2016年の世界半導体販売高、1.1%増の$339 billion、史上最高更新
米国Semiconductor Industry Association(SIA)から恒例毎月の世界半導体販売高発表が行われ、今回は昨年12月および2016年年間販売高が示されている。前年を上回るかどうか注目の年間販売高は、1.1%増と史上最高を更新する結果となっている。やっとのこと$300 billionの壁を突破した2013年から振り返ると次の推移となる。
2013年 $305.6 billion → 2014年 $335.8 billion → 2015年 $335.2 billion → 2016年 $338.9 billion
2014年に続く最高更新であるが、モバイル機器とともに新市場・新分野の寄与にかかってくる今後が見えてくるところがある。
≪世界が揺れる新政権スタートの中での発表≫
米SIAからの発表内容が次の通りである。2016年12月の販売高は、前月横這い、前年同月比12.3%増と高水準を保っている。
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◯2016年のグローバル半導体販売高が$339 Billionに−史上最高の年間販売高を記録;12月販売高は前年同月比12%増 …2月2日付け SIAプレスリリース
半導体製造、設計および研究の米国のleadershipを代表するSemiconductor Industry Association(SIA)が本日、2016年のグローバル半導体業界販売高が総計$338.9 billionとなり、該業界史上最高の年間販売高を記録、2015年総計から控え目な1.1%の増加と発表した。2016年12月のグローバル販売高は$31.0 billionに達し、前月と同等、2015年12月販売高を12.3%上回った。第四四半期の販売高、$93.0 billionは、2015年第四四半期を12.3%、2016年第三四半期を5.4%上回った。月次販売高の数値はすべてWorld Semiconductor Trade Statistics(WSTS) organizationのまとめであり、3ヶ月移動平均で表わされている。
「年初鈍いスタートとなったグローバル半導体市場は、年半ばに勢いがついて後戻りすることなく、業界史上最高の年間販売高となる2016年の販売高、約$340 billionに達している。」とSemiconductor Industry Association(SIA)のpresident & CEO、John Neuffer氏は言う。「市場の成長は、マクロ経済要因、業界の流れ、そして、働き、通信し、ものづくりを行い、病気を扱うなど数えきれない応用に世界が依存する機器における増え続ける一途の半導体技術が引っ張っている。2017年以降も控え目な伸びは続くものと見ている。」
いくつかの半導体製品分野が2016年に際立っている。ロジックが2016年に$91.5 billionで販売高最大の半導体カテゴリーであり、半導体市場全体の27.0%を占めている。メモリ($76.8 billion)およびmicroprocessors(MPUs)が含まれるカテゴリーのmicro-ICs($60.6 billion)が、販売高総計でのトップ3分野として続いている。センサおよびactuatorsは最も急成長の分野となり、2016年22.7%増であった。2016年に販売高が増加した他の製品分野として、11.0%増の$32.0 billionの販売高に達したNANDフラッシュメモリ、12.5%増$2.9 billionのdigital signal processors(DSPs)、8.7%増$2.5 billionのdiodes、7.3%増$1.9 billionの小信号トランジスタ、および5.8%増$47.8 billionのアナログがある。
地域別では、中国が年間販売高9.2%増ですべての地域市場を引っ張り、Japanは3.8%増であった。他の地域市場はすべて、Asia Pacific/All Other(-1.7%), Europe(-4.5%), そしてAmericas(-4.7%)と2015年に比べて販売高が減少している。
【3ヶ月移動平均ベース】
市場地域 | Dec 2015 | Nov 2016 | Dec 2016 | 前年同月比 | 前月比 |
======== | |||||
Americas | 5.75 | 6.25 | 6.33 | 10.1 | 1.2 |
Europe | 2.77 | 2.88 | 2.80 | 1.3 | -2.8 |
Japan | 2.57 | 2.90 | 2.84 | 10.5 | -2.0 |
China | 8.45 | 10.04 | 10.17 | 20.4 | 1.3 |
Asia Pacific/All Other | 8.08 | 8.94 | 8.86 | 9.7 | -0.9 |
計 | $27.62 B | $31.02 B | $31.01 B | 12.3 % | 0.0 % |
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市場地域 | 7- 9月平均 | 10-12月平均 | change |
Americas | 5.68 | 6.33 | 11.3 |
Europe | 2.76 | 2.80 | 1.7 |
Japan | 2.81 | 2.84 | 1.2 |
