8月の半導体販売高が2ヶ月連続前月比増、メモリ半導体価格も安定化
米国・Semiconductor Industry Association(SIA)からの月次世界半導体販売高発表、この8月について$34.2 billion、前月比2.5%増、前年同月比15.9%減である。前月、9月発表で6ヶ月連続$32-33 billion台で持ちこたえているとあらわしたが、今回は$34 billion台に高めている。DRAM、NANDフラッシュメモリともに、7月あたりから価格が底を打って安定化している推移を示しており、米中貿易戦争が予断許し難く引き続く中ではあるが、市場および投資筋には一筋の期待を引き起こさせている。シリコンウェーハ出荷面積予測でも、今年は6.3%減の落ち込みはやむなしとして、来年、2020年は1.9%増を見込む空気となっている。市場環境推移に引き続き注目である。
≪8月の世界半導体販売高≫
今回の米国・SIAからの発表、次の通りである。
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〇8月のグローバル半導体販売高が前年同月比15.9%減−販売高前年比がすべての主要地域市場にわたって減少、しかし販売高前月比では2ヶ月連続グローバルに増加 …9月30日付け SIA/Latest News
Semiconductor Industry Association(SIA)が本日、2019年8月の世界半導体販売高が$34.2 billion、前月、2019年7月の$33.4 billionを2.5%上回ったが、前年同月、2018年8月の$40.7 billionを15.9%下回った。月次販売高はWorld Semiconductor Trade Statistics(WSTS) organizationのまとめであり、3ヶ月移動平均で表わされている。SIAは、半導体製造、設計および研究における米国のleadershipを代表している。
「世界半導体販売高は2018年に達した総額を依然かなり下回っているが、前月比ではほぼ1年ぶりのこと、2ヶ月連続で増加している。」と、SIAのpresident and CEO、John Neuffer氏は言う。「Americas市場での販売高はプラスマイナス入り混じり、前年比では大きく落としているが前月比では他の地域よりも増加している。」
8月販売高の地域別では、前月比でEuropeを除いてすべてプラスの伸びであったが、前年同月比ではいずれも落ち込みが続いている。
America | 前年同月比 -28.8%/ 前月比 4.1% Asia Pacific/All Other | -9.2%/ 3.8% China | -15.7%/ 1.8% Japan | -11.5%/ 1.1% Europe | -8.6%/ -0.8% |
市場地域 | Aug 2018 | Jul 2019 | Aug 2019 | 前年同月比 | 前月比 |
======== | |||||
Americas | 8.83 | 6.04 | 6.29 | -28.8 | 4.1 |
Europe | 3.54 | 3.26 | 3.23 | -8.6 | -0.8 |
Japan | 3.41 | 2.98 | 3.01 | -11.5 | 1.1 |
China | 14.31 | 11.85 | 12.06 | -15.7 | 1.8 |
Asia Pacific/All Other | 10.58 | 9.25 | 9.60 | -9.2 | 3.8 |
計 | $40.66 B | $33.38 B | $34.20 B | -15.9 % | 2.5 % |
市場地域 | 3- 5月平均 | 6- 8月平均 | change |
Americas | 5.92 | 6.29 | 6.2 |
Europe | 3.35 | 3.23 | -3.7 |
Japan | 2.88 | 3.01 | 4.5 |
China | 11.88 | 12.06 | 1.6 |
Asia Pacific/All Other | 9.00 | 9.60 | 6.7 |
$33.04 B | $34.20 B | 3.5 % |
※8月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
⇒https://www.semiconductors.org/wp-content/uploads/2019/09/August-2019-GSR-table-and-graph-for-press-release.pdf
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これを受けて業界紙の反応、取り上げである。前年からの落ち込みが目立つ状況で、比較的地味な扱いとなっている。
◇Global Semiconductor Sales Down 15.9 Percent Year-to-Year in August (10月2日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
◇Global semiconductor sales down 15.9% YoY in August (10月2日付け Evertiq)
2016年後半から2年あまり史上最高を更新し続ける勢いの熱い活況が続いた半導体業界であるが、これまで通りの販売高の推移の見方を続けると以下の通りとなる。昨年11月から販売高が前月比マイナスとなって以降、12月、今年に入って急激に落ち込む経緯があらわれているが、2月以降は$32 billion〜$33 billion台に押しとどまって、8月は$34 billion台に戻すに至っている。貿易摩擦が依然吹き荒れて予断を許さない中、市場の推移には一層目が離せないところである。
