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トランプ大統領に対する反発と備え、半導体業界から見る両面

米国のトランプ政権を巡る混乱のニュースが続いているが、米国の半導体業界のスタンスもそれぞれの局面での対応が見られている。米国南部、バージニア州での衝突で大統領が白人至上主義者たちを直ちに批判しなかった問題では、IntelのCEO、Brian Krzanich氏が早々大統領助言機関のAmerican Manufacturing Councilメンバーを辞任している。一方、トランプ大統領は通商法301条に基づき、中国による知的財産権侵害の調査を米通商代表部(USTR)に指示する大統領令に署名し、米国・Semiconductor Industry Association(SIA)は政権と協働する備えを即刻表明している。

≪「大激転」の世界情勢への対応≫

トランプ政権を巡る動きに続いてスペインでのテロ、そしてにらみ合いの米朝と、まさに「大激転」の世界情勢であり、明確な認識とあるべきスタンスの一層の重みを日々感じるところとなっている。

バージニア州の事態は、次の通り端緒を知らされている。

◇White Nationalist Rally Turns Fatal-Ohio man charged with second-degree murder after car plows into crowd (8月12日付け The Daily Progress (Charlottesville, Va.))

◇Hurt and Angry, Charlottesville Tries to Regroup From Violence-Violence erupts, 1 dead in Charlottesville, Va., protests (8月13日付け The New York Times)
→土曜13日、Robert E. Lee(アメリカ人の司令官で、南北戦争で南部連合軍を率いた)彫像撤去に抗議する白人至上主義者集会で、反対派との間の暴動がCharlottesville, Va.のUniversity of Virginiaキャンパスで発生の旨。

◇トランプ氏批判拡大、白人至上主義、全米で抗議デモ (8月14日付け 日経 電子版)
→米南部のバージニア州シャーロッツビルで起きた白人至上主義団体のクー・クラックス・クラン(KKK:Ku Klux Klan)などと反対派の衝突を巡り、トランプ米大統領への批判が収まらない旨。同氏が人種差別主義者を名指しで非難しなかったことに抗議するデモが13日に全米各地で起き、トランプ氏の登場が米国社会の分断を深めている現実を改めて浮き彫りにした旨。

大統領が白人至上主義者たちを直ちに批判しなかったことへの反発は、グローバル人材の活躍が引っ張っている半導体業界であり、Krzanich氏のCouncilメンバー辞任を早々に引き起こしている。

◇Intel CEO Becomes Third Chief to Quit Trump Council After Riots-CEOs resign from Trump's manufacturing council (8月14日付け Bloomberg)
→IntelのCEO、Brian Krzanich氏が、Under Armour(スポーツ用品メーカー)のCEO、Kevin Plank氏および医薬品メーカー、MerckのCEO、Kenneth Frazier氏に続いて、Donald Trump米大統領のAmerican Manufacturing Councilメンバーを辞任する旨。この動きは、Virginiaでの暴動に直面してTrump氏が白人至上主義者たちを直ちに批判しなかったことによる旨。

◇CEOs of Intel, Merck and Under Armour quit Trump advisory panel over Charlottesville controversy (8月14日付け Los Angeles Times)

◇大統領助言役の辞任相次ぐ、インテルCEOら (8月15日付け 毎日)

◇トランプ氏の人種差別対応、米産業界に批判広がる (8月15日付け 日経 電子版)
→米主要企業は14日、トランプ米大統領の人種差別を容認しかねない言動に反発し、相次ぎ懸念を表明した旨。医薬メルクのトップ(アフリカ系米国人)が政権助言機関から辞任を表明したほか、飲料ペプシコや金融ゴールドマン・サックスのトップなどもトランプ氏を厳しく批判。IT関連企業を軸とするシリコンバレー勢は自社サービスから極右勢力の締め出しに乗り出した旨。

保護主義を訴えるとは言え、人種のるつぼの米国の産業界は、牽引する自動車、半導体などどの分野もグローバルに成り立っているだけに反発は必至であり、大統領は助言機関を以下の通り解体せざるを得なくなっている。

