LED照明が家庭に入る時代がやって来る
今年も盛夏に突入し毎日の酷暑が続いている。地球温暖化が肌で感ぜられる毎日である。筆者は半導体が地球温暖化を減速することに貢献できると思っている。出来ることの一つをズバリ言えば白熱電球を止めてLED照明にするのだ。このブログで前に青色ダイオードについて書いたが、発光ダイオードが三原色揃い踏みを完成したので当然ながらLED照明が可能になった。
多くの企業が、LED照明のような新たな製品でも正当に競争し、各家庭が省エネへの相応の努力をすることで地球環境の劣化がスローダウンするはずだ。企業はこの製品の生産性向上、性能、値段、デザイン、ブランド、品質で勝負する。家庭では最初はやや高価なLED照明を購入して使ってみることが普及に役立つ。
今日の情勢に於いて地球温暖化ガス即ち炭酸ガスを放出しない努力を進める潮流が出来つつある。経済発展を妨げるとして消極的な大国、米国や中国が存在するが民間レベルでは経済活動を進める上で炭酸ガス削減潮流が特に日本で強まったと言えよう。
潮の流れを加速するために経産省が動いた。日本経済新聞は今年4月6日版で、「白熱電球は12年廃止 甘利経産相が表明」と報じた。記事を要約すると、電力消費が多い白熱電球を2012年までに国内での製造・販売を中止し、電球形蛍光灯への全面切り替えを完了させる方針を正式に発表した。
ただし、これは問題が多く、このようなことを経産相が記者発表すべきでもない、と筆者は考える。本来時代遅れの白熱電球を消費者自身が捨てる選択をするはずである。政府がその動きに余計な口出ししてはいけない。知的レベルの高い日本の消費者が地球温暖化や照明効率、コスト、寿命、嗜好などを判断して決めた結果、白熱電球が消えるのが好ましいし、そうなるだろう。1960年代日本で開発を進めたトランジスタテレビが米国で真空管テレビを駆逐した。そのような市場の判断が正解で、白熱電球とサヨナラするのに経産省の口出しは目障りになるだけである。
さらに恥の上塗りは白熱電球をやめて電球形蛍光灯への全面切り替えを明言したことだ。LED照明は製造に伴う炭酸ガス発生が白熱電球や電球形蛍光灯よりも少ないのを知っているはずなのに、である。
電球形蛍光灯が問題なのは、水銀を含有し、リサイクル時に発生し易いガラス破片が危険だからである。リサイクル時に水銀成分が漏れて土中に浸み込んでしまうリスクは小さくない。クール&クリーンアースのこの時代に役所のトップがリスクを持つ特定商品を奨励するとは信じがたい。産業構造審議会環境部会の第5回廃棄物・リサイクル小委員会(平成14年10月29日)は、配布した参考資料「26.有害物質を含む製品(蛍光ランプ)のリサイクル事例」で細かく注意しているほどだ。
(http://www.meti.go.jp/kohosys/committee/summary/0001118/0001.html)
白熱電球がこの世から消え、環境問題を引きずる電球形蛍光灯と競争するLED照明は、コストダウンを実施することによって家庭内照明の主流に登場すると筆者は考える。その時期はやはり白熱電球が買えなくなって数年後、ここでは2016年と予言しよう。
今、LED照明のコストは最も高い。60W換算で白熱電球がおよそ100円、電球形蛍光灯がほぼ1000円に比べてLED照明は1〜3万円と高い。ただ、特徴は寿命が最も長いことだ。白熱電球に比べ電球形蛍光灯は寿命が約12倍、LED照明の寿命は約20倍だ、とは東芝ライテックの恒川社長(日経朝刊本年6月16日)の弁だ。即ち、約2倍の長寿でLEDは電球形蛍光灯の倍値でも価値は等価だし、むしろ少ない交換手間を考えればさらに有利になる。
敢えて述べれば新しい半導体製品がその普及段階で値上がりしたということは歴史上全く存在しない。ここで議論の対象とする半導体製品とはコモディティ化する以前の開発段階を指す。例をDRAMに取ると1970年代インテル社の1Kビットが約10ドルだった期間が長く存在した。今、インテル社はDRAMから去ってしまったがエルピーダの1GビットDRAMは5ドルもしない。ギガとキロでは100万倍の差があるのに、である。
もちろん、LED照明が1/100になる必要はない。たかだか、今3万円の1/25の1200円程度になれば十分競争できる。そして半導体製品は需要さえあれば開発が進行し、急速な値下がりを果たしてきた。だからLED照明が蛍光灯より20倍程高いことはあまり問題にならないと言えよう。コストが下がれば需要が増えてくることは目に見えている。後は需要増に従う生産量上昇、歩留改善、生産性向上、学習効果、値下がりの繰り返し….これまで歩んできたお決まりの楽勝パターンだ。
だから、LED照明は必ず家庭において普及する時代がやって来る。筆者は楽観している。