販売高 | 前年同月比 | 前月比 | 販売高累計 | |
(月初SIA発表) | ||||
2016年 7月 | $27.08 B | -2.8 % | 2.6 % | |
2016年 8月 | $28.03 B | 0.5 % | 3.5 % | |
2016年 9月 | $29.43 B | 3.6 % | 4.2 % | |
2016年10月 | $30.45 B | 5.1 % | 3.4 % | |
2016年11月 | $31.03 B | 7.4 % | 2.0 % | |
2016年12月 | $31.01 B | 12.3 % | 0.0 % | $334.2 B |
2017年 1月 | $30.63 B | 13.9 % | -1.2 % | |
2017年 2月 | $30.39 B | 16.5 % | -0.8 % | |
2017年 3月 | $30.88 B | 18.1 % | 1.6 % | |
2017年 4月 | $31.30 B | 20.9 % | 1.3 % | |
2017年 5月 | $31.93 B | 22.6 % | 1.9 % | |
2017年 6月 | $32.64 B | 23.7 % | 2.0 % | |
2017年 7月 | $33.65 B | 24.0 % | 3.1 % | |
2017年 8月 | $34.96 B | 23.9 % | 4.0 % | |
2017年 9月 | $35.95 B | 22.2 % | 2.8 % | |
2017年10月 | $37.09 B | 21.9 % | 3.2 % | |
2017年11月 | $37.69 B | 21.5 % | 1.6 % | |
2017年12月 | $37.99 B | 22.5 % | 0.8 % | $405.1 B |
2018年 1月 | $37.59 B | 22.7 % | -1.0 % | |
2018年 2月 | $36.75 B | 21.0 % | -2.2 % | |
2018年 3月 | $37.02 B | 20.0 % | 0.7 % | |
2018年 4月 | $37.59 B | 20.2 % | 1.4 % | |
2018年 5月 | $38.72 B | 21.0 % | 3.0 % | |
2018年 6月 | $39.31 B | 20.5 % | 1.5 % | |
2018年 7月 | $39.49 B | 17.4 % | 0.4 % | |
2018年 8月 | $40.16 B | 14.9 % | 1.7 % | |
2018年 9月 | $40.91 B | 13.8 % | 2.0 % | |
2018年10月 | $41.81 B | 12.7 % | 1.0 % | |
2018年11月 | $41.37 B | 9.8 % | -1.1 % | |
2018年12月 | $38.22 B | 0.6 % | -7.0 % | $468.94 B |
2019年 1月 | $35.47 B | -5.7 % | -7.2 % | |
2019年 2月 | $32.86 B | -10.6 % | -7.3 % | |
2019年 3月 | $32.28 B | -13.0 % | -1.8 % | |
2019年 4月 | $32.13 B | -14.6 % | -0.4 % | |
2019年 5月 | $33.06 B | -14.6 % | 1.9 % | |
2019年 6月 | $32.72 B | -16.8 % | -0.9 % | |
2019年 7月 | $33.37 B | -15.5 % | 1.7 % | |
2019年 8月 | $34.20 B | -15.9 % | 2.5 % |
半導体市場の動向を大きく揺さぶっているメモリ半導体、DRAMおよびNANDフラッシュメモリの価格であるが、7月以降底を打って安定化の様相に見えるという以下の内容である。貿易戦争のインパクトで一寸先は闇模様のところがあるが、市場の推移に一層の注目である。
◇DRAM contract prices stop falling (9月27日付け DIGITIMES)
→DRAMeXchange発。2019年8月のDRAM契約価格が横ばい推移、8GB PC DRAMモジュールの平均が$25.50。9月の価格を巡るDRAMサプライヤとPC OEMsの間の交渉がまだ続いており、加えて"主流PC DRAM製品の契約価格は安定維持というのが大方の兆候"の旨。
◇Q2 2019: Memory Business is Approaching the Bottom (10月1日付け 3D InCites)
→Yole Developpement(Yole)のMemory Technology & Market Analyst、Simone Bertolazzi氏。2019年の第二四半期、DRAMとNANDの売上げ合わせて$25.4 billion、前四半期比5%減、前年同期比39%減。需要低迷および在庫水準増大で引き続きメモリ市場が悩まされている旨。以下の内容:
NAND Market: The Worst will Soon Be Behind You
The DRAM Market: Winter has Come
Memory Business: What's Next?
