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SamsungとTSMCの最先端微細化凌ぎ合い & 関連する市場の動き

モバイル機器用プロセッサのhigh endを主流として、人工知能、自動運転など新分野に向けた高性能computing応用向けMPU、GPU開発が勢いよく加わってきて、ARMも両方を見据えて最高性能を狙った設計展開を打ち上げる流れになっている。連動して半導体として製品化する最先端微細化プロセスを競い合う動きを、特にファウンドリーとしてビジネス展開しているSamsungとTSMCの間での10-nm以降の対応で受け止めている。関連する市場の動きの推移の中に、現下の最先端の課題&問題が見えてくるところがある。

≪見えてくる課題&問題≫

10-nmプロセスについて、昨年秋のSamsungとQualcommの連携からSamsungとTSMCの凌ぎ合いを改めて注目させられている。

◇Samsung Makes 10nm Q'comm SoC-Snapdragon 835 beats Apple, Mediatek (2016年11月17日付け EE Times)
→Qualcommが、同社次世代モバイルSoC、Snapdragon 835をSamsungの10-nmプロセスで生産していると発表の旨。該半導体は、TSMCの10-nmプロセスをiPhone 8で計画している半導体に用いているとしているApple、および最初の10-nm SoCを出す可能性を発表しているMediatekなど、競合に対抗する初の10-nmでのモバイルSoCとなる旨。該ニュースは、high-endスマートフォン市場での激しい利益競争およびその競争が引っ張っている半導体プロセス技術を強調している旨。

そして、時間軸がここ数週間となるが、10-nm以降の荒波にもまれる動きが繰り広げられている。まずは、Samsungの今後の技術ロードマップについて波高い見通しである。

◇Samsung to ramp 7nm in 2018-Samsung plans volume production of 7nm chips (3月14日付け DIGITIMES)
→Samsung Electronicsが12日、China Semiconductor Technology International Conference(CSTIC)(上海)にて、同社ファウンドリー技術ロードマップを披露、7-nmプロセスnodeの量産が2018年になる旨。半導体メーカーはsub-10nmプロセス技術への移行でさらに多くの課題に遭遇、該nodeの歩留り改善に苦しむ可能性、と同社技術VP、Ho-Kyu Kang氏。
gate-all-around field-effect transistors(GAA FET)技術が該問題を克服するアプローチになる旨。

10-nm FinFETについて順調な歩留まりを強調しているSamsungでもある。

◇Samsung on track for 10nm FinFET process production ramp-up (3月16日付け DIGITIMES)
→Samsung Electronicsの10-nm FinFETプロセス技術の生産立ち上げが、顧客のニーズに適合して着実な高歩留りで進んでいる旨。Samsungは第1世代10-nm LPE(Low Power Early)シリコンウェーハをこれまでに70,000枚以上出荷、2016年10月に業界初の10LPE量産を開始している旨。2015年に遡って、Samsungは3D FinFET構造ベース、モバイル応用向け14-nm FinFET LPE技術を投入の旨。

10-nm半導体について、Qualcommの台湾・MediaTekに対する優勢ぶりが表わされている。

◇Qualcomm expanding Snapdragon 835 market share at the expense of MediaTek Helio X30-Sources: Qualcomm widens Snapdragon 835 share (3月14日付け DIGITIMES)
→市場筋発。Qualcommが、10-nm Snapdragon 835 SoCsの市場シェアをMediaTekを出し抜いて引き続き拡大、台湾のAPソリューションベンダー、MediaTekは相当品、Helio X30半導体の量産出荷を2017年第二四半期までは行えない旨。10-nm半導体の低歩留りの報道にも拘らず、Qualcommはグローバル主要スマートフォンベンダーからのSnapdragon 835の受注を引き続き獲得、第二四半期から出荷がかなり伸びていく旨。