◇Corporate America voices its strongest repudiation yet of Trump as councils disband (8月16日付け Los Angeles Times)

◇Trump's Business Councils Disband After CEOs Defect-Move follows Donald Trump's controversial response to the recent violence in Charlottesville (8月16日付け The Wall Street Journal)

◇米産業界が政権と距離、助言役辞任相次ぐ、大統領は反撃の投稿 (8月16日付け 日経 電子版)
→米産業界にとってトランプ米大統領が一転してリスク要因に、米大手企業の経営トップが14日、相次いでトランプ氏の助言役を辞任した旨。グローバル展開する米主要企業にとって、競争力の源泉として人種の多様性は最重要視する価値。規制緩和や税制改正などで期待していたものの、人種問題を巡るトランプ氏の言動は看過できない旨。トランプ氏の経済政策に好意的だった米産業界との溝を深める契機になりかねない旨。今回の一連のトランプ氏の対応は、米企業の競争力の根幹である「多様性」という価値観を揺るがしかねないとの認識。一部の米企業は人種差別的な問題を抱える政権の片棒を担いだとの批判を免れない、との懸念も高まっている旨。

◇Trump disbands business councils after CEOs quit in protest-CEOs' pullout leads Trump to disband business councils (8月17日付け Reuters)
→Virginiaでのひどい対立についてのコメントに抗議してメンバー数人が辞任、Donald Trump大統領が2つのbusiness councilsを解散、主要会社の8人のexecutivesがAmerican Manufacturing CouncilおよびStrategic and Policy Forumを辞任、離れた旨。

◇The 48 Frantic Hours Before CEOs Broke With Trump (8月17日付け Bloomberg)

◇トランプ氏、2助言組織を解散、企業首脳が相次ぎ辞任 (8月17日付け 日経 電子版)
→トランプ米大統領は16日、米大手企業の首脳らで構成する助言組織の、米製造業評議会と戦略・政策評議会を解散するとツイッターで明らかにした旨。南部バージニア州での白人至上主義団体と反対派の衝突を巡るトランプ氏の発言に抗議し、委員が相次いで辞任したことに伴う措置。トランプ氏が人種差別を明確に否定しなかったと受けとめられ、全米に反発が広がっている旨。

この件では政権との近過ぎる距離は致命傷になるという判断が助言機関のメンバーにみられたものと感じるが、即刻の明確なスタンスの重みを知るところである。

一方、大統領が、通商法301条に基づき、中国による知的財産権侵害の調査を米通商代表部(USTR)に指示する大統領令に署名した件については、米国SIAの以下の即刻の政権と協働する備えの表明でこの事態を知らされている。

◇SIA Statement Regarding Trump Administration Action to Protect U.S. Intellectual Property in Foreign Markets (8月14日付け SIA/NEWS)
→米国・Semiconductor Industry Association(SIA)が、中国の不公正な通商practicesを調査するUnited States Trade Representative(USTR)が主導するプロセスを始めるというTrump政権の決定に反応、SIAのPresident & CEO、John Neuffer氏が本日、ステートメントをリリースの旨。米国半導体業界は、アメリカのintellectual property(IP)および重要技術を海外市場における盗用あるいは強制移転から守るために、Trump政権と協働する備えができている旨。

◇Semiconductor Industry Backs Trump's China Probe (8月15日付け EE Times)

◇SIA Statement Regarding Trump Administration Action to Protect U.S. Intellectual Property in Foreign Markets (8月16日付け ELECTROIQ)