Samsung ElectronicsおよびSK Hynixには、好転への期待感が大いに沸くところである。
◇Outlook for Korean chipmakers brightens on stabilizing in memory prices-DRAMeXchange: Memory chip pricing becomes more stable (10月2日付け Pulse by Maeil Business Newspaper (South Korea))
→3年で最悪業績となっているSamsung ElectronicsおよびSK Hynixには展望が明るくなってきており、DRAM半導体価格が1年の下方spiralを経てここ2ヶ月安定している旨。火曜1日DRAMeXchangeによると、グローバルDRAM価格のbenchmark、8-gigabit DRAM DDR4モジュールの9月の平均価格が前月と変わらず$2.94。NANDフラッシュメモリの価格は、7月に戻した後横ばい$4できている旨。
◇Recovery beckons for Samsung as chip prices stabilize (10月4日付け Reuters)
→Samsung Electronics Co Ltdが、来週のearnings速報では4四半期連続の利益減少となりそうだが、投資家たちは半導体価格に回復の兆しがあって最悪は過ぎたとの期待がある旨。
関連する市場データとして、まずSEMIからのシリコンウェーハ出荷面積予測である。今年の落ち込みは致し方なしとして、来年には増加に転じ、2022年にはまたぞろ史上最高を更新するという見方である。
◇Total Wafer Shipments to Drop 6 Percent in 2019, Resume Growth in 2020, Set New High in 2022, SEMI Reports (9月30日付け SEMI)
◇Total Wafer Shipments to Drop 6 Percent in 2019, Resume Growth in 2020, Set New High in 2022 (9月30日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→SEMIの最新半導体業界annualシリコン出荷予測。2019年のウェーハ出荷総計が昨年の史上最高から6%減の見込み、2020年には伸びが回復、2022年に新たな最高に達していく旨。
2019 Silicon* Shipment Forecast (MSI = Millions of Square Inches):
Actual | Forecast | ||||||
2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | ||
MSI | 11,617 | 12,541 | 11,757 | 11,977 | 12,390 | 12,785 | |
Annual Growth | 9.8% | 8.0% | -6.3% | 1.9% | 3.5% | 3.2% |
*Total Electronic Grade Silicon Slices - Excludes Non-Polished Wafers
*Shipments are for semiconductor applications only and do not include solar applications.
[Source: SEMI (www.semi.org), September 2019]
◇Wafer shipments to resume growth in 2020, says SEMI-SEMI: Growth to pick back up in 2020 for silicon wafer shipments (10月2日付け DIGITIMES)
Gartnerからの今年のパソコン&携帯電話出荷台数の予測であるが、最悪の落ち込みの読み、これはやむなしである。
◇Gartner Says Global Device Shipments Will Decline 3.7% in 2019 (9月30日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
→Gartner社最新予測。PCs, タブレットおよび携帯電話の世界機器出荷が、2019年は3.7%減。Gartnerは世界中で使われる携帯電話は50億台を上回ると見ている旨。数年の伸びを経て、世界スマートフォン市場は転換点に達しており、2019年は3.2%減。これは最悪の減少となる旨。
半導体intellectual property(IP)売上げについて、この第二四半期は前年同期比約20%増とあらわされている。
◇ML, Edge Drive IP To Outperform Broader Chip Market-IP market thrives with demand for edge, machine learning tech-New applications, architectures and customer base provide continuous stream of opportunities. (10月3日付け Semiconductor Engineering)
→Electronic System Design Alliance Market Statistics Service発。
