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中国市場の波乱含みの先行き…ZTE関連:メモリ半導体:新ファンド

世界最大のエレクトロニクス市場を擁する一方で半導体業界の自立化を推進、輸入依存過偏重の打開を国家5ヶ年計画に掲げている中国であるが、米中通商摩擦が続く渦中、その先行きに波乱含みの様相がいくつか見られてきて、熱い活況の世界半導体市場にも大きなインパクトを与える可能性がある。米国政府の制裁を受けて中国の通信機器メーカー、ZTEのスマホ販売が止まり事業売却の動きが見られているのがまずあって、メモリ半導体業界への台湾・Foxconn参入の動き、2つ目の国家ファンドの積み増し、など相次いで目を引いている。

≪諸刃の様相の局面≫

中国の大手通信機器メーカー、ZTE(中興通訊)に対してイランへの製品輸出に端を発する制裁措置を米国政府が行っており、ZTEから措置の中止を求める動きが次の通りである。

◇ZTE asks U.S. Commerce Department to suspend business ban-China's ZTE seeks removal of ban on purchases from US firms (5月6日付け Reuters)
→Shenzhen Stock Exchange(深セン証券取引所)でのfiling。中国のZTEが、米国の会社からのソフトウェアおよびelectronicコンポーネントの購入が7年間禁止される措置を中止するよう米国・Commerce Departmentに申請の旨。同社は、Commerce Departmentの要求の追加情報を出している旨。

米国政府の措置に同調する台湾の動きが当初は見られたが、ここにきて台湾の半導体サプライヤのZTEとの取引を認める方向に傾いている。

◇ZTE Gets a Lifeline in Taiwanese Chip Supplier-Chinese phone maker says a ban on U.S. companies selling it chips threatens its survival (5月7日付け The Wall Street Journal)

◇Taiwan's MediaTek given permission to resume microchip exports to ZTE-MediaTek gets green light to sell chips to ZTE (5月8日付け South China Morning Post (Hong Kong))
→台湾・Ministry of Economic Affairsが、MediaTekに対し、米国半導体ベンダー製ICs購入を禁止されている中国メーカー、ZTEへスマートフォン用チップセットを供給する輸出認可を発行の旨。The Wall Street Journalによると、他の台湾チップセットサプライヤもZTEとのビジネスを行う承認が政府から得られる可能性の旨。

◇Nanya to apply for permit to supply chips to ZTE-Nanya seeks export permit to keep ZTE as a DRAM customer (5月9日付け The Taipei Times (Taiwan))
→台湾最大のDRAM半導体メーカー、Nanya Technology Corp(南亞科技)が昨日、米中貿易摩擦による輸出制限の新たな局面のなか、ZTE Corp(中興通訊)への半導体出荷を続ける許可申請を準備している旨。

制裁を受けてZTEでは、2番手ではあるがスマートフォン販売がストップ状態に追い込まれるなど打撃が広がっている。

◇ZTE、中国でのスマホ販売が事実上停止−米政府制裁で (5月8日付け 日経 電子版)
→中国大手通信機器の中興通訊(ZTE)は8日までに、中国でのスマートフォンの販売が事実上、停止に追い込まれた模様の旨。4月に米商務省から受けた制裁で、米企業からの部品供給が止まったため。広東省深セン市の本社内の直営店で全商品を撤去したほか、自社のネット販売も停止した旨。米制裁から3週間、ZTEのスマホ販売は困難な状況になった旨。
ZTEは中国を代表する大手国有上場企業で、スマホの世界シェアは9位。米国や日本にも取引企業は多く、販売や生産の停止が長引けば、世界のサプライチェーンへの影響は大きくなる旨。

◇China's ZTE says main business operations cease due to U.S. ban-ZTE shuts down operating activities due to US parts ban (5月9日付け Reuters)
→中国のハイテクメーカー、ZTEが、同社へのparts販売を禁止する米国の裁定から"主要事業活動"の停止を余儀なくされている旨。同社は商業義務には依然対応できるとしているが、該禁止を取り消すよう働きかけている旨。

◇U.S. Parts Ban Forces Halt to ZTE Operations-The Chinese smartphone maker, which is heavily reliant on Qualcomm processors, is seeking a reversal of the Commerce Department's ban. (5月9日付け CFO)

