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Hot Chipsを軸に次世代、新分野への取り組み、連携を見る

マイクロプロセッサを代表として次世代の半導体設計&アーキテクチャーの取り組みが披露されるHot Chips conference(8月21-23日:Cupertino, Calif.)が開催され、長らく親しんだInternational Technology Roadmap for Semiconductors(ITRS)が、International Roadmap for Devices and Systems(IRDS)に代わっていく節目の今年、先々の方向性に向けた1つの場として注目している。また、Artificial Intelligence(AI)、augmented reality(AR)およびvirtual reality(VR)など新分野開拓に向けた各社そして多様な連携が引き続いて展開されている。

≪競い合いと協調≫

今回のHot Chipsの全体概要が、以下の通り示されている。

◇19 Views of Hot Chips (8月26日付け EE Times/Slideshow)
→今回のannual Hot Chipsイベントは、急速に複数の方向に動いている半導体業界を反映、たくさんのエネルギーがmachine learning, smarter carsおよび新規センサにつぎ込まれている旨。該イベントの伝統的な中心、microprocessors(MPUs)は依然健在、IntelがSkylakeを述べる一方、IBMはPower 9を発表、AMDはZen x86コアを披露の旨。以下の項目内容:
 Machine learning schooled on power
 FPGAs OK for AI at Baidu
 Startup eases FPGA programming
 Google calls for speedier silicon
 Getting a ride on smarter cars
 Wireless touch-screen sensor debuts
 Sharper pictures with quantum dots
 Samsung describes custom ARM core
 Big iron clashes on the network
 China's Phytium shows working server silicon
 Server silicon beefs up security
 New thinking, up-and-coming designers

Intelのマイクロプロセッサ(MPU)半導体の圧倒的地位に対する対抗、挑戦が続けて行われている。

◇IBM, AMD and Others Plan Assault on Intel's Chip Dominance-IBM to unveil new details of its Power9 chip; AMD to talk about inner workings of Zen technology (8月23日付け The Wall Street Journal)

長年の市場でのライバル、AMDからは、新しい"Zen"プロセッサが披露され、ここ10年で同社の最も競争力のある製品である可能性という見方があって、株価をも押し上げている。

◇Reports: Chip made by GlobalFoundries beats Intel (8月22日付け Albany Times Union)
→GlobalFoundriesがAdvanced Micro Devices(AMD)に向けて同社Fab 8工場(Malta, NY)で作っている次世代computer用半導体が、半導体最大手、Intelに対抗する性能で半導体業界に大きなインパクトを引き起こしている旨。Intelのトップ半導体より僅かに高速性能と言われるAMDの新しい"Zen"プロセッサを巡る取り上げで、先週金曜19日のAMDの株価が10%上がっている旨。

◇AMD Reveals Zen of X86-New core packs decade of lessons learned (8月24日付け EE Times)
→紙の上ではAdvanced Micro Devices(AMD)をPC microprocessors(MPUs)での復帰にもっていく種類のコアのように見えるZen。annual Hot Chips conferenceでのevening talkで、chief architect、Michael T. Clark氏がZenにおける長々しい改善リストを説明、電力消費は抑える一方AMDの以前のコアに対しinstruction-level parallelismを40%高めるという目標を届ける狙いの旨。これが達成されれば、AMDが来年始めに出し始める該半導体は、同社がここ10年果してない競合水準にある可能性の旨。

◇How AMD designed what could be its most competitive processors in a decade-Analyst: AMD's Zen processors could give Intel a run for its money (8月24日付け VentureBeat)
→Advanced Micro Devices(AMD)の来るZenコア搭載プロセッサはここ10年で同社の最も競争力のある製品である可能性、とMoor Insights & Strategyのアナリスト、Patrick Moorhead氏。「現時点と発表の間にはたくさん行なわれることがあるが、少なくともAMDはここ数年よりはずっと良いプロセッサにおける位置づけにあると思う」旨。