microchip販売高が今年は減少する一方、2019年第二四半期の半導体intellectual property(IP)売上げは$835 millionに達し、前年同期比19.7%増。IC設計者が、artificial intelligence(AI)およびmachine learning(ML), 車載electronics, computing cloudおよびedge computingに入るsystem-on-a-chip(SoC)デバイスに取り組んでいる旨。
≪市場実態PickUp≫
【米中摩擦関連】
株式&金融市場の開放を推進すると、米中ともに発表が行われ、規制検討の報道に反応している。
◇Trump officials play down reports of China investment limits-US Treasury: No plan to bar Chinese from listing shares (9月29日付け BNN Bloomberg (Canada))
→米国財務省発。米国は、中国の会社の米国株式市場上場を妨げる計画はない旨。該ステートメントは、White Houseが中国の市場および会社への米国の投資に障壁を検討しているというニュース報道に反応して出ている旨。
◇China says it's increasing foreign access to its markets amid reports US may consider curbing investment-China widens foreign access as US reportedly weighs investment limit (9月30日付け CNBC)
→中国国務院委員会が、"金融業界のhigh-level two-way開放拡大"および"海外の金融機関およびファンドの国内金融市場参入奨励"を計画、としている旨。Trump政権は中国での米国投資制限を検討している旨。
◇米高官、対中証券投資の制限報道「不正確」 (10月1日付け 日経 電子版 03:12)
→ナバロ米大統領補佐官は9月30日、トランプ米政権が中国企業への証券投資制限を検討しているとの報道について「不正確な部分が多い」と述べた旨。米市場における中国企業の上場廃止を含む複数の規制案が議論されていると伝えられたが、具体的な指摘は避けた旨。
米中ともに、製造分野の不振があらわされ、世界的にも工場停滞、商取引急激劣化が不安視されている。半導体市場の先行きにもベールを覆う状況であり、安定化の様相も決して安心できないところである。
◇中国景況感、5カ月連続で節目割れ、9月、製造業不振 (9月30日付け 日経 電子版 10:51)
→中国国家統計局が30日発表した2019年9月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は、前月より0.3ポイント高い49.8。2カ月ぶりに改善したものの、拡大・縮小の節目となる50を2019年5月から5カ月連続で下回った旨。貿易戦争の打撃が重くのしかかり、製造業の不振が続いている旨。
◇U.S. manufacturing dives to 10-year low as trade tensions weigh-US manufacturing activity hits lowest in a decade (10月1日付け Reuters)
◇Sharp US manufacturing contraction fuels global economic gloom (10月1日付け SILICON VALLEY BUSINESS JOURNAL)
◇Global Trade Is Deteriorating Fast, Sapping the World's Economy-WTO sharply reduces world trade forecasts for 2019, 2020 (10月1日付け The New York Times)
→Trump大統領が中国との貿易戦争を強め、主要工業国家で工場が停滞、世界の商取引が急激に劣化しており、グローバル経済の健全性を脅かす危険な展開の旨。
◇米製造業の景況感、10年ぶり低水準、トランプ氏、利下げ要求 (10月2日付け 日経 電子版 00:12)
→米サプライマネジメント協会(ISM)が1日発表した9月の米製造業景況感指数は前月比1.3ポイント低下の47.8と、2009年6月以来10年3カ月ぶりの低水準となった旨。景気拡大・縮小の判断の境目となる50を2カ月連続で割り込んだ旨。中国との貿易戦争や海外景気の減速を受け、米製造業の景況感が急速に悪化している旨。
焦点のファーウェイであるが、日本の主要50社の現在の取引状況である。
◇ファーウェイ取引、ソニーなど8割継続、日本50社調査 (10月1日付け 日経 電子版 02:00)
→トランプ米政権が中国・華為技術(ファーウェイ)への制裁を続けるなか、取引先であるソニーやパナソニックなど日本の主要50社のうち約8割が取引を続けていることが分かった旨。米中ハイテク摩擦は解決の糸口が見えない旨。日本企業はリスクを慎重に見極めながら、成長が見込める中国企業と取引を続ける方策を探っている旨。
【日韓摩擦関連】
日本から韓国に向けた半導体材料輸出の管理強化を巡る以下現時点の動きである。焦点となる最先端半導体に必要な高純度の液体フッ化水素については、SKハイニックスには許可されていない模様。実態どうなのかの一方、双方の業界に政治対立長期化への懸念が高まっている。