中国のスマートフォン市場では、MediaTekからQualcommにプロセッサを切り換える動きが伝えられている。

◇Meizu to switch part of smartphone AP orders from MediaTek to Qualcomm in 3Q17, say sources (3月14日付け DIGITIMES)
→上流supply chain筋発。現在スマートフォン出荷の90%超をMediaTek application processor(AP)ソリューションで供給している中国のスマートフォンベンダー、Meizuが、2017年第三四半期にQualcommからのAPソリューションを大きく採用し始める予定、本年のMeizuの出荷の30%がQualcomm-poweredモデルになる見込みの旨。Meizuの動きは、中国国内のライバルベンダー、OppoおよびVivoが2016年第四四半期にスマートフォン生産全体でのMediaTekのAPソリューション使用比率を下げ始めた後に出ている旨。

最先端プロセッサを製造するSamsungとTSMCの凌ぎ合いが生々しく浮かび上がってくるが、まずはSamsungについて、最新工場の進捗状況である。

◇Samsung on schedule to run new chip factory-New Samsung fab will start up by midyear (3月21日付け Yonhap News Agency (South Korea))
→Samsung Electronics Co.が火曜21日、ソウル南部に建設中の同社半導体工場が予定通り今年前半に生産開始予定の旨。ソウルの約70km南、京畿道平沢市(Pyeongtaek)に半導体ラインを建設する15.6 trillion-won($14.4 billion)プロジェクトは、2015年に始まり、1つの生産ラインとしてはSamsung最大の投資規模、該建設の約90%が現在完了している旨。

10-nmプロセス技術は、SamsungがTSMCに若干先行という分析も目に入る現時点である。

◇Samsung Edges TSMC in 10 nm (3月22日付け EE Times)
→veteran半導体アナリスト、Andrew Lu氏。10-nmプロセス技術の立ち上げでSamsungがTSMCよりおおよそ1四半期先行と思われる旨。今年始めSamsungおよびTSMCは、Qualcomm, Mediatek, およびHuaweiの半導体子会社, HiSiliconなどの顧客に向けて10-nmファウンドリーサービスを今年第二四半期の間に打ち上げるとしていた旨。予定よりいくぶん早く、Samsungは先週10-nm LPE(low-power early)半導体のウェーハ70,000枚出荷を発表の旨。

一方のTSMCは、さらに先端の3-nmへの対応が、米国Trump政権に配慮した米国での工場立地の検討とともに以下の通り見られている。

◇TSMC says to decide on U.S. chip plant next year-TSMC puts off US fab decision to 2018 (3月20日付け Reuters)
→TSMCが、米国にウェーハfab拠点を設けるかどうかの決定は2018年以降になる旨。同社Chairman、Morris Chang氏は1月に、多分にTrump政権の意に沿って同社は米国でのfabの考えを除外しない、と述べていた旨。

◇TSMC enlisted US as potential site for 3nm chip production, says paper (3月20日付け DIGITIMES)
→中国語・Economic Daily News(EDN)発。TSMCが、3-nm半導体の生産に向けた新しい製造fabを建設する場所の選択肢として正式に米国の支持を得ようとしている旨。TSMCは以前、先端3-nmプロセス製造拠点として台湾を優先に考えており、該工場を建設する50-80 hectareの土地取得に向けて台湾科学技術部(Ministry of Science and Technology:MOST)からの支援を求めている、と述べていた旨。

◇TSMC still considering plans for 3nm chip production (3月20日付け The China Post)
→TSMCが月曜20日、先端3-nmプロセスへの出資計画が依然検討中の旨。該目的に向けて米国に工場を設けるかどうかを言うのは尚早であり、台湾南部の高雄(Kaohsiung)に建設する可能性に注目している旨。

◇Asian Tech Investment in U.S. May Rise (3月22日付け EE Times)
→TSMCなどアジアのハイテクメーカーが、Trump政権の予想される動きに反応して米国での投資の強まる流れに乗る可能性の旨。今週TSMCは、来年にも新しい米国fabを建設というChairman、Morris Chang氏コメントを繰り返しており、Donald Trump大統領がさらに多くのjobs創出を推進するなか米国での製造を考えている他のグローバルメーカーにたぶんに加わっていく旨。

