Semiconductor Portal

HOME » セミコンポータルによる分析 » 週間ニュース分析

世界の半導体ビジネスが活発、台湾では2021年26%成長の17兆円に

世界の半導体企業は相変わらず活発に動いている。台湾では2021年半導体生産額が約17兆円と過去最高に達する見通しとなり、韓国のSamsungはテキサス州に2番目の工場を設立すると発表し、Appleは5Gモデムまでも自主開発する。日本政府の姿勢も変わりつつある。5G通信の投資に2年間の減税措置を盛り込む。

台湾では、半導体生産額が25.9%増の4兆1000億台湾ドル(約17兆円)に達する見通しだと11月26日の日本経済新聞が報じた。これは過去最高の金額であり、伸び率は過去10年で最高の成長率となる。旺盛な需要に供給も投資も追いつかない状況となっている。台湾TSMCは、南部の高雄市に1兆円近くを投資して新工場を建設することを決めた。ただし、半導体用ガスや液体材料などが2022年の半導体生産のボトルネックになる可能性があり、TSMCは日本の化学薬品メーカーの台湾への投資を呼び掛けている。

韓国Samsungのファウンドリ部門は、テキサス州テイラーに170億ドルをかけて新工場を設立すると発表した(参考資料1)。テイラー市は現在の工場があるオースチン市から北東へ25km離れた近くの街。半導体製造に必要な設備やリソースなどを現在のオースチン工場と共有するとしている。24年の稼働を目指す。この工場も3nmプロセスノードの最先端プロセスとなる見込みだ。

Appleは独自チップの適用を次々と広げており、2023年には5Gモデム(変復調)チップまでも独自開発すると25日の日経が報じた。これまではQualcommのモデムチップを使ってきた。AppleはすでにAPU(アプリケーションプロセッサ)を手始めに、PM(パワーマネジメント)ICやGPUコアを独自開発してきており、次に外部Qualcommに頼っているモデムチップも内製する。Qualcommは5G通信技術では、モデムやAPUだけではなく、ミリ波やビームフォーミング技術、さらにアンテナ技術までも確立しており、通信技術では圧倒的に強い。Appleは基本的に事前に発表することは決してないが、この話は台湾発の情報であるため、サプライチェーン側からの情報のようだ。

日本政府は2021年度の補正予算案として、半導体の生産企業を支援するため6000億円を計上すると24日の日経が報じた。この内TSMCの熊本新工場に4000億円、Micronとキオクシアの増産費用に2000億円を支援するとしている。

世界では優遇税制やインフラコストの支援など継続的な支援を求めてきたが、これまで経済産業省は一時的な予算しか通せなかった。しかし、総務省は5G通信網の整備に2年間の措置だが、投資額の15%を法人税額から差し引く。この「5G投資促進税制」は基地局や送受信装置など5G関連の設備投資をした事業者が投資額の15%を法人税額から差し引ける仕組み。継続的な期間はわずか2年間だが、ハイテクに継続的な税制優遇が盛り込まれる例はなく、今後半導体にも適用されることが期待されている。

電気自動車(EV)への対応も進む。EVになると半導体は、モータを駆動するインバータだけではなく、回生ブレーキ用のオンボードチャージャーや、高電圧からECUを動かすための電源となる各種のDC-DCコンバータ、バッテリモニタリングシステム(BMS)等半導体がこれまでの2倍以上に多く使われるようになり、半導体にとっては一大市場となりうる。

日産自動車は2030年度までに世界で生産するクルマの電動車比率を5割にすると26日の日経が報じた。ただし、この電動車にはEVとハイブリッドカーを含む。日産の欧州での電動車の比率は、2020年度には10%に留まっており、これを8割に増やす計画だ。中国でも現在の2%から50%へ増強する。

FacebookがMetaと名前を変えたように、メタバース(Metaverse)と呼ぶ新しい市場への開発競争が始まっている、と26日の日経が報じた。Metaは日本語の「超」に相当するような接頭語で、verseは宇宙(Universe)を意味し、Metaverseはそれらをつなげた合成語。NvidiaのJensen Huang氏はGTC 2021の中で(参考資料2)、リアルと実在をつなぐ意味で、デジタルツインを言う言葉を使いながら、VRや自身のアバターで遠隔地の相手と通信するような世界をメタバースとも表現した(図1)。さらにリアルとバーチャルをつなぐソフトウエアのプラットフォーム「Omniverse」は、モノづくりに欠かせない汎用の工業デザインのプラットフォームであり、このプラットフォーム上でアバターやリアルの人とデータを共有しながらモノを開発できる仕組みだ。NvidiaはEricssonと共同で5G電波の可視化を実現しており、B2Bに活かすことを狙っている。ただし、メタバースがバズワードに終わる可能性も残っている。

Toy Jensen / Nvidia

図1 Nvidia社CEOのJensen Huang氏のアバター


参考資料
1. 「Samsungのファウンドリ戦略第1弾、米国に第2工場新設」、セミコンポータル(2021/11/26)
2. 「Nvidiaの最新技術会議、ハードとソフトのセット応用拡張戦略が明確に」、セミコンポータル (2021/11/16)

(2021/11/29)
ご意見・ご感想