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ITの普及が通販ビジネスを加速、半導体市場を拡大

1995年にWindows 95 OSがリリースされて以来、それを搭載した PC が広く普及し、IT ではクラウドなどが出現し、小売ビジネスにまで波及し、その様相が一変して来ている。日常生活に必要な衣服や食品はもちろんだが、工具などを扱う業者も出て来た。さらに最近は大量の印刷を通販で請け負う業者さえ出て来た。印刷の場合は原稿をPDFなどのフアイルをネットで送付する。

デイリー読売、昨年11月27日の記事は、11月23日金曜日(ブラックフライデー)のオンライン小売の売上が全米で10億ドルを越えたと伝えた。歴史上はじめてのことだ。理由は明白で、年末のクリスマスシーズン早期に於けるネットユーザーが増加した効果による。10億ドルを邦貨に換算すると1ドル=86円として860億円になる。全米のオンライン小売を調査したcomScore社によると、前年同期データが8億1600万ドルだったので増加率は22.5%と大きい。

消費大国である米国のクリスマスセールに人々がつぎ込むエネルギーは膨大だ。ネット通販が一般化する2000年以前には、シリコンバレーの年末特別セール期間では朝の5時に店が開くことも多々あった。お客はそれでも行列し、開店するとお目当ての商品売り場に殺到する。今はネットとスマホの時代になったのでそのような苦労は多数の人にとって過去の話だ。彼等は前もって計画をたて、スマホやタブレットを使って通販でショッピングをすることができる。10億ドルという売り上げはそのような人々が増加していることによるのだろう。

インターネットの普及前は、小売業界で通販は店を持たない零細企業が行っていて傍流であったが、今や百貨店などの大企業も参入するようになった。このトレンドの本質は、半導体技術の上にインターネットが発展し、ITサービスが躍進したことだ。スマホやタブレットPCが普及しネット通販が日常茶飯事になった。半導体の応用技術において次は何が出て来るのだろうか?応用が広がることによって半導体ビジネスが飛躍する市場の構造は、今も30年前も変わらない。

米国における通販業者の大手はアマゾンドットコム社であり、日本にも進出している。我国の大手でネットに特化した通販会社は楽天だ。楽天はスマホが出現するかなり以前に我国で通販とネットを結びつけた三木谷浩史(敬称略)が創業した。三木谷は米国のハーバード大出身でMBA保持者だ。楽天は1997年に創業しその5月に楽天市場を開設している。一方、楽天のライバルのアマゾンドットコムが米国で創業したのがその3年前の1994年であった。書籍販売を始めたのは1995年、最初から両社は競り合っていた。記録ではアマゾンの日本における登記は1998年である。三木谷は楽天を大企業として育て将来は世界市場で戦い堂々とアマゾンに勝負を挑む姿勢だ。社内は英語を公用としているのでMBA保持者である外国人を何人も雇用し活躍させることができるようになっている。楽天なら今はやりのグローバル人材が働きやすい。

初期のアマゾンは我国の洋書読者を魅了した。洋書購入の煩わしさを自社で在庫を持つアマゾンが一掃したからだ。それまで、洋書を買うために客は書店に出向き、海外の出版社から洋書を取り寄せてもらう以外に方法はほとんどなかった。本は船便で送られることが多く、入手するまで1カ月以上もかかった。しかも1ドルが360円だったこともあり一冊30ドルのハードカバーが本体のみで1万円を越え手数料などを加えると2割くらいも跳ね上がった。

アマゾン上陸後はインターネットの時代でもあり書名は検索で探せるようになった。同時に著者名や出版社名もわかる。ネット経由でアマゾンに申込むと一週間もしないうちに自宅に配達される。送料もゼロか数百円で収まる。アマゾンは登場直後から洋書を読みたい人々が購入する際の救世主になった。

楽天もアマゾンも通販ビジネスを大きく伸ばし、スマホやタブレットがその原動力となった。最初は書籍から入ったアマゾンだが、次第に雑貨や食品なども扱うようになった。それらをアマゾンは2010年11月から、原則として通常配送料を無料にした。確かに買い手から見るとリアルの店に行けば配送料は発生せずにショッピングできる訳だから、節約のために通販を避ける傾向は避けられない。アマゾンはこの障壁をクリアしたことになる。配送料の無料化はドラスティックなサービスだ。その余裕がない中小の通販業者はこの処置に反発している、といわれているが当然だ。アマゾンは日本進出後には、早い段階で日通と物流業務で提携した。海外から持ち込む大量の貨物を扱わせているのだろうが、大量の取り扱い業務で有利な契約をすることで物流コストを下げているはずだ。さらに、物流センターにロボットを導入するなど相当な努力をしているようだ。

楽天も攻勢をかけ始めた。1月4日の日本経済新聞は朝刊で、同社がインターネット通販の即日配達を始める、と報じた。今年6月をメドに関東地方から始める。対象は直販の書籍や日用品などだ。千葉県に物流センターを新設するなど必要な総投資額は100億円を越す。猛追するアマゾンを引き離す戦術だ。楽天は国内ネット通販の1位で2012年の取扱高は1兆2000億円、一方アマゾンは同7000億円と日本での規模では楽天が勝っている。楽天の取扱高は前年を1割以上も越えている。

これに対して、大手百貨店や家電量販店がリアルの商戦では前年の実績に届いていない。このため、百貨店もネット部門を整備しており、そのネット部門は好調のようだ。確かに高島屋などはネットで総売り上げの1割を越えているようだ。リアルでは商品を店舗に並べる必要がありフロアスペースが要るが、ネットなら倉庫に山積みしてもホームページでのプレゼンが良く安ければモノは売れる。このため百貨店ではネットの品揃えは店舗よりも2割も多い。世の中には混み合う雑踏が嫌いな人が、筆者もそうだが、意外に多いようだ。そのような人々がネット経由で百貨店の売上に寄与している。最近はホテルのネット予約がお得だ。特に海外のホテルは電話で予約するのが億劫な人でさえ、ネットなら敷居が低くなる。

最早、通販ビジネスはインターネット以前のように小売りにおいて傍流ではなくなって来ている。年間の取扱高が楽天とアマゾンの2社のみで2兆円に迫っている。

通信販売の通信手段は以前、主に固定電話だったが、その後ファックスが加わった。さらにPCも使われ今やタブレットとスマホの時代になった。当ポータルにおいても最近記事が出たが、
スマホの通信を司る半導体の開発ではクアルコムなど海外企業が活躍している。筆者としては日本の企業がスマホ向けの基幹となる半導体パーツを牛耳って欲しいと期待している。

エイデム 代表取締役 大和田 敦之
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