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2015年1-3月のモバイル機器市場に伴う各社の動き&読み

2015年1-3月期業績発表から、アップルは中国でのiPhone売上げ急伸が支えて前年同期比27%増の売上高、一方、サムスンは全体では同12%減の売上高でスマートフォンの減速を半導体はじめデバイスソリューションが補う構図が続いている。米国SIAが発表している月次世界半導体販売高は、モバイル機器の活況が引っ張ってこの2月まで22ヶ月連続で前年同月比増加となっている。今後どうなるか、その対応に向けて、さらなるシェアアップを図るとともに新市場の開拓を具体化する各社の動き、読みの端々に注目である。

≪市場即応のモバイル最前線≫

アップルの2015年1-3月期決算が以下の通り発表されている。中国市場でのiPhoneの売上げの伸びが目覚ましく、同社にとって米国に次ぐ第2の市場にのし上がっている。

◇Apple Ticks Up Sales Record-Watch has below average profit margins (4月27日付け EE Times)

◇China iPhone sales boosts Apple; shares up modestly (4月28日付け Reuters)
→Chinese New Yearに向けたgift-buyingが支えているが、中国でのAppleのiPhone売上げが71%増の$16.8 billionの旨。

◇米アップル1〜3月、純利益33%増 iPhone好調 (4月28日付け 日経 電子版)
→アップルが27日夕発表した2015年1〜3月期決算。売上高が前年同期比27%増$58.01 billion、純利益が同33%増の$13.569 billion(約1兆6200億円)。主力のスマートフォン「iPhone」の販売が好調で収益を押し上げた旨。

◇アップル、1〜3月27%増収、中国、米に次ぐ第2市場 (4月30日付け 日経産業)

一方、サムスンの2015年1-3月期決算の確定値の発表は対照的にスマートフォン事業の減速が続いているが、好評の新しいGalaxy S6 flagshipスマートフォンが次の「iPhone」が登場するまでの谷間を埋める奮闘に期待がかけられている。半導体はじめデバイス関係は好調を維持している。

◇Samsung Elec tips higher second quarter profit on Galaxy S6 sales (4月29日付け Reuters)
→新しいGalaxy S6 flagshipスマートフォンの力強い需要が第二四半期のearningsを高めていく旨。

◇Samsung mobile profit slips again as semiconductor more profitable-Chips help make more money for Samsung as mobile profit slumps (4月29日付け ZDNet)
→Samsung Electronicsの第一四半期について、モバイルグループが売上げ前年同期比20%減、利益が同57%減。半導体およびディスプレイパネルなどデバイスソリューションの利益が同81%増。

◇サムスン、スマホ部門の営業益57%減、1〜3月確報 (4月29日付け 日経 電子版)
→韓国サムスン電子が29日発表した2015年1〜3月期連結決算の確報値。売上高が前年同期比12%減の47兆1200億ウォン、営業利益が前年同期比30%減の5兆9800億ウォン(約6600億円)。主力のスマートフォン事業の減速が続いており部門利益が57%減ったのが大きく、ユーロなどに対するウォン高も全体で8000億ウォンの減益要因となった旨。営業利益は6四半期連続で前年実績を下回ったが、利益水準、利益率とも製造業としてはなお高い水準を維持している旨。

◇Samsung reports decreased profits for 1Q15 (4月30日付け DIGITIMES)
→Samsung Electronicsの2015年第一四半期売上げがKRW47.12 trillion、net profitsがKRW4.63 trillion($4.35 billion)で前年同期比38.2%減。
モバイル部門のoperating profitsがKRW2.74 trillionで、前年同期のKRW6.43 trillionから大きく減少、しかし前四半期のKRW1.96 trillionは上回った旨。

