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電子部品企業による半導体買収が続く

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半導体産業のM&Aの動きは海外で活発だが、国内では電子部品メーカーが半導体メーカーを買収する傾向が強い。先週もTDKがドイツに工場があるMicronas社(ホールディング会社の本社はスイス)を買収すると発表した。もう一つのニュースとしてDRAMの寡占化が進み、ほぼ3社だけになった。

TDKが買収を決めたMicronas社はアナログ/ミクストシグナルに強い会社で、自動車向けの磁気センサであるホールセンサやそれを利用するフロントエンドICの開発を得意とする。国内では「人とクルマのテクノロジー展」に過去数回参加し、クルマ向け半導体メーカーとして訴求していた。ブレーキを踏むと踏んだ距離分だけブレーキペダルが移動することを測定・検出しブレーキディスクを駆動するモータにセンサ信号を伝える、という動作を行うECUシステムの例を紹介していた。電子ブレーキでは、機械的な摩耗がブレーキディスクのみになり、クルマの信頼性が上がる。

今回、TDKはMicronasの全発行済株式を公開買い付けで取得し子会社にすることで両社が合意した。公開買い付け価格は、Micronas1株当たり7.50スイスフランとしているが、この値は2015年12月16日の終値に対して63%のプレミアムを上乗せしているという。
完全希釈化後の株式価値ベースでの買収総額が約2億1400万スイスフラン(262億円)になる見込み。公開買い付け期間は2016年1月12日から2月20日まで。

電子部品メーカーの半導体企業買収は、上記の例だけにとどまらず、これまでもずっと続いている。村田製作所は2012年にMEMSセンサのVTI Technologies (参考資料1)、ルネサスエレクトロニクスのパワーアンプ事業をそれぞれ買収、2014年末にはSOI/SOSの高周波半導体デバイスのPeregrine Semiconductor(参考資料2)を買収した。また、ミツミ電機は2004年12月にルネサス北日本セミコンダクター(その前身は日立北海セミコンダクター)を買収、ファウンドリサービスを展開している。2014年には日立超LSIシステムズからバッテリ管理用ICを含むリチウムイオン電池関連の半導体製品事業を買収している。京セラは2015年8月末にパワー半導体メーカーの日本インターに対する公開買い付けを終了、傘下に収めている。日本では半導体メーカーが買収するという動きは少ないが、部品メーカーが半導体事業を欲しがっているという構造になっている。

DRAMメモリは韓国2社と米国のMicronの3社が実質的に支配してきたが、Micronは台湾のInotera Memoriesを買収することで韓国の独占を防ぐつもりのようだ。市場調査会社TrendMicroのDRAMeXchangeによると、直近のDRAMマーケットシェアは、1位Samsungが46.7%、2位SK Hynix 28%、3位Micron Groupが19.2%となっている。1位と2位を合わせると実に75%のマーケットが韓国勢に占められていることになる。市場経済としてこれではまずい。Micronは韓国勢に対抗する唯一のDRAM企業。

Inoteraの株式は従来Micronが32.7%、台湾プラスチック社(この子会社の一つがDRAMメーカーのNanya Technology)が32%を持っていた。Nanyaが持つ割合は24%である。この24%をMicronが476億台湾元(約1760億円)で購入する。Micronは市場でも株式を買い付ける方針。Nanyaは、株式売却の見返りとして、MicronのDRAM技術ノード1x nmと1y nmのプロセス技術をライセンスしてもらうという。

参考資料
1. ムラタがMEMSのVTIを買収、またも京都の企業が外国企業を買う傾向強まる (2011/10/17)
2. 新生CMOS on SapphireのRFチップで携帯電話市場のGaAsを置き換えていく (2010/06/30)

(2015/12/21)

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