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11月の世界半導体販売高が前年比7%増;米中半導体摩擦が高まる様相

米国Semiconductor Industry Association(SIA)から、恒例の月次世界半導体販売高、2016年11月分が発表されるとともに、米国政府による中国の半導体業界への投資に対して厳しい姿勢をとる動きを歓迎するコメントが表わされている。11月の世界半導体販売高は前年比7%増とほぼ2年ぶりの高い伸びを示し、前月比も2%増で後半の盛り返しが続いており、2016年全体では2015年並みとの見方に弾みがついている。一方では、中国の国を挙げた半導体業界自立化に走る動きに対する警戒感が、新政権への交代を間近に控える米国にて今後高まっていく気配を引き起こしている。

≪販売高が盛り返す中の大国摩擦≫

米SIAからの月次世界半導体販売高の発表が、次の通りである。

☆☆☆↓↓↓↓↓
◯11月のグローバル半導体販売高、前年比7%増加−2015年1月以降最大の前年比伸び;前月比は2%増 …1月3日付け SIAプレスリリース

半導体製造、設計および研究の米国のleadershipを代表するSemiconductor Industry Association(SIA)が本日、2016年11月の世界半導体販売高が$31.0 billion、前月の$30.4 billionから2.0%以上の増加、2015年11月の$28.9 billionから7.4%増加と発表した。11月は、2015年1月以来最大の該市場最大の前年比の伸びを示している。月次販売高の数値はすべてWorld Semiconductor Trade Statistics(WSTS) organizationのまとめであり、3ヶ月移動平均で表わされている。

「11月のグローバル半導体販売高は引き続き弾みがついて、ほぼ2年ぶりの高い伸びで増加、年初からの累計販売高もほぼ2015年の同時点レベルに引っ張られている。」とSemiconductor Industry Association(SIA)のpresident & CEO、John Neuffer氏は言う。「中国市場が引き続き際立っており、前年比約16%の増加、すべての市場地域を引っ張っている。2016年の締めを控えて、グローバル半導体市場は2015年の年間販売高に大体匹敵する様相であり、2017年の手堅いスタートに向けて好位置にある。」

販売高の前月比はすべての地域にわたって控え目な増加、Americasが+3.3%, Chinaが+2.7%, Europeが+2.5%, Asia Pacific/All Otherが+0.7%, およびJapanが+0.4%である。前年比では、Chinaが+15.8%, Japanが+8.2%, Asia Pacific/All Otherが+4.8%, およびAmericasが+3.2%と増加したが、Europeは-1.6%と僅かに減少した。

【3ヶ月移動平均ベース】

市場地域
Nov 2015
Oct 2016
Nov 2016
前年同月比
前月比
========
Americas
6.07
6.06
6.26
3.2
3.3
Europe
2.93
2.82
2.89
-1.6
2.5
Japan
2.68
2.89
2.90
8.2
0.4
China
8.67
9.78
10.04
15.8
2.7
Asia Pacific/All Other
8.53
8.88
8.94
4.8
0.7
$28.88 B
$30.43 B
$31.03 B
7.4 %
2.0 %

--------------------------------------
市場地域
6- 8月平均
9-11月平均
change
Americas
5.43
6.26
15.2
Europe
2.71
2.89
6.4
Japan
2.73
2.90
6.1
China
8.99
10.04
11.8
Asia Pacific/All Other
8.35
8.94
7.1
$28.22 B
$31.03 B
10.0 %

--------------------------------------

※11月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
http://www.semiconductors.org/clientuploads/GSR/November%202016%20GSR%20table%20and%20graph%20for%20press%20release.pdf
★★★↑↑↑↑↑

これを受けた業界各紙の表わし方である。

◇Chip Sales Rose Sharply in November (1月3日付け EE Times)

◇Global semiconductor sales up 7% year-to-year (1月4日付け ELECTROIQ)

◇Global chip sales rise 7% in November, says SIA (1月5日付け DIGITIMES)

上記の月次販売高発表では、Trump政権への切り替わりを間近に控えてか、政治経済情勢には触れていないが、現Obama政権から中国の半導体業界への投資に対して厳しい姿勢をとることを奨める動きが新年早々以下の通り続いている。