China | 9.47 | 10.17 | 7.4 |
Asia Pacific/All Other | 8.71 | 8.86 | 1.7 |
$29.43 B | $31.01 B | 5.4 % |
--------------------------------------
「力強い半導体業界というものが、米国の経済成長、国家セキュリティ、および科学技術leadershipに戦略的に重要となる。」とNeuffer氏は言う。
「我々は、米国のjob創出および革新を促し、米国ビジネスが海外の競合とより公平な立場で競えるようにする2017年での政策遂行を議会および新政権に促していく。半導体業界、より広範なハイテク分野、そして我々の経済をさらに強化するために、本年これからpolicymakersとの協働に期待している。」
※12月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
⇒http://www.semiconductors.org/clientuploads/GSR/December%202016%20GSR%20table%20and%20graph%20for%20press%20release.pdf
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週後半の今回発表ということもあり、現時点の業界各紙の取り上げ方である。
◇Global semiconductor sales reach $339B in 2016 (2月3日付け ELECTROIQ)
◇Global semiconductor sales climb to record US$339 billion in 2016, says SIA (2月3日付け DIGITIMES)
Trump政権がスタートして激しく揺れるこのところの世界情勢の日々となっているが、米SIAからは半導体業界として2017年に新政権および議会と重点的に取り組んでいく政策項目を次の通り表わしている。
◇Our 2017 Policy Plan to Spur U.S. Semiconductor Industry Growth and Innovation (2月2日付け SIA Blog)
→米SIAがTrump政権および議会と重点的に取り組んでいくとする、米国半導体業界の成長および革新を焚きつける2017年の政策プラン8項目、次の通り:
TAX - 米国の税体系をグローバルに競えるようにする
RESEARCH - 半導体リサーチへの連邦投資を増やす
TRADE - グローバル市場へのアクセスを拡大
EXPORT CONTROL - 商用半導体の輸出について重荷を減らす
WORKFORCE - 米国のハイテクworkforceを強化
ENVIRONMENT, HEALTH & SAFETY - sustainabilityをサポート
ANTI-COUNTERFEITING - 模造半導体の撲滅
INTELLECTUAL PROPERTY - 価値あるIPを保護、革新を増進
早々、通商および移民については政権とSIAがぶつかる可能性が示されている。
◇Chip Group Sets 2017 Policies-SIA, Trump may clash on trade, immigration (2月2日付け EE Times)
中国からも米国からの警戒感に対するコメントが出始めている。しばらくは揺れる中での成り行きをしっかり見定めるべき状況が続いていく。
◇China Seeks to Calm US Concerns Over Semiconductors (1月28日付け China Topix)
→「不必要なパニック状況があり、米国と中国が半導体を巡って衝突を望まない。」と、中国のMinistry of Industry and Information Technology、情報&技術vice director、Peng Hongbing氏。
≪市場実態PickUp≫
【2016年半導体購入額ランキング】
上記の2016年世界半導体販売高と対比させることになるが、こんどは誰が買ったか、購入したか、そのランキングデータが、Gartnerより示されている。スマートフォンを引っ張る2社、SamsungとAppleの依然突出ぶりがあらわれている。中国のメーカー(Lenovo、Huawei、BBK Electronics)の数字にも注目である。
◇Samsung, Apple Remain Top Chip Buyers-Gartner: Samsung, Apple are top chip buyers (2月1日付け EE Times)
◇Samsung and Apple continued to lead as top global semiconductor customers in 2016 (2月1日付け ELECTROIQ)
→Gartner社発。Samsung ElectronicsおよびAppleが2016年も半導体購入額トップ2社、世界市場全体の18.2%を占める旨。2社合わせて2016年は$61.7 billionの半導体を消費、2015年から$0.4 billionの増加。
≪Chip Buyersトップ10ランキングデータ速報≫(金額:USM$):
2015年 | 2016年 | 会社名 | 2015年 | 2016年 | 2015-2016 | 2016年 |
順位 | 順位 | 購入額 | 購入額 | 伸び率(%) | シェア(%) | |