◇韓国向け半導体材料輸出、全3品目で許可 (10月1日付け 日経)
→韓国の産業通商資源省は30日、日本政府が7月から輸出管理を厳格化した半導体関連材料3品目のうちフッ化ポリイミドの輸出が許可されたと明らかにした旨。すでに他の2品目は承認されており、3品目全てで輸出許可が確認された旨。
◇SK Hynix shifts away from Japanese input material with Korean product-SK Hynix shifts to a Korean supplier of hydrogen fluoride (10月2日付け Reuters)
→SK Hynixがこのほど、高純度hydrogen fluorideについて長年の日本ベンダーでなく韓国サプライヤから得ている旨。シリコンウェーハのエッチングおよびmicrochips洗浄に用いられる該高品質液体hydrogen fluorideは、韓国のRam Technologyが供給の旨。
◇SKハイニックスにもフッ化水素の輸出許可 (10月3日付け 日経)
→韓国半導体大手、SKハイニックス向けのフッ化水素の輸出を日本政府が許可したことが2日わかった旨。既にサムスン電子向けは許可が出ている旨。ただ最先端半導体に必要な高純度の液体フッ化水素は許可されておらず、安定調達を望む韓国企業側の不安は続いている旨。SKハイニックス関係者が明らかにした旨。
◇日韓対立、長期化に懸念、輸出管理厳格化から3カ月−半導体材料、現段階で許可7件 (10月4日付け 日経 電子版 22:24)
→日本政府が韓国向けの輸出管理を厳格化してから3カ月が過ぎた旨。日本政府が半導体材料3品目について厳格化後に輸出許可を出したのは現段階で7件とみられる旨。日韓両国は世界貿易機関(WTO)での協議に臨むが、解決は見通せない旨。政府間の対立が混迷を深めるなか、日韓の関係業界からは影響の長期化を懸念する声が出ている旨。
【TSMCがGlobalFoundriesを逆提訴】
半導体ファウンドリーのGlobalFoundriesが、圧倒的最大手のTSMCおよびその顧客を相手取って特許侵害訴訟を起こしたのは8月下旬のこと。振り返って以下の内容である。
◇GlobalFoundries Files 25 Lawsuits Against TSMC and its Customers (8月26日付け EE Times)
→GlobalFoundries(GF)が、TSMCが用いている同社半導体デバイス&製造技術について16件の特許侵害があるとして、主要20社を相手取って米国およびドイツで訴訟25件を起こしている旨。該提訴では、GFは業界を席巻している半導体メーカー、TSMCが該侵害された技術で生産している半導体の米国およびドイツでの輸入を防ぐ命令を求めている旨。
◇GlobalFoundries sues TSMC, wants U.S. import ban on some products-GlobalFoundries targets TSMC, foundry's clients with lawsuits (8月27日付け Reuters)
→GlobalFoundriesが、TSMCおよびTSMCの顧客のいくつかを相手取って、米国への関連製品の輸入を禁ずるよう、米国およびドイツで特許侵害の提訴の旨。Apple, MediaTek, NvidiaおよびQualcommなどが、TSMCのclientsとして挙げられている旨。
これに対して、このほどTSMCが対抗提訴の申し立て、以下の通りである。米中摩擦の中、IBMを引き継ぐGlobalFoundriesに対するファウンドリー断然トップのTSMC、今後の揺さぶりの応酬に注目である。
◇The Other Shoe Drops: TSMC Countersues GF (9月30日付け EE Times)
→8月末、GlobalFoundriesはTSMCおよびその顧客の20社を特許16件侵害として提訴、そのほぼ避けられない対抗提訴が月曜30日夜に行われた旨。TSMCが、特許25件の侵害が続いているとしてGFを告発の旨。TSMCが求めているのは、GFが侵害している技術でデバイスを製造し続けるのを強制差し止め、GFの該当製品の販売差し止めそして"金銭的な損害賠償"などの旨。
◇TSMC counter-sues US chip rival GlobalFoundries for patent infringement-TSMC alleges patent infringement in GlobalFoundries suit (10月1日付け Reuters)
→TSMCが、GlobalFoundriesが特許25件を侵害、と対抗提訴申し立ての旨。
GlobalFoundriesは先月、特許16件侵害としてTSMCを相手取って提訴、TSMCがドイツおよび米国に向けてつくった半導体搭載製品の輸入禁止を求めている旨。
◇TSMC files complaints for technology infringement against Globalfoundries (10月1日付け DIGITIMES)
→TSMCが9月30日、米国、ドイツおよびシンガポールにおいてGlobalfoundriesを相手取って複数の提訴、少なくとも40nm, 28nm, 22nm, 14nm, および12nm nodeプロセスによるTSMC特許25件の侵害が続いている旨。該訴訟においてTSMCは、申し立ての侵害半導体製品のGlobalfoundriesの製造&販売を止める差し止めを求めており、またGlobalfoundriesからの金銭賠償も求めている旨。
