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ルネサス、独自イベントDevConを開催、実力を示す

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ルネサスエレクトロニクスが国内半導体メーカーとしては初めての開発者会議「Renesas DevCon JAPAN 2014」を東京のザ・プリンスパークタワー東京で9月2日開催した。これまで、海外企業ではIntelやFreescale Semiconductor、Texas Instruments、Apple、ARMなどが積極的にプライベートセミナーを開催してきたが、日本の半導体メーカーが主催したことはグローバル企業と足並みを揃えたといえる。

図1 ルネサス会長兼CEOの作田久男氏

図1 ルネサス会長兼CEOの作田久男氏


なぜルネサスがプライベートイベントDevConを開催したのか。その理由を会長兼CEOの作田久男氏(図1)は次のように基調講演で述べた。「会長に就任して1年3ヵ月。この間、ルネサスを変革してきたが、本日は変革しているルネサスを体感してほしい」。ルネサスは、これまでの顧客に言われるままに製品を作って売るだけの古いビジネスモデルから、顧客に提案するソリューションビジネスへと変わってきている。その変貌ぶりを見せつけたといえよう。

先週ルネサスが発表したR-CarシリーズのSoCチップでは、開発から参加するパートナーが131社に増えたという(図2)。ルネサスエレクトロニクスが誕生した頃は、ルネサステクノロジ側のSHアーキテクチャと、NECエレクトロニクス側のV-850アーキテクチャのエコシステムのパートナー企業がいた。いずれもそのアーキテクチャが継続して使われるのかどうか、ソフト開発やボード開発のパートナーたちは疑心暗鬼に陥り、合併前の予想通り、合併後パートナーは減っていった。これまでの企業の単なる合併では、どちらかがどちらかを追い出したり、その逆に遠慮し合ったりして、シナジー効果を生み出すことが難しかった。この合併でも、せっかくそれぞれが構築してきたエコシステムが崩れる恐れがあった。どちらかのアーキテクチャが消えてしまう心配があったからだ。


図2 R-Carのエコシステムには131社が参加

図2 R-Carのエコシステムには131社が参加


最近のルネサスの変貌ぶりは、同社執行役員常務で車載グループを率いる大村隆司氏の言葉からもわかる。同氏は次のように言う。「ルネサスはARMアーキテクチャも使っており、どのアーキテクチャを使うのかはユーザーが決めることです。我々は、どのアーキテクチャでも対応できるメニューを提供します」。ルネサスは今や開き直って、どれでも使えるCPUアーキテクチャを持つ半導体メーカーとなった。こうなるとパートナーにとって、どれも用意しているので、安心してソフト開発ができるというもの。クルマ用の情報系SoCはR-Carシリーズで、制御用のマイコンはRH850と、基本的なプラットフォームで今後のそれぞれの機能を実現していく。

基調講演の中で、大村氏(図3)はクルマ用の半導体は、直接の顧客のさらに上の動向を知ることが重要だとして、消費者のニーズを4つ挙げた。1)エコカー/燃費向上、2)メンテナンス性、3)安全性向上、4)クルマのIT化、である。1)の内燃エンジンの低燃費化技術には、高性能マイコンと高精度・低損失のアナログ技術がある。次世代のHEVやEVではモータ駆動ECUの小型軽量化によりモータ効率を向上させ、マイコンやIGBT、それらを分離するアイソレータなどが必要になる。


図3 同社執行役員常務兼第一ソリューション事業本部長の大村隆司氏

図3 同社執行役員常務兼第一ソリューション事業本部長の大村隆司氏


2)のメンテナンス性の向上では、ネットワーク経由で制御プログラムを修正できるフラッシュマイコンが求められる。大容量のフラッシュROMとセキュリティ回路を搭載したRH850のバージョンアップを継続していく。

3)の安全性向上には、安全制御技術とセンシング認識技術が不可欠。交通事故をなくすための安全制御にもRH850は使える。クワッドコアや大容量フラッシュメモリを集積した最新版のRH850は、ISO26262 ASIL-Dに適合し、加えてハードウエアでのセキュリティEvitaにも対応する。もちろん、CANやLIN、FlexRay、Ethernetなどの通信インタフェースも搭載したうえで、消費電力は0.9Wと低く、放熱フィンは要らない。Tjmax150℃保証も行う。まさにクルマの制御機能万全なチップといえよう。