ついにはスマートフォン事業の売却が囁かれる事態となっている。

◇ZTE、スマホ事業売却か、中国メディア報道、米制裁で生産困難 (5月10日付け 日経)
→中国国有の通信機器大手、中興通訊(ZTE)がスマートフォン事業の売却を検討していると中国の複数のメディアが9日伝えた旨。同社は米国からの制裁により、スマホの自社生産が難しくなっている旨。売却先には華為技術(ファーウェイ)やOPPO(広東欧珀移動通信)、小米(シャオミ)など中国の有力スマホメーカーが挙がっている旨。

輪郭が見え始めている中国のメモリ半導体業界に対して、台湾のFoxconnもメモリ半導体事業に入る備え、とこれも一波乱の可能性を孕んで事実関係を含め今後に注目である。

◇Taiwan, China Set To Enter Market: Chicken Game Looming in Memory Chip Business (5月8日付け Business Korea)
→Apple iPhoneの製造でよく知られるFoxconn(Hong Hai Precision Industry) Groupがメモリ半導体事業に入る備え、中国が来年メモリ半導体の生産を始める運びであり、10年前のようにメモリ半導体業界でのチキンゲームが起きる懸念が高まっている旨。

◇Foxconn 'eyes semiconductor field' (5月8日付け Ecns.cn)
→Foxconn Technology Groupが熱い活況の半導体事業を展開する動きを立ち上げと報じられているが、業界insidersはelectronics製造giantが半導体設計分野に入るのはなお困難かもしれないとしている旨。

中国の半導体業界自立化に向けた国家ファンドの2つ目の規模が取沙汰されており、約300 billion yuan($47.4 billion)規模と予想を上回るものとなりそうである。米中摩擦が焚きつける結果とも見られている。

◇China Plans $47 Billion Fund to Boost Its Semiconductor Industry-Fund would be used to improve China's ability to design and manufacture advanced microprocessors (5月6日付け Wall Street Journal)
→本件事情通発。米国との摩擦をさらに高めかねない動き、中国が、米国などライバルとの技術gapを縮めようと、同国半導体業界の展開焚きつけに約300 billion yuan($47.4 billion)の新しいファンドを発表する運びの旨。

◇China Said to Raising $47 Billion Semiconductor Fund (5月8日付け EE Times)
→中国国内の半導体業界を強化する2つ目のファンドが、政府後ろ盾の投資会社によりまもなく発表の運び、当初考えられている$19 billion〜$32 billionの規模が、米中間の通商摩擦の結果としてずっと大きくなると思われる旨。

◇New State Semiconductor Fund Bigger Than Expected (5月8日付け EE Times India)

さらなる中国市場関連の動きとして、microprocessor(MPU) IPのArmが中国の合弁に対して技術ライセンス供与の現地化を行っている。

◇Arm Transfers Microprocessor Technology to Chinese JV (5月8日付け EE Times)
→自国の半導体業界強化および海外技術依存削減を図っている中国、microprocessor(MPU) IPのArm Holdingsが先週、同社の現地合弁entity, Arm mini Chinaが中国現地で技術ライセンス供与を行うoperationsを始めたことを確認の旨。この動きで同社中国operationへの技術移転プロセスが実効的に完了、現地の半導体開発者が中国で直接技術ライセンス供与を受けられる旨。

◇Arm Transfers IP to Chinese Joint Venture (5月8日付け EE Times India)

低迷が伝えられる中国スマートフォン市場関連の現下の状況である。

◇China smartphone AP shipments to increase 17% in 2Q18, says Digitimes Research (5月7日付け DIGITIMES Research)
→Digitimes Researchの評価。2018年第二四半期の中国におけるスマートフォン用applicationプロセッサ出荷が、前四半期比17%増の173.8 million個の見込みの旨。スマートフォンベンダーが、3月に発注ペースを踏み上げ始めている旨。2017年第四四半期の不本意なスマートフォンの売上げがベンダーでの在庫調整につながっており、2018年第一四半期の中国でのAP出荷が落ち込んだ旨。