◇TSMCが米大手提訴、グローバル社を特許侵害で (10月2日付け 日経)
→半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)は1日、同業世界3位の米グローバル・ファウンドリーズ(GF)を特許侵害で提訴したと発表、GFは8月に「米国製造を守る」などとしてTSMCを特許侵害で提訴の旨。保護主義を掲げるトランプ米政権に同調してTSMCを揺さぶる構えで、同じ訴訟という方法で対抗する旨。
【東芝メモリからキオクシア(Kioxia)へ】
ついにという感じ方があるが、昨年6月に東芝傘下を外れた東芝メモリが、この10月1日付けで社名も「キオクシア(Kioxia)」として新たなスタートを切っている。前後の動きを以下に示している。
◇東芝メモリ、四日市に新棟、3次元NAND型増産へ3000億円 (9月30日付け 日刊工業)
→東芝メモリホールディングスは、四日市工場(三重県四日市市)に最先端3次元(3D)NAND型フラッシュメモリの製造棟を新設する旨。2020年12月に着工、2022年夏の完成予定。総投資額は最大3000億円規模を見込む旨。
2020年9月に計画する新規株式公開(IPO)で調達する資金の一部も充当する旨。NAND型フラッシュメモリで世界首位の韓国・サムスン電子を抜いて先端分野でトップを目指す旨。
◇Toshiba Memory Today Rebrands As “Kioxia” (10月1日付け SEMICONDUCTOR DIGEST)
◇東芝メモリ、社名「キオクシア」に (10月1日付け 日経)
→10月1日付で社名を「キオクシア」に変更する半導体大手の東芝メモリ(東京・港)は30日、新社名やブランド戦略の説明会を都内で開いた旨。同社は2018年6月に東芝傘下を外れ、米ベインキャピタルなど日米韓連合の傘下に入った旨。
◇Kioxia begins operations-Goodbye, Toshiba Memory; hello, Kioxia (10月2日付け DIGITIMES)
→Toshiba Memory Holdingsが火曜1日、新しいcorporate identityをKioxiaとした旨。同社は、今年末までToshiba Memoryブランドでsolid-state drives(SSDs), SD cards, USBフラッシュメモリなどconsumer retail製品を販売、2020年にはKioxiaブランドを用いる旨。
◇Kioxia reveals what to expect in the next decade of flash storage-Kioxia looks ahead to the future of flash storage (10月3日付け TechRepublic)
→前東芝メモリのKioxiaは、フラッシュ-ベースのデータストレージにおける流れを期待しており、hard-disk drives(HDDs)がデータセンターなどの応用に決定的でなくなってきてsolid-state drives(SSDs)に置き換わる旨。「enterpriseおよびデータセンターSSD field不良率は、hard drivesで見られるものの10分の1程度」と、Kioxiaのsenior vice president and general manager of the SSD business unit、Jeremy Werner氏。
【マイクロソフトの新Surface】
マイクロソフトが、Surfaceイベント(New York)にて最新機器を披露、中でも5.6インチの画面2つを備えた折り畳み式端末、「Surface Duo」は、開くと8.3インチのタブレットとしても使える「電話もできる新たな端末」とのこと。如何に差別化されるか、今後の反応に注目と思う。
◇Microsoft tries Windows on Arm chips again with SQ1-powered Surface Pro X (10月2日付け CNET)
→Microsoftが、水曜2日のSurfaceイベント(New York)にて最新Surface機器を披露、power-sipping laptopsに向けてArm半導体ファミリーに戻っている旨。そしてArm半導体だけでなく、Qualcommと連携して自ら仕立てたSQ1設計がある旨。該半導体は、Microsoftの伝統的パートナー、Intelからのものより少ない電力消費に設計されている旨。
◇Microsoft Wants More Chip Engineers as Custom Silicon Ambitions Grow-Microsoft recruits engineers for custom chip designs -The company is hiring in the backyard of many of its chipmaker partners (10月2日付け Bloomberg)
→Microsoftが、米国でのより多くのIC設計者採用を図っており、system-on-a-chip(SoC)設計expertiseが深く豊かなところで募集している旨。同社はSurfaceラインでlaptopsなどの製品を投入、Android応用を走らせるdual画面の折り畳み携帯機器、Surface Duoなどがある旨。
