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各社・地域の危機打開策/米中の今後/グローバル雑学王−30

世界同時不況の波紋が各国・地域に広がって、ドバイからも「バブル崩壊」の様相が伝えられるとともに、身近でも深刻な状況の報道が相次いでいる。
まさに全体が乗っかかるプラットフォームが昨年後半、特に秋以降急に沈んでいったという推移であり、ここは世界経済全体、そして我がデバイス業界の修復・打開の動きをしっかり把握してわが身の行動に照らしていかなければ、という受け取りである。

≪各社・地域の危機打開策≫

DRAM業界の再編を目指す活動の記事がここ数週間続いたが、半導体の他の分野に及んで危機打開を図る各社、各地域の動きになっている。

◇NEC、システムLSIで東芝と統合交渉、富士通とも協議。(1月29日付け NIKKEI NET)
→東芝とNECが半導体事業の統合に向けて交渉に入ったことが29日明らかになった旨。東芝が主力半導体の一つであるシステムLSI事業を分社、NECの半導体子会社と統合する案が浮上している旨。NECは富士通との事業統合も検討しており交渉の行方には流動的な面もあるが、世界同時不況の影響で半導体各社の業績が悪化するなか、国内半導体業界の再編が一気に進む可能性が出てきた旨。

ルネサステクノロジに続く国内のシステムLSI業界の大きな再編ということになる。メモリ業界とますます性格的に袂を分かつ感じ方があるが、技術ロードマップの展開と合わせ今後に注目ということと思う。

◇Freescale finds no buyer; to sell wireless IC unit piecemeal(1月29日付け EE Times)
→Freescale Semiconductorが、車載およびネットワーキング装置市場に注力促進のために求めてきたwireless handset用IC事業の買い手が見つけられず、該事業から撤退する他の選択肢を考えている旨。

◇TI cancels planned sale of wireless baseband unit(1月27日付け EE Times)
→TI社が、ワイヤレス商用基地局IC部門を売却する計画を中止、同社の考える金額での買い手が見つからない旨。

米国の大手2社がワイヤレス部門を売却しようとしているが、なかなか順調にいかない状況のようである。それにしてもここまでかと感じる以下の実態内容である。

◇Analysis: TI hunkers down for a prolonged recession(1月27日付け EE Times)
→TIの工場capacity稼働率が、今四半期33%と記録的なレベルに急落する見込み、2008年第四四半期および第三四半期はそれぞれ48%および約70%であった旨。

欧州では、半導体産業を守っていこうという姿勢を、以下の記事から感じている。

◇Analysis: Broker, EC keep faith with STMicroelectronics(1月29日付け EE Times)
→brokerage firm、Nomura Securitiesが、STMicroelectronics NVの評価を厳しく落としているが、長期的な見通しについては依然楽観視の旨。

◇EU authorizes aid of $600 million for Crolles-3 R&D program(1月28日付け EE Times)
→European Unionのアドミ部門、European Commissionが、Nano2012 R&Dプログラムに対する457Mユーロ(約$600M)の財政支援に反対しないことを決定の旨。

さて、発足した米国オバマ政権には、日増しに経済対策への期待が高まり、その動きに目を遣らざるを得ないが、まず目につくのが環境への重点傾斜であり、それに呼応する以下の業界の反応と受け止めている。

◇Obama and the environment: new policies could produce more electronics regulation, opportunity-Industry experts say new policies from the new US president could produce more regulation and more opportunity.(1月26日付け Electronics Design, Strategy, News)
→Barack Obama大統領が、環境を政権の優先政策に。連邦環境政策変更でエレクトロニクス業界がインパクトを感じる様相の旨。

↓ ↓ ↓ ↓ ↓

◇Applied CEO urges Obama to boost solar funding (EET)(1月28日付け EE Times)
→Barack Obama米大統領が水曜28日、経済刺激策法案についてビジネス界指導者と会合、そのメンバーの1人にApplied Materials社(Santa Clara, Calif.)のpresident and CEO、Mike Splinter氏。