2 | 1 | Samsung Electronics | 30,343 | 31,667 | 4.4 | 9.3 |
1 | 2 | Apple | 30,885 | 29,989 | -2.9 | 8.8 |
4 | 3 | Dell | 10,606 | 13,308 | 25.5 | 3.9 |
3 | 4 | Lenovo | 13,535 | 12,847 | -5.1 | 3.8 |
6 | 5 | Huawei | 7,597 | 9,886 | 30.1 | 2.9 |
5 | 6 | HP Inc. | 8,673 | 8,481 | -2.2 | 2.5 |
8 | 7 | Hewlett Packard Enterprises | 6,485 | 6,206 | -4.3 | 1.8 |
7 | 8 | Sony | 6,892 | 6,071 | -11.9 | 1.8 |
21 | 9 | BBK Electronic | 2,515 | 5,818 | 131.4 | 1.7 |
9 | 10 | LG Electronics | 5,502 | 5,172 | -6.0 | 1.5 |
Others | 211,736 | 210,238 | -0.7 | 61.9 | ||
Total | 334,768 | 339,684 | 1.5 | 100.0 |
[Source: Gartner (February 2017)]
(注) BBK Electronicsは中国のスマートフォンOEM
◇Samsung, Apple still world's biggest chip buyers (2月1日付け ZDNet)
◇Samsung and Apple remain top global semiconductor customers, says Gartner (2月2日付け DIGITIMES)
【ultra-super-cycle】
メモリの需要拡大そして高値が、2016年の半導体販売高を押し上げているが、2017年もその流れの勢いが続くという見方が出てきて、メモリ業界がultra-super-cycleに突入という表わし方になっている。
◇With supplies tight, memory chipmakers head into ultra-super-cycle (1月27日付け Reuters)
→グローバルメモリ半導体業界がultra-super-cycleと呼ばれるものに突き進んでおり、より小さくかつ効率的に作る挑戦が供給bottlenecksを生じている一方、スマートフォンおよびartificial intelligence(AI)から自動運転車およびInternet of Things(IoT)までデータストレージの需要が急増している旨。半導体メーカーおよびアナリストは、benchmarkメモリ半導体の平均価格が昨年は26-31%上昇したが、その価格の盛り返しは供給が依然逼迫することから今年も続くと予想している旨。
◇Memory makers heading into an ultra-super-cycle-Memory chip market goes into overdrive (1月31日付け The Taipei Times (Taiwan)/Reuters)
→メモリデバイス価格が、artificial intelligence(AI), 自動運転車, internet of things(IoT)およびスマートフォンが引っ張って、今年引き続き上昇し続ける見込みの旨。「2017年DRAM業界は単にsuper-cycleではなくultra-super-cycleと見ている。」と、野村証券アナリスト、CW Chung氏。グローバルに供給が逼迫、半導体メーカーは何を作るか、誰に売るか、選ぶことができ、pricing水準がさらにつり上がっていく旨。
【Appleの10-12月業績】
Apple社の10-12月業績が、過去最高の売上高となる一方、最終利益は前年同期比3%減といいながら約2兆円という内容である。サムスン電子のスマホ発火事故による振り替え受注が大きく効いている様相があり、該四半期のシェアも逆転してAppleが2年ぶりの首位となっている。
◇Record iPhone Sales Lift Apple (1月31日付け EE Times)
→Apple社が、3四半期連続の販売高減少の後、12月31日締め四半期で伸びに戻した旨。該四半期売上げは力強いiPhoneの売れ行きで上がっており、iPhone 7+の力強い需要が効いている旨。
◇Apple defies Wall Street with strong revival in iPhone sales (1月31日付け Reuters)
◇アップル1年ぶり増収、日本は2割増、10〜12月 (2月1日付け 日経 電子版)
→米アップルが31日発表した2016年10〜12月期決算。売上高が前年同期比3%増の$78.351 billion(約8兆8400億円)となり過去最高を更新、増収は2015年10〜12月期以来、1年ぶり。単価の高いスマートフォン「iPhone」の大画面モデルの好調な販売が寄与、競合の韓国サムスン電子のスマホが発火し、販売中止になった「敵失」も生かした形。ただ、販促費や研究開発費がかさみ最終利益は同3%減の$17.891 billion。地域別では、中国の売上高が12%減と4四半期連続の減少、一方、米州が9%増、欧州は3%増、日本は20%増の旨。
