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2008年半導体販売高/対策実態と光明模索/グローバル雑学王−31

米SIAから昨年12月の世界半導体販売高が発表され、2008年間のデータが見えてきている。年々増加のここ数年のプラス一途の基調が現下の世界的な経済危機に激しく揺さぶられて、前年比2.8%の減少となっている。一方、日々報道されているように、人員削減、工場統廃合の動きが加速されている。各国・地域の経済対策とともに、今後デバイス業界でも市場ニーズがあって伸ばしていくものの見る目、取り組み方がますます問われていると感じる状況である。

≪2008年半導体販売高≫

米SIAからの12月そして2008年の世界半導体販売高の発表&コメントは、以下の通りであるが、年初からの累積販売高は、結局次の推移となっている。
 1- 9月  前年同期比 4 %増
 1-10月  前年同期比 2.6%増
 1-11月  前年同期比 0.2%増
 1-12月  前年同期比 2.8%減
経済危機の波及で、最後の月になってマイナスに転じる見え方になっている。米SIAの数値データは3か月平均で計算されている点に注意である。

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○2008年のグローバル半導体販売高は2.8%減少…2月2日付けSIAプレスリリース

世界的な経済的混乱に厳しく影響されて、2008年のグローバル半導体販売高が2001年ぶりに前年比減少した、とSemiconductor Industry Association(SIA)が発表した。2008年の全体販売高は$248.6 billionで、2007年の$255.6 billionに比べて2.8%減少している。2008年12月の販売高は$17.4 billionで、2007年12月の$22.3 billionから22%の減少である。12月の販売高は、前月11月の$20.9 billionから16.6%減っている。

「グローバルな経済不況が、歴史的に我が業界にとっては力強い四半期である第四四半期の半導体販売高を2008年は激しく削いでしまった。」とSIA President、George Scalise氏が言う。「車載製品、パソコン、携帯電話およびcorporate IT製品など、半導体販売高を大きく引っ張るものの需要が弱まって、業界販売高が急激に落ち込んで、ほとんどすべての製品ラインに影響を与えている。またもや最も急激に売上げを落としたのはメモリ分野であり、全体ビット出荷の著しい伸びを打ち消す以上の価格圧力を受けている。」

「世界中の消費者が半導体需要の50%超を引っ張っており、半導体業界の盛衰は、GDP、consumer confidenceそして可処分所得などマクロ経済の条件にますますつながっている。」とScalise氏は続ける。「2008年の最初9ヶ月はelectronic製品の販売高は相応にかなりしっかりしていたが、グローバルな金融業界の混乱が広がるにつれ激しく低落した。」

「携帯電話およびパソコンに入るメモリ量は引き続き劇的に増えて、全体ビット出荷の大幅な増大を牽引している。ここ12ヶ月にわたって、代表的なパソコンに入るDRAMは44%伸びて平均1.8Gバイトになる一方、代表的な携帯電話のNANDは244%増えている。しかしながら厳しい価格圧力のために、これらの製品ラインの売上げは大きく落ちる結果となっている。」とScalise氏は言う。

「我が業界は現在、かってない不安定期間に直面している。販売高の伸びの回復は、consumer confidenceを取り戻し、liquidityを改善し、経済成長を刺激するよう現在連邦政府が考えているいろいろな対策の実効性にひとつはかかっている。」とScalise氏は締め括った。

※12月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
http://www.sia-online.org/galleries/gsrfiles/GSR_0812.pdf
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現在の市場環境、そして今後に向けての思いは、Scalise専務理事のお話に凝縮されている感じを受けている。半導体販売高の実態は、単月の実際の販売高データにもっと端的に表れており、以下の通りである。
  
◇December chip sales fell 32.2% year-on-year, says analyst(2月2日付け EE Times)
→Carnegie ASA(Oslo, Norway)のBruce Diesen氏。12月の実際の(non-averaged, non-adjusted)半導体販売高は前年比32.2%減とさらに急降下、11月は22.5%減であった旨。