◇Microsoft、スマホ再び、2画面折り畳み・Android採用 (10月3日付け 日経 電子版 01:51)
→米マイクロソフトは2日、2020年にスマートフォンに再び参入すると発表、5.6インチの画面2つを備えた折り畳み式端末で、基本ソフト(OS)には米グーグルの「アンドロイド」を採用する旨。得意とする業務アプリとの連携性を高め「電話もできる新たな端末」として、既存のスマホとの差別化を図る旨。新端末は「Surface Duo」で、開くと8.3インチのタブレットとしても使える旨。2020年のクリスマス商戦までに発売する旨。
◇協業でアップル対抗、マイクロソフトの新Surface (10月4日付け 日経 電子版 02:00)
→こんなに予想外に驚かされた新製品発表会は何年ぶりだろうか。米マイクロソフトの自社ブランドのパソコン「Surface」の新製品。なかでも注目されるのが、最後に披露した2画面端末「Surface Neo」と「Surface Duo」。特にDuoは基本ソフト(OS)になんと米グーグルの「Android」を採用。しかもモバイル通信機能を搭載した「電話機」だった。
【Samsung、中国でのスマホ生産終了】
2013年まで販売高首位とあるが、中国でのSamsung Electronicsのスマートフォンである。中国勢に押しに押されて1%未満とシェア急落という推移。ついに中国での生産から年内をメドに撤退するとしている。
◇Samsung ends mobile phone production in China (10月2日付け Reuters)
→Samsung Electronics Co Ltdが水曜2日、世界最大のスマートフォン市場、中国でのライバルとの競争激化で損なわれて、中国における携帯電話生産を止める旨。
◇サムスン、スマホ復活遠く、中国で生産終了 (10月3日付け 日経 電子版 21:26)
→韓国サムスン電子が中国のスマートフォン生産から年内をメドに撤退する旨。広東省の工場を閉鎖し、ベトナムに移管する旨。中国では2013年まで販売首位に立ち、同社のスマホは絶大な人気を誇った旨。ただ中国勢の攻勢で直近の出荷シェアは1%未満にまで急落、生産撤退で世界最大市場での存在感はさらに低下しそうな旨。スマホと並ぶ2本柱の半導体事業も特需が一服し、サムスンの苦悩は一段と深まってきた旨。
≪グローバル雑学王−587≫
米中貿易戦争の渦中の焦点のキーワード、ファーウェイと5Gがタイトルに盛り込まれた新書、
『ファーウェイと米中5G戦争』
(近藤 大介 著:講談社+α新書 711−2 C) …2019年7月18日第一刷発行
をこれから読み進めていく。著者は、講談社「週刊現代」特別編集委員、「現代ビジネス」中国問題コラムニスト、ほかやられている方。2009年から2012年まで北京在任の経歴も。本のカバーには、世界経済の趨勢を決める「戦争」を徹底検証!、アメリカと中国、最終的な勝者はどっちだ?、とのキャッチフレーズ。まず、本書の全体概要が≪はじめに≫に示してある。著者が実際に現地に乗り込んで細かくあらわしている第1章:「ファーウェイ帝国」の全貌を、4回に分けて抄訳、今回はその1回目である。「巨竜」、ファーウェイは生き残れるのか、そもそも生き残らせるべきなのか、本書のテーマに少しずつ迫って考えていくことに。
≪はじめに≫
・2019年に「商業化元年」を迎える5G(第5世代移動通信システム)
→超高速、大容量、多接続、低遅延という特長
→蒸気機関、エンジン、パソコン(インターネット)に次ぐ第4次産業革命をもたらす
・5G時代の世界を牽引しようとしているのが、ファーウェイ・テクノロジーズ(華為技術)(中国広東省深セン市)
→1987年、元人民解放軍の技師、任正非CEOが5人の仲間と創業
→いまや世界170ヵ国・地域、従業員19.4万人、年間売上高7212億元(約11.3兆円)の「巨竜」
・20世紀後半以降、世界の覇権を握ってきたアメリカ
→21世紀も引き続き世界をコントロールしていくために、ファーウェイ潰しに出た
・巨竜は生き残れるのか、そもそも生き残らせるべきなのか――これが本書のテーマ
→私(著者)にとってファーウェイ研究は、丸30年続けてきた中国研究の延長線上に
・本書の目的は、ファーウェイという中国企業を深く識り、一企業を巡って米中二大国が全面対決していく世界の現状を炙り出すことに
【第1章】深センのファーウェイ本社、および近郊の研究開発本部を詳細に取材、厚いベールに包まれたファーウェイの全貌
【第2章】ファーウェイを巡る米中のバトル
【第3章】「悪に仕立て上げてでも」潰さねばならない「アメリカの論理」
【第4章】5Gを巡って米中二大国に挟まれた「第3の市場」EU(欧州連合)にスポットライト
【第5章】5Gを巡る米中の経済ブロック化と近未来図
【第6章】最終的には台湾問題へと行き着くファーウェイ問題
【終章】 日本とファーウェイとの関係、および日本がこの状況にどう向かい合っていくべきか
…2005年に設立されたファーウェイ・ジャパンは、日本経団連と関西経済連合会に初めて加盟した中国企業でも
・ファーウェイについて考えることは、5Gについて、近未来の世界秩序について考えること
→日本が進むべき道を議論する上で一助となれば幸甚
第1章 「ファーウェイ帝国」の全貌 …4分の1
■巨大なタワマン社宅群
・「スパイ企業」「中国共産党の手先」「人民解放軍の一機関」……
→米トランプ政権がファーウェイを非難する多くの負のレッテル
→果たして本当にそうなのだろうか?