IBMからもIntel対抗で期待のPower9が以下の通りである。

◇IBM's blazing Power9 chip is coming, and here's what you need to know-IBM offers data on the forthcoming Power9 processor (8月22日付け CIO.com/IDG News Service)
→IBMがHot Chips conference(Cupertino, Calif.)にて、同社のPower9プロセッサは最大24コアを特徴とし、複雑な計算を素早く解くcapabilityがある旨。Power9半導体は、$6,000を超える価格のサーバに入る旨。

◇Power9 Opens IBM to Partners-One chip, four variants and tons of eDRAM (8月24日付け EE Times)
→3月に初めて言及され、昨日Hot Chipsの場で初めて説明されたIBMの14-nm Power 9プロセッサは、新しいOEMおよびacceleratorパートナーに種をまき、high-endサーバにおける宿命のライバル、Intelを相手取ったIBMの元気を回復させて、break out半導体になる可能性の旨。一連のbenchmarksを通して、該新半導体が来年後半やってくると、Power 9はPower 8の50%から2倍以上の性能が得られる、と該半導体のlead architect、Brian Thompto氏。

スーパーコンピュータ関係で、ARMが、新しいベクトル命令「SVE(Scalable Vector Extensions)」を発表、2020年を目標に開発されている富士通のポスト「京」スーパーコンピュータ搭載に向けて以下の通り進められている。

◇ARM Reaches for Supercomputers (8月22日付け EE Times)
→ARMが、同社64-ビットV8アーキテクチャーを高性能computingにもっていくようvector instructionsを開発の旨。富士通が該拡張の開発を支援、2011年に8 petaflopsを達成、当時世界で最も強力なシステムとなった日本の理化学研究所でのSparc-ベース・システム、同社K Computerの後継で用いるための旨。この活動は、Intelのx86が席巻している知的価値の高い領域、スーパーコンピュータにARMプロセッサコアを初めて発進させる旨。ARMは、IBMやCrayから自前のプロセッサをゆっくりと置き換えていったIntelのやり方でのプレゼンスを広げる期待の旨。

◇ARM has a new weapon in race to build world's fastest computers-ARM's new supercomputer chip design with vector extensions will be in Japan's Post-K computer, which will be deployed in 2020-ARM aims new chip design at supercomputers (8月22日付け CIO.com/IDG News Service)
→ARM Holdingsが今週のHot Chips conference(8月21-23日:Cupertino, Calif.)にて、64-ビットARM-v8Aアーキテクチャー・ベースでScalable Vector Extension(SVE) featureが入る新しい設計をプレゼン、富士通が該新プロセッサ設計でARMを支援、Post-Kスーパーコンピュータで該設計が用いられる旨。

IntelのMPUを使って世界最高のスーパーコンピュータ性能を実現している中国からは、自前のスパコン用CPU設計開発が披露されている。この中国のPhytium Technologyという会社は、昨年のHot Chipsで「Mars」と呼ぶ64コアのARMv8プロセサを発表した経緯がみられている。

◇Chinese IC design firm unveils 64-core supercomputer processor -Chinese firm designs 64-core processor for supercomputers (8月24日付け Xinhuanet.com (China))
→Phytium Technology Co., Ltd.(Tianjin[天津], China)がHot Chips conferenceにて、スーパーコンピュータ用の64-core central processing unit(CPU)を発案、サーバprototypeを披露の旨。IC設計の同社は、該ARM-ベースFT-2000/64 CPUが、25.38mm2のdie上に4.8 billion個のトランジスタがあるとしている旨。

◇Chinese IC design firm unveils 64-core CPU (8月24日付け China Daily (Beijing))

Nvidiaの自動運転車に向けた"Parker"モバイルプロセッサである。

◇Nvidia takes wraps off Parker chip for self-driving cars-Nvidia debuts mobile processor for self-driving cars (8月22日付け VentureBeat)
→NvidiaがHot Chips conference(Cupertino, Calif.)にて、自動運転車に向けた同社"Parker"モバイルプロセッサの詳細プレゼンの旨。該半導体の2つが、2つのPascal-ベースgraphics processing units(GPUs)とともに同社Drive PX 2プラットフォームで実装され、自動運転車のelectronicsに関係するdeep-learning tasksに適応の旨。

