SEMICON Taiwanの国際化が急速に進んだ理由
半導体の国際団体SEMIが主催する「SEMICON Taiwan 2026」が9月上旬、台湾・台北市で開かれた。SEMICON Taiwanは例年、台湾積体電路製造(TSMC)などの台湾メーカーに製造装置・材料を売り込む商談で活況を呈するが、近年は海外からの出展が目立って増えている。背景には、台湾企業の半導体サプライチェーン(供給網)が急速に国際化していることがある。
「高い製造技術と関連企業の厚い集積を持つ台湾の存在は今後も欠かせない」。アジット・マノチャSEMIプレジデント兼最高経営責任者(CEO)は9月2日の開会式の挨拶で、半導体需要を牽引するAI分野で台湾が果たす役割に期待を寄せた。具体的には、先端パッケージやシリコンフォトニクス(光電融合)の技術を挙げた。
これらはAI半導体の高速化・省電力化を支える技術であり、会場では確かに関連技術の展示を確認できた。ただ、SEMICON Taiwanを3年ぶりに視察した筆者がより強く感じたのは、海外からの出展が欧米を中心に目に見えて増えたことだ。会場では、SEMIが台湾の半導体供給網と海外企業を結び付ける公式プロジェクトとして24年末に始めた「Taiwan Go Global」のロゴも見られた(図1)。
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図1 SEMIの公式プロジェクト「Taiwan Go Global」のロゴ 出典:筆者撮影
数字の裏付けもある。SEMICON Taiwan 2026は1,300を超える企業・団体が4,300ブースに出展する過去最大の規模だった。もちろん、米Applied Materialsや東京エレクトロンなど有力な海外メーカーは個別に出展していたが、これ以外に18ヵ国・地域の政府系団体による「グローバル・パビリオン」が220ブースを占めた。グローバル・パビリオンの出展国・地域数は18と過去最多であり、ブース数は3年前の約3.5倍に増えた。
海外からの出展が増えた大きな理由は、かつて生産能力の9割以上を台湾域内に置いていたTSMCが近年、日米欧で相次ぎ大型工場を建設していることだ。24年末に第一工場が稼働した米アリゾナ州フェニックスでの投資は7月、総額2,650億ドル(約41兆円)まで拡大することが決まった。日本の熊本県菊陽町では第二工場が25年10月に着工され、独ザクセン州ドレスデンでも工場の建設が進んでいる。
これら現地工場の供給網の一角に加わるため、資材調達の最終権限を持つTSMCの本社や台湾の関連サプライヤに働きかける狙いがあるようだ。例えば、米国のグローバル・パビリオンには13の団体・企業が出展し、最も目立つブースにはアリゾナ州商務局が陣取っていた(図2)。
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図2 アリゾナ州商務局は米国パビリオンの最も目立つブースを占めた 出典:筆者撮影
欧州勢は、英独仏などが9つのグローバル・パビリオンを設けた。このうち、ドイツのパビリオンにはザクセン州経済振興公社など31企業・団体が出展した(図3)。ザクセン州の担当閣僚は台湾メディアの取材に対し、TSMCの工場は27年に予定通り稼働する見通しであり、すでに20社以上の台湾サプライヤがドレスデンに進出したことを明らかにした。
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図3 31団体・企業が出展したドイツのパビリオン 出典:筆者撮影
日本のパビリオンには8府県が地元の団体・企業を率いて参加し、51ブースとグローバル・パビリオンとしては最大規模だった(図4)。TSMCの工場を擁する熊本県が最も目立つブースを占めるなど、「シリコンアイランド」の再興を目指す九州から合計5県が出展した。そのほかに、京都府、茨城県、宮城県が参加し、台湾の企業や研究機関との協力機会を探っていた。
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図4 日本パビリオンには熊本県など8府県が出展した 出典:筆者撮影
一方で、グローバル・パビリオンはなかったものの、独特の存在感を示した国の企業群があった。中国勢だ。シリコンウェーハ大手の中環領先半導体科技(図5)のほか、テスターやハンドラーを手がける杭州長川科技が個別に出展していた。中国からの出展企業・団体に関するSEMIの正式な統計は確認できないが、筆者は前回視察した2023年より出展数は増えたと感じた。
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図5 中国のシリコンウェーハ大手・中環領先のブース 出典:筆者撮影
搬送ロボットを手がける深圳優艾智合機器人科技(YOUIBOT、図6)、深圳の斯坦徳機器人智能(Standard Robots)など、中国の新興ロボットメーカーの出展が増えたのも3年前との違いだ。中台の政治的な緊張関係が続くなかでも、中国のロボットブームがSEMICON Taiwanにまであふれ出した構図といえよう。
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図6 中国の搬送ロボットメーカー・YOUIBOTのブース 出典:筆者撮影
「AIによって、あらゆることが加速している。我々も発想を変える必要がある。今後は『台湾でつくる(Made in Taiwan)』のではなく、『台湾とともにつくる(Made with Taiwan)』ことを考えねばならない」。鴻海(ホンハイ)精密工業の劉揚偉董事長は2日、こう語った。TSMC、聯発科技(メディアテック)、日月光投資控股(ASE)、欣興電子(ユニマイクロン)という台湾を代表する半導体・電機大手の経営者とともに登壇したパネル討論での発言だ(図7)。
図7 台湾の半導体・電機大手の経営者がそろい踏みしたパネル討論 出典:筆者撮影
鴻海は長年、生産能力の大半を中国に置いてきたが、世界シェア4割を占めるAIサーバは台湾のほか、メキシコや米国で増産を進めている。これは主要顧客である米ハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)が情報セキュリティの観点から、中国以外での生産を求めているためだとされる。劉氏の発言は、AIサーバに関わる半導体供給網も大きな変化を迫られることを示唆したのだろう。
台湾の半導体供給網の頂点に立つTSMCと鴻海が工場の立地戦略を大きく変えている以上、海外のサプライヤも対応せざるをえない。SEMICON Taiwanも台湾メーカーに装置や材料を売り込む場から、台湾企業と世界で協業する機会を探る場へと役割が広がっている。海外からの出展の増加は、その変化を映しているのだろう。
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