モバイル機器市場の1−3月期のデータも発表されており、スマートフォンのシェアランキングではサムスンが順位を落としており、同社の状況を映し出している。

◇サムスン、中国スマートフォン市場でシェア4位に落ちる (5月1日付け 韓国・中央日報)
→ストラテジーアナルリスティックス発。今年1−3月期の中国スマートフォン市場のシェア順位が次の通り。サムスン電子の順位が昨年7−9月期以降、2期連続で下がった旨。
 1 シャオミ       12.8%
 2 アップル
 3 華為(ファーウェイ)
 4 サムスン電子

タブレットの世界市場については、全体の減少が続くとともに、アップルおよびサムスンがシェアを落とす一方、中国・韓国勢が伸びている状況となっている。

◇世界タブレット出荷、1〜3月5.9%減、2四半期連続の減少 (5月1日付け 日経 電子版)
→米調査会社IDC、30日発。1〜3月期の世界タブレット(多機能携帯端末)出荷台数が前年同期比5.9%減の4710万台、米アップル、韓国サムスン電子の上位2社が出荷を落とし、2四半期連続で減った旨。IDCは不振の理由をアップルなどの大画面スマートフォンに市場を奪われたためと分析した旨。
 1位 アップル 出荷22.9%減 シェア26.8%(5.9ポイント減)
 2位 サムスン 出荷16.5%減 シェア19.1%(2.5ポイント減)
    レノボ         シェア 5.3%(1.2ポイント増)
    LG電子  出荷14倍   シェア 3.1%(2.9ポイント増)

このような1−3月期のモバイル機器市場を受けて、今後に向けた各社の動きそして読みがいろいろ現れている。まずは、インテルが絡む新市場の一角、スマートグラスである。

◇Luxottica sees first pair of glasses with Intel chips in Feb/March-Luxottica: First glasses with Intel chips to bow in early 2016 (4月24日付け Reuters)
→ファッションブランド眼鏡のLuxottica(ルックスオティカ:イタリア)のco-CEO、Massimo Vian氏。Intelの半導体を搭載したLuxottica製の最初のsmartglassesは、来年の第一四半期に出てくる旨。IntelとLuxotticaは、12月に技術協力合意に調印している旨。

中国市場で罰金を科せられたQualcommは、挽回を図るべく中国の顧客の拡販をサポートする動きをとっている。

◇Qualcomm Launches Unit to Help Chinese Smartphone Makers Sell Overseas-Chip maker aims to prove itself a valuable partner as Beijing looks to reduce its reliance on foreign technology-Qualcomm looks to boost Chinese smartphone sales with new division (4月26日付け The Wall Street Journal)
→Qualcommが、中国のスマートフォンメーカーの販売増を支援する狙いの新しい事業部門をスタートさせており、同社が中国政府とantitrust係争を決着させた後に出てきている旨。「新たにやっていることの1つとして、中国の顧客が中国から輸出するのを支えていく我々の活動の大きな再重点化である。」(Qualcomm ChinaのJeff Lorbeck氏)

今年のモバイル機器市場はどうなるか、なかなか難しい読みではあるが、台湾のIC design houses筋も次の通り、厳しい眼差しとなっている。

◇Global handset demand likely to disappoint in 2015, say Taiwan IC design houses (4月27日付け DIGITIMES)
→台湾のIC design houses筋発。2015年のグローバルhandset市場がフラットな伸びとなる可能性、加えて顧客発注が緩いペースで持ち上がっている旨。handset市場全体の伸びを引っ張るスマートフォン需要が、2015年になってから期待外れとなっており、上流の半導体プロバイダーは、2015年のhandset市場の伸びがゼロになるという最悪の場合のシナリオに備えて注意深くなってきている旨。

インテルも、韓国の教育用タブレット市場をサポートする動きが見られている。

◇Intel eyes educational tablet PC market-Chipmaker partners with Korean firms-Intel takes on Korean partners for tablets in education (4月27日付け The Korea Herald (Seoul))
→Intelが月曜27日、韓国の教育用タブレット市場に対応、ソフトウェア開発のST&Companyおよびタブレットcomputerメーカー、Mpgioと協働する旨。「Intelは、ハードウェア、ソフトウェアおよびサービスを統合、タブレットPC市場をリードして消費者のニーズを満たす活動を行う」(Intel KoreaのPresident、Kwon Myung-sook氏)旨。