≪対策実態と光明模索≫

ここのところ、半導体・デバイス業界の主要各社の動き、といっても人員削減や工場・拠点の統廃合という内容になってしまうが、そのトレースと、そうは言ってもこのような環境の中だからこそ、業界の力強い脈々と続く鼓動とか今後の伸びが期待される新分野・新技術といった内容に光明を求めていかざるを得ない、そんな思いでの以下のピックアップである。なるべく早くこのシリーズからは抜け出したいものである。

[主要各社の動きから]

◇Intel shifts China operations, 2000 jobs-As it increases investment in China, Intel discloses plans to wind down operations in Pudong and move capacity to its facility in Chengdu, shifting some 2000 workers in the process.(2月6日付け Electronics Design, Strategy, News)
→Intel社が、最近発表の再構築の一環として、中国での製造を整理統合、2000 jobsを動かす旨。特に上海近くPudongのテスト&組立工場で、2000 workersが影響を受ける旨。

◇ON Semi to close fourth fab, plans another 350 layoffs -Mounting job cuts come as ON Semiconductor announces plans to close its last Phoenix fab. Although sales slumped for the company's Q4, analysts are encouraged by ON's aggressive cost-reduction measures.(2月5日付け Electronics Design, Strategy, News)
→ON Semiconductor社が、進めているコスト削減努力の一環として、2010年第一四半期末までに閉鎖する計画のfabs数を3から4に増やし、さらに350jobsを削減する旨。

◇Japan's electronics industry shocked by $22 billion in losses(2月3日付け EE Times)
→日本の大手エレクトロニクスメーカー9社の内7社が、3月締め会計年度で赤字に落ち込む状況について。

◇Fujitsu to shut fabs, shift workers amid losses(1月31日付け EE Times)
→Fujitsu Ltd.が、6インチウェーハ処理facilitiesについて、3つの製造ラインを1つに整理統合、8インチについては4つを3つに統合していく旨。

[今後への期待]

◇Analysis: Smartphones throw suppliers a lifeline(2月6日付け EE Times)
→落ち込むエレクトロニクス市場、巨額損失のサプライヤ、そのような中、比較的力強いsmartphone市場について。Forward Concepts社の最新の調べでは、2009年のsmartphone出荷は13%伸びて164M台に達すると見る旨。

◇Intel says 32 nm on track for late 2009-CPU giant presenting 15 papers at ISSCC(2月5日付け EE Times)
→最近のレイオフおよびfab閉鎖にも拘らず、Intel社が依然今年末までに同社最初の32-nmプロセッサを出すよう進めている旨。

◇EC approves $586M aid for Nano2012 R&D program-The EC said the positive impact of the aid will far outweigh any distortion of competition that may result from it.(2月4日付け Electronics Design, Strategy, News)
→EC(European Commission)が、フランスのCrolles自治体でのNano2012 R&Dプログラムへの$586M財政支援拠出を認める決定の旨。


≪グローバル雑学王−31≫

イラン革命、イラ・イラ戦争は、1970年代終わりから1980年代にかけて、ちょうど半導体の世界で我々日本勢が慣れない世界に本格的に乗り出していったタイミングと符号すると思う。その頃から今日に至るイスラーム世界の経緯はある程度のつながりは分かっても、なかなか突きつめられないところ多々である。

『イスラームの世界地図』(21世紀研究会 編著:文春新書 224)

からの以下の小生ながらの抜粋である。フセイン、オサマ・ビン・ラディン、そしてイスラエルと、それぞれの怒りの発信源を感じ取るところがある。

◎湾岸戦争への道

[イスラーム革命の衝撃]
・近代の西アジア、アラブ世界は、オスマン帝国の崩壊、第一次世界大戦前後の各国の独立によって始まる。
・アラブ諸国から欧米資本(権益)を排除するために、親欧米政策をとる王制を倒そうというアラブ民族主義運動が起こってきた。
・イラン 
 →パフラビー(パーレビ)二世は、英米の支援を得て近代化を目指す。
 →イランが思惑通りの体制になると、石油産業についてはイギリス、アメリカ、オランダ、フランスなどが採掘権、製油権を確保。
・アラブ、イスラーム世界にとって新しい百年の始まりである1979年
 →イラン国王は、アメリカの勧めによって国外に退去。入れ替わりにフランスからホメイニ師。
 →4月にイラン・イスラーム共和国が発足。

