3月の半導体販売高/市場実態PickUp/グローバル雑学王−43
米SIA発表の月次世界半導体販売高、やっと3月が前月比3.3%増とプラスに転じている。グローバル経済危機の影響で、前年同月比では6ヶ月連続のマイナスであり、まだまだ先行き如何を見つめていかなければならないと思う。
豚インフルエンザの拡がりも、改めて現在のグローバルな交流・行き来を感じるとともに、市場への影響の追加要因と受け止めている。
≪3月の半導体販売高≫
"前年比、前月比ともに減少"とこのところ続いたSIA発表の見出しに、やっと片目が開いて、次の通りである。
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○3月の半導体販売高、2月から僅かながら立ち直り…5月1日付けSIAプレスリリース
3月の世界半導体販売高が$14.7 billionで、前月、2月の$14.2 billionから3.3%ほどもち直した、とSemiconductor Industry Association(SIA)が本日発表した。2009年第一四半期の販売高は$44.0 billionであり、2008年第一四半期の$62.8 billionからは29.9%の減少となる。前四半期、2008年第四四半期の$52.2 billionからは15.7%の減少である。
日本を除くすべての地域で、販売高は前月比で上昇している。日本での販売高は比較的急激に低くなっており、同国の経済アウトプットの低下を映し出している。すべての地域で第一四半期販売高は、2008年の同じ期間に比べて低下している。
「3月の世界販売高の控え目な前月比もち直しは、昨年より実質的には低い水準とはいえ、需要がいくぶん安定になってきていることを示している。」
とSIA President、George Scalise氏は言う。「主要な製品分野のすべてが前月比で伸びている一方で、末端市場でのvisibilityは引き続き限られている。'smart phones'や'netbook'PCsのようないくつかのbright spotsがあるが、automotive, corporate information technologyおよびconsumer electronicsなど他の主要末端市場において需要が早々確認できるような明らかな兆しは見られない。」
「グローバル半導体業界は、世界の経済不況の影響を引き続き反映している。」とScalise氏は続ける。「米国ほか諸国合わせた経済刺激対策が、2010年に入ると販売高にインパクトを与え始めると見込まれる。」とScalise氏は締め括った。
※3月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
⇒http://www.sia-online.org/galleries/gsrfiles/GSR_0903.pdf
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地域別のデータは次のようになっている。
市場地域 前年同月比 前月比 【3ヶ月平均ベース】
Americas -22.2 5.1
Europe -34.9 3.1
Japan -40.2 -9.4
Asia Pacific -26.5 7.8
計 -29.9 % 3.3 %
日本だけが、前月比もマイナスを抜けきれない結果となっている。市場を見る視野、視点をますます高めて、各国の景気回復策、各社の事業再構築の進捗、実効のほどに目配りを要する現状と感じている。
最大の市場分野、PCについて、現時点の見方として以下に注目している。
'netbook'も、ノートPCの追い上げを受けている状況のようであり、商品コンセプトの凌ぎ合いということと思う。
◇Analyst: PC builds, chip inventories improving-Intel's 2Q revenue target looks conservative, says FBR's Berger(4月30日付け EE Times)
→FBR Capital Marketsのアナリスト、Craig Berger氏。第二四半期のPC製造見通しは良くなっており(現在は前四半期比7%増の見込み)、アジアの半導体distributorsがたくさんの製品市場にわたって半導体需要が予想より高まっているとしている旨。
◇Netbook growth seen slowing when economy recovers(4月30日付け EE Times)
→netbook出荷数量が昨年は2000%以上の伸び、2009年はさらに68.5%伸びる見込み、しかしこの爆発的な伸びは2010年から経済が回復していって鈍化する様相の旨。
≪市場実態PickUp≫
劇的というか、いろいろなドラマ的展開を含んだ業界再構築が進んでいる。
【業界再編】