過熱問題に追われたQualcommであるが、実際には問題なく各顧客で使われていると主張している。

◇Qualcomm says don't fear the Snapdragon 808-Although the new LG G4 smartphone will be using Qualcomm's 808 -- and not the 810, its higher-end cousin -- the chipmaker is still betting big on the 810.-Qualcomm defends against speculation over Snapdragon 810's use (4月28日付け CNET)
→LG Electronicsが新しいLG G4スマートフォンでQualcommのSnapdragon 808モバイルプロセッサ使用を選んでいる一方、Samsung Electronicsは新しいGalaxy S6 handsetsにおいてSnapdragon 810ではなく自社自前の半導体を選択の旨。Qualcommは、該810には過熱問題があるという報道に異議を唱えており、2月にはLG, Microsoft, Motorola Mobility, Sonyなどのスマートフォンメーカーが次期モデルで該半導体を用いるとしている旨。

"韓国の波"に対抗して台湾勢が結束しなければ、と直接的な働きかけの動きである。

◇Foxconn's Terry Guo says he lobbied Apple to choose TSMC over Samsung for 'A9' (4月28日付け Apple Insider)
→UDN発。台湾Foxconn社会長のTerry Gou(郭台銘)氏が、"Korean Wave"に対抗して台湾メーカーが結束しなければならないとして、AppleにTSMCを選ぶよう働きかけている旨。

その台湾勢の中では、UMCがTSMCの牙城を切り崩していこうと、先端プロセスそして中国での活動の展開を見せている。

◇UMC to Skip 20nm, Gun for 14nm FinFET (4月29日付け EE Times)
→再び世界第2の半導体ファウンドリーに返り咲いたUMC(Hsinchu, Taiwan)が水曜29日、今年第四四半期までに14-nm FinFET tapeoutsの顧客対応可を目指して、20-nm技術ノードを飛ばしていく旨。同社の最先端28-nm製品は、今年第一四半期売上げの9%を占めており、前四半期の7%から上昇、ライバルのTSMCが約5年の間席巻している該技術ノードでの足場を得ている旨。Samsungは今年始め14-nm FinFET半導体製造を始めている一方、TSMCは2015年半ばに16-nm FinFET製品の商用生産を始める予定の旨。

◇Taiwan's UMC to expand China customer base via JV factory-UMC eyes more business in China with JV fab (4月29日付け Reuters)
→中国・福建省(Fujian Province)のウェーハ製造拠点の建設が開始、ここでUMCがQualcommなど顧客に向けてモバイルおよび通信用半導体を製造、UMCは現地政府との該合弁の33%をもっている旨。UMCはまた、第四四半期までに14-nm FinFET半導体tapeoutsを進めて、20-nmプロセスノードはなしで済ませる計画の旨。

Texas Instruments(TI)のワイヤレス給電技術がサムスンのGalaxy S6 flagshipスマートフォンに入っているとのことである。

◇Texas Instruments Supplies Wireless Charging To Samsung's Galaxy S6-Samsung deal shows how wireless charging is paying off for Texas Instruments (4月29日付け Forbes)
→5年以上のR&Dが奏功、Texas Instruments(TI)のワイヤレスpower receiverが、Samsungのflagship phone、Galaxy S6に使われている旨。

モバイル関係で長年インテルを採用している顧客の中に、切り換えを考えている動きを示す以下の内容である。なかなか穏やかでないモバイル最前線の一端を示している。

◇ASUS Thinking Of Adopting Qualcomm Processors For Future Phones-Asus considers Qualcomm chipsets to replace Intel processors in phones (4月29日付け Ubergizmo.com)
→自前のモバイルチップセットを打ち上げてモバイル市場への食い込みを図るIntelだが、その技術を採用しているOEMsとなるとそう多くはない旨。
 ASUSはここ何年かIntelを支持してきているメーカーの1つであるが、まもなく変わりそうな雲行きの旨。ASUSのCEO、Jerry Shen氏が、今後Qualcommのチップセットへの一部切り換えを考えていることを示している旨。