続いて、関連する各国の反応を以下の通り目にしている。

◇トランプ大統領の「以中制北」 …中国に知的財産権侵害カードか (8月14日付け 韓国・中央日報)
→北朝鮮核問題の解決方法を見いだせずにいるトランプ大統領が本格的な中国圧力カードを取り出す雰囲気の旨。米CNN放送は12日(現地時間)、「米中首脳間の電話会談(11日)でトランプ大統領が習近平国家主席に中国の知的財産権侵害調査問題を持ち出した」とし「トランプ大統領は具体的に『14日にライトハイザー(Robert Emmet Lighthizer)米通商代表部(USTR)代表に中国の知的財産権侵害調査を指示する計画』と述べた」と報じた旨。続いて「本格的な米中間の貿易戦争の出発点になるかどうか関心を集めている」と伝えた旨。ニューヨークタイムズも、トランプ大統領が貿易戦争カードで中国を通じて北朝鮮を統制するという『以中制北』戦術を本格化している、と報道した旨。

◇China says US trade probe would violate international rules-China says Trump action violates global trade rules (8月15日付け The Associated Press)
→中国商務省が、Donald Trump大統領の中国のintellectual property(IP)政策への考えられる調査はWorld Trade Organization(WTO)のルールを侵害するとしている旨。それが通商関係を損なうものであれば、中国は、"中国側の正当な権利および利益を断固として守るために適確なすべての対策をとる"としているが、どのような対策が含まれるかはつまびらかにしていない旨。

◇トランプ大統領、「中国の貿易行為」への調査発動の大統領令に署名 (8月15日付け 中国・新華網)
→米トランプ大統領は14日、大統領令に署名し、米通商代表に、中国の技術移転など知的財産権分野に関する対処を含むいわゆる「中国の不公平な貿易行為」に対する調査を発動する権限を授与した旨。米国が一方的な行動を取り、中米貿易関係を損なうのではないかという各界からの懸念を招いている旨。

◇トランプ氏、中国の知財侵害調査指示、北朝鮮対応求め圧力 (8月15日付け 日経 電子版)
→トランプ米大統領は14日、通商法301条に基づき、中国による知的財産権侵害の調査を米通商代表部(USTR)に指示する大統領令に署名、グアム沖へのミサイル発射計画を表明した北朝鮮に対して中国が影響力を行使していないとトランプ氏は不満を強めており、中国への制裁措置の発動も視野に圧力をかける考えの旨。

韓国からは、半導体で米国との問題はないと、次の見方である。

◇IP Right Infringement: Much Attention Paid to US Semiconductor Industry's Cooperation on IP Right Investigation -US stance on IP rights concerns Asia (8月18日付け BusinessKorea magazine online)
→intellectual property(IP)盗用への政府調査を求めるTrump政権の大統領令は主に中国を狙っている一方、韓国は米国半導体メーカーとそれだけの問題はない旨。半導体テスト装置サプライヤ、Xcerraの中国政府支配投資ファンドによる買収は、米国政府が国家セキュリティに関わると見れば、危うくなる可能性の旨。

米国政府の本件調査がすでに開始されている。

◇米、知財侵害で中国の調査開始、通商法301条視野に −北朝鮮締めつけへ圧力 (8月19日付け 日経 電子版)
→米通商代表部(USTR)は18日、中国による知的財産権の侵害を対象に、通商法301条に基づく調査を開始したと発表、トランプ大統領の指示を踏まえた措置で、関税引き上げなどの制裁発動も視野に入れながら、不公正な制度や慣行の有無を検証する旨。

中国による半導体関連M&Aはここ数年非常に活発に行われているのは周知の通りであるが、上記の韓国で注目する1件は次の現下の動きとなっている。

◇Computer-Chip Testing Firm Urges Blocking Sale of Rival to China Fund-Cohu Inc., citing national-security concerns, wants U.S. officials to derail Xcerra Corp.’s planned $580 million sale to a Chinese state-backed group-Cohu wants CFIUS to stop the sale of Xcerra (8月15日付け The Wall Street Journal)
→半導体testing装置サプライヤ、Cohu(Poway, CA)が、米国・Committee on Foreign Investment in the US(CFIUS:対米外国投資委員会)に対し、競合、Xcerra(Norwood, MA)の中国政府が支配する投資ファンドへの売却を、国家セキュリティの観点から阻止するよう求めている旨。該中国ファンドは、Xcerraの$580 millionでの買収に4月に合意の旨。