◇Nvidia unveils Tegra Parker mobile SoC (8月24日付け DIGITIMES)

マイクロソフトからは、同社HoloLens augmented reality(AR) headsetに向けて設計されたカスタムvisionプロセッサである。

◇Microsoft Gives Peek at HoloLens Chip-HPU delivers trillion pixel-ops/second-Microsoft details HoloLens processor (8月23日付け EE Times)
→Microsoftが、同社HoloLens augmented reality(AR) headsetに向けて設計したカスタムvisionプロセッサ、HoloLens processing unit(HPU)の中身を初めて披露、該半導体は、trillion pixel-operations/secの処理を行う旨。該HPUは、5つのカメラからの入力、depthセンサおよびmotionセンサを融合、圧縮してIntel Atom-ベースCherry Trail SoCに送る旨。このTSMC 28-nm半導体は、24個のTensilica DSPコアおよび8 Mbytes cacheを65 millionロジックゲートとともに12x12mmパッケージに収めており、1 GByteのLPDDR3が入っている旨。

◇Microsoft sheds some light on its mysterious holographic processing unit-The current HoloLens hardware only uses half of the chip's power. (8月23日付け Ars Technica)

Samsungは、GDDRメモリ技術の今後の展開を示している。

◇New GDDR6 memory could hit GPUs in 2018-Samsung believes the days of good, old GDDR5 are numbered as VR and games demand better graphics-GDDR6 memory tech to be folded into GPUs in 2018, Samsung says (8月24日付け CIO.com/IDG News Service)
→Samsung Electronicsのexecutive、Jin Kim氏がannual Hot Chips conference(Cupertino, Calif.)にて、GDDR6メモリ技術を2年以内にgraphics processing units(GPUs)に取り入れる旨。GDDR5の10 gigabits per second(Gbps)に対し、GDDR6は約14 Gbpsでデータを動かす旨。

Princeton大の興味深い取り組みである。

◇Open source 25-core chip can be stringed into a 200,000-core computer-Researchers craft 25-core 64-bit chip, plan to pack 8,000 chips in a computer (8月23日付け ITWorld.com/IDG News Service)
→Princeton Universityの研究。25-core 64-bit open-sourceプロセッサ、Pitonを構築、これを8,000個詰め込んで200,000-core computerを作り出した旨。

Hot Chips開催と並行する時間軸で、新分野を切り拓く各社、そして様々な連携の取り組みが繰り広げられており、気がついた一部をかいつまむ形で以下に順不同示している。

◇Qualcomm Names Upcoming Server Family Centriq-Qualcomm launches Centriq line of ARM-based SoCs for servers (8月19日付け eWeek)
→Qualcommが、データセンター事業に向けた子会社、Qualcomm Datacenter Technologies unitを設け、今年サンプル生産を始める目標の旨。サーバ用ARM-ベースsystems-on-a-chip(SoCs)の次期ファミリーの名称はCentriqである旨。

◇Analogix chip-set helps enable AR/VR-Analogix to sample chipsets for AR/VR applications (8月19日付け Electronics Weekly (U.K.))
→Analogix Semiconductor(Santa Clara, CA)が、augmented reality(AR)およびvirtual reality(VR)応用を狙って、第四四半期にANX7440およびANX7430をサンプル配布、該チップセットは、来年の第二四半期に量産に入る旨。

◇Intel Brings Xeon Chips to AT&T's Network Virtualization Effort-AT&T taps Intel, Xeon chips for SDN, NFV efforts (8月22日付け eWeek)
→Intelが、internet of things(IoT)処理サポート供給の足場を求めて、AT&Tとの合意を拡張、該carrierは、software-defined networking(SDN)およびnetwork functions virtualization(NFV)技術に関する活動の一環としてIntelのXeonプロセッサを運用する旨。