◇Chinese Access to U.S. Semiconductor Industry May Be Curbed-Recommendations loom on bolstering protection of industry deemed critical to national security-US may limit China's access to semi industry (1月2日付け The Wall Street Journal)
→Donald Trump米次期大統領の1月20日就任の前に、退いていく現政権が、中国の米国半導体業界に向けた投資への障壁をさらに加えるよう設ける試みの可能性の旨。米国は先月、中国の投資ファンドによるドイツの半導体製造装置メーカー、アイクストロン(Aixtron)の米子会社買収を阻止している旨。

President's Council of Advisors on Science & Technology(PCAST)からObama米大統領に宛てた報告が作成され、White Houseが以下の通り公表している。

◇Obama to Urge Protection for Chip Industry (1月3日付け EE Times)
→the Wall Street Journal発。Barack Obama米大統領が今月後半退任する前に、米国政府が中国の半導体業界への投資に対して厳しい姿勢をとることを奨めるよう準備している旨。米国の国家安全に重大と考えている該報告は、Obama政権の科学&技術トップadviser, John Holdren氏が用意している旨。

◇White House Report Warns of China's Threat to Chip Industry (1月6日付け EE Times)
→White Houseが金曜6日、米国半導体業界、および中国の半導体領域でグローバルプレーヤーになる積極的な取り組みによる脅威について、強い論調の報告を公表、President's Council of Advisors on Science & Technology(PCAST)がBarack Obama米大統領に宛てた該報告は、該市場を歪める中国の政策が引き起こす脅威に対抗するために、米国半導体業界は革新を図りより速く走る必要があると論じている旨。

この報告リリースを米SIAは歓迎し、中国に対する業界としての懸念を新政権に浸透を図っていくものと思われる。

◇SIA Welcomes White House Report on Sustaining U.S. Semiconductor Leadership (1月6日付け SIA/Blog)
→SIAが本日、President's Council of Advisors on Science & Technology(PCAST) Semiconductor Working Groupによる新しい報告リリースを歓迎、米国半導体業界の戦略的重要性および米国の半導体技術リーダーシップを引き続き確保するために克服しなければならない課題を述べている旨。PCASTのco-chairs、John Holdren氏およびEric Lander氏からObama大統領に宛てて添えたletterの中で、該報告の3本柱戦略が強調されている旨。
 (i)  革新を妨げる中国の産業政策に対抗する
 (ii) 米国の半導体生産者のビジネス環境を改善する
 (iii) 向こう10年にわたって変化させる半導体革新を支える

◇As Trump inauguration nears, U.S. chip industry lays out concerns about Chinese rivals (1月6日付け Venture Beat)


≪市場実態PickUp≫

【AIトーンのCES】

年初恒例、International Consumer Electronics Show(CES)(2017年1月5日〜8日:Las Vegas)が開催され、人工知能(AI)が全体を引っ張るトーンを以下の記事はじめ受け止めている。

◇米家電見本市、主役はAI、スマホは早くも失速 (1月4日付け 日経 電子版)
→米ラスベガスで5日(米国時間)から開かれる世界最大の家電見本市「CES」の主役がめまぐるしく変わっている旨。3日に始まった報道陣向け公開では、人工知能(AI)の技術が台頭。自動運転で存在感を示す自動車大手もAIに急接近する旨。スマートフォンの勢いは早くも失速し、「家電」の枠を超えたハイテクの勢力争いは複雑さを増している旨。

◇CES 2017 Connects with AI (1月5日付け EE Times)
→LAS VEGASのMandalay Bay Convention Centerにて火曜3日の"CES Unveiled"が、たくさんのwearablesおよびhearablesをhome appliancesおよびロボットとともに披露の旨。展示はじめ注目内容:
 Olly, AI-enabled robot and speaker with personality
 Mars, Crazybaby's levitating wireless speaker
 ReSound's hearing aids…can be adjusted by a smartphone
 Glucose and Lactose meters
 Cosmo's gyroscope-enabled helmet accessary
 Wireless fitness earphone
 Netatmo's smoke alarm
 Smart bed
 YouCam's augmented reality(AR) makeup app
 E-skin, smart shirt
 iPal, AvatarMind's robot for kids
 Mach-2K, wireless solution for PC Virtual Reality(VR) headsets
 SevenHugs's Smart Remote
 IoT OS for smart buildings
 Akoustic Arts's uni-directional speaker
 Helixee, art cloud storage, part network drive
 CTAのchief、Gary Shapiro氏…今年CESの50周年記念