◇Chip testing firm urges blocking rival Xcerra's sale to China fund-WSJ (8月15日付け Reuters)


≪市場実態PickUp≫

【東芝メモリ入札関係】

日米韓連合とは支払い時期、SKハイニックスの扱いなど懸案含みで東芝メモリの売却交渉が停滞しているが、あくまでも年度内の決着を目指す東芝のスタンスとなっている。米カリフォルニア州上級裁判所からは、米ウエスタンデジタル(WD)に対して行われている情報アクセス制限の一部解除を命ずる裁定が出されている。

◇Toshiba Chip Sale Talks Are Said to Stall On Payment Timing-Toshiba chip unit sale reportedly hits payment snag (8月14日付け Bloomberg)
→本件事情通発。Bain Capitalが主導するコンソーシアム(日米韓連合)に半導体事業を売却する東芝の話し合いが、支払い時期および統治問題を巡って行き詰っており、東芝が素早く取引を完了できるか疑問を投げかけている旨。Bainグループは東芝がパートナーのWestern Digital社との法的係争を打開した後でcash支払いをしたいとしている一方、東芝は先立って受け取りたいとしている旨。

◇韓経:膠着状態の東芝メモリ売却交渉 (8月14日付け 韓国経済新聞/中央日報日本語版)
→世界2位のNAND型フラッシュメモリ製造企業、東芝メモリの経営権売買交渉が長引く様相。東芝側が日本政府との共感の中、SKハイニックスを株式保有対象から締め出すために売却作業自体を原点からやり直す動きを見せているという観測の旨。海外メディアと国内外の半導体業界によると、東芝は子会社の東芝メモリを売却するためSKハイニックスが含まれた韓日米コンソーシアム、米国のNAND型フラッシュメモリ企業、ウエスタンデジタル、台湾最大電子企業の鴻海(ホンハイ)グループの3カ所と交渉している旨。

◇Western Digital wins injunction in Toshiba spat-Western Digital has won a preliminary battle in its fight with Toshiba over its rights in the auction process for Toshiba's memory unit. (8月15日付け Electronics Weekly (UK))

◇WDが予備的差止命令を取得:米州裁、東芝によるWDへの情報遮断禁止期間を延長 (8月15日付け EE Times Japan)
→カリフォルニア州上級裁判所は、東芝がウエスタンデジタル(WD)に対して実施してきた情報遮断措置を禁止する予備的差止命令を発令した旨。

◇Toshiba says court order will not affect memory operations (8月16日付け DIGITIMES)
→東芝が、Superior Court of California for the County of San FranciscoからWestern Digitalの東芝のデータベースへのアクセス再開を命令されたが、これは同社メモリ半導体部門、Toshiba Memory(TMC)のoperationsには影響を与えない旨。

◇米州上級裁、東芝にWDへの情報アクセス制限の一部解除命じる (8月16日付け 日刊工業)
→米カリフォルニア州上級裁判所は15日(現地時間14日)、東芝が米ウエスタンデジタル(WD)に対して行っている情報アクセス制限について、一部解除を命じる判決を下した旨。6月下旬に東芝が情報アクセス制限を実施して以来続いていた係争が、いったん決着した形の旨。東芝は判決内容やアクセス解除範囲などを精査した上で、控訴も含めた今後の対応を検討する旨。

【製品別伸び率】

IC Insightsより、恒例の半導体製品カテゴリー別の本年の市場伸び率が表されている。現下の半導体活況を引っ張るメモリが目立ち、DRAMは55%の伸びとなっている。DRAMのここ5年の推移が示してあるが、かつて取り組んだキロビットの時代を思い起こして、その派手な変化&振る舞いに変わりなしである。