[イラン・イラク戦争]
・ホメイニ師の方針
 …イスラーム法学者が認めなければ政策は実行されないし、イスラーム法学者が支持したことについては議会の通過を待たずに実行される。
・革命直後の不安定なイランを攻略し、覇権を広げようというイラク
・アラブ人(イラク)とペルシア人(イラン)の対立、イスラームのスンナ派(イラク)とシーア派(イラン)の対立
・イラン・イラク戦争、1988年8月に9年もかかってようやく停戦。
 →第二次世界大戦後、最長の国家間戦争に。
 →欧米が真剣になって止めに入らなかった背景。

[ペルシア人からアラブを守った]
・1989年、ホメイニ師が亡くなる。ハタミ政権での変化、自由な風潮。
・イランは、報復攻撃、テロ包囲網への協力を求めるアメリカに対しては反対の態度。アメリカも未だに、イランをテロ支援国家の指定から外していない。
・イラン・イラク戦争についてのイラクのフセイン大統領の見解は、イラクはペルシア人からアラブを守った、ということ。
 この戦争では、イラクに対する支援が他のアラブ諸国からなし。特にかっては同じ一つの国であったクウェートへの怒りに。
・クウェートの国名 
 …祖先が当地に来て築いた小さな砦(クウェート)に由来。

[クウェートはイラクの領土だ]
・オスマン帝国時代、クウェートはバスラの一部。
・イラクのクウェート侵攻 →豊かな石油資源
 →1990年8月2日に起こり、6時間後には首都を制圧

[オサマ・ビン・ラディンの怒り]
・国連の安全保障理事会が、侵攻当日に、無条件撤退要求の決議。
・国連決議を無視してパレスティナを占拠し続けるイスラエルは許されているのに、なぜイラクだけがクウェートからの撤退を迫られるのか?
 →このイラクの主張は賛同を得られず。
・サウジアラビアは、イラク非難だけでなく、国連の多国籍軍に駐留地を提供。
・オサマ・ビン・ラディンは、サウジアラビア出身。
 →同じイスラームを信じるイラクを攻撃することになった自国が許せず。
 →激しく政府を批判し、国外退去の処分。

[イラク制裁の長期化]
・1991年1月17日、湾岸戦争へと突入。
 →当時のアメリカ大統領ブッシュ(父)は、イスラエルの怒りを必死になだめた。
・実際にイラクが攻撃されると、フセインを讃える声も。大規模なイラク支持のデモが行われた。
・約10万といわれたイラク軍、84万4650人(そのうちアメリカ軍は53万2000人)の多国籍軍。
 →攻撃が始まって約1か月半後に、イラクはクウェートから撤退。
・フセインの権力基盤は敗戦で退陣させられるほど柔なものではなく、徹底的に力で制圧。
 →クルド人が国を興そうと反乱を企てたが、徹底的な虐殺、鎮圧。
・1991年4月、多国籍軍はクルド人保護区を設定。
・1993年には、PLOがイスラエルと歴史的な和解を行ったのに、新世紀になっても問題は解決しないばかりか、占領地明け渡しの約束も守らない。
 →原因はすべてアメリカにある、という考え、思い。

[なぜ異教徒軍の駐留が許されるのか]
・異教徒、異民族のアメリカ軍をサウジアラビアに駐留させることについての論議
 →オサマ・ビン・ラディンのような反対意見もあったが、法学者たちは違う答
 →異教徒の助力は、一時的なものだったが、ムハンマドの生命を救い、イスラームの成立に大きく貢献:ハディース(ムハンマドの言行録)の記述に照らした正当性
 →イラクを牽制するためにアメリカ軍が駐留し続けていることも、イスラーム社会のために必要な、一時的な異教徒との関わり、との解釈
・2003年3月19日、アメリカ合衆国・イギリス軍はイラクに空爆。
 ⇒イラク国民のアメリカをはじめとする駐留軍への反発は厳しく、戦闘終結後も各国兵士の犠牲者は増え続け、現在に至るも安定に向けた解決の糸口は見えない。

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