◇CESの主役に躍り出たアマゾン、米中韓メーカーがAIで急接近 (1月5日付け 日経 電子版)
→米アマゾン・ドット・コムが5日に開幕する米家電見本市「CES」の主役に躍り出ている旨。アマゾンは従来、家電メーカーの販売経路として流通面で重要な役割を果たしてきたが、ここにきて、メーカーに簡単な人工知能(AI)を使ったサービスを手っ取り早く提供する「助っ人」として、表舞台に登場するようになっている旨。

【CESより注目;Nvidia】

CESより各社別に注目。まずは、AI、自動運転など高性能computing領域での先行性が著しいNvidiaについて、同社CEO、Jen-Hsun Huang氏の基調講演を受けて熱い反応に満ちた以下の業界各紙記事内容である。

◇Nvidia shows self-driving supercomputer at CES, names it Xavier-At CES 2017, Nvidia took the wraps off a new computer designed to enable self-driving cars, and announced partnerships with Audi, Bosch, ZF, Here and Zenrin.-Nvidia's Huang shows off a self-driving car at CES (1月4日付け CNET)
→NvidiaのCEO、Jen-Hsun Huang氏がCES 2017での基調講演で、車載グレード, 512-core Volta graphics processing unit(GPU)およびartificial intelligence(AI)プラットフォームに基づく同社Xavierスーパーコンピュータを装備した自動運転車を披露、また同氏は、Nvidia Drive PX2 AI car computer開発の詳細を述べ、自動運転車へのAI技術取り入れでAudi, BoschおよびZFと協働している旨。

◇CES: Nvidia CEO Details Bold Plans To Push Self-Driving Cars (1月5日付け Investor's Business Daily)

◇NVIDIA made a self-driving car with its Xavier supercomputer-The company's AI platform learns to drive by observing humans. (1月5日付け Engadget)

◇Nvidia CEO Rocks CES Crowd with GPU, AI-Huang promotes 2 AI senarios: Auto-Pilot & Co-Pilot (1月6日付け EE Times)
→馴染み深い黒の革ジャケットをまとったNvidiaのCo-founder and CEO、Jen-Hsun Huang氏の水曜4日夜の基調講演が、2,500人の聴衆を沸かせた旨。同社のGPUおよびAIの強い力をもって大変革を起こすgaming, entertainmentおよび明日の交通輸送について話すと、聴衆は一語一語に聞き入った旨。

【CESより注目;Qualcomm】

CESよりもう1社、モバイルプロセッサを引っ張るQualcommに注目。以下の通り、開幕前の年末から取り沙汰されていた携帯端末向け新型チップ、Snapdragon 835を巡る話題が引き続いている。最先端10-nm FinFETプロセスによる小型化がポイントである。

◇Snapdragon 835 To Be Unveiled At CES 2017: Qualcomm's Chip To 'Come Into Focus' At The Big Event (12月30日付け Tech Times)

◇Qualcomm To Launch Snapdragon 835 Next Week at CES: Samsung Galaxy S8 Might First To Use Chip-Qualcomm sets Snapdragon 835 debut (12月31日付け Latin Post)
→Qualcommが、こんどのCESでのSnapdragon 835モバイルプロセッサ披露を確認、該半導体は、Samsung Galaxy S8スマートフォンで出てくる可能性の旨。

◇Qualcomm Unveils New SoC at CES-Snapdragon 835 seen as evolutionary upgrade (1月3日付け EE Times)
→モバイル半導体最大手、QualcommがCES 2017にて、10-nm Snapdragon 835を発表、該新スマートフォンSoCは、すべての同社subsystemsにわたるアップグレードを誇り、アナリストは強い印象を与えるが進化したものとしている旨。

◇クアルコム、3割小型化したチップ発表、ウエアラブル後押し (1月4日付け 日経 電子版)
→米半導体大手、クアルコムが3日、米家電見本市「CES」の開幕に先立ち、小型化した最新チップの仕様を発表、現世代より3割小型化に成功、採用例として同チップを搭載したメガネ型端末も披露した旨。生活の中で装着するには大きすぎることから「弁当箱」と皮肉られてきたメガネ型の端末がついに使い心地を損ねない大きさに収まるようになってきた旨。クアルコムの携帯端末向け新型チップ「スナップドラゴン835」は、回路線幅の微細化を世界で最も進め10-nmとした旨。