◇DRAM, NAND Flash, Automotive Analog/Logic Among Best-Growing ICs (8月15日付け ELECTROIQ)
→IC InsightsによるWorld Semiconductor Trade Statistics organization(WSTS)分類の33主要製品カテゴリーの伸び率予測改定版。2017年のIC市場全体の伸び率予測が16%、これを越えているのは次の5つのみ。
 DRAM                    55%
 Automotive Special Purpose Logic      48%
 NANDフラッシュ               35%
 Industrial/Other Special Purpose Logic   32%
 Automotive Application Specific Analog   18%
 非常に変わりやすいDRAM市場:
          伸び率    33カテゴリー中の順位
 2013年        32%         1位
 2014年        34          1位
 2015年        -3         18位
 2016年        -8         26位
 2017年(予測)     55          1位

◇DRAM best-growing IC in 2017, says IC Insights (8月16日付け DIGITIMES)

【Nvidia 対 MediaTek】

人工知能(AI)の取り組みをGPUで引っ張って支援するNvidiaの一方、中国市場での競合激化から勢いの後退を感じさせるMediaTek。この4-6月四半期のIC設計売上げで、NvidiaがMediaTekを追い越したとする見方があらわれている。

◇エヌビディア(Nvidia)、AI時代の風に乗る、「ムーアの法則」超えなるか (8月14日付け 日経 電子版)
→知名度は低くとも絶対的な存在感を示す企業が日本の中にも外にもある。
市場の成長が停滞しても拡大を続ける強さの秘密は何か。人工知能(AI)の普及を追い風に「半導体業界の盟主」米インテルを脅かす画像処理半導体(GPU)世界首位、米エヌビディアの強さに迫る。・・・「ムーアの法則は終わった」。老舗企業を挑発するような発言は「AI時代の主役はGPU」という自信の表れだろう。AIの開発には画像などの大量のデータを高速で処理するシステムが必要だ。画像処理に使われてきたGPUはCPU程の精緻な処理には向いていないものの、演算速度の速さでは上をいく。・・・インテルの次の「半導体の盟主」の座を手中にできるのか――。ムーアの法則の次をにらんだ戦いが始まった。

◇MediaTek under pressure to cut chip prices (8月15日付け DIGITIMES)
→業界筋発。QualcommがSnapdragon 450半導体の価格について$10.50を下回る値下げ、MediaTekが競合に向けてmid-rangeスマートフォン用に設計されたHelio P23半導体を$10より安く売るよう迫られている旨。

◇Nvidia overtakes MediaTek as 3rd largest IC design company-Nvidia becomes 3rd largest IC design firm (8月17日付け DIGITIMES)
→Topology Research Institute(TRI)発。2017年第二四半期のIC設計売上げで、NvidiaがMediaTekを抜いて世界第3位に、MediaTekは4位に下がった旨。

MediaTekの早々の反撃に注目するところである。

◇China market: MediaTek to roll out new Helio P series for mid-range smartphones-Report: MediaTek to debut chips for midrange phones (8月17日付け DIGITIMES)
→台湾のTechNews発。MediaTekが、8月29日に北京で開催する製品イベントの招待状を送っており、mid-rangeスマートフォン向けに設計された新しいHelio P23およびP30を投入の旨。TSMCの12-nmプロセス技術により作られるMediaTek Helio P30プロセッサは、4個の2GHz ARM Cortex-A72 coresおよび4個の1.5GHz Cortex-A53 coresを特徴とし、dual-channel LPDDR4メモリをサポートする見込みの旨。該半導体には、最大600Mbpsのダウンロード速度をサポートするCat 10 modemも伴っている旨。

【DRAM価格】

現在の熱い半導体活況がいつまで続くか、供給逼迫から上げが続くDRAMが大きく引っ張っているが、最新状況が以下続いている。逼迫度は緩んでいるが、上げ基調は健在となっている。

◇DRAM contract prices to continue growth in 3Q17, says DRAMeXchange-Data: DRAM contract prices to increase in Q3 (8月11日付け DIGITIMES)
→DRAMeXchange発。2016年後半に上がり始めたDRAM契約価格が、引き続いて2017年後半も伸びる旨。価格は第三四半期に上昇し続ける見込みの旨。
PC DRAMモジュールの平均契約価格が、2017年第一四半期に前四半期比約40%高の$24となり、第二四半期にさらに10%高の$27となっている旨。7月の価格だけで前月比4.6%高の旨。