◇Google's Tensor Processing Unit explained: this is what the future of computing looks like-Google dishes on its low-power machine-learning chip (8月22日付け TechRadar.com (U.K.))
→GoogleのDistinguished Hardware Engineer、Norm Jouppi氏が、同社Tensor Processing Unit(TPU)について。「TPUにより、現在購入できる標準ソリューションより一桁良い性能/wattが得られる」旨。

◇アップル、人工知能で法人向けサービス強化 (8月25日付け 日経 電子版)
→米アップルが、人工知能(AI)を使った法人向けサービスに乗り出した旨。
独IT大手、SAPと自動応答する対話アプリを開発、米シスコシステムズ、米IBMとはAIを使ったデータ分析サービスの開発に向けた協議を始めた旨。主力のスマホ「iPhone」販売は停滞しており、業務用サービスの充実で単価の高い大型タブレットなどの法人向け販売を増やす狙いの旨。

網羅するには到底程遠い現下の動きを受け止めている。


≪市場実態PickUp≫

【ルネサスが米半導体買収報道】

8月22日月曜のルネサスエレクトロニクスが米インターシルの買収最終交渉に入ったという次の日経の報道を受けて、以下に続く業界各紙、各日付けの表わし方となっている。

◇ルネサスが米半導体買収へ、3000億円、車用に的 (8月22日付け 日経 電子版)
→ルネサスエレクトロニクスが、米同業のインターシル(カリフォルニア州)を買収する方向で最終交渉に入った旨。買収額は最大で3000億円規模、早ければ月内にも基本合意する旨。省電力半導体に強みを持つインターシルを傘下に収め、自動運転などで広がる車載用半導体市場で先行する狙い、リストラを終えたルネサスは買収をテコに成長軌道を取り戻したい考えの旨。

◇Renesas in talks for chip maker Intersil for $3 billion (8月21日付け Market Watch)

◇Chipmaker Intersil Is Reportedly in Talks to be Bought for About $3 Billion (8月22日付け Fortune)

◇Japan's Renesas in talks to buy US chipmaker Intersil for $3bn-Japan's Renesas finalizing $3B acquisition of US chipmaker (8月22日付け Nikkei Asian Review (Japan))
→車載用半導体で最も良く知られる日本のハイテクメーカー、Renesas Electronicsが、米国の半導体メーカー、Intersilを$3 billionで買収する話し合いが進んでいる旨。金曜19日、Nasdaq上場取引のIntersilの株式時価総額が$2.1 billion以上であった旨。

◇ルネサス、自動運転・EV対応、再成長へカジ (8月22日付け 日経)
→ルネサスエレクトロニクスが米インターシルの買収に動くのは自動運転や電気自動車(EV)の普及といった自動車産業の急速な変化に対応するための旨。同社が持つ電力を調整して省エネにつなげる半導体は車載向けに需要が拡大しており、買収によりかねて強い分野の製品を増やし、自動車部品メーカーへの提案力を高める旨。構造改革で縮小均衡に陥っていたルネサスは再成長にカジを切る旨。

◇Renesas Sets Sights on Intersil (8月23日付け EE Times)
→日経が月曜早く、Renesas Electronicsが"Intersilを買収する交渉の最終段階にある"と報道、RenesasもIntersilも現時点この報道を確認していない旨。EE Timesの問い合わせには、両社ともにコメントを控えている旨。

シリコンバレーで草創期から馴染みがあり、革新的なパワーマネジメントと高精度アナログ・ソリューションで知るところのインターシルであるが、本件実際どうなのか、今後に注目である。

【2016年専業ファウンドリー・販売高トップ10予測】

IC Insightsより、2016年の専業ファウンドリー・販売高トップ10予測が表わされている。世界半導体販売高予測では、本年はまたマイナスかという見方があるなか、9%増と専業ファウンドリー分野の力強さとなっている。ベンダー別では、M&A強化を図っているTowerJazzと中国市場を引っ張るSMICの伸びが大きく目立っている。

◇TowerJazz and SMIC's sales forecast to surge in 2016 (8月23日付け ELECTROIQ)
→IC Insightsが今月始めリリースしたAugust Update to the 2016 McClean Reportから、専業ファウンドリーのトップ10ランキング:2014〜2016年の推移&予測、下記参照。
http://electroiq.com/wp-content/uploads/2016/08/tsmc-sales-forecast.png
2016年の伸びについて、SMIC(ランキング予想4位)が27%、TowerJazz(同5位)が30%と突出の旨。

◇Foundry to grow 9%, says IC Insights-The pure-play foundry market is expected to jump 9% this year, up from 6% growth in 2015, says IC Insights.-IC Insights: Pure-play foundry revenue to rise 9% in 2016 (8月24日付け Electronics Weekly (U.K.))