◇Qualcomm Snapdragon 835 chips to ship in commercial devices in 1H17 (1月5日付け DIGITIMES)
→Qualcommが、同社10-nm Snapdragon 835-シリーズプロセッサを2017年前半に商用出荷する旨。該半導体は、Samsung Electronics, LG Electronics, Xiaomi, OppoおよびVivoからの採用を引きつけている旨。CES tech show(Las Vegas)にてQualcommは、10-nm FinFETプロセス技術を用いて作られたこの新しいflagshipプロセッサを投入の旨。

◇Snapdragon 835 adds gigabit-class LTE (1月6日付け EE Times India)

◇CES 2017: New Asustek smartphones still feature 14nm Qualcomm chips (1月6日付け DIGITIMES)
→AsustekがCES trade show(Las Vegas)にて、2つの新しいスマートフォン、ZenFone ARおよびZenFone 3 Zoomを投入、ともに紹介されたばかりのQualcommの10-nm Snapdragon 835プロセッサではなく14-nm Snapdragon半導体を搭載の旨。業界筋によると、こんどのSamsung Galaxy S8およびXiaomi Mi 6がQualcommのSnapdragon 835を取り入れる最初のスマートフォンになりそうな旨。

【新工場をめぐる動き】

日中韓の半導体新工場をめぐる動きが続いている。韓国・サムスン電子の世界最大、平沢工場へのリソース投入、稼働開始前倒しである。

◇サムスンが韓国新工場にエンジニア大量投入、世界最大の半導体工場の稼働秒読み=「今の韓国はサムスンが食べさせているようなもの」―韓国ネット (1月2日付け RecordChina)
→2016年12月30日付け韓国・ChosunBiz発。サムスン電子が京畿道平沢市に建設中の世界最大規模の半導体生産団地に技術者を大規模に派遣し、本格的に工場の立ち上げ作業に入った旨。 サムスン電子平沢工場は、1次投資額だけで過去最大の15兆6000億ウォン(約1兆5100億円)を投入した大規模な半導体団地。中長期的には全体の投資額が100兆ウォン(約9兆6900億円)に達するとみられ、平沢工場が稼働すれば世界最大の半導体工場となる旨。平沢工場の稼働計画は、来年の第1四半期にウェーハ投入を開始、第2四半期に3D NAND型製品を出荷する旨。これにより、工場稼働が当初計画より少なくとも6カ月以上前倒しされることになる旨。

中国が国を挙げて取り組むメモリ半導体工場の起工が、以下の概要で行われている。

◇What's that surging down the Yangtze? It's a 3D NAND flash flood-China breaks ground on $24bn memory foundry (1月3日付け The Register)

◇Yangtze River Storage breaks ground for memory plant (1月3日付け DIGITIMES)
→中国の国家が支援するハイテクconglomerate、Tsinghua Unigroupが行なった発表。Yangtze River Storage Technologyが最近、中国湖北省武漢(Wuhan)のDonghu New Technology Development Zoneに位置し、広さ約13ヘクタールの新しいメモリ半導体製造工場を起工した旨。該工場の総投資が$24 billionの見積もり、Yangtze River Storageの51.04% stakeをTsinghua Unigroupがもち、他の株主として、中国・National Integrated Circuit Industry Investment Fund, Hubei IC Industry Investment Fund, およびHubei Science & Technology Investment Groupの旨。

我が国では東芝が、3D NANDフラッシュメモリを生産する新工場建設の検討を始めている。

◇東芝、3次元NAND型メモリの新工場−2019年着工へ (1月6日付け 日刊工業)
→東芝が半導体メモリの新工場を建設する検討を始めた旨。建設地はメモリ工場がある三重県四日市市と受託生産事業の拠点がある岩手県北上市を軸に調整しており、四日市では土地の買収交渉を始めた旨。早ければ2019年の着工を目指す旨。新工場では3次元(3D)構造のNAND型フラッシュメモリを生産する見通し。すでに四日市工場(三重県四日市市)の第5製造棟に隣接する土地について地権者と買収交渉を始めた旨。メモリの生産は四日市工場に集約しており、生産効率を考慮し同工場に新工場を建てる案が有力。一方で半導体受託生産を手がける子会社のジャパンセミコンダクター(岩手県北上市)にも遊休地があり、候補の一つとなっている旨。