≪市場実態PickUp≫

【合併計画の中止】

2013年に最初の発表があり、注目されていた2大半導体製造装置メーカー、Applied MaterialsとTokyo Electronの合併計画が、米国司法省の認可が下りず破断の結末となっている。内容はまったく異なるが、時代を遡って、DRAMのシェア、価格を巡って攻防が続いた日米半導体摩擦での米国側のスタンスというものを思い起こしている。

◇Analysis: Applied-TEL Scrap Merger Plans-Applied Materials and TEL have agreed to terminate their merger deal. (4月27日付け Semiconductor Engineering)
→複雑な法制問題による幾たびかの遅れを経て、Applied MaterialsのTokyo Electron Ltd.(TEL)を買収する取引提案は止めになった旨。米国司法省が該取引に介入、阻止した様相の旨。

◇Applied Materials, Tokyo Electron Cancel Merger Plan-Deal collapses after firms give up on winning antitrust approval-Justice Dept. sinks proposed Applied Materials-TEL merger (4月27日付け The Wall Street Journal)
→Applied MaterialsおよびTokyo Electronが本日、米国司法省が反対の判断として、世界2大半導体製造装置サプライヤの合併計画を中止する旨。
 両社はこの取引提案を2013年に最初に発表している旨。

◇Applied Materials and Tokyo Electron Call Off $10 Billion Merger (4月27日付け The New York Times /DealBook blog)

◇Applied Materials-Tokyo Electron merger scrapped (4月27日付け USA Today)

◇Applied Materials and Tokyo Electron terminate merger (4月27日付け ELECTROIQ)
→Applied Materials社とTokyo Electron Limitedが、Business Combination Agreement(BCA)の終結に合意の旨。

◇Applied, Tokyo Electron terminate merger deal (4月28日付け DIGITIMES)

◇顧客との主導権争い壁、東京エレクトロン、日米連合が破談 (4月28日付け 日経 電子版)
→「ハイテク業界の大型日米連合」といわれた東京エレクトロンと米アプライドマテリアルズの経営統合計画が破談になった旨。直接の理由は米司法省の認可を得られなかったことにある旨。その背後には顧客である米インテルや韓国サムスン電子など大手半導体メーカーの存在がちらつき、技術革新を巡る半導体メーカーと装置メーカーの攻防が今回の統合破談の裏側にあった模様の旨。

【Intelの組織改編】

Intelが"新技術"グループを作る組織改編を行っており、特に注目の人の異動が以下の通り示されている。

◇Intel Restructures New Technology Efforts-Move seen changing role of prominent exec Mike Bell-Intel shifts execs' roles as part of wearables push (4月28日付け The Wall Street Journal)
→Intelの半導体をwearable機器に入れていく活動を率いたMike Bell氏が、同社再編で明示されていない役割に再配置されており、senior vice president、Joshua Walden氏が統率する"新技術"グループが作られている旨。該グループは、Intelが"ニュービジネスinitiatives"グループと呼んでいたものを包含する旨。

◇Intel shakes up new products group (4月28日付け The Oregonian)

◇Intel Loses Mobile Vet in Reorg (4月29日付け EE Times/Blog)
→Intelの最新の組織改編で、同社の低電力プロセッサへの動きを支えたベテラン、Mooly Eden氏が退社の旨。

【マイクロソフトのBuild 2015】

マイクロソフトの開発者会議イベント、Build 2015(4月29日〜5月1日:SAN FRANCISCO)が開催され、以下が目に入っている。「ウィンドウズ10」の今後の狙いが表わされている。