◇中国スマホ販売、1〜3月は減少、新興メーカー苦戦 (5月9日付け 日経)
→米調査会社、IDCが8日発表した統計。中国のスマートフォン市場の2018年1〜3月期の出荷台数は8750万台、前年同期比16%減。前年割れは4四半期連続。販売減が続く中、上位5社の出荷合計が市場全体の86%(前年同期は約70%)を占め、メーカーの優勝劣敗が鮮明になってきた旨。
中国スマホ市場の出荷台数は2017年に前年比4.9%減と通年で初めて減少。
スマホを買えるだけの所得がある層には既に浸透しており、今年に入っても退潮傾向が続いている旨。日本の部品や素材など関連メーカーのビジネスにも影響を与えそうな旨。

中国国内の半導体の取り組みについて改めてあらわした記事に注目させられている。まずは、上海政府のアピールである。

◇Shanghai aiming big at spearheading technology breakthroughs-Shanghai looks to boost innovation in ICs, advanced tech (5月8日付け South China Morning Post (Hong Kong))
→Shanghai Commission of Economy and Information Technologyのヘッド、Chen Mingbo氏、月曜7日のbriefing。上海政府はintegrated circuit(IC)業界を立ち上げ、先端製造の実力を強化、そして最善の人材を引きつける積極的な青写真の編集を今や加速しており、加えて、先進国家との差を狭める試みの中、同市は高度資本集約分野では良い立地にある旨。

国家計画の意味合いが遡ってあらわされている。

◇How China's ‘Big Fund’ is helping the country catch up in the global semiconductor race-Low-profile fund is leading national effort to catch up in global semiconductor industry by raising funds and backing semiconductor start-ups and research and development-Big Fund has large ambitions for China's chips (5月10日付け South China Morning Post (Hong Kong))
→中国は自国electronics工場への供給で毎年billions of dollarsの半導体を輸入しなければならず、同国政府が2014年にBig Fundとして知られるChina Integrated Circuit Industry Investment Fundを設けて対策し始めている貿易不均衡である旨。北京政府は、同国Made in China 2025プログラムの一環として2017年に$260 billionに達した半導体輸入を減らすために同国内半導体業界に出資している旨。

中国半導体業界の今後計画通り伸びていくための要諦が、自戒の念を込めてまとめられている。

◇Integration with global ecosystem key to growth of China's semiconductor industry (5月10日付け ELECTROIQ)
→SEMI ChinaのPresident、Lung Chu氏記事。中国の半導体業界の伸びは、1つは政府の強力な投資および支えになる国家政策により2017年では多くの他の地域における分野拡大を上回っている。しかし中国の半導体業界はまた、過熱投資の重み、首尾一貫しないプロジェクト品質、R&Dへの不十分な投資、革新を図る能力不足および国際協力への障壁を受けて苦しんでいる。これら伸びていく上での逆風に打ち勝つために、中国はグローバル半導体業界の展開におけるグローバルな流れを同定、自らの半導体分野のさらなる拡大に向けて総動員する必要がある力をよりよく理解しなければならない。
以下の本文項目:
 AI and 5G fuel global semiconductor industry growth
 Emphasis on both innovation and investment key to sustainable growth of Chinese IC
 SIIP(SEMI Innovation Investment Platform) China dedicated to international connection and cooperation
 SEMICON China has witnessed the development of Chinese semiconductor industry


≪市場実態PickUp≫

【Intel関連】

Intelの今後のx86の新生面開拓を担うJim Keller氏が、以下の通り紹介されている。

◇Intel's x86 Meets Jim Keller (5月7日付け EE Times/Blog)
→AMDではZen x86 core設計を主導、並びにその前はK8 Athlon。中間には2つの半導体startups、BroadcomそしてAppleでのiPhonesおよびiPads用SoCs設計を経て、4月後半にTeslaからIntelに入ったJim Keller氏。同氏は、microprocessor(MPU)エンジニアとして蓄積されたcareerの最も興味深い課題なるものに直面、2020年代に向けてIntel x86の新生面を開いていく旨。

Intel Capitalの今年今までのstartupsへの投資状況である。

◇Intel Capital pumps $72M into AI, IoT, cloud and silicon startups, $115M invested so far in 2018-Intel Capital invests $72M in a dozen startups (5月8日付け TechCrunch)
→Intel Capitalが、12のstartupsに$72 millionを投資、2018年総額が$115 millionになっている旨。投資先は、artificial intelligence(AI), cloud-ベースサービス, internet of things(IoT), networkingおよび半導体である旨。

