のアプリケーションに適した 100 以上のサーバーシステムを迅速かつコスト効率よく構築できるとしている。すでにQCT(Qualcomm CDMA Technology)やSupermicro、ASUS、Gigabyteなどが採用しているという。

NVIDIAの企業価値を上げている最大の要因は、生成AIに使う大規模言語モデルの開発企業などからの強い需要のようだ(参考資料2)。同社のCEOのJansen Huang氏がComputex Taipeiの基調講演で壇上から降りたとたんに多数のメディアに囲まれた様相を報じたメディアもあった。

参考資料
1. 「ソフトウエア定義のクルマを明確にしてくれたNVIDIAのCEO」、セミコンポータル (2023/06/02)
2. 「生成AIがデータセンター需要を新たに生み出す動きが見えた」、セミコンポータル (2023/05/29)

(2023/06/05)
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