◇TowerJazz and SMIC sales to surge in 2016, says IC Insights (8月24日付け DIGITIMES)

【中国半導体業界の行く末の見方】

中国半導体業界の今後の伸びについて、前向きな見方として次の通りである。

◇China's semiconductor industry worth $157.66B by 2020 (8月22日付け ELECTROIQ)
→Research and Marketsのレポート、“China Semiconductor Industry: Expansion Plans Analysis and Trends”。中国の半導体業界は、2016年から2020年の間で12.8%のCAGRで伸びて、2020年までに$157.66 billionに達すると見込む旨。中国半導体業界を引っ張る主な要因として、政府が率先する主要な取り組みからくる半導体需要の増大があり、海外プレーヤーからの投資および途上の新しいコンセプトなど中国半導体業界の伸長に向けて有効ないろいろなopportunitiesもある旨。

これも前向きであるが、問題とする中国におけるICs自給率についての今後の見方である。

◇Digitimes Research: China IC self-sufficiency rate to reach 40% by 2020-Forecast: China could exceed its IC self-sufficiency goal for 2020 (8月23日付け DIGITIMES Research)
→Digitimes Research発。中国におけるICs自給率が2020年には40%に改善する運び、それを超える可能性もある旨。2015年5月に中国国務院が発行した"Made in China 2025"は、同国がICs自給率を2020年に40%、そして2025年に70%に高めることを目指していると明確に述べている旨。12-インチ専業ファウンドリーの生産capacity合計が2018年末までに大きく伸びて、12-インチウェーハcapacityの飛躍的増大が、ICs自給率を2025年までに40%以上に高めるのを支える可能性の旨。

他方では、そうすんなりとはいかないと溢れる問題提起の分析が見られている。

◇China's $100 Billion Chip Supremacy Bid Unrealistic: Bain (8月24日付け Bloomberg)

◇Lack of know-how hurts China's chip supremacy goal (8月25日付け Taipei Times)
→Bain & Co.による分析。中国が、科学技術的know-howおよび人材の不足からcomputer用半導体でグローバルリーダーになる推進のなかで困難な戦いに直面する旨。

【市場の変調模様2件】

iPhoneの販売について厳しい状況となっているAppleであるが、来月とも見られているiPhone 7の打ち上げを控えて台湾のサプライヤとのやりとりが表わされている。

◇Apple Reportedly Sought To Cut Prices For iPhone 7 Components (8月19日付け International Business Times)
→Appleが、iPhone 7スマートフォンの打ち上げが近づいてきて、台湾のサプライヤと値引きを求めて取引を試みていると披露、しかしながら、該サプライヤは適正利益にリスクは冒せないとしてその要求を拒絶している旨。

もう1つ、TSMCの28-nmプロセス稼働率がIntelからの受注鈍化の影響を受けそうという状況が見られている。

◇TSMC 28nm utilization rate to fall on slowdown in Intel orders (8月24日付け DIGITIMES)
→業界筋発。Intelのベースバンド半導体発注ペースが減速、TSMCの28-nmプロセス稼働率が2016年第四四半期に僅かに落ちる見込みの旨。スマートフォン関連半導体の受注取り込みが、熱を帯びて第三四半期は110%に達する稼働率でTSMCの28-nmプロセスcapacityを満たしているが、Intelからの受注鈍化で第四四半期の28-nm稼働率が引きずりおろされる様相の旨。