◇Microsoft Demos HoloLens VR (4月29日付け EE Times)
→Microsoftが、Build 2015イベント(4月29日〜5月1日:SAN FRANCISCO)の中でWindows 10上で動作する同社HoloLens virtual reality(VR)プラットフォーム更新版を披露の旨。

◇「ウィンドウズ10」、2018年までに10億台目標 (4月30日付け YOMIURI ONLINE)
→米マイクロソフトのサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)が水曜29日、同社開発者会議にて、今夏に発売する次期基本ソフト(OS)「ウィンドウズ10」を、2018年までにパソコンやタブレットなど10億台の端末に搭載する目標を明らかにした旨。世界では15億台の端末が利用されており、約3年で3分の2への搭載を目指す旨。

【IC Insightsの市場データ】

2015年のIC販売高について、応用分野別の内訳が以下の通り見込まれている。4つに分けた市場地域それぞれの特性も表わされている。

◇Communications and computer systems to drive IC sales across all regions, says IC Insights (4月27日付け DIGITIMES)
→IC Insights発。通信およびcomputerシステムが、2015年のIC販売高の最も大きな比率をすべての地域、すなわちAmericas, Europe, JapanおよびAsia-Pacificで占める見込みの旨。通信応用が、2015年のAsia-Pacific地域のIC販売高の41%およびAmericas地域売上げの39%を占める一方、computer応用がJapanおよびEuropeで最大の末端市場となり、2015年に両地域でIC販売高の約3分の1を占める見込みの旨。

◇How the 3 Cs Drive IC Consumption (4月29日付け EE Times)
→IC Insights発。communications, computersおよびconsumer electronicsの3C分野が、Americas, Europe, Japan, およびAsia-Pacificのすべての地域において2015年のIC販売高の70%以上を占めていく見込みの旨。
 communicationsおよびcomputersがすべての地域でリードして、次にくるのが Americas, JapanおよびAsia-Pacificではconsumer electronics、Europeではautomotive、と見ている旨。

もう1つ、Optoelectronics, Sensors/Actuators, and Discretes(OSD)市場の昨年、2014年データがまとめられている。サプライヤ・ランキングでRobert Boschが抜きん出る内容となっている。

◇Sensor competition, actuator recovery impact supplier ranking (4月30日付け ELECTROIQ)
→IC Insightsの新しい2015 O-S-Dレポート -A Market Analysis and Forecast for Optoelectronics, Sensors/Actuators, and Discretes(OSD)発。量産design winsに向けたセンサの厳しい競合およびactuatorの伸びの回復から、2014年のセンサおよびactuatorsの$9.2 billion市場でサプライヤ・ランキングの入れ替わりがあった旨。センサを引っ張るRobert Bosch(ドイツ)が、2014年の販売高が16%増の約$1.2 billionで、この分野の首位で差を拡げている旨。トップ5のデータ、下記参照:
http://electroiq.com/wp-content/uploads/2015/04/top-sensors-fig-1.png

【Quantum Computing】

将来技術のquantum computersについて、最前線の応酬が以下の通り見られている。IBMはじめ商用化に向けたアプローチの歩みに注目である。

◇IBM Solves Quantum Computing-Google architecture obstacle to commercialization (4月29日付け EE Times)
→quantum computersはGoogleのようなnew-comersも含め世界中の主要リサーチlabsすべてにより追求されているが、IBMがquantum computingリサーチの30年の経験から、Googleはその"linear"設計においてまったく間違っており、IBMの"square tiled"設計こそquantum computingの最も重要な問題の両方を解決でき、加えて将来必要とされるどんな大きさにも対応できる旨。

◇IBM Brings Quantum Computing a Step Closer (4月29日付け The Wall Street Journal)


≪グローバル雑学王−356≫

外国人がみた歴史の中の日本人、古代・中世ではどう見えているか、中国と朝鮮の史料に限られるが、

『外国人がみた日本史』
  (河合 敦 著:ベスト新書 469) …2015年3月20日 初版第1刷発行

より、その後半である。貢ぐのが目的で対等外交ではない遣唐使、『東方見聞録』でのでたらめな記述、北九州が攻められた元寇の経緯、など島国の日本人の感性に大きく影響を与えていく史実を改めて味わっている。□以下の各アイテムについて、最初の◎以下に注目する記録の出典が示されている。


