Semiconductor Portal

HOME » セミコンポータルによる分析 » 産業分析

AppliedとTELの統合計画ご破算を分析

Applied Materialsと東京エレクトロンの統合がご破算になった。セミコンポータルの提携メディア、Semiconductor Engineeringはその状況を分析した。Mark Lapedus記者がレポートする(参考資料1)。

複雑な規制問題が多かったため司法省(DoJ:Department of Justice)の忠告から数日経って、Applied Materialsの東京エレクトロンへの買収提案が崩壊した。米司法省が両社に踏み込み、この提携を妨げたようである。

この提携が終わってしまった今、AppliedとTELはそれぞれの組織作りを再構築することになった。製造装置市場での厳しい競合同士として元の状態に戻ることになる。しかし、両社は昨年市場を席巻していた勢いをある程度失ってしまった、と見るアナリストは複数いる。

一方、2013年の9月にレポートしたように(参考資料2)、Appliedは93億ドルの株式交換方式でTELを買収することを発表していた。この提携が発表された時、Appliedは新会社の株の68%を保有しており、TELは32%持っていた。両社が合併した新会社はEterisという社名まで持っていた。

しかし、この大型提携は、複雑な規制問題を投じる当局との間で延期に次ぐ延期がなされていた。

今、この提携は崩れた。規制当局は、AppliedとTELの統合は製造装置ビジネスにおいて独占を許してしまうことになる、と恐れた。業界筋によると、装置ユーザーの中では、特にIntelはこの統合を明らかに喜んでいなかった。チップメーカーにとっては、すでにいくつか統合されている市場で装置を選択する範囲が狭まってしまうからだ。

「AppliedとTELとの統合は、エッチングやデポジション、検査装置、リソグラフィ、トラックなど製造装置業界のいろいろな装置全体に渡って、強さでは1600ポンド(約726kg)ものゴリラのようなもの」。W.R. Hambrecht + Co./Summit Research社のアナリストSrini Sundararajan氏は調査ノートの中でこのように表現する。さらに「そのような統合のパワーは、顧客に対して命令するように支配的になり、巨大になったはずだ。少なくともDoJはそう感じたのだろう。

実際、AppliedとTELが提携を止めるという決定は、全ての規制を受け入れられるように調和・修正された提案が、合併によって失われる産業競争力を相殺できるほど十分ではない、とDoJが両社に対して忠告した後にとられた。この立ち位置に基づいて、AppliedとTELは合併を完成させることはもはや現実的ではないことを決めた。解約金は発生しない。

Appliedの社長兼CEOのGary Dickerson氏は「私たちはこの経営統合が両社の戦略を加速する機会であるととらえ、その実現に向け鋭意努力してきました」とプレスリリースで述べている。加えて、「経営統合の道が閉ざされたことは残念ですが、当社の既存の成長戦略は盤石です。私たちはこれまでもこの成長戦略を推進し、目標に向かって大きな進歩を遂げてきました。半導体・ディスプレイ製造装置業界で実績を上げ、シェアを伸ばすとともに、最も大きな成長機会の見込める分野にも進出して存在感を高めています」。

2015年中にこの提携が完了すると見ていたアナリストたちはこの結果に驚いている。日本の調査会社シェアードリサーチのアナリストDavid Motozo Rubenstein氏によると、「提携解消は非常にショックだった。2013年9月以来、TELは毎月統合のメリットを我々に伝えていた。今11時間経ち、TELの株は倍になり、TELとAppliedの統合は終わった」と述べている。

Rubenstein氏の見方から、この不運な提携はApplied、TELとも挫折したといえる。「(両社)は、合併に関してずいぶんと労力を費やしいろいろな機会を失った。提携作業のコストと弁護士費用は無駄に終わった」と言う。

この先はどうなる?

では、なぜこの提携が失敗したのだろうか。AppliedとTELの提携が2013年に最初に発表された時、この合弁企業は世界最大の製造装置メーカーになると想定された。このため、スクリーンや日立、KLA-Tencor、Lam、Nanometrics、Ultratechなどに深刻な脅威を与えていた。

確かに、AppliedとTELは幅広い製品ラインを持ち、相補いながらも重複するものもある。AppliedはCMPとイオン注入、PVD、RTPでは世界最大のサプライヤである。さらにALDや電界メッキ、エピタキシャル、検査/計測などの市場でも装置を販売している。

部分的だがTELはウェーハプローブとウェーハトラックでは世界最大の装置メーカーである。また、断片的だが、ウェーハ洗浄市場でも強い。Applied、TEL共にCVDとエッチング装置を持っている。

合併発表の時、AppliedとTELは良い理由として両社の大きなリソースを結び付けられると期待した。3D NANDや450mm、finFET、スタックトダイなど、これから重要になる市場に向けて、1社で全ての製品を開発するためにはあまりに多くの資金が必要になるだけだった。

しかし、時が経つにつれ、両社のリソースを結びつけるこの理由が消え始めた。チップメーカーは450mmを棚上げにし、先端の2.5D/3Dスタックトダイは未だに緒に着いたままの状態だ。3D NANDとfinFETは実現しつつあるが、本格的に立ち上がるのにはまだ時間がかかる。

他の問題もあった。AppliedとTELとの統合は、問題が多いと思われていた。両社は拠点の場所が違い、企業文化も違う。

しかし、大きな問題はもっと明らかになっていった。AppliedとTELは、このような複雑な提携で見られるような規制の問題を過小評価していたようだった。元々、両社は2014年の後半までに提携完了を見積もっていた。しかし、提携はのびのびになっていた。2015年3月までにAppliedとTELの提携はドイツとイスラエル、韓国、シンガポールの規制当局からは認可を受けていた。しかし、中国と日本、米国はこの提携を許可しなかった。

最近になり、合併の最終期限は3月24日から2015年6月30日に延期された。しかし、このあとAppliedとTELはあきらめることを決断し、それぞれの道を歩むことになった。

Appliedにとって次はどうするのか。これまでAppliedはもっと小さな企業を買収候補にしてきた。「全般的な話だが、運用コストを削減する動きがあるだろう。この種の効率改善は、われわれの意見では労働力の削減(レイオフ)につながることになりそうだ。Varian Semiconductorとの合併という経緯を経てAppliedに来たシニアの経営陣は、プロセス診断と制御(PDC)部門に回され、KLA-Tencorと効率よく競争してきたと思う」とW.R. Hambrecht + Co./Summit ResearchのSundararajan氏は述べる。

今週、TELは決算報告を行い、さまざまな見方をした。確かに、AppliedとTELは市場でもう一度競合するようになろう。しかし、ビジネスはやや低下気味のように見える。それほど前の話ではないが、Intelは2015年の設備投資予算を、前回の中期見通しの101億ドルから87億ドル±5億ドルに削減した。TSMCは最近、2015年の設備投資額の見通しを10億ドル削減し、105〜110億ドルに設定した。


その結果、Pacific Crest 証券は、2015年世界の半導体設備投資(CapEx)見通しを減らした。新しい見通しでは、2015年は625億ドルとなり、前年比で4%増に落ち着きそうだ。前回の見通しでは5%増だった。

参考資料
1. Analytics: Applied-TEL Scraps Merger Plans (2015/04/27)
2. Appliedと東京エレクトロンが経営統合へ、なぜライバル同士が急接近したか (2013/09/25)

Mark Lapedus、Semiconductor Engineering
(2015/04/30)
ご意見・ご感想