【Samsungの2016年10-12月四半期業績】

Samsung Electronicsの2016年第四四半期業績の速報値が、以下の通り発表されている。半導体が力強く、同社全体を支えるとともに、上記の11月の世界半導体販売高で示している盛り返しにも少なからず寄与しているものと考えられる。

◇Samsung's chip, screen sales to drive Q4 profit to 3-year high -analysts (1月3日付け Reuters)

◇Samsung Proves Its Business Remains Sound Despite Note 7 Fiasco-Samsung beats estimates with Q4 profit, sales (1月5日付け Bloomberg)
→Samsung Electronicsの2016年第四四半期のoperating incomeが$7.8 billion、Bloombergがまとめたアナリスト平均評価を上回った旨。
第四四半期販売高も予想を上回り、大方は半導体事業の力強さにある旨。

◇サムスン、10〜12月営業益5割増 半導体好調 (1月6日付け 日経 電子版)
→韓国のサムスン電子が6日発表した2016年10〜12月期連結決算の速報値。
売上高は前年同期比微減の53兆ウォン、営業利益が同50%増の9.2兆ウォン(約9200億円)、利益水準は四半期ベースで過去3番目の高水準。半導体メモリ事業が好調、他社製スマートフォン向けにDRAMとNAND型フラッシュメモリが伸びたとみられる旨。


≪グローバル雑学王−444≫

ボコハラムによる大人数の少女の誘拐が近年のニュースから浮かんでくるが、アフリカにおける紛争・対立・暴力についてルワンダ内戦と中央アフリカ共和国の紛争に焦点を当てて、

『紛争・対立・暴力 −世界の地域から考える』
 (西崎文子・武内進一 編著:岩波ジュニア新書 842) …2016年10月20日 第1刷発行

より見ていく。アフリカの多くの国は、植民地化の結果として誕生し、それまであまり接触もなく、言語や文化も異なる様々な社会集団が同じ国民となっていった経緯があり、分断が深まった例も少なくない。その一方、独立してから深刻な武力紛争を経験していない国も数多く、アフリカの人びとがうまく国家を飼い慣らしてきたことも知らされている。


II 亀裂と暴力を考える

アフリカ―――武力紛争と民族、宗教、国家 …文章(4)

・近年のアフリカ、民族や宗教を異にする人びとの間で暴力を伴う深刻な紛争が起きてきた事実
 →2つの紛争事例を通じてこの問題を考える

◆アフリカの紛争と民族、宗教
・アフリカの紛争発生件数やその犠牲者数は2000年代以降減少傾向に
 →アフリカを「紛争の大陸」といったイメージで見ることは誤っている
 →時として深刻な武力紛争が起こってきたことは確か
・ナイジェリアで誘拐や自爆攻撃を繰り返すボコハラムの例
 →欧米式の教育を否定する極端なイスラム教を信奉、教義に従わない者は――普通のイスラム教徒も含めて――攻撃、抹殺して構わないとの考え
・以下、ルワンダ内戦と中央アフリカ共和国の紛争という2つの事例を詳しく見る
 →何が民族や宗教をめぐる対立を引き起こす要因なのか

◆ルワンダのトゥチとフトゥ
・民族をめぐる問題が極端な形で噴出したのが、1994年のルワンダ
 →4月6日夜に起こった大統領搭乗機の撃墜事件から、少数派民族のトゥチが全土で虐殺される事態が発生
・このときルワンダは内戦状態に
 →1990年以降、北隣のウガンダから反政府勢力「ルワンダ愛国戦線(RPF)」が侵攻
・RPFは、ウガンダの難民キャンプで結成された、トゥチを中核とする組織
 →1950年代に人口の8割程度を占める多数派のフトゥが反乱を起こし、当時支配階層を占めていたトゥチを多数国外に追放したことが原因
 →祖国への帰還を求める第2世代がウガンダでRPFを立ち上げ、ルワンダに攻め込んだ
・大統領搭乗機撃墜事件は内戦の敵、RPFの仕業と考えた政権中枢のフトゥ
 ・エリートは、トゥチの殺害を呼びかけ
・ルワンダの国内情勢の背景
 →フトゥ至上主義者たちは、トゥチ殺戮を主導する一方、RPFとの和解推進を主張するフトゥの野党指導者の暗殺も指示
 →ルワンダの内戦と虐殺は、必ずしもトゥチ対フトゥという構図だけで説明できない
・そもそもトゥチとフトゥの対立の起源はどこにあるのか
 →同じ言葉を話し、宗教に違いはなく、混じり合って居住
 →支配層にトゥチが多く、被支配層にフトゥが多かった
  …一般に、トゥチは牧畜に依存する戦士だったのに対し、フトゥは農民
・19世紀末にルワンダを保護領化したドイツも、第一次大戦後にドイツから植民地統治を引き継いだベルギーも
 →植民地行政の幹部にトゥチだけを登用
 →トゥチとフトゥを区別したうえで、両者の間に差別を持ち込んだ
 →植民地末期に爆発、全国規模で衝突することに