最先端プロセスの立ち上げがいろいろ取沙汰されるここのところのIntelであるが、14-nmプロセスのcapacityについても逼迫した現状があらわされている。

◇Intel reportedly suspends H310 supply on tight 14nm capacity (5月8日付け DIGITIMES)
→2018年4月始めに打ち上げられて1ヶ月足らず、Intelの14-nmプロセス製造の新世代H310 desktopプロセッサが供給切れになってきており、motherboard分野筋は同社14-nmプロセスcapacityが厳し過ぎてentry-level desktop CPUsをサポートできないとしている旨。Intelは、H310を14-nm nodeで作る計画はそのまま変更なしと維持している旨。

【メモリ市況あれこれ】

スマートフォンの売れ行きの減速、低迷が各方面から騒がれ始めているが、メモリ半導体は熱い活況が続くというマジックは何なのか。その謎解きが示されている。

◇Memory boost: How chipmakers are weathering slowing smartphone sales-Phone chip sales are slowing, while memory remains hot (5月8日付け Reuters)
→スマートフォン用半導体販売高が今年沈滞状態に見える一方、メモリデバイスは依然活況の汎用品である旨。「スマートフォン出荷数が低迷しているとしても、各々のスマートフォンに入っているメモリ半導体は大容量化および高性能化が進んで、メモリ半導体メーカーにはスマートフォン全体数量の低下が埋め合わされている。」と、Hana Financial Investmentのアナリスト、Kim Rok-ho氏。

メモリ半導体が支えの韓国では、今年いっぱいは上昇、高値が続く見方が発信されている。

◇Memory chip prices set to rise throughout end 2018-Forecast: Prices for memories will increase this year (5月8日付け Yonhap News Agency (South Korea))
→業界watchers、火曜8日発。DRAMおよびNANDフラッシュメモリ半導体のグローバル価格が、2018年年末まで伸びを維持する予想、韓国の半導体メーカーのearningsには明るい見通しとなっている旨。DRAMeXchangeがまとめたデータによると、DDR 4GBモジュールの平均契約価格が4月末時点で$34で1ヶ月前の$33から上昇、DD4 4Gb製品の価格も3.4%進んでいる旨。

メモリ活況を引っ張るDRAMであるが、このところ強まってきている仮想通貨の不安定性が足を引っ張りそうという見方が以下の通りあらわれてきている。今後の推移に要注意となっている。

◇DRAM市況を襲う仮想通貨バブル崩壊 (5月11日付け 日経 電子版)
→高値が続く半導体メモリ「DRAM」市場を仮想通貨バブルの崩壊が揺さぶっている旨。スマートフォン向け、データセンター向けと並び仮想通貨関連の需要はメモリ市場を支える「3本柱」。交換事業者からの不正流出事件で、仮想通貨への不信感が台頭。これらの獲得に使うサーバ向け需要が急減速している旨。スマホ向けも伸びずDRAM価格は2年ぶりに値下がりしそうな旨。

【M&A関連】

米中摩擦の煽りがここにもということか、米欧メーカー間のM&Aが目についている。中国ファンドが狙っていた米国の半導体試験・検査装置メーカー、Xcerra社の買収を米国政府が阻止、こんどは同業のCohu社が買収する動きとなっている。

◇Cohu to acquire Xcerra (5月8日付け ELECTROIQ)

◇Cohu to buy Xcerra for $796 million after blocked Chinese deal -Cohu signs $796M deal to acquire Xcerra (5月8日付け Reuters)
→米国セキュリティpanelが中国国家後ろ盾のファンドへの売却を阻止して2ヶ月、半導体テストのCohu社(Poway, CA)が、そのライバル、Xcerra社を約$796 millionで買収の旨。

もう1つ、IoT開発対応の強化を図って、メモリ製品ベースのAdesto Technologies(Santa Clara, CA)がASICsのS3 Semiconductors(Dublin, Ireland)を買収している。