◇Server DRAM Supply Expected to Remain Tight (8月14日付け EE Times)
→メモリ半導体pricingを追うTrendForce傘下のDRAMeXchange発。第二四半期のDRAMベンダー・トップ3社でのサーバDRAM売上げが、前四半期比30%増、DRAM半導体の供給逼迫が引き続きaverage selling prices(ASPs)を上げている旨。サーバDRAMの供給は2017年を通して依然締まると見ている旨。製品mixの調整にも拘らず、サプライヤはDRAM市場のいろいろ増大する需要への対応に苦しんでいる旨。

◇Server DRAM revenues among top-3 suppliers surge 30% in 2Q17, says DRAMeXchange (8月17日付け DIGITIMES)
→DRAMeXchange発。2017年第二四半期のSamsung Electronics, SK HynixおよびMicron TechnologyのサーバDRAM・トップ3売上げ合計が$4.43 billion、前四半期の約$3.4 billionから30.1%増、引き続く供給逼迫からサーバDRAM製品のASPsが高止まり、売上げが伸びている旨。

◇DRAM Supply Improves Amid Record Sales-Data: DRAM shortage eases during Q2 (8月18日付け EE Times)
→メモリ半導体価格を追っているDRAMeXchange発。electronics supply chainでのDRAM不足がいくぶん緩んでもなお、第二四半期のグローバルDRAM販売高が$16.5 billion以上と史上最高の旨。DRAM不足が第一四半期ほどでなくなって、下流OEM顧客は次第にDRAM在庫を拡げられているが、なお、第二四半期のDRAM売上げは前四半期比約17%増、PCおよびサーバDRAMのaverage selling prices(ASPs)は同10%以上高の旨。モバイルDRAM製品のASPは5%以下高であったが、これは大方多くの中国のスマートフォンbrandsが年間出荷目標を下げていることによる旨。

◇PC DRAM Contract Price Rose by Over 10% Sequentially and Global DRAM Revenue Increase by 16.9% Sequentially Q2 (8月18日付け ELECTROIQ)

ここだけパソコン用の高性能CPUに目を遣ると、競争激化から値を下げている実態がみられている。

◇高性能CPU値下がり、パソコン用の新製品 (8月16日付け 日経)
→ゲーム用パソコンに使う高性能CPUの新製品価格が下がっている旨。米インテルが7日(現地時間)に発表した最上位シリーズ「Core i9」の希望価格は、処理を担うコアを16個搭載した「7960X」が1699ドル、12コアの「7920X」は1199ドル。昨年5月発売の10コアの「Core i7 6950X 」(1723ドル)と比べ安く設定されている旨。競合の米アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)が10日発売したCPUシリーズ「Ryzen Threadripper」は16コア品の希望価格が999ドル、12コア品は799ドル。インテル製品より安く、価格競争が激しくなっている旨。

【人工知能(AI)の取り組み】

富士通およびNEC、そして我が国および台湾について、それぞれにAIに向かって強化を図る取り組みである。

◇富士通やNEC、社内IT人材鍛え直し、SEから発掘、サイバー防衛・AI強化、米の大手追う (8月14日付け 日経)
→富士通、NECなど国内の情報システム大手が、社内でIT人材の再教育を進める旨。1万人規模で在籍するシステムエンジニア(SE)から、サイバセキュリティーや人工知能(AI)の専門家の候補を発掘し、育成する旨。企業のIT需要はクラウドサービスなどに多様化しており、富士通などは従来型のシステム構築を手がけてきた社内SEを鍛え直し、先行する米IT大手を追う旨。

◇AI用半導体、開発支援、高額設備、国が購入、先端研究のハードル低く (8月15日付け 日経)
→経済産業省は人工知能(AI)のデータ処理などに特化した半導体について、ベンチャー企業や研究者による開発を支援する旨。日本の成長力底上げに向け、新しい分野のものづくりを育てる狙い。試作段階から巨額の費用が必要なため大企業以外では手を出しにくく、国がかわりに専用ソフトや設備を買い上げて、先端分野の開発と育成の環境を整える旨。