◇NECエレ社長「赤字スタートせず」、ルネサスとの統合発表。(4月27日付け NIKKEI NET)
→半導体国内2位のルネサステクノロジと同3位のNECエレクトロニクスが27日、来年4月の経営統合で合意したと正式発表した旨。余剰生産ラインの削減などリストラを前倒し、新会社は統合初年度の2010年度から黒字にする方針を明らかにした旨。公的資金の活用も視野に入れて財務体質を強化、世界的な再編が進む半導体業界で生き残りを目指す旨。
◇Trio plan chip packaging joint venture(4月28日付け EE Times)
→東芝が、実装グループ2社、Amkor TechnologyおよびNakaya Microdevicesとコスト削減を目指して日本で合弁を作り出す計画の旨。
◇LSI生産、富士通が先端品を台湾社に委託 開発でも協力へ。(4月30日付け NIKKEI NET)
→富士通は、システムLSIの生産をTSMCに委託、次世代技術の開発でもTSMCと協力する方針の旨。半導体の性能向上に伴い重くなる一方の投資負担を軽減する狙い、半導体業界ではルネサステクノロジとNECエレクトロニクスが経営統合で合意するなど再編が加速、富士通は収益改善を急ぎ、再編で主導的な地位を確保したい考えの旨。
富士通の半導体子会社、富士通マイクロエレクトロニクスが年内にもTSMCに生産委託、40-nmと現時点で最先端のLSIを対象とする旨。
※国内大手それぞれの動きが揃い踏みした格好に感じている。それぞれの長きにわたる蓄積、非常に重いものだけに、急展開が続くグローバル市場でその実力を如何に発揮するか、できるかにかかると見る。
【台湾DRAM業界】
◇MOEA denies Hsuan is considering resigning from Taiwan Memory project(4月27日付け DIGITIMES)
→台湾の経済相、Chii-ming Yiin(尹啓銘)氏が、政府主導のTaiwan Memory Company(TMC)プロジェクトからリーダー役を担うJohn Hsuan氏が退くことを考えているという見方を却下、また、技術パートナーとして選んだElpida MemoryとのTMCの戦略的合意は取り消されることはないと強調の旨。
◇Government to reduce Taiwan Memory investment to only one-third(4月30日付け DIGITIMES)
→台湾の経済相、Chii-ming Yiin(尹啓銘)氏。台湾政府はTaiwan Memory Company(TMC)を創設する計画を明確にやり遂げることを重ねて確認、しかしながら出資を当初計画のNT$30B(US$890.6M)からNT$10Bに落とすことを明らかにした旨。
◇Opinion: Taiwan DRAM makers must give up(5月1日付け EE Times)
→長きにわたって台湾のDRAMメーカーは赤字できており、Inotera, Nanya, Powerchip, ProMOSおよびWinbondは第一四半期に大きな赤字を計上、筆者(Mark LaPedus氏)の意見として、台湾のDRAMメーカーは合併、統合するか、断念するとき、今こその旨。
※不協和音も聞こえてきて、困難な局面、推移を感じるところがある。DRAMほどグローバルにまとまってやっていける材料はないという理解であり、基本の"DRAM"支柱の旗のもとに結集する精神があってこそで、国益、社益が垣間見えるようでは、と率直な思いである。
【豚インフルエンザ】
◇Lab models swine flu's spread; diagnostic chips being readied(5月1日付け EE Times)
→Virginia TechのBioinformatics Institute(Blacksburg, Va.)の一部、Network Dynamics and Simulation Science Laboratory(NDSSL)が開発した コンピュータモデルによると、豚インフルエンザが、重大な米国での流行を予防するに十分早く捉えられる旨。
別個に、CombiMatrix社は、STMicroelectronicsにて製造のflu半導体を発表、4時間内に豚インフルエンザ感染を確認できる旨。
※早速にタイミングを得たアピール内容。
【利益キープ】
◇TSMC 1Q09 profits drop sharply(4月30日付け DIGITIMES)
→TSMCの第一四半期売上げNT$39.5B(US$1.193B)、前四半期比38.8%減、前年同期比54.8%減。
◇Siliconware Precision bounces back into profit-BACK IN THE BLACK: After reporting a loss of NT$1.03 billion in the fourth quarter of last year, the firm's first quarter was boosted by China's rural subsidy scheme(4月30日付け TAIPEI TIMES)