◇スマホ世界シェア、アップル2年ぶり首位 −サムスン発火事故で (2月1日付け 日経 電子版)
→米調査会社、ストラテジー・アナリティクス、31日発。2016年10〜12月期の世界スマートフォン市場シェアについて、アップルが17.8%でサムスン電子を0.1ポイント上回り、2年ぶりに首位に返り咲いた旨。前の期に8ポイントあった差を逆転、高価格帯のスマホ市場では両社がシェアを分け合う旨。発火事故が起きた後にサムスンが落としたシェアをアップルが吸収した構図が鮮明になった旨。スマホをパソコンやタブレットの代わりに使う場面が増えるなか、大画面モデルに人気が集中している旨。サムスンが発火事故で販売中止に追い込まれたのは最新の大画面モデルで、アップルは敵失で一気にシェアを奪い返した旨。
◇Apple Watch Dominates as Smartwatches Return to Growth (2月2日付け EE Times)
→Strategy Analytics発。Apple社のApple Watchが、2016年第四四半期に63%の市場シェアを獲得、グローバルsmartwatch市場は2四半期連続の減少の後控え目な伸びに戻している旨。
【AI対応ブーム】
現下の人工知能(AI)インパクト余波が続いている。まずは、我が国電機業界における知財戦略である。
◇IoT・AIで変わる電機の知財戦略、日立、契約交渉に担当者、三菱電機、重点技術仕分け (1月30日付け 日経)
→大手電機メーカーの知的財産戦略が変わり始めた旨。日立製作所は知財担当者がデータの取り扱いに関する契約交渉に参加。三菱電機は技術を知財の観点から仕分けして活用する方法を探る旨。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」の普及などで、ビジネスの付加価値が製品・技術から提供するサービスに移る中、技術の普及や営業底上げにつながる戦略を打ち出す旨。
AI特許の趨勢が以下の通りまとめられている。
◇数は米国、攻める中国、AI特許6万件を解剖 (2月1日付け 日経 電子版)
→アスタミューゼ(東京・中央)調べ、主要10カ国・地域の特許庁に出されたAI関連の特許の出願数。以下の概要:
・伸び率断トツは中国 日本はブームに乗れず?
2005〜2009年 2010〜2014年
米国 12147 15317件
中国 2934 8410
日本 2134 2071
・トップ3はIBM、マイクロソフト、グーグル
米国 …老舗から新興メディアまで
中国 …国営企業と大学が上位に
日本 …出願数多いNTTとNEC
・文献データから見える「米中タッグ」
この週末に始まるISSCC 2017でもintelligent半導体が急浮上している模様である。
◇Rush Hour On The Technology Roadmap-Dramatic shifts in the semiconductor industry are evident in this year's ISSCC agenda. (1月30日付け Semiconductor Engineering)
→今週始まるInternational Solid State Circuits Conference(ISSCC)(2017年2月5-9日:San FranciscoダウンタウンMarriott)の今年のテーマは、“Intelligent Chips for a Smart World”。advanceプログラムを見ると、cloud, IoTなど市場分野での従来の重点は過ぎ去って、今やintelligent半導体が如何に世界を変えるかを話している旨。
韓国政府もAI半導体に向かう動きである。
◇Year of 2020 Will See Birth or Use of Korean AI Chip with 256 Electronic Brains -AI chip with 256 cores predicted for 2020 (1月31日付け BusinessKorea magazine online)
→韓国政府の未来創造科学部(Ministry of Science, ICT and Future Planning)、30日発。韓国政府が、今年から4年間超高速、ultra low-lightおよびultra-light AI半導体を作る計画、2月にも“intelligent many-coreプロセッサ開発”プロジェクトを発表する旨。
electronics設計の改善にAIがどうつながるか、リサーチ活動が打ち上げられている。
◇AI Tapped to Improve Design-Electronics center explores machine learning (2月3日付け EE Times)
→DesignConイベント(SANTA CLARA, Calif.)にて、Center for Advanced Electronics through Machine Learning(CAEML)のdirector、Elyse Rosenbaum氏。9社および3大学が、electronics設計における最も手強い問題のいくつかをmachine learningで解けるかどうかを見るリサーチ活動を打ち上げの旨。
9社…Analog Devices, Cadence, Cisco, Hewlett-Packard Enterprise(HPE), IBM, Nvidia, Qualcomm, Samsung, Xilinx.