このような10-nm以降への競い合いが熱を帯びるなか、今後の対応に向けた課題、考え方が様々議論となっている現時点である。

◇Patterning Problems Pile Up-Edge placement error emerges as the top issue at advanced nodes. (3月20日付け Semiconductor Engineering)
→10-nm, 7-nm, 5-nmそしてたぶんそれ以降とデバイスのfeature sizes縮小化は現在そして今後のfab装置を用いて行えようが、edge placement error(EPE)問題を打開する簡単な方法があるように思えない旨。

◇Forget Scaling. Moore's Law Panel Talks Power Consumption.-Panel: Moore's Law and power consumption (3月20日付け Electronic Design)
→SXSW(South by Southwest(R)) conference(2017年3月10-19日:Austin, Texas)でのパネル討議は、トランジスタ寸法のscalingへの重点化ではなく、Moore's Lawがmicrochipsの電力消費に如何に影響を与えるかを考えている旨。研究者たちはエネルギー効率が何桁か改善される半導体を目指している、とUniversity of California at Berkeley(UCB)教授、Tsu-Jae King Liu氏。

≪市場実態PickUp≫

【東芝メモリ入札関係】

入札期限が3月29日と間近に迫り、4月1日に「東芝メモリ」として分社・売却する運びの東芝の半導体メモリ事業を巡る動きが以下の通り慌ただしくなっている。海外への技術流出を防ぐよう日本政府が外為法で事前審査を行う方向に立ち至っている現時点である。

◇Toshiba Memory suitors eye alliances as deadline nears-Chipmakers, chip buyers, funds contend with differing motives-Report: Toshiba bidders may form alliances (3月21日付け Nikkei Asian Review (Japan))
→東芝の半導体事業への入札者が、高価な買収に向けて他の有望な買い手と連携する必要がある可能性の旨。東芝は該売却提案から総額$13.3 billion〜$17.8 billionを実現する可能性、入札期限が来る3月29日。

◇東芝半導体新社、出資陣営づくり活発に、入札締め切りまで1週間、競合や取引先、思惑交錯 (3月22日付け 日経)
→東芝が分社する半導体メモリ事業への出資を募る入札が29日に締め切りを迎える旨。新会社の事業価値は1兆5千億〜2兆円と資金負担が大きく、出資企業側で連合を組む動きが活発化。シェア拡大を狙う競合、メモリの安定調達を求める取引先、高値売却を画策するファンド、政府系金融機関も加わっての情報戦が熱を帯びている旨。

◇東芝の半導体売却、中止勧告も、中・台企業なら外為法で (3月23日付け 朝日新聞DIGITAL)
→経営難に陥っている東芝が進める半導体事業の売却を巡り、政府は、中国や台湾の企業が売却先になった場合に、外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づいて中止や見直しを勧告する検討を始めた旨。東芝の半導体技術を安全保障に関わる重要技術とみて流出を防ぐ考え。政府が実際に勧告に動けば、東芝の売却先選びが制約される恐れもある旨。

◇東芝の半導体メモリ会社、2018年度上場前提に売却、投資ファンドに提案 (3月23日付け 日刊工業)
→東芝が分社して設立する半導体メモリの新会社「東芝メモリ」について、早ければ2018年度の株式上場を前提に売却手続きを進めていることが明らかになった旨。早期上場の計画を示すことで内部収益率(IRR:Internal Rate of Return)を重視する投資ファンドに対し東芝メモリの価値をアピールし、売却額を引き上げる狙い。最低1兆円の資金調達を目指す旨。

◇東芝の半導体売却、政府が外為法で事前審査へ、技術の海外流出防ぐ (3月24日付け 日経)
→政府は経営再建中の東芝が検討する半導体メモリ事業売却を巡り、売却先が外資系企業となる場合、外為法による事前審査の対象とする方針、東芝の一部技術が軍事転用できる恐れがあり、売却の中身次第で計画の中止や変更を勧告する旨。政府系金融機関による一部株式取得を検討するなど、再建加速と、基幹技術や雇用の流出阻止を同時に進める考えの旨。東芝は半導体メモリ事業を4月1日に「東芝メモリ」として分社・売却する計画の旨。

◇Japan to review any foreign sale of Toshiba memory ops-Aims to safeguard military-related technology amid security concerns-Japanese officials will review Toshiba buyers if a foreign entity is involved (Nikkei Asian Review (Japan))