◆中央アフリカの宗教対立
・2013年12月、フランスは中央アフリカ共和国への軍事介入を実施
 →イスラム教徒とキリスト教徒の宗教対立が激化、多数の市民が犠牲になる恐れから
・中央アフリカは、アフリカ大陸の真ん中にある内陸国
 →1960年に独立した後も、独裁政権や政治的不安定が続く
・2003年、元国軍参謀長、ボジゼがクーデターで政権掌握
 →実効的支配は首都など国土の一部に限られ、北部や東部では複数の武装勢力が割拠する状況
・2012年、武装勢力が同盟組織、セレカ(「連合」の意)を結成、首都への進軍を開始
 →2013年3月には首都を攻略、ボジゼを放逐して政権を樹立
・中央アフリカは、人口500万人弱の小国
 →8割程度がキリスト教やアニミズム(祖先や自然を神と考えるもの)を信仰
・北東部の住民や近隣諸国の武装勢力から構成されたセレカは、基本的にイスラム教徒の組織
 →セレカに対する住民の不満の受け皿となったのが、アンチバラカ
  →キリスト教徒であることを前面に押し出し、セレカのみならずイスラム教徒全体を標的として暴力を行使するように
・中央アフリカの紛争は、宗教対立の様相を強く帯びるように

◆アフリカの紛争と国家
・ルワンダと中央アフリカの例
 →共通する点として、まず紛争勃発にあたって近隣諸国の影響が重要であること
・ウガンダで結成されたルワンダの反政府勢力、RPF
 →現ウガンダ大統領、ムセヴェニが内戦に勝利、1986年に政権を樹立すると、多くのルワンダ難民が政府の要職に登用
 →ウガンダ国民から強い反発
 →ムセヴェニは、RPFによるルワンダ侵攻を支援
・中央アフリカについても、近隣諸国の影響は甚大
 →前大統領、ボジゼは、隣国チャドの軍事的支援を得ており、その強い影響下に
 →チャドとの関係が次第に冷却化、チャドはボジゼ政権の不安定化工作に乗り出した
 →こうした近隣諸国との関係を受けてセレカが強大化
・国家の統治に対する人びとの不満は、国家の政治体制や行政能力とも密接に結びつく
 →政権獲得から得られる様々な利権は、大統領とごく少数の取り巻きの間で独占されることが常
・アフリカの多くの国は、植民地化の結果として誕生
 →それまであまり接触もなく、言語や文化も異なる様々な社会集団が同じ国民を構成し、国家の統治をともに担うことに
・アフリカ諸国が続々と独立する1960年代まで80年ほどの期間は、植民地としてヨーロッパ列強による統治
 →住民間の統合を進める政策が採られたことは確かだが、分断が深まった例も少なくない
 →80年は国民の統合には短すぎる
・ふだんは共存しても、いったん紛争が起こると、民族や宗教の違いが人びとを動員する道具として利用される
 →アフリカで頻発する紛争の原因を探っていくと、必ずと言ってよいほど国家をめぐる問題に行き当たる

◆国家を飼い慣らす
・アフリカ大陸と周辺の島嶼部には現在54の国
 →深刻な内戦を経験したのは20ヶ国ほど
 →独立してから深刻な武力紛争を経験していない国も数多く挙げられる
 →人びとは思いのほか国家をうまく運営、重大な武力紛争を回避してきた
・アフリカの人びとも民族と国家に対する帰属意識を同時に持っている
 →ちょうど日本人だという意識と関西人だという意識を同時に持つように
・植民地化によって、いわば外からつくられた歴史を持つアフリカの国々
 →何とか大規模な暴力を回避している国々が少なくないという事実
 →アフリカの人びとがうまく国家を「飼い慣ら」してきたことを示す

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