◇Adesto announces acquisition of S3 Semiconductors (5月10日付け ELECTROIQ)
→IoT時代に向けた革新的application-specific半導体のプロバイダー、Adesto Technologies(Santa Clara, CA)が、mixed-signalおよびRF application specific integrated circuits(ASICs)および設計IPの広範な libraryのグローバルサプライヤ、S3 Semiconductors(Dublin, Ireland)を買収、該取引は約$35 millionの規模、カレンダー2019年末へのあるmilestonesに基づくearn-out provision(業績連動分)が追加される旨。

◇S3 Group to sell semiconductor unit to US-based Adesto-Dublin-headquartered group will concentrate on its connected health unit-Adesto agrees to acquire S3 Group's semiconductor business (5月10日付け The Irish Times (Dublin))

◇Adesto Tech Buys Irish ASIC Vendor S3 (5月11日付け EE Times)
→application-specificメモリ製品プロバイダー、Adesto Technologies(Santa Clara, CA)が、mixed-signal ASICサプライヤ、S3 Semiconductors(Dublin, Ireland)を$35 millionで買収、S3 SemiconductorのASICsおよびAdestoのメモリ製品ベースの統合ソリューションを供給して両社は、IoTシステムの強みでのさらなるintelligenceの必要性を狙っている旨。

【TSMC関連】

TSMCのこの3月そして4月の売上げが、以下の通り大きなアップダウンを示している。スマートフォンの弱含みおよび仮想通貨の不安定性と、現下の市場の懸念要因が映し出されており、推移に注目せざるを得ないところである。

◇TSMC March revenues surge (4月10日付け DIGITIMES)
→TSMCの2018年3月連結売上げが約NT$103.7 billion($3.55 billion)、前月比60.4%増、前年同月比20.8%増、最高を記録の旨。
2018年第一四半期の連結売上げ総計がNT$248.08 billion、前年同期比では6.1%増、しかし2017年第四四半期のNT$277.57 billionからは10.6%減。

◇TSMC April revenues down 21% on month (5月10日付け DIGITIMES)
→TSMCの2018年4月連結売上げがNT$81.87 billion($2.74 billion)、前月比21%減、前年同月比44%増。2018年第二四半期については、前四半期比7-8%減を見込む旨。TSMCは、2018年売上げ伸長予測を前回の10-15%から今回10%に下方修正、スマートフォン需要が予想よりも弱含み、仮想通貨miningが直面している不安定性増大がある旨。

上記のIntelと対照的に、TSMCでは7-nmプロセスがAIはじめ受注の柱になる雰囲気がうかがえている。

◇TSMC 7nm process to attract more orders from China for AI chips-Sources: AI chip firms in China flock to TSMC's 7nm process (5月8日付け DIGITIMES)
→業界筋発。artificial intelligence(AI)応用向けsystem-on-a-chip(SoC)デバイスを設計しているHiSilicon Technologiesなど中国メーカーが、TSMCに該SoCsを同社の7-nm FinFETプロセス製造とするよう発注している旨。HiSiliconの次期7-nm Kirin 980半導体は、Cambricon Technologiesが開発した半導体intellectual property(IP)を取り入れている、と特に言及の旨。

【AI関連】

人工知能(AI)について、米国政府が産官学の総力で今後を議論する場を設ける一方、我が国の経済産業省は共同開発に向けた契約の円滑化を図っている。

◇White House to hold artificial intelligence meeting with companies-Government, industry leaders meet to discuss AI (5月8日付け Reuters)
→White Houseが本日、artificial intelligence(AI)の将来を議論するために政府当局、製造、財務および技術のexecutivesおよび主導大学関係と会合を主催、該会合は"政府および業界の間のcollaboration建設に重要なステップ"と、Information Technology Industry Council(ITI:米国情報技術工業協議会)のPresident、Dean Garfield氏。

◇White House will host Amazon, Facebook, Ford and other major companies for summit on AI (5月8日付け The Washington Post)

◇AI共同開発の成果公平に、経産省、契約の指針案−立場弱いVBに配慮 (5月10日付け 日経 電子版)
→経済産業省は、大企業とベンチャー企業が人工知能(AI)を共同で開発する際、AIがどちらに属するかといった問題を定める契約のガイドラインをまとめた旨。契約のひな型をつくり、ビッグデータを提供してAIを利用する企業と実際に開発する企業との間の争いを未然に防ぐ旨。AIの共同開発を後押しする狙いで、交渉力で弱い立場に置かれがちなベンチャー側の権利に配慮した旨。