【韓国半導体関連の動き】

韓国のファブレス半導体メーカーが、中国・Tsinghua Unigroupの買収ターゲットになっているという韓国発の見方である。

◇Tsinghua Unigroup eyes Korean chip firm acquisitions: Report-China's Tsinghua Unigroup has added undervalued small to mid-sized South Korean semiconductor firms to its shopping list of overseas investments in the high-tech chip area.-Report: Tsinghua Unigroup targets fabless firms in Korea (8月21日付け ZDNet)
→Chosun Biz(朝鮮日報系)発。韓国のファブレス半導体メーカーが、中国・Tsinghua Unigroupにとって新しい買収ターゲットである旨。
Silicon Mitus, Zinitixなどが、internet of things(IoT), power managementおよびセキュリティ用の半導体におけるexpertiseから買収が取り沙汰される可能性の旨。

韓国半導体メーカーによるインドへのアプローチの動きである。

◇S. Korean chip companies to send market exploitation teams to India-Korean chip vendors drum up business in India (8月22日付け Yonhap News Agency (South Korea))
→SK Hynixの代表が今週、New Delhi, Indiaでモバイル半導体などの製品を披露の旨。また、半導体trade fairが8月30日にMumbaiで予定されており、韓国半導体メーカー数社が参加、車載electronics用ICsに焦点を当てる旨。

Samsungによるファウンドリー・フォーラムが、近々上海で開催の運びとなっている。

◇Samsung to lure Chinese chip firms-Samsung wants to fill its foundries with chip orders from China, experts say (8月23日付け The Korea Herald (Seoul))
→業界experts、火曜23日発。Samsung Electronicsが来る8月30日、上海でファウンドリー・フォーラムを開催すると確認、半導体を設計してその製造をファウンドリーメーカーに委託するファブレスclientsを多角化する狙いの旨。


≪グローバル雑学王−425≫

外務省の事務次官まで務めた著者の国際情勢の見方と具体的に取り上げた「ロジック」例を、

『世界に負けない日本 −国家と日本人が今なすべきこと』
 (薮中 三十二 著:PHP新書 1045) …2016年5月27日 第一版第一刷

より2回に分けて見ていく前半である。今回は、トランプ対クリントンと連日陣営攻防が伝えられるアメリカ大統領選挙について、今までの推移そして今後と著者の見方が表わされている。日々断片的に入ってくる報道による事実が大まかにつながって、現在の米国、そしてアメリカ国民の実態、各層の思いといったものへの理解が深まっている。


第2章 国際情勢の見方と「ロジック」の具体例   =前半=

1 アメリカの大統領選挙――アメリカ社会の大変化とは?

・アメリカは日米同盟の相手で、世界的にみても、世界最強国家
 →アメリカの行方は、世界の安全保障環境にとって大変重要

■政治のプロが誰も予測しなかった事態
・今日、我々の眼前で起きているアメリカ大統領選挙
 →誰も予測しなかったこと、「トランプ候補の独走劇」
  →アメリカにとって「滑稽なまでの大悲劇」、同盟国日本にとっても他人事ではない

■アメリカ国民の怒り
・トランプ候補が支持率トップとなった最大の要因は、アメリカ国民の「怒り」に
・ワシントンは全く機能していない、ワシントンの人間はダメだ、という既成の政治家不信
 →この荒波をまともに受けたのが、元フロリダ州知事、ブッシュ候補
 →「ブッシュ」という名前が負の遺産に
・快進撃のトランプ候補にも弱み
 →「白人」の「男性」で、「低学歴」という固定支持層以上に広がっていかない
・2016年のアメリカは、既存政治の常識が通用しない社会に

■エスタブリッシュメントの焦り    
・共和党の予備選で善戦してきたのがクルーズ上院議員(テキサス州出身)
 →共和党でも極端なまでに保守的な政治家
・共和党エスタブリッシュメント(…社会的に確立した制度や体制、またはそれを代表する支配階級や組織)の最も重要な目標
 →11月の大統領選挙本戦で民主党候補に勝つこと
 →トランプに代わってクルーズというのも困りもの。御免こうむりたい、という思いも