◇Taiwan science ministry to enforce 4-year AI chips research project -Taiwan will support R&D for AI chips (8月16日付け DIGITIMES)
→台湾科学技術部(Ministry of Science and Technology:MOST)が、artificial intelligence(AI)半導体のR&D支援に向けて、2018年から4年にわたって約$33 million/年を予算化の旨。Taiwan Semiconductor Industry Association(TSIA)が提案したこの政府のAIプロジェクトは、ASE、TSMC、UMCなど半導体事業関係の台湾各社の支持がある旨。

Qualcommは、オランダ・Amsterdam大のスピンオフを買収して対応性を高めようとしている。

◇AI Sees New Apps, Chips, says Q'comm-Researchers pick up Amsterdam team (8月16日付け EE Times)
→QualcommでAIを担当するcorporate R&Dの技術vice president、Jeff Gehlhaar氏。lab作業がmachine learningを新しい応用に役立ち、新しいハードウェアアーキテクチャーを定義づけるよう拡げている旨。同社は、以前一緒にやっていたUniversity of Amsterdam関連の小さなAIリサーチチーム、Scyfer B.V.を買収、Scyferはconsulting firmとして働いて、machine learningを産業, IoT, banking, およびモバイル分野に適用している旨。

◇Qualcomm boosts machine learning capability by buying Scyfer-Qualcomm has bought Amsterdam University affiliate Scyfer, a machine learning specialist.-Qualcomm buys Scyfer for machine learning tech (8月17日付け Electronics Weekly (UK))
→Qualcommが、Amsterdam Universityのspinoff、Scyfer(オランダ)を買収、artificial intelligence(AI), machine learning, computer vision, computer-aided health careおよびcomputer-human interactionにおけるcapabilitiesを高めていく旨。


≪グローバル雑学王−476≫

特に安倍政権の政策に批判的な論調があらわされている筆者ならではの舌鋒、筆鋒が最高潮に達する傾きを感じるが、

『世界経済の「大激転」――混迷の時代をどう生き抜くか』
 (浜 矩子 著:PHPビジネス新書 378) …2017年6月1日 第1版第1刷発行

より、まずは金融政策について財政との一体運営に向かう危うさが指摘されている。通貨の番人たる日銀の独立性が問われるところであるが、意図的にインフレ状態を醸成してデフレ脱却に向かわせる圧力加減に警鐘が鳴らされている。


第3章−1 激転妖怪たちが目論む政策異変――簡単越境時代への妖怪的逆襲

1 人々の絶望が異変の苗床となる

●募るやり場のない憤懣
・カネの越境移動力の高まりに翻弄される国々の金融政策
 →諸通貨の価値が、経済的実力を反映した水準にはなかなか落ち着かない
 →人々が本来享受すべき安定した購買力を不安定化させる
・人々にやり場のない憤懣を鬱積させる、このような状況
 →怒りの渦を栄養剤として、激転妖怪たちが発育を遂げてしまう
 →今、政策の各側面において何をしようとしているのか。以下に

2 妖怪たちは財政と金融のどんぶり勘定が好物

●今、最も拒絶すべき危うい構想
・激転妖怪的政策異変が、最も驚くべき形で進行しているのはどこか
 →それはやっぱり日本
・チーム・アホノミクスが引き起こそうとしている政策異変は、財政と金融の両面に関わるもの
 →火付け役は、内閣参与の浜田宏一先生(イェール大学名誉教授)
  →「シムズ理論」なるものに心酔したと宣言
   …シムズは、Christopher Albert Sims氏(2011年のノーベル経済学賞受賞者)からきている。
  →「意図的無責任財政の薦め」に他ならない
   …なまじ財政再建などにこだわるから、デフレ脱却の埒が明かない