AI関連分野向け半導体&ソリューションを引っ張っているNvidiaの最高を更新する業績発表が行われている。

◇エヌビディア、2〜4月期の純利益2.5倍、過去最高、株価は時間外で下落 (5月11日付け 日経 電子版)
→画像処理半導体(GPU)大手の米エヌビディアが10日発表した2018年2〜4月期決算。売上高が前年同期比66%増の$3.207 billionと四半期で過去最高を更新、純利益が同2.5倍の$1.244 billion(約1360億円)と過去最高を更新の旨。主力のゲーム向けが好調だったうえ、人工知能(AI)の一種である「深層学習」でのGPUの利用拡大でデータセンター向けも伸びた旨。データセンター向けの売上高が71%増えて初めて7億ドル台に乗せたほか、任天堂のゲーム機「ニンテンドースイッチ」向けを含むプロセッサも33%増と好調が続いた旨。


≪グローバル雑学王−514≫

再び世界一の大富豪とか、ワシントンポスト買収以降トランプ大統領との確執があれこれ取り沙汰されている、小売り・流通に変革をもたらしてきたEC(electronic commerce:eコマース)の巨人・アマゾンを率いるジェフリー・プレストン・ベゾス氏(Jeffrey Preston Bezos)の壮大な戦略について、

『アマゾンが描く2022年の世界 すべての業界を震撼させる「ベゾスの大戦略」』
 (田中 道昭 著:PHPビジネス新書 387) …2018年1月17日 第1版第4刷発行

より迫っていく。著者は、大学ビジネススクール教授、上場企業の社外取締役や経営コンサルティングの仕事の方。アマゾンは、リアル店舗なるものへの進出にとどまらず、クラウド、宇宙事業、AI、ビッグデータなどの分野へも展開、何を目論んでいるのか?、次なる標的はどこか?、新しいキーワードと展開のスピードに臆することなく読み進めていく心構えになっている。
因みに、米国で生まれる言葉「アマゾンされる」とは、アマゾンに顧客と利益を奪われるとの意味とのことである。


序章 なぜ今、アマゾンに注目が集まっているのか
 ――日本・米国・世界で起きていること

◆2022年11月の近未来
・以下、2022年11月の近未来予想図
 →本書は、アマゾンの大戦略、アマゾンが描く未来予想図を分析、予測していく
  →strategy & marketingの理論と実践を活用
  →内容の実現可能性について検証していくようなつもりで
・2022年11月17日、四ツ谷駅から歩いて5分ほど、無人コンビニエンスストア店舗、「アマゾン365」
 →「リアル店舗xEC拠点x宅配拠点xイートインおよびシェアオフィスの機能を具備したオープンカフェ」
 →EC販売の試着室も用意
 →「サード・プレイス」(居心地の良い第3の場所)としても定着
 →メガネ型ウェアラブル機器、「アマゾン・グラス」
  …音声認識AI、「アマゾン・アレクサ」と接続、話しかけるといろいろな機能が起動
  …骨伝導システム搭載、イヤホンがなくても音声を聞くことができる
 →「0.1人セグメンテーション」
  …1人にターゲットを絞った「1人セグメンテーション」からさらに先鋭化、リアルタイムの行動に合わせてターゲティング
 →仕事を不特定多数の人に細かく分割して行うクラウドソーシング
  …人と人がつながってやる仕事こそが、最後の最後まで人に残される仕事
 →生鮮食料品も数多く販売、単品管理ですべての商品の情報をアプリで見ることができる
 →在庫管理、店頭在庫管理、商品補充までもがAI化、サプライチェーンやバリューチェーン全体もAI化
  …AIで天候予測や需要予測、さらには販売計画や商品管理はもとより、スタッフ管理や顧客管理までも
 →宅配ロッカーから自分の目的地の途中にある会社に届ける荷物を取り出す

◆脅威を増す「アマゾン効果」の定義
・「アマゾン効果」(Amazon Effect)
 →元はECや小売業界に影響、最近ではさまざまな産業や国の金融・経済政策にまで影響
・EC企業、小売り企業、物流企業、テクノロジー企業へと変貌を遂げてきたアマゾン