第一章 外国人がみた古代・中世―――世襲好きは日本人の気質!? =2分の2=

□対等外交の締結
◎『隋書』倭国伝に載る、有名な遣隋使、小野妹子の逸話
・600年の遣隋使は、隋の皇帝から未開国の扱い
 →大和朝廷は、607年、小野妹子を隋に遣わした
・国際情勢を把握したうえで、大和朝廷はあえて対等外交を隋に仕掛けた
 →見事に成功

□推古朝の日本社会
◎『隋書』倭国伝に掲載されている日本の男女の風習
・男女の恋愛結婚が容認
・結婚の際に火をまたぐ儀式が存在
 →まだ各地に残されている風習
・推古天皇の時代になっても、奴隷制度が存続
・正月元日には射撃遊戯や酒宴

□唐で没した留学生
◎2004年に西安で発見、717年に遣唐使船に乗ってやって来た日本人留学生の墓碑
・玄宗皇帝は、たとえ外国人であっても有能な者を取り立て
 →難関の官僚試験、科挙に合格した人びと
・遣唐使は、唐の皇帝へ朝貢するのが第一の目的
 →日本と唐は対等外交をしていたわけではない

□黄金の国ジパング
◎マルコ・ポーロが書いたといわれる『東方見聞録』
 →文章は伝聞調、マルコ自身は日本にわたっていない
・たぶん、奥州における豊富な黄金が伝説となり、尾ひれが付いた形でマルコの耳に入ったのかも
・さらに、でたらめな日本に関する記述多々
 →日本にはバラ色をした大きな真珠がたくさん産出
 →日本人は「人肉がどの肉にもましてうまいと考えている」と断言

□フビライからの国書
◎1266年、元の皇帝、フビライが日本に差し出した国書
・その文言から読み取れる威圧的なニュアンス
・ユーラシア大陸を横断する未曽有の大国家となったモンゴル帝国
 →1260年に即位したフビライ・ハーンは、日本に使者を送り、朝貢を要求
・鎌倉幕府の拒否反応に怒ったフビライ
 →1274年、文永の役
 →1281年、弘安の役…大型の台風が襲来
  →「風は神が日本を守るために吹かせてくれたもの、日本は神に守護されている」とする神国(神風)思想
  →外国人に対する蔑視や嫌悪をもたらすことに

□農業の発展を称賛
◎1420年に日本を訪れた朝鮮人・宋希欧竜した日本に関する記録
・日本の農家の三毛作に驚き
 →平安時代に土地の大開墾時代はおおむね終わり
 →鎌倉時代から一定面積で多収穫を目指す集約的な方向へ転換
 →宋希欧来日した室町時代は、稲の品種改良もすすみ、早稲、中稲、晩稲など時期をずらして栽培することが可能に

□海賊の横行
◎朝鮮の使節として、1420年に来日した宋希欧竜録
・南北朝時代、我が国にも倭寇と呼ばれる海賊
 …中国語で、倭とは日本の蔑称、寇とは集団で襲ってくる賊
・1419年、対馬の倭寇が大挙して朝鮮半島を荒らす事件発生
 →激怒した朝鮮の太宗は、対馬へ派兵
 →朝鮮は、日本との和解や捕虜受け取りのため宋希欧鮖叛瓩箸靴毒標

《外国人がみた古代・中世 要点》

・古代・中世の日本と日本人について、現存する史料は、中国と朝鮮の史料のみ
・西洋人が日本について語ったものは、マルコ・ポーロの『東方見聞録』だけ
 →といっても、間違いもはなはだしい
・逆にいえば、正しく認識する必要がないくらい、とるに足らぬ存在だったとも

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