Semiconductor Portal

HOME » セミコンポータルによる分析 » 週間ニュース分析

Intelが設備投資額を30%増の95億ドルに増強

今年の半導体製造装置市場は昨年よりは上向きになりそうだ。Intelが2016年の設備投資を、2015年73億ドルから95億ドルに積み増しする、と1月20日の日経産業新聞が報じた。この1〜2カ月、半導体メーカーの投資強化の声を聞くようになったが、正式に発表されたのはこれが初めて。

日経産業によると、95億ドルの内、メモリに15億円を投じるという。Intelはパソコン用CPUとIAサーバー用CPU、IoT用CPU、そしてメモリの4事業を主力領域と位置付けている。また、IoT事業部を発足させた2013年11月ごろは、Intelが係わるIoT事業をゲートウェイから上のレイヤーのクラウド/データサーバーと定義していたが(参考資料1)、その後もっと低価格のQuarkプロセッサも発表し、IoT端末市場にもやってくるようだ。

IoTシステムでは、IoT端末から整理されないデータがあまりにも膨大になり、クラウド上のビッグデータ解析だけでは処理しきれないことから、もっと端末側でもデータ解析してデータを整理することが要求されてきた。このため端末(エッジ)コンピューティングという概念が生まれ、端末側でも演算能力の高いCPUが求められるようになってきた。このような背景ではIntelにとって出番が増えてくる。IoT端末は消費電力さえ小さければよいという訳にはいかなくなる。

Intelにとって主力のゲートウェイ以上のレイヤーでは、単なるCPUの販売だけではなくソフトウエアやシステムソリューションも販売することは最初から決まっていたが、日本法人でも、小売りや運送業など産業別に専門部隊を設置し、業種に応じたビジネス提案を行う組織を築くと日経産業は報じている。3年前の記者会見でも、Intelはデジタルサイネージ向けのコンテンツマネジメントシステム(CMS)のようなソフトウエアをリリースしていた。今回、国内でもようやく上のレイヤーのサービス部隊を設置することになったといえよう。

また、Intelが設備投資額を2015年よりも多額に引き上げたことは、セミコンジャパンにおけるビデオインタビューからも、装置への受注が増えてきたことと符合する。半導体製造装置産業の2016年は間違いなく、前年よりは上向くに違いない。例えば、SEMI代表の中村修氏も(参考資料2)、東京エレクトロン代表取締役会長兼社長兼CEOの東哲郎氏も(参考資料3)、ニコンの常務執行役員半導体装置事業本部長の馬立稔和も(参考資料4)、2016年の半導体製造装置市場の成長に期待している。SEMIのIndustry Research & Statistics部門シニアディレクタのDan Tracy氏も伸びるとしながらも (参考資料5)、2%成長というデータは少し古いかもしれない。

製造装置が回復状況にあることは、日本半導体製造装置協会(SEAJ)が1月20日に発表した数字からもわかる(参考資料6)。日本製半導体製造装置の2015年12月における受注額・販売額・B/Bレシオによると、受注額は10月を底として11月、そして12月と上向き、B/Bレシオも6月以来の1.00を超える結果となった。

もう一つの話題として、東芝が半導体事業をNANDフラッシュに絞る方針を固めた、と先週末の1月23日の日本経済新聞が報じた。NANDフラッシュ以外の半導体デバイスは売却するとしている。これまでは、CMOSイメージセンサをソニーへ売却、白色LEDは撤退することを決めており、そのほかのディスクリートやシステムLSIは決めかねていた。日経によると、それらも売却するとしている。さらにハードディスク(HDD)も大幅に縮小する計画だという。

広報室は正式にアナウンスしていないと述べているようだが、もしこの記事が本当なら、半導体はNANDフラッシュだけ、残りは原子力などの発電設備事業のみとなる。

参考資料
1. IntelがIoT分野に参入、セキュリティ重視のハイエンド市場を開拓 (2013/11/18)
2. 200mmラインが活況〜セミコンジャパン2015特別インタビュー (2016/01/21)
3. 「装置の注文が増えてきた」〜セミコンジャパン2015特別インタビュー (2016/01/21)
4. 10nmの液浸装置からIoT対応機まで〜セミコンジャパン2015特別インタビュー (2016/01/22)
5. 200mmへの投資が活発、2016年も〜セミコンジャパン2015特別インタビュー (2016/01/22)
6. 日本製半導体製造装置の回復は本物 (2016/01/21)

(2016/01/25)
ご意見・ご感想