→Siliconware Precision Industries Co(SPIL)の第一四半期はnet income of NT$262M(US$7.78M)、前四半期net loss of NT$1.03B、前年同期net income of NT$1.75B。
※現在の経済環境の中でも、利益を計上している例として上記の通り。ここ当面は本欄が充実していくことを願うもの。
≪グローバル雑学王−43≫
グローバルに関係するアイテムの何でも吸収したいという思いの本コーナー、今回からは下記の書を読み進めている。
『地球の水が危ない』 (著者 高橋 裕氏:岩波新書 827)…2003年2月発行
出だしからここでも、あっそうなのか、と認識を新たにすることしきり。グローバルな実態の一面がまた自分の中に分け入ってくる感じ方である。
【序】
[深刻な水問題]
・地球は水で病んでいる ←人間集団の節度を欠いた活動
⇒決定的になったのは第二次世界大戦以後の20世紀後半
→世界を挙げての開発ラッシュ −代表例が日本
→成果を謳歌、生活水準の向上を満喫
・当初は地域問題
[世界的に同時進行中]
・特に1970年代以降、環境問題が世界的に重大な課題
…地球の水問題として強く意識
・都市化、工業化 →世界各地に深刻な水不足を発生
水資源の極端な偏在 →国際紛争をはらみながら進行
[「21世紀の水戦争」発言]
・1995年8月、世界銀行で水問題を担当、イスマエル・セラゲルディン副総裁の発言
…"来る21世紀には水獲得問題が原因となって戦争が発生する可能性が高い"
・水の不足や汚染に特に悩んでいる国々 …概ね沙漠もしくは半沙漠の国々
→近年人口が猛烈な勢いで増加 →水需要と排水量の増大
・1980年代から環境問題は世界的に重要課題に
・ダム以外に途上国の水不足への効果的対策は簡単には見出しにくい
[河川開発と国際紛争]
・井戸掘削による地下水開発 →地下水位低下などの問題
→最後の頼みの綱は大河川 …概して複数の国々を貫流する国際河川
⇒隣国との紛争の原因に
・1967年の第三次中東戦争は、水の奪い合いがその原因
I 地球環境と水の危機
I−1 水需要の増加と将来予測
[急激な人口増加を上回る水需要]
・世界の人口の急増
1900年 16億
1950年 25億
2000年 60億超
21世紀半ば 90億との予測
・ほとんどが開発途上国において増加
→途上国が今後の水需要増加にどう対処するか
・1900年から2000年まで …100年間に世界の水の総需要は10倍以上
農業用水の比率が最多 →1900年 総量の約90%
2000年 約62%(推計)
⇒生活用水、工業用水の割合の増加
[生活水準の向上による水不足]
・水需要の激増 →人口増加だけではなく、生活水準の向上による
[人口増加著しいアジア・アフリカ]
・六大州別の人口 1995年 2030年(予測)
アジア 34.00 51.00
アフリカ 7.20 16.00
他四大州 15.30 18.64 億人
→著しいアジアとアフリカの人口増
・中国、インド、パキスタン、インドネシアなどの人口増加
→将来の莫大な水供給ができるか否か
[将来の水需要の予測]
・2025年の予測については、多くの学者がかなり異なる数値を発表
←大胆な仮説に基づかざるを得ない
[農業用水に対する新しい考え方]
・圧倒的に大きい世界の水需要に占める農業用水の割合
[環境アセスメント]
・これからは水需要予測の折に、そのための開発手段を複数用意、それぞれの開発について環境アセスメントを行うこと
I−2 深刻な水不足と水汚染
[病原菌と化学肥料による水汚染]
・全世界約60億の人口の約2割(12億人)は安全な水を飲めず、約半数(30億人)は屋内にトイレを持たない
→先進国は水道と下水道の整備によって対応
→途上国の多くは、急な人口増加で上下水道を整備する余裕がない
・アメリカが開発した化学肥料と農薬に依存した一品目大量生産の機械化農業
⇔途上国では、機械化できずに切り捨てられた農民が都市に流入してスラムを形成
[途上国の生活用水使用状況]
・人間生存権の最低限の生活用水 …50リットル/人・日
・50リットル以下の生活用水しか使用できない国が55ヵ国
30リットル以下しか使用できない38ヵ国
→アフリカが26ヵ国、アジアが8ヵ国
・2000年の日本人は、322リットル/人・日
→アメリカに次いで多く、国際的にみて豊かな生活用水
[アフリカは地球環境問題の核]
・アフリカの多くの国 …地球上で最も深刻な課題 −政情不安、部族対立
→水環境の改善なくして安全な生活を期待することはできない状況
・我々はアフリカに対する関心も知識も極度に不足
→アフリカの状況を知らずして、地球環境問題は論じられない