3大学…University of Illinois Urbana-Champaign, North Carolina State University(NCSU), Georgia Tech
【中国に対する見方】
低コストの供給元からsupply chainsの中核へ、中国の位置づけの移行が示される調査データである。
◇China's role in supply chains continues to grow (1月30日付け ELECTROIQ)
→IHS Markitのグローバル購買executives年次調査第5回、Trends in Global Sourcing Surveyより、低コスト供給元としての中国という見方が弱まってきている旨。「中国が低コストsourcing destinationと同意する回答比率が、2012年調査の70%から2016年には初めて50%を下回った。」とIHS Markitのeconomist、Paul Robinson氏。
◇China's Role in Supply Chains Continues to Grow, Moves Beyond that of a Low-cost Provider-Slight shift in sourcing from U.S. to Mexico, India, and Asia; most companies taking cautious approach to sourcing outside home region in 2017 (1月30日付け IHS Markit)
もう1つは対照的に、半導体業界の自立化を国を挙げて邁進している中国については、以下の通り先行き非常に厳しい評価が見られている。
◇Without Technology, China's “MIC 2025” Results for ICs Likely to Fall Woefully Short of its Goals-IC Insights believes China's self-sufficiency targets for ICs of 40% in 2020 and 70% in 2025 are unrealistic. (1月31日付け IC Insights)
◇Without technology, China's “MIC 2025″ results for ICs likely to fall woefully short of its goals (2月1日付け ELECTROIQ)
→The McClean Reportの2017年20周年記念版には、中国のIC業界でのプレゼンスを高めようという3段階についての分析が含まれる旨。中国政府は、ICデバイスに関して自己充足に向けた長期目標を持っており、その“Made in China 2025”(MIC 2025)計画は、中華人民共和国国務院(China State Council)が2015年5月に発行、ICデバイス充足率が2020年に40%、2025年に70%をmilestonesとしている旨。中国IC業界戦略3段階についての評価:
第1段階 力強い減産専業ファウンドリーの構築
1990年代後半→2000年代始め ⇒うまくいっていない
第2段階 ファブレスICサプライヤ領域での力強いプレゼンス構築
2000年代始め→2000年代半ば ⇒うまくいっていない
第3段階 startups、M&Aをもって強力な中国のICサプライヤ/メーカー基盤構築
2010年代半ば→2010年代後半 ⇒???