■若さを露呈したルビオ候補
・ブッシュ候補が期待外れに終わり、ついで期待の星となったのがルビオ候補(フロリダ州選出上院議員)
 →誰からも好かれる好感度の高い政治家
 →結果的にルビオ一本化を阻止したのは、保守中道候補の一人だったクリスティー候補(ニュージャージー州知事)
・保守中道候補の足の引っ張り合いが、トランプ独走を生み出した一つの要因
 →共和党エスタブリッシュメントは、総力を挙げて反撃に出たが、今日のアメリカでは効果がないどころか、逆効果にも

■左の怒りと若者力
・一方の民主党、「クリントンで決まり」というのが誰もの一致した見方
 →対抗馬は、サンダース上院議員一人
・民主党でも、「普通ではありえない」事態が出現
 →サンダース候補を熱狂的に支持するのが、若者であり、支持層は白人主体
 →若者が怒っている。今のアメリカの方向性を不安に感じている。アメリカ経済3%成長の恩恵に浴していない

■黒人票のゆくえ
・3月1日のスーパーチューズデイ決戦、クリントンが勝利し、ほぼ民主党候補指名を確実に
 →支えたのは黒人票
  →ビル・クリントン元大統領の人気が根強く、強力に後押し

■3月15日の予備選挙――本当のスーパーチューズデイ
・選挙戦を大きく左右、本当の意味でのスーパーチューズデイ、3月15日の予備選挙
 →民主党では、クリントン候補が民主党候補指名獲得をほぼ確実に
 →一方の共和党、フロリダが地元のルビオ候補がトランプ候補に惨敗、ついに選挙戦から撤退
  →オハイオ州では地元の有利を活かしケーシック候補(オハイオ州知事)が勝利

■7月共和党党大会は大混乱か?――女性を敵に回し、失速しはじめたトランプ候補
・4月に入ったところでトランプ候補が大失態
 →トランプ陣営の選挙マネージャーが女性記者に暴力をふるったとされる事件
 →トランプ候補はマネージャー擁護の発言を繰り返し、顰蹙をかった
・4月5日のウイスコンシン州の予備選挙で、当初優勢だったトランプ候補がクルーズ候補に敗北
・しかし、トランプ阻止のシナリオも実際にはハードルが高く、かつエスタブリッシュメントにとって悩ましいもの
 →「進むも地獄、退くも地獄」の状況に

■11月大統領決戦の行方
・クリントン対トランプ決戦となれば、クリントン有利というのが今日の世論調査結果
 →しかし、政治の常識が通用しないのが今回のアメリカ大統領選挙であり、アメリカ社会でもある
・11月の本選挙での大波乱の可能性を完全には排除できないのが今日のアメリカ

■アメリカ社会の大変化
・共和党のトランプ現象と民主党のサンダース旋風
 →なぜこうした事態が起きたのか? 戦後70年の間のアメリカ社会の大変化がその要因
・建国以来、アメリカの指導者層はWASP(White Anglo-Saxon Protestant)の人たち
 →2025年 白人58%、黒人13%、ヒスパニック19%、アジア系7%、その他3%
 →2055年 白人48%、黒人13%、ヒスパニック23%、アジア系12%、その他5%
 →人口構成で大きな変化、すでにWASPが政治を指導するアメリカではなくなっている
・「低学歴、白人、男性」のトランプ支持は、アメリカ社会の大変化に圧倒され、追い込まれた人たちの大逆襲

■中産階級の縮小
・Pew Research Centerの調査
 →1971年にはアメリカの61%を占めていた中産階級が、2015年には50%に減少
 →貧富の格差が拡大

■大統領候補の外交姿勢――自由貿易反対、対外コミットメントに慎重
・アメリカでは、右の共和党右派や左の民主党左派も含め、ほぼ全員が一致
 →アメリカ兵を国外に送ることには慎重
・これまでのトランプ候補の外交に関連する発言
 →すべてが経済中心で構築
・他方、クリントン大統領になれば、外交面では比較的に安心感
 →TPPに反対、という立場
・今のアメリカを覆うのは対外的に非寛容な空気、排外主義的なムード

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