◇Sematech Launches ESH Tech Center -The International Sematech Manufacturing Initiative (ISMI) has
launched its Environment, Safety & Health Technology Center. The center builds on 15 years of ESH programs at Sematech, and opens the membership to all suppliers and device makers, said Scott Kramer, Sematech vice president of manufacturing technology. Reducing energy consumption at fabs, and dealing with regulations on chemicals, will be among the center's main challenges.(1月27日付け Semiconductor International)
→International Sematech Manufacturing Initiative(ISMI, Austin, Texas)が、environment, safety and health(ESH)プログラムを格上げしてESH Technology Center(Austin)を設立、ICメーカーおよび製造装置&材料サプライヤにオープンなmembershipのやり方の旨。


≪米中の今後≫

春節、旧正月が終わって中華圏も新年の本格スタートに入ることになると思うが、お休みで少し遠のいた感がある米中の動きについてアップデートしている。まずは直近のGDP、やっと揃ったデータ発表であるが、記録的な落ち込みとなっている。

◇米GDP 3.8%減、27年ぶりの下落幅、10〜12月。(1月30日付け asahi.com)
→米商務省、30日発。2008年10〜12月期の実質国内総生産(GDP、速報)は、年率換算で前期比3.8%減と急激に悪化、約27年ぶりの落ち込みとなった旨。経済危機の長期化で個人消費が冷え込み、設備投資も急減、数少ない支えだった輸出が減少に転じた旨。マイナス成長は2009年半ばまで続き、1930年代の大恐慌以来、最も長い不況になる恐れがある旨。

◇中国GDP、10〜12月6.8%、減速さらに強まる。 (1月22日付け asahi.com)
→中国国家統計局、22日発。2008年10〜12月の国内総生産(GDP)実質成長率は前年同期比6.8%、7〜9月の9.0%からさらに減速、2001年10〜12月の6.6%以来、7年ぶりの低成長となった旨。推移グラフ、下記参照。
http://www.asahi.com/business/update/0122/images/TKY200901220100.jpg

2009年の経済をどう読むのか、特に中国のそれが気になるが、タイミングよく目にとまった記事の小生ながらの抜粋である。
          
「2009年中国経済を読む」   …上海山増コンサルティング 張華氏(1月31日付け 13億人の経済ニュース:春節特別企画)

(1) 世界金融危機と中国の景気低迷は発生原因が違う
・中国の経済低迷は世界金融危機とは発生原因が違う。
・中国の不景気は、世界金融危機が起こる前に、すでにバブル崩壊が起こっており、それが景気低迷の大きな原因である。中国の金融業界は、まだまだ世界的に開かれていない。
・ただ、世界経済の冷え込みは輸出減となり徐々に中国経済にダメージを与える。
 
(2) 2009年、2010年の中国経済は・・・
・2009年前半が最も苦しい。2009年後半は、政府が打ち出している大型景気刺激策の結果、やや景気は上向く。しかし、短期的な効果しかなく、2010年は再び低下する。
・2010年は、上海万博の年であるが、世界経済次第では、「万博どころではない。」という事態にもなりかねない。そうはなっても、中国は万博を無事成し遂げるであろう。
・中国経済を客観的に見るとき、最大のチェックポイントは、「失業率」であると思う。中国政府もこの点を非常に重視しており、国営企業では業績に関係なくリストラができない状況になっている。つまり、利益よりも雇用重視である。ただ、一般企業ではそうも言っておられない。

(3) 中国経済復活への提言
・中国経済復活のポイントは、内陸開発と内需拡大、である。

(4) 長期的な中国経済
・これから15年間は、基本的には「拡大・成長」で間違いない。
・ルールの整備とその監督レベルの向上、という大きな課題はある。
・ポイントは「教育」、日本でも失われかけているが、「躾」ということが求められている。

上記にもあるルール整備では、米中そして我が国も含んで、知的所有権の扱いが問題として浮上してくる。半導体関係は特に重要になってくるが、米中の間では以下の動きがあり、今後の焦点の1つと思う。