・日本の取引先3社の人からの話
→「ファーウェイの製品は、いまや日本製品より品質はいいし、価格は安いし、おまけにアフターサービスも優れる
→ただ中国企業なんですよね」
・2019年5月末、(著者は)香港を経由、隣接する深センにやってきた
→深センは2018年、ついにGDPで香港を抜き、北京と上海に次ぐ中国第3の経済都市としての地位
→1980年、小平副首相が、わずか人口3万人の漁村を、中国初の経済特区に指定したのが、この町の始まり
→いまや人口1400万人の巨大都市に変貌
→一獲千金を狙って中国全土の若者たちが蝟集するエネルギッシュな先端都市
・ファーウェイが成功した理由の1つに、深センに本部があるということ
→「来る者は誰でも深セン人」という自由でしがらみのない風土
→ほかに、テンセント、DJI、BYD、などひしめく巨大な中国の民営企業
・今回投宿するのは、世界に散らばるファーウェイ社員たちが本社へ一時帰国した際に泊まるホテル
→タクシー運転手が「迷うことなく」連れて行ってくれたのは、高層マンションが建ち並ぶ郊外の住宅街
→高層タワーマンションが、計30棟も
→5万人の社員とその家族が暮らす「ファーウェイ城下町」
■超豪華出張社員用ホテル
・タワマン群の谷間に、出張社員用ホテル「安朴逸城(アンパープラザ)」
→27階建ての高層タワーが4棟、全1035室も
・ロビーでは「JUNJI」という名の2台のロボット
→可愛らしい女声、フロントと客室とのやりとりやルームサービスなどを担当
・部屋は約100m2、1泊538元(約8400円)
→最新の5つ星ホテルに1泊1万円以下で泊まっている感覚
・ファーウェイはとにかくケチケチしていない
→「社員と取引先企業に多くを与えて、会社も多く取る」という任正非CEO(最高経営責任者)の経営哲学
・この施設に泊まっている3種類の人々
→第1:世界中に散らばっているファーウェイ社員たち
第2:取引先企業の人たち
第3:その他の外国人
・出張客たちでごった返している朝のホテルのロビー
→目的地によって異なる「社内バス」、一番遠い松山湖の研究開発本部までは1時間弱
・ホテルから3キロほど西のファーウェイの本部
→東西1.6キロ、南北2キロほどの広大な敷地を、11区域に
→その他、周辺には開発中の地区がいくつかあり、日々変化
・オフィスに入る門では一部、顔認証入館が始まっていた
→まるで欧米の大学キャンパスのような風景
→5万人が働く巨大なオフィス群は、高層の建物が2棟しかなく、基本的に低層構造
→非効率、無用なストレスを避ける
■CEOの横顔
・カリスマ創業者、任正非CEO
→「小平の経営者版」
→軍人気質、広闊な視野、長期展望、教育第一、効率重視、夢想主義、そして自身は質素倹約
→1944年、貴州省安順生まれ、中国最貧困地域の1つ
→1963年、重慶建築工程学院(現・重慶大学)に入学
→1967年に卒業、翌年、人民解放軍(中国軍)に入隊、軍事技術者として基礎工程兵部隊に所属
・私生活:四川省の副省長、孟東波の娘、孟軍を妻に
→完全な「逆玉の輿」、2人の間に娘・晩舟と息子・平
・1978年、小平が経済発展を優先させる改革開放政策に乗り出した
→人民解放軍のリストラ、任正非も1982年、38才でお役御免に
→経済特区・深センに移住、国有企業の電子系子会社に入社
→1987年、43才のときに5人の仲間と、ファーウェイ・テクノロジーズを創業
…社名の由来は「中華有為」(→中国が意義のあることを為す)
・娘の孟晩舟の当時の生活の述懐
→父は母は、深センでの仕事に苦労
→孟晩舟は母親の実家に帰され、16才で母親の姓・孟に改名
・任夫婦も危機に陥り、まもなく離婚
→任正非CEOは、再婚し秘書にする
→この2人の間の一人娘・姚安娜(ヤオ・アンナ、Annabel Yao)は、ハーバード大学在籍、2018年パリ社交界デビューで話題に
・任正非は、創業10周年を経た1998年、全6章103条の「ファーウェイ基本法」を制定、「ファーウェイ精神」を全社員に徹底
→小平の講和録「小平文選」に似ている
・創業以来の社風は、「軍人規律」と「狼性文化」(狼のように市場を取りに行くカルチャー)
→現在は、ややマイルド、社是:「完全につながったインテリジェントな世界を実現していく」
・ファーウェイは、深センに隣接した香港を通した外国製電話交換機の輸入業者としてスタート
→1990年代に入ると、中国移動はじめ「国有四天王」が通信業界に勃興
→通信業務の入札獲得によって発展
→現在でも中国移動はファーウェイの国内最大のパートナー
・1985年に深セン市政府が創業した国有企業のZTE(中興通訊[ちゅうこうつうじん])もまた、飛躍へ
→1997年深セン市場、2004年香港市場上場
→ファーウェイは現在まで、非上場を貫く
・長期的な研究開発投資や充実した社員教育・福利を求める任CEO
→短期的利益を要求する株主が障害になると考えている
・任CEOの人柄について、ある古参社員の証言
→「本人はまったく飾らない性格、庶民の服装で愛車のBMWを自分で運転して出勤、社用機もないし、金融業と不動産業は手を出さない」