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携帯用の共通充電器開発計画をEUが歓迎、WiMAXサービスが大都市圏でスタート

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6月最後の週におけるニュースで最も気になったものは、通信関係のニュース3本であり、エルピーダは予定通り日本政策投資銀行から300億円の出資を受けることが確定した。通信のニュース3本とは、欧州で携帯電話の共通の充電器を開発する計画に世界10社の携帯電話機メーカーが合意したこと、WiMAXサービスが日本でスタートしたこと、そして総務省が主導する「ブロードバンドワイヤレスフォーラム」が発足したこと、である。

エルピーダの話には新しい情報はなにもないので、もはや触れる必要はないだろう。

欧州で携帯電話の共通の充電器を開発する計画には、EUが歓迎の意を表した。世界の10社の携帯電話機業界には、アップル、LG、モトローラ、NEC、ノキア、クアルコム、リサーチインモーション(RIM)、サムスン、ソニーエリクソン、テキサスインスツルメンツ(TI)を含む。この中の半導体メーカーはクアルコムとTIだけ。残りのメーカーの中ではアップルとRIMは携帯電話ではなくスマートフォンメーカーである。10社がMOUを結びEUが承認、歓迎した。充電器のインターフェースはマイクロUSBコネクタを使い、2010年には共通充電器が商品化される予定だ。EUには、充電器をさまざまなメーカーがそれぞれ独自に作ることで無駄な製造電力を使い、環境によくないという見方がある。完成する携帯電話製品の消費電力だけではなく製造するために必要な消費電力の削減もグリーン化の動きとしてある。ここになぜインテルが入っていないか、興味深い。

7月1日からデータ通信サービスWiMAXが本格的に始まった。筆者は渋谷の駅構内でWiMAXサービスをしています、という店舗を6月30日に発見した。日本のWiMAXはKDDI系の通信サービス会社であるUQコミュニケーションズがこのほど試験サービスを終え、商用サービスを始めた。これは無線LAN(WiFi)とほぼ同じデータレートの40Mbpsでデータ通信ができるというもの。7月1日からは首都圏と中部、京阪神の一部地域でサービスを始めるわけだが、順次使える地域を広げ2010年度末には全国の主要都市でWiMAXが使えるようになる。月額料金は4480円で使い放題だが、NTTドコモやソフトバンクなどの携帯電話キャリヤはこのデータレートでのデータ通信サービスを実現するためにはLTEサービスが可能になるまで待たざるを得ない状況だ。従来の3Gだと7.2Mbps程度でしか受けられない。

WiMAXはインテルが熱心に呼びかけてきた無線の規格で、20〜30mしか電波の届かない無線LANに代わり、直径2〜3kmという広い範囲で無線LAN並みのスピードのデータ通信ができるというもの。通信キャリヤと携帯電話会社は、3.9Gと言われ4Gの原型になるLTE(long term revolution)を重視しているが、LTEは世界共通規格ができるかどうかまだわからない。WiMAXは世界共通規格であるため、このモデムを搭載したパソコンはWiMAXサービスのあるどの国に行ってもインターネットに接続できる。通話ができないという反論はあるが、SkypeやIP電話を使えば何の問題もない。LTEよりも一歩先にWiMAXのサービスが始まったことで世界中の通信インフラがどうなるか今後、注目したい。ちなみにWiMAX用のモデムチップを設計している半導体メーカーは富士通マイクロ、英picoChip、インテルなど数社しかまだない。

「ブロードバンドワイヤレスフォーラム」設立の日本経済新聞のニュースは的を得ていない技術の話が多い。無線充電だとか、クルマの衝突防止などと書かれているが、これらは応用として適切だろうか。例えば2011年に停止する地上波アナログテレビ放送終了後に空いた周波数を利用して何かブロードバンドサービスを行うことを検討しようというが、アナログ放送の周波数帯はVHFが90〜108MHzと170〜222MHz、UHFが710〜770MHz帯であり、ブロードバンドで使えるほどの広い帯域はない。帯域を5MHzずつ割り当てるという構想があるが5MHzではブロードバンドとはいえない。またコードを使わずに無線の充電にもこの周波数を使おうというが、ブロードバンドである必要はないし、もっと低い周波数で十分だ。また、クルマの衝突防止用のレーダーは通常60GHzや77GHzといったミリ波を使うため、逆にVHFやUHFでは周波数は低すぎる。

新聞の技術記事の内容はとにかく訳わからないことが多いため、うのみにはできない。YRP研究開発推進協会の「ブロードバンドワイヤレスフォーラム」設立趣意書を読むと、新しい無線通信技術を利用したシステムやサービスを実現するとしか書かれていない。残念ながら何を行うのか、いま一つピンとこなかった。これからどう使うのかを検討しようということなのかもしれない。

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