3)の安全性向上には運転支援を担う高速のデータ処理能力を持つR-Carもある。これは4)のクルマのIT化にも使える。先週発表したR-Car V2H製品は、1チップでクルマの周囲360度をモニターする。しかも走行中でもリアルタイムで人やバイクなどの動く物体も検出する。従来のサラウンドビューなら真上の視点からしか画像を合成しないが、R-Carはその視点を高さ方向に90度から30度まで変えることができ、水平方向の周囲は360度見渡せる。4台のカメラからの映像を合成する訳だが、その合成処理にこのチップを使う。加えて、動く物体の認識、グラフィック描画なども同時に処理する(詳細は参考資料1)。

クルマのIT化は将来の車車間通信、クルマと周囲との通信なども使うようになる。無線の電波周波数帯として国内、欧米でも使えるようにそれぞれ760MHz、5.9GHz帯をカバーしている。コックピットのディスプレイ表示コンピュータにももちろん使う。これからのクルマには液晶ディスプレイが網羅される。ナビの情報表示だけではなく、ドアミラー用(参考資料2)、さらには速度メータやガソリンメータなども液晶になる。まさに総合コックピットといえよう。ここにはドライバの個人認証も加わり、盗難防止につなげる。

ルネサスの売り上げの60%を占めるというクルマ以外の産業・民生の用途の未来には、IoT(Internet of Things)がやってくる。同社のクルマ以外の第二ソリューション事業本部長で執行役員常務の横田善和氏(図4)は、「モノにインテリジェンスを与え自律させ、モノ同士をつなぐことで新しい価値を生み出します。それを支援します」と語る。さまざまなセンサを使い、デジタル処理してクラウドへ送信するIoTとそのシステムの問題は、1)データ量増大によるトラフィックの渋滞、2)盗聴や乗っ取り防止などセキュリティの確保、3)IoT機器増大による省エネルギー、を挙げた。


図4 同社執行役員常務兼第二ソリューション事業本部長の横田善和氏

図4 同社執行役員常務兼第二ソリューション事業本部長の横田善和氏


IoTが応用される分野として、都市、家庭・オフィス、工場を採り上げ、それぞれの問題と解決策を述べた。まず都市では、全体の省エネ化と防犯システム、社会インフラの構造物モニタリングシステムへのハッキングが問題としてあり、防犯システムのネットワークカメラにおけるデータトラフィック量の増加に対してはわずか-1dBの画質劣化で済むような高圧縮のH.265技術を持っている。ハッキングに対しては30年、出荷40億個の実績があり、コンピュータセキュリティの国際規格であるCC(Common Criteria)認証を取得した半導体メーカーだと誇る。ルネサスはカギを破られないようにするため、ハッカーからの異常電圧を検出すると情報を消したり、ハード的に出力電流をかく乱させたりしているという。ハッカーとはイタチごっこが続くため、一つの技術を開発してもそれだけに頼らず、次々とセキュアな新技術を開発中だとしている。

家庭やホームでは、省エネが最優先。特に電力消費が多いモータのインバータ化を推進する。現在インバータ化されていない世界中のモータの内、10%をインバータ化しても火力発電所430基分に相当する省エネができるという。エレクトロニクスのスキルをあまり持っていない顧客のために開発ツールを提供する。また、無線通信機器では、受信感度やジャミング特性、省エネに関して、状況に応じて自動的に調整する、アダプタブルRF技術を開発しているという。

家庭用途で注目されるIoTとして、ウェアラブルなライフログ用のウォッチを見せた(図4)。Bluetooth Smart規格に基づき電波をスマートフォンに飛ばし、そこからクラウドに上げ、タブレットやスマホで心拍数や体温などの生体データを見るというデバイスだ。同社の持つSmartAnalogデバイスを使い、ソフトウエアでアナログの設定値を変えられるという特長を持つ。このウォッチは、ルネサスと共に開発するエコシステムを利用したため、わずか3ヵ月で試作できたと横田氏は述べた。

工場向けには、機能安全規格IEC61508-SIL3をサポートしており、安全なマイコンR-INを開発した。生産性を上げるために制御の速度を上げたという特長がある。ガラスの筒の中に入れたピンポン玉の位置を制御するというデモを見せた。サンプリング周波数を上げ、精度を高めても消費電流が低いというデモである。消費電流を下げるために、独自のRTOSを開発し、プロトコルをハードウエア化した。イーサネットのヘッダーの並び替えやメモリコピー、チェックサムなどをハードウエアにして短縮した。このイベントでルネサスはR-IIコンソシアムを発足させた。現在は20社が参加しており、パートナーをもっと多く増やそうとしている

参考資料
1. 走行中も周囲の歩行者を映し出す、ルネサスのサラウンドビューLSI (2014/08/29)
2. 「クルマのドアミラーはもう要らない」 (2014/05/22)

(2014/09/03)

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