【ARMのDynamIQ設計】

ARMが、Cortex-A半導体設計での高性能化を推進、artificial intelligence(AI)およびmachine learning応用向けのDynamIQ設計を打ち上げている。自動運転およびロボットにも使えるとし、高性能computingに向かう各社の流れに加わっている。

◇ARM pushes its chip performance to catch Intel, AMD-Starting next year, new ARM processors will pack in blazing performance thanks to big changes coming to its Cortex-A chip designs (3月20日付け Computerworld)
→来年からARMプロセッサは、同社Cortex-A半導体設計の大きな変化のお蔭でかなり高速になっていく旨。ARMは、半導体の性能閾値を上げるのに重点化しているAMDなどのライバルの例に倣っている旨。

◇ARM Unveils New Chip Design Targeted at Self-Driving Cars, AI-New ARM design is for AI, self-driving cars (3月21日付け Bloomberg)
→ARMが、同社Cortex-A portfolioに属し、自動車, ゲーム機およびスマートフォンなどの製品におけるartificial intelligence(AI)およびmachine learning応用向けのDynamIQ設計を打ち上げ、これは自動運転車およびroboticsなどhigh-end internet of things(IoT)応用にも使える旨。

◇ARM enters driverless car race with latest design (3月21日付け The Telegraph (London))

◇ARM's latest CPUs are ready for an AI-powered future-'DynamIQ' technology is the next step beyond 'big.Little' multicore CPUs. (3月21日付け Engadget)

◇ARM's DynamIQ eyes performance for AI (3月24日付け EE Times India)

【IntelのOptane SSDs】

その中身、実体になかなか到達し得ないところがある3D XPointメモリ技術を用いる最初のsolid-state drives(SSDs)を、IntelがOptane SSDとして発表している。同等NAND品の3倍の価格とあるが、性能での魅力が問われるところである。

◇Intel Boots Drives with 3D XPoint -Optane prices debut at 3x NAND SSDs-3D XPoint DIMMs already sampling (3月19日付け EE Times)
→Intel社が、同社3D XPointメモリ半導体を用いる最初のsolid-state drives(SSDs)を発表、該Optane SSDsは、フラッシュおよびDRAM半導体の間で新市場を開拓するいくつかの代替選択肢の1つである該技術にとって小さいが意義深い足がかりを構築する見込みの旨。該DC P4800Xは、NVMeインタフェースに乗るサーバdriveであり、当初は375-GByte版で流通価格が$1,520とあり、同様のNAND cardの約3倍の旨。20-microsecond以下のread-and-write latencies、および3年のlifetime見積もりで30-disk-writes/dayの書き換え回数が得られる旨。

◇Intel claims storage speed record with its large-capacity Optane SSD-The Optane DC P4800X SSD has 375GB of storage and is priced at $1,520-New Optane SSD touted for speed, capacity (3月19日付け Computerworld/IDG News Service)
→Intelが、3D XPointメモリ技術で作られたサーバ用Optane DC P4800X solid-state drive(SSD)を出荷しており、価格が$1,520、375 gigabytesのデータストレージの旨。750GBを蓄えられる企業向けOptane SSDを第二四半期に出荷する一方、1.5 terabyteモデルが2017年後半に出てくる旨。

【新装の半導体ロードマップ】

米国SIAはじめ各国・地域の半導体業界で長らくまとめていた国際半導体技術ロードマップ(ITRS)が区切りをつけてIEEEに移されたが、その初めてとなる半導体ロードマップが以下の通り表わされている。長きにわたる半導体の根幹軸、半導体scalingが、2024年頃までに終わりに達するという見方となっている。今後の関係各方面の反応に注目するところがある。

◇Roadmap Says CMOS Ends ~2024-IRDS points to chip stacks, new architectures-Systems innovations are on the horizon (3月23日付け EE Times)
→装い新たな半導体ロードマップに取り組むエンジニアからのwhite paper発。伝統的な半導体scalingは2024年頃までに終わりに達すると見る旨。
良いニュースとして、広範多彩、新しい種類のデバイス、半導体stacksおよびシステム革新が、computing性能, パワーおよびコストにおける利点を引き続き約束している旨。International Roadmap for Devices and Systems(IRDS)の一部として本日発行された9つのwhite papersの1つである旨。
≪総括表≫ …2021年から物理的寸法のred wall
http://m.eet.com/content/images/eetimes/IDRS%20semis%20x%201382__1490304919.png