◇China MIC 2025 results for ICs likely to fall short of its goals, says IC Insights (2月2日付け DIGITIMES)
≪グローバル雑学王−448≫
世界の各地域における紛争・対立・暴力の経緯、実態を、
『紛争・対立・暴力 −世界の地域から考える』
(西崎文子・武内進一 編著:岩波ジュニア新書 842) …2016年10月20日 第1刷発行
より改めてつぶさに知らされた実感があるが、今回で読みおさめとなる。終章として、我が日本について考えて、安全な観光立国の評価がある一方で見られる近隣諸国との摩擦、とりわけ在日コリアンに対するヘイトスピーチの事例を取り上げている。いままた新たな波乱に富んだ激動含みの世界情勢のなか、それぞれの問題について地域の人びとの思いを本当によく知る重みというものを警鐘的に知らされている。
エピローグ やさしい人びとの平和な国? 日本と日本人について考える…文章(8)
・日本は世界的に見て安全で平和な国と言える
→犯罪に巻き込まれる可能性はもちろんゼロではないが、たいがいの人は無縁の日常生活
・宗教や民族、文化の違いによる民衆同士の衝突、政治的対立による大きな混乱
→今のところはそう心配する必要はなさそう
・国内の治安を守るための情報収集を担当する政府機関、公安調査庁が、治安維持のためにその動向を探っている組織
→過去にテロ事件を起こした宗教団体
→革命を叫んでいる「過激派」グループ
…ともに、少数の人びとの集まり、大きな力を持っているわけではない
→社会主義社会の実現を目標とする政党、日本共産党
…公安調査庁の報告書に記されているのは、政党として当たり前の活動ばかり
→日本に住むコリアン(朝鮮人、あるいは韓国人とも)のうち朝鮮民主主義人民共和国=北朝鮮を支持する人びとの組織、朝鮮総連
…近年の活動は、主には自分たちの組織を守ることや朝鮮民族のための学校の維持に関わることが中心
…内政不干渉=日本の政治に関わらないことを宣言
・20世紀の末頃から増え始めた「ニューカマー」
→日本に暮らす外国人の数は、旧植民地出身者とニューカマー、留学生を合わせると約200万人以上にも
→これらの人びとと日本人との間で、近所付き合い、あるいは学校や職場で何か、深刻な問題として考えている人は少ないのでは
・ここ数年、特定の民族を対象として、酷い言葉を街の中で叫ぶ活動が目立つように
→該ヘイトスピーチの対象となっているのは在日コリアン
→在日コリアン…日本が朝鮮を植民地としていた時期に、朝鮮から日本に渡ってきて生活を始めた人びととその子孫
→日本のなかのエスニックマイノリティ(少数派の民族集団)としては大きなグループ
→朝鮮が日本の植民地となったのは1910年であり、長い歴史を持つ集団
・いうまでもないこと、在日コリアンの側に「差別される理由」は何ひとつない
・差別…正当な理由もないのにある集団全体を劣ったものとしたり、問題があると見なしたりすること
・なぜ在日コリアンが攻撃されるのか、ということは、考えてみると奇妙にも
→日本人とコリアンは姿かたちを見る限り、まず区別することはできない
…アメリカなどでの白人による黒人差別とは異なる
→しかも、在日コリアンのほとんどはもはや日本で生まれ育った人びと
→文化的にも日本人と多くのものを共有
→日本人と在日コリアンの結婚もかなりある
→在日コリアンが関係した婚姻では、「韓国・朝鮮籍」以外の人びと(そのほとんどは日本人)を相手とするケースの方が多い
→在日コリアンは、日本社会のなかで地位を築き活躍する人びとを相当数輩出
→在日コリアンの個々人の努力とともに、差別撤廃の活動、そして少しずつではあっても、日本社会が在日コリアンを受け入れるようになってきた
・にも拘らず、在日コリアンがヘイトスピーチの被害に遭うのはなぜか?
