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1月の半導体販売高/新たな再編・競合模様/グローバル雑学王−35

世界経済不況の渦中で、半導体業界でも各国・地域の政府支援を模索する動きが方々で見られるとともに、新たな業界再編や提携が表面化して、競合の色模様の変化というものを感じている。米SIAからの1月の世界半導体販売高発表は、当然ながら世界経済の現状を色濃く映し出す内容になっている。

≪1月の半導体販売高≫

米SIAの定例月次発表は、以下の通り現状を短く端的に表わしている。景気対策の奏功をじっくり見ていく、そういう雰囲気を強く感じている。

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○1月の半導体販売高、前年比、前月比ともに減少…3月2日付けSIAプレスリリース

1月の世界半導体販売高が$15.3 billionで、2008年1月の$21.5 billionに比べて28.6%減少した、と米Semiconductor Industry Association(SIA)が本日発表した。前月、2008年12月の$17.4 billionからは11.9%の減少である。

「我々の業界にとって歴史的に弱含みの月、1月の世界半導体販売高は、消費者信頼感が引き続き侵食され、グローバルな経済不況が影響していることを反映している。」とSIA President、George Scalise氏は言う。「販売高の減少は半導体製品の全範囲に及んでおり、パソコン、携帯電話、自動車およびconsumer品目など売上げ需要の重要な牽引役が依然と圧迫されたままである。」

「在庫水準は非常に低く、visibilityが良くなっていることを促す兆候がいくつかある。」とScalise氏は続ける。

最近議会を通過してObama大統領が署名した景気対策法および他の国々で採られている対策は、半導体の今後の需要を引っ張り上げる可能性がある一方、エネルギー、ヘルスケアおよびインフラ改善のような重要課題に向き合っている、とSIAは言う。

※1月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
http://www.sia-online.org/galleries/gsrfiles/GSR_0901.pdf
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上記の販売高数値は3ヶ月平均で表してあるが、単月で見た実際の値は次の通りとなっている。

◇Global chip sales fell 31.2% in January   (3月4日付け EE Times)
→WSTSからの単月'actual'データ。1月のグローバル半導体市場は$13.15B、2008年1月の$19.11Bから31.2%減の旨。

昨年後半からの金融危機に振り回されてずっとここまできている感があるが、2008年の半導体業界は締めるとどうだったのか。ベンダー別のランキングが、ファウンドリーを含んで次の通り発表されている。DRAMはじめメモリの落ち込みとともに、Qualcomm、Broadcomなどファブレスメーカーの急伸が目立つ形である。

◇Fabless Companies Gain in Top 20 Ranking-IC Insights Inc. reported that 11 of the top 20 chip suppliers endured shrinking revenues last year, when the 20 largest vendors as a group saw an overall drop of 3% in revenues. Broadcom and Qualcomm were the fastest-growing chip suppliers. Hynix suffered the sharpest drop last year, and Elpida dropped out of the top 20 ranking.(3月3日付け Semiconductor International)
→データ内容、下記参照。
 2008年半導体販売高トップ20:
 ⇒http://www.semiconductor.net/articles/images/SI/20090303/030309TopTwenty.jpg
   2008年伸び率トップ20:
 ⇒http://www.semiconductor.net/articles/images/SI/20090303/030309Top20Growth.jpg

≪新たな再編・競合模様≫

インテルがプロセッサ製造を初めて外部に委託し、その先がファウンドリー最大手、TSMCという、半導体業界図の大きな結ぶ付きの変化が表れている。
様々な波紋を呼んでいくことと思うが、現時点の経過と感じるところ、次の通りである。

◇Intel to port Atom cores to TSMC's tech platform(3月2日付け EE Times)
→Intel社とTSMCが月曜2日合意発表、Intelが不特定のAtomプロセッサコアを、プロセス、IP、ライブラリおよび設計フローなどTSMCの技術プラットフォームに移植する旨。

◇Analysis: Intel, ARM seen on collision course(3月2日付け EE Times)
→embeddedの世界でARM Holdings plcとの衝突針路をまっしぐら、Intel社が初めてプロセッサ技術をSiファウンドリーに移転する旨。

◇TSMC to announce Intel deal-NEW STRATEGY:: The TSMC contract with Intel to supply chips is the first time the world's largest chipmaker has outsourced its processor manufacturing to cut costs (3月2日付け Taipei Times)

インテルとくると、片やAMDは如何ということになるが、以前から発表されている通り、製造部門を分離して本体はファブレス設計会社になっていくとのこと。その製造部門が次のようにお披露目されている。こちらではTSMCが最大の目標ライバルという位置づけである。

◇AMD foundry spinoff open for business(3月4日付け EE Times)
→AMD社からの新しいSiファウンドリーspinoffが、正式に事業オープン、社名はGlobalFoundries(Sunnyvale, Calif.)、稼働している