【Qualcommの新興市場への取り組み】

Qualcommが、low-end携帯電話向けの新製品を投入、インド、南米および東南アジアを目指す一方、台湾・ASEとともにブラジルでのIC組立&テスト工場建設への出資の検討に取り組んでいる。

◇Qualcomm Unveils Product for Lower-Priced Cell Phones-The move represents a shot at rival MediaTek, which recently pushed into the smartphone market that is Qualcomm's stronghold-Qualcomm's new processor targets feature phones (3月20日付け The Wall Street Journal)
→Qualcommが、low-end cellphone市場向けの新製品を投入、インド、南米および東南アジアで販売される$50あたりの価格のfeature phonesを狙っている旨。該製品は、4Gサービス高速化および電池長寿命化に向けた関連ハードウェアおよびソフトウェアを備えたプロセッサを搭載、第二四半期に出荷開始の旨。

◇Brazil investment plan under discussion: Taiwanese IC company-ASE may invest in a Brazilian plant (3月23日付け Focus Taiwan/Central News Agency)
→Advanced Semiconductor Engineering(ASE)およびQualcommが、ブラジルでのIC組立&テスト工場建設についてブラジル政府と2週間前にmemorandum of understanding(MoU)調印の旨。ASEは、該取引はしかしながら拘束力のあるものでなく、正式投資合意締結前にさらに話し合いを要する、としている旨。


≪グローバル雑学王−455≫

グローバル経済の新しい潮流を、新興国の不況、先進国の苦悩をポイントとして、

『経済大変動 「日本と世界の新潮流」を読み解く60の視点』
 (伊藤 元重 著:PHPビジネス新書 368) …2017年1月6日 第1版第1刷発行

より2回に分けて読み解いていく前半である。この3月18日に閉幕したドイツでの20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議にて、共同声明でこれまで盛り込んできた「反保護主義」の記述が米国の強硬な反対に遭い見送られ、自由貿易への結束が揺らぐ事態となっている。世界を主導、世界経済の鍵を握る米国の動向が一層大きく左右する現下の情勢である。


第4章−1 グローバル経済の新潮流を読む−世界経済の鍵を握る米国は何を考えているのか

□新興国の不況、先進国の苦悩
・現在の世界経済を見る上で重要なポイント
 →新興国経済の低迷
  →2008年のリーマン・ショックまでは、新興国経済は驚異的なスピードで成長
   …原動力となったのが、先進国からの資金流入
  →行き過ぎた成長は、リーマン・ショックを契機に大きく変化することに
   …新興国経済の成長の鈍化から、世界全体の成長も鈍化
 →先進国全体の経済的低迷、secular stagnation(長期停滞)
  →日米欧の先進国の多くの国で、マイナス金利政策や量的緩和などの、大胆な金融緩和策
・中国経済の転換の成否は、世界経済全体にも大きな影響
 →トランプ大統領の就任が、こうした世界経済にどのような影響を及ぼすのか、今後の注目点

◆中国経済は「ニューノーマル」へ移行できるのか?
・中国政府からのメッセージ
 →「7%程度の成長率が現実的、『新しい常態(ニューノーマル)』を中国は受け入れるべき」
・たしかに中国が持続的に経済成長するには、ほどほどの成長率を達成することが必要
・30年近く高成長を続けてきた中国経済の特徴
 →「製造業に偏った成長主導型の経済」
 →成長の結果、中国の所得は非常に高くなり、輸出のコスト競争力は弱くなった
・リーマン・ショック後の中国の経済政策
 →変化の方向を模索、インフラ整備や内需産業の拡大によって成長を続けるため、当時の中国政府は4兆元(当時レートで約57兆円)の経済政策を打ち出した
 →成長を一時的には維持することになったが、多くの矛盾を引き起こした
・ニューノーマルへの移行には、いくつか重要なポイント
 →輸出から内需へ、そして製造業からサービス業への大きなシフトが必要
 →サービス産業の質を高めるには海外企業による投資が必要
  …外資による100%出資の現地子会社の設立をどこまで認めるのか注目
 →医療や介護などの産業を育てていくためには、社会保障制度の充実が必要に
  …中国の社会保障制度整備は非常に困難な課題
・成長率を急速に落としていくという「新しい常態」は、様々なきしみをもたらすはず
【視点43】中国が目指す安定した経済成長率の維持、製造業中心の輸出拡大路線から、サービス業中心の内需拡大路線への転換――その鍵は外資系企業の中国市場への参入にある。