→在日コリアンが「地位上昇」、「活躍」していること自体への反感が一部の日本人にあるよう
→こうした感情はほかの地域の社会のマジョリティ(多数派)にも
…アメリカ社会では貧しい白人が黒人に反感を抱くケースがある
・在日コリアンの「本国」である韓国・北朝鮮と日本との関係が影響を与えていることも
→多くの日本人は北朝鮮に対して安全保障上の脅威を感じている
→韓国について見れば、身近に感じたりする日本人が多いことも確かであるが、「慰安婦問題」をはじめ歴史認識をめぐってギクシャクし続け
・在日コリアンに対する差別は、単なる一国内での多数派と少数派の関係では済まない問題含み
→外交安全保障上の問題、過去の歴史をどう考えるかと大きく関わっている
・確かに、現在の日本では、在日コリアンが、その民族を理由に日本人から暴行を受ける、襲撃される、といった事態が日常的になっているというほどの深刻な状況はない
→けれども、ヘイトスピーチに接した在日コリアンの心の傷は深刻
・これとともに、次のようなことを考える必要
→ヘイトスピーチが行なわれている現場とそれ以外の"日常"は完全に別のものか
→在日コリアンにとって日ごろ接している"普通の日本人"はヘイトスピーチを行う人びととは完全に違う人びとなのか
・在日コリアンにとっては不安やストレスを感じずにはいられないような日常、人間関係があるのが現代の日本社会
→現代の日本社会もやはり問題を抱えている
→日常のなかに、マイノリティの心を傷つけ、押さえつけている構造がそこに
→やさしい人びとの住む平和な日本でよかったとは単純には言えない
・平和な日本、やさしい日本人というイメージは、現代について当てはまるにしても、歴史を振り返るとどうか、外から見た時にそのように見られているか
・日本が近代国家になる過程、つまり幕末から明治の国づくりの期間、日本人同士は、少なくとも国づくりのためには団結し、まとまっていた
→ところが、近隣の外国・異民族とは、「仲良く」とはとても言い難い関係
→近代国家になってすぐの時期から、対外戦争を行った
→植民地を獲得、支配に抵抗する人びとへの弾圧を続けた
・韓国・北朝鮮と日本との現在の関係はうまくいっているとは言い難い点
→そこにはこうした近代日本の歴史が関係
・経済力や技術力を持つ日本が再び強国として他の国に強い姿勢を示すようになるのではないか、戦争への反省も薄らいでいるのではないか
→そのような心配もアジアの隣国の人びとのなかでは消えていない
・過去の加害の歴史の清算、軍国主義的な怖い日本のイメージの払拭のためにしなければならない仕事
→「もう終わった」とは言えない
・日本国内でも異民族に対する大変な暴力が行使されたこと
→関東大震災が起こって混乱状態にあった1923年9月、民衆が作った自警団などが、朝鮮人(植民地時代の日本人は、いまの韓国・北朝鮮の人びとを呼ぶ際に「朝鮮人」と言っていた)に危害を加えた
→かつて経験したことのない大地震と火事の発生、そのなかで正確な情報が伝わらない異常事態で起こったこと
・どこにでもいる庶民が、異民族の迫害に走ったのは、自然災害があってそこで情報が混乱していたというだけでなく、それ以前の民族同士の関係が影響
→関東大震災時の朝鮮人虐殺は、グローバル化が進む現代社会に生きるすべての人が教訓として覚えておくべき史実
・以上、少々、重い、つらい話
・ほかの地域の人びとも、同じように人間として、他者を思いやり、様々な人びとと交わり、助け合いながら営まれる平和な暮らしを望んでいることを実感すること
→世界のそれぞれの良いところ、誇らしい点とともに直面している問題、克服しなければならない課題を知るきっかけに
≪おわりに≫
・2015年10月3日に学術会議主催の公開シンポジウム「亀裂の走る世界の中で」を開催
→その後の現実を見ていると、世界を走る亀裂はますます広がり、また深まっているように
・本書より、亀裂は難民の問題に限られず、じつにさまざまなところで、多様な形で現れている
・該公開シンポジウムの副題、「地域研究からの問い」
→地域研究は、現代社会を構成するさまざまな地域を対象に、それをありのままに理解することを通して、その地域の政治や経済、社会、さらには文化を総合的に考察する学問
→地域研究の方法は、ほんとうに多様
・中東とEU、いま私たちの目の前にある難民の問題を考えようとすれば、双方の知見を持ち寄って対話を行い、その成果を発信することが必要
→地域の別を超えて広がっていく問題は確実に増えている
→地域間の比較を行うことによって、各地域の特徴を明らかにすることも必要
・本書を通して、複雑で矛盾に満ちた現代社会を理解するには地域研究が不可欠というメッセージを伝えられれば幸い