●中央銀行の国債直接引き受けという禁じ手
・この無責任財政大作戦が功を奏するためには、一つ、条件
 →「財政と金融の一体運営」
 →国の財政政策と金融政策を一つのどんぶり勘定の中に放り込んでしまえ
 →もっと露骨には、中央銀行による国債の直接引き受けを解禁
・市場を介さないで中央銀行が直取り引きで政府から国債を買い取ることを意味
 →このやり方でいけば、政府は資金調達のために市場で国債を売り出す必要がなくなる
 →中央銀行による国債の直接引き受けは、今日、国々の政策運営に関わる一大禁止事項に

●「シムズ理論」の実践には禁じ手が不可欠
・シムズ理論が実践に結びつくためには
 →禁じ手の中央銀行による国債の直接引き受けを解禁する必要がある

●日銀に国債が溜まっても胃もたれしない?
・現状において、日本でもこの禁じ手に限りなく近いことが既に
 →「量的質的金融緩和」なる金融政策の一環として、新発国債のあらかたを日銀が買い占めている
・政府と日銀が合体してしまえば、情景は一変
 →日銀が国債の溜まり過ぎで胃もたれを起こすことはなくなる

●政府が何にどれだけカネを使うかわからなくなる
・政府と日銀が金融市場から姿を消せば、国の予算も我々の目の前から姿を消すだろう
 →国民に公共サービスを提供するために存在するはずの国家というものが、好き勝手にカネを使って独自路線を歩み出すことに

●消えた「財政健全化」
・第1章で検討した安倍首相の2017年版施政方針演説における6つの衝撃ポイント
 →そこに書かれていなかった衝撃ポイントその7
  …「財政健全化」

●家計も国家も基礎的収支黒字が健全
・もう1つ、この施政方針演説の中に登場しなかったテーマ
 →2020年度を目指して日本の基礎的財政収支の黒字化を図る
 →家計であっても国家であっても、基礎的収支は黒字であることが会計の健全性の証し

●意図的無責任財政の推進
・財政健全化というテーマは、今回は、安倍政権の施政方針から削除
 →先の「シムズ理論流行らせ大作戦」とが無関係だとは、どう考えてもあり得ない

●「日銀は子会社」発言
・筆者はかねがね、今の日銀はチーム・アホノミクスの中央銀行支部と化すことを強いられていると感じる懸念
 →「日銀は子会社」(2017年3月7日付け日経新聞の特集シリーズ「日本国債」)という首相発言は、断じて許し難い
 →野党やメディアはもっと厳しく追及しないのか。大いに不満
 →中央銀行は通貨価値の番人

●「政府の子会社」という認識は誤り
・『日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない』(日本銀行法第3条第1項)
 『日本銀行の業務運営における自主性は、十分配慮されなければならない』(同第5条第2項)
 →「政府の子会社」だとする認識は明らかにおかしい

●中央銀行の独立性はデリケートなテーマ
・新日銀法の中に「独立性」という言葉が明記されていないところは、いささか弱いと感じざるを得ない面も
 →中央銀行の政策運営については、何かと圧力がかかりやすい
 →法的に独立性を担保しておくことが肝心
・政治的抵抗を押し切って独立性を実質的に確保するためには、敢えて独立 性という言葉を使わないという選択をせざるを得ないか
 →事実、この辺りを巡る論議には、なかなか厄介な面、デリケートなテーマ

●歴史が繰り返されるのか?
・日銀は金融政策に圧力がかかりやすいという問題を提起
 →「インフレ的な経済運営を求める圧力」
 →シムズ理論では、「意図的無責任財政」を展開することでインフレ状態を醸成すべし、といっている
・歴史が繰り返されることになるのか

●日銀のホームページが消える?
・下手をすれば、日銀のホームページそのものが突然、無くなってしまうかも
 →激転妖怪たちとの闘いの中では、こんな考えたくない想定にも、目を向けておく必要
・かの娘ルペン(マリーヌ・ルペン[Marine Le Pen]…フランス「国民戦線」党首)が同じことを主張
 →「財政と金融の一体運営」
 →財政資金の調達を金融市場から完全分離するという構想

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