◆主要国の株価を乱降下させた中国発の経済ショック
・2015年以降、世界の金融市場を激しく揺さぶってきた中国発の経済ショック
・米国の利上げが近いとの観測、その影響は多くの新興国や途上国に及んでいる
・新興国からの資金逃避が発生することが多かった、過去のグローバルな危機
 →1980年代前半、中南米諸国を中心に起きた累積債務問題
 →1990年代後半のアジア通貨危機、通貨暴落や金融危機の引き金
 →2008年のリーマン・ショック、新興国からの資金流出につながり、危機は世界中に
・マネーのグローバル化
 →基本的に先進国から新興国や途上国への資金移動を促すもの
 →先進国の多くは資金余剰国であるのに対し、新興国や途上国は基本的に資金不足国、貯蓄資金は乏しいが多くの投資機会に恵まれている
・問題は、こうした国際間の資金移動が、非常に不確実な情報の中で行われていること
・経済学で危機の発生と増幅のメカニズムについて多くの研究成果
 →特に興味深いのは、群集行動的な解釈
  …多くの投資家が注意を払うのは、投資対象の資産や国のリスクだけでなく、他の投資家がそのリスクをどうみているかということ
・リーマン・ショックの前、多くの投資家が新興国にチャンスがあるとみて、投資が拡大
 →この確信が揺らいでくると、悪循環に陥り、多くの投資家が新興国から資金を回収へ
  →市場はますます新興国を避けるようになる
  →こうした群集行動が、市場を不安定にする
・2000年代の半ば、世界経済は非常に速いスピードで成長
 →資金は「途上国」「不動産」「資源」という3つの分野に
 →こうした流れは、2008年のリーマン・ショックで終わった
 →中国だけが例外に見え、ショック後の4兆元の経済政策が奏功、一時は12%という高い成長率まで実現
  →この乱暴な経済政策が中国の傷を深めた
  →BRICsの「最後の砦」、中国が混迷
・不動産価格や株価のバブルを解消、不透明な銀行の資産を大胆に整理、過剰な成長期待を捨てる――
 →中国経済を健全な軌道に乗せる唯一の道
【視点44】今後も中国発の経済ショックが世界規模の経済危機に繋がる可能性は高い。そのためにも、中国は加熱した景気を一旦整理し、安定した成長戦略に転換する必要がある。

◆なぜ、途上国・新興国は「米国金利引き上げ」を警戒するのか?
・米国の中央銀行による政策金利引き上げが、グローバル経済に不安感を引き起こしている
 →主要国の中で最も速いスピードでの景気回復を続けている米国
 →途上国からの資金流出を起こすのではないかという不安感を煽っている
・リーマン・ショック前には、巨額の資金が途上国や新興国に流れ、それが世界経済を拡大させてきた
 →資金が流れた3つ:
  「エマージング」(途上国)
  「不動産」(途上国での大きな値上がり)
  「石油などの資源」(途上国の成長による価格引き上げ)
・リーマン・ショックを境に大きく流れが逆転
 →マネーがいっせいにリスクから逃げようとしている
  …「リスクオフ」
・グローバルマネーの動きが途上国経済にとってアゲンストとなっていることは確か
 →ただ、今の状況をあまりに悲観的にとらえるのも問題
 →グローバルマネーも、次の有利な投資先を模索しているはず
【視点45】米国の金利引き上げに伴い、新興国は資金流出を警戒している。リーマン・ショック後のリスクオフの動きを考えれば無理もないが、今後その影響は沈静化するだろう。

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