◇U.S. claims victory in WTO complaint on China piracy(1月26日付け EE Times)
→米U.S. Trade Representative(USTR)のPeter Allgeier氏ステートメント:「中国のIPR(Intellectual Property Rights)体制にはWTO obligationsと両立しない数多くの不備不足があると、WTOパネルが見い出しており、米国の権利保有者がこの決定の恩恵を確実に受け取るよう、妥当な是正活動を中国側と精力的に進めていく。」  
 

≪グローバル雑学王−30≫

今も毎日のように戦火のニュースが入ってきて、暗澹たる思いにさせられるが、すべてはパレスティナから始まる、という以下の内容は気の遠くなるほどに本当に長い怨念の歴史とも言うべき受け取り方である。

『イスラームの世界地図』(21世紀研究会 編著:文春新書 224)

より、行間を埋める理解が伴っていないが、そのときどきの世界列強に翻弄されてきた、きている経過を端々でも知る意味は大きいと感じている。

◎すべてはパレスティナ問題からはじまった

[ユダヤ人虐殺とシオニズム]
・サダム・フセインも、オサマ・ビン・ラディンも、戦いを起こした最大の理由をパレスティナ問題に。
・キリスト教徒にとってユダヤ人とは、キリストをローマ総督に引き渡して十字架にかけさせた許せない民。
・ユダヤ人は、紀元70年、ローマ軍によって国を奪われ、世界中に離散 
 →ディアスポラ(離散:ギリシャ語で「散らされたもの」)
・レコンキスタ(スペイン語:Reconquista)の成功 ⇒ユダヤ人への迫害
・中世以降、キリスト教を中心にして国家形成を行ってきたヨーロッパ諸国。
・キリスト教徒のユダヤ人迫害は、19世紀末頃から、ロシアを中心とする東ヨーロッパで過激に。
 → 政府公認の迫害「ポグロム(погром)」
  ⇒ シオニズム(「シオン」[エルサレム市街の丘の名前])の地に帰るという意)運動の台頭
・1897年、最初のシオニスト会議開催。建国の目的地がパレスティナに決まる。

[イギリスの裏工作]
・パレスティナという名称 …「海の民」の一民族、ペリシテ人の名に由来
・ヘブライ →川の向こうから来た人、という意
・第一次世界大戦中の経緯: イギリスの三枚舌外交
 * イギリスとアラブ間 
  →フセイン・マクマホン往復書簡
   …反乱を起こすことを条件に、アラブ諸国の独立を承認
 * 1916年6月、メッカのフセインは、オスマン守備隊を攻撃 
   …「アラビアのロレンス」の活躍
    ⇒ 独立の約束は果たされず

[ユダヤ人のヨーロッパ脱出]
・バルフォア宣言(1917年、イギリスの外務大臣Arthur James Balfourによる書簡)をイギリスによる国家建設の承認と受け取ったユダヤ人
 →続々とパレスティナへ向かうことに
・脱出先はパレスティナだけではなく、20世紀末の時点で、アメリカに約600万人のユダヤ教徒
 →この僅かなユダヤ人たちが、現在のアメリカ経済、映画産業をはじめとする文化事業で巨大な影響力をもち、アメリカをイスラエル寄りに。

[パレスティナ分割決議]
・1918年、第一次世界大戦が終結。
 1919年、パリ講和会議。
 1920年、シリアとイラクが独立を宣言。
 →シリアはフランスが、イラクはイギリスが委任統治を決定。
・広大な地域を占めていたシリアから、レバノン、パレスティナ、トランスヨルダンが分割。
・ヨーロッパの勝手な思惑で引かれた国境によって、国をもたないクルド民族が生まれ、パレスティナ問題という解決の糸口の見えない問題が生み出された。
・第二次世界大戦後、ホロコースト(大虐殺)の悲劇の民の国を認めようという気運 →ユダヤ人の移住が急増 →パレスティナ人からの土地の巻上げ
・1947年、国連総会でパレスティナ分割決議が採択
 …56% →ユダヤ国家
  43% →アラブ国家
   1% →聖地エルサレム:国際管理地区