◆宅配危機の構造 ――取扱量の急増、過重労働、料金の引き上げ
・2016年までの5年間で8割増もの勢いで売上げを伸ばしてきた日本のEC
 →ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便の大手3社で9割以上ものシェアを握っている寡占状態
・「日本で起きていること」がアマゾンを通して鳥瞰できる

◆日本で起きていることを「PEST分析」で読み解く
・PEST分析…政治的・経済的・社会的・技術的要因のそれぞれが、国・産業・企業・人のそれぞれにどのような変化をもたらしているのか分析するツール
・「宅配危機」に影響を与えている要因
 Politics: 政治的要因 アベノミクス 1億総活躍社会 働き方改革
 Economy: 経済的要因 有効求人倍率の上昇 賃金の上昇 アベノミクス
 Society: 社会的要因 人口動態の変化 構造的な人手不足 「ブラック企業」への批判
 Technology:技術的要因 ネット通販の拡大 ロボットやドローンの活用 クラウドソーシングやシェアリング

◆ヤマトの宅配戦略
・このような複合的な環境の変化を受けているヤマト運輸の宅配戦略
 →3C分析(自社の状況、顧客・マーケットの状況、競合の状況の3つを同時に分析した内容から戦略を導き出す)適用
 →アマゾンは短期的にはヤマト運輸からの値上げ要求をいったんは受け入れるしかないという判断
 →アマゾンが自社宅配ネットワークをスピードアップさせて構築していくことは確実では

◆物流革命は起こるか――アマゾンの宅配戦略
・アマゾンでは、品揃え、価格、利便性の3つが顧客第一主義の重要な3要素との考え方
 →自社による宅配ネットワークを新興の宅配事業会社とともに早急に構築することに本気で取り組んでいく
 →中長期的にはアマゾン独自の宅配ロッカー設置を全国的に展開
 →ロボットやドローンを活用した物流革命にも
 →クラウドソーシング(不特定多数の人に仕事を委託したり仕事を分業すること)やシェアリングの仕組みを利用した宅配事業にも

◆「宅配危機」の真の問題点
・「宅配危機」で露呈
 →従業員満足度の問題、社会全体の問題
・「本当の顧客満足とは何か」「企業は顧客だけを満足させればいいのか」

◆「4階層分析」で読み解くアマゾン効果の脅威――米国で起きていること
・4階層分析…国家・産業・企業・人の4階層をダイナミックに同時に分析
・周辺産業である消費財産業、広告産業といった業界もアマゾン効果の影響を受けるように
・アマゾン恐怖銘柄指数(Death by Amazon)
 →アマゾンの収益拡大や新規事業参入、買収などの躍進の影響を受け、業績が悪化
・米国ではアマゾンがダイナミックプライシングという価格最適化の対象を拡大、モノの値段、物価が下がるという期待と懸念が交錯
・アマゾン効果の影響を受けにくい上場企業群…「アマゾン対抗銘柄指標」
 →該銘柄にどのような企業がどのような理由でランクインしているか、これからの日本企業の戦略を占ううえでも重要な情報に
・アマゾン効果の「人」への影響
 →スマホに次ぐ、お茶の間全体を支配しているプラットフォーム、アマゾン・エコー
  …最近米国でスタートしたプライム・ワードロープ
   −7日間、洋服を購入するか返品するか選択できる「自宅が試着室」

◆アマゾン経済圏とアリババ経済圏の戦い ――世界で起きていること
・中国のネット企業、アリババは、すでにさまざまな事業領域において量、質ともにアマゾンを凌駕し始めている
 →米州経済圏と中国+アジア経済圏での消費経済の戦いでも

◆「ジェフ・ベゾスの生の声」から未来が見えてくる
・私(著者)は現在、立教大学ビジネススクール教授、上場企業の社外取締役や経営コンサルティングの仕事
・本書の執筆にあたって最もこだわった点のひとつは、アマゾンの経営者、ジェフ・ベゾスの生の声を聞くこと
・「ゲームのルールが変わる」ことや「メガテック」時代のイノベーションの源泉について論考
 →本書における使命感のひとつ

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