[三大宗教の聖地]
・エルサレムの嘆きの壁 →かってのユダヤの神殿の遺構
・なぜユダヤの神殿があったエルサレムが、イスラームの聖地でもあるのか?
 ⇒イスラームが、ユダヤ教、キリスト教の土壌の上に起こった宗教ということに起因

[第一次中東戦争]
 …1948年〜1949年: イスラエルが勝利
・その昔は共存していたユダヤ人、アラブ人も、西欧から強制された住み分けに納得するはずはなく、もとの土地の半分以上もとられたパレスティナ人の怒りはおさまらない。
・アラブ連合軍は15万、イスラエル軍は3万。
・この戦争後、イスラエルの領土はパレスティナ全域の77%に。

[第二次中東戦争とナセル]
 …1956年〜1957年: イスラエルが勝利
・エジプトでは、この戦争をスエズ戦争、スエズ動乱と呼ぶ。
・1964年、アラブ諸国は、PLO(パレスティナ解放機構:Palestine Liberation Organization)を組織。

[第三次中東戦争で完敗したアラブ]
 …1967年、イスラエルが勝利し、パレスティナ全土、シリアのゴラン高原を占領
・わずか6日で戦闘は終結、パレスティナ全域がイスラエルの占領地に。

[アラファトの登場]
・PLOの顔、アラファト議長の誕生 →1969年
・アラブ・イスラエルの一連の紛争の原因となったPLOの組織は複雑であり、さまざまな考え方をもつグループの寄り合い世帯。

[第四次中東戦争]
 …1973年、緒戦はアラブに有利に展開したが、勢力地図には変化なし
・イスラエル側に浸透していたアラブへの常勝思考はなくなり、交渉による解決の道が探られるように。

[石油が最大の武器だ]
・石油危機を経て、中東和平に向けた動きが活発になる。
 1974年〜1975年、米国国務長官キッシンジャーが、パレスティナ問題の解決に向けて仲介に入る。
・「アラブ(石油)をとるか、イスラエルをとるか」、世界に突きつけられたカード。
・日本も含めた欧米では、この事件をきっかけに、1975年以降、毎年、先進国首脳会議(サミット)が開かれるように。

[和平を試みた二人の指導者の死]
・1978年、キャンプ・デービッド合意
・1979年、エジプト・イスラエル平和条約が調印 →エジプトは、アラブの裏切り者という烙印を押されることに
・エジプトのサダト大統領、イスラエルのラビン首相が暗殺される事態

[インティファーダはなぜおこったか]
・1987年、インティファーダ(民衆蜂起)が始まる。
 インティファーダ →アラビア語で「払いのける」、自分たちの土地からユダヤ人を払いのける、という意。
 ⇒占領地内で組織されたイスラーム原理主義とされるハマス(イスラエル抵抗運動:1988年結成)が、武装闘争、自爆テロという過激な行動に。

[イスラーム世界の大変化]
→1979年という年 …イスラーム暦では1399年から1400年へ、新しい百年に向けての区切り

[パレスティナ自治への道]
・1990年、イラクのフセイン大統領は、クウェートへと侵攻。
・1993年9月13日、米国、ロシアが見守るなか、パレスティナ自治の調印
 ⇒パレスティナ問題が発生して以来の歴史的瞬間
  →イスラエルは占領しているパレスティナ地域から順次撤退し、パレスティナ人の自治を認めるという方向に

[最大の争点はやはりエルサレム]
・2000年、クリントン大統領の仲介によって、キャンプ・デービッドで、バラク首相、アラファト議長の中東和平会談が開かれるが、決裂。

[テロの応酬]
・2000年9月、インティファーダ再開
・中東情勢はイスラエル・アメリカとアラブ諸国が一触即発の対立構造に
・2001年9月11日、アメリカで同時多発テロが勃発
・2003年4月、中東和平ロードマップがアメリカ国務省から示され、一時はイスラエルが撤退の姿勢を見せたが、テロの応酬は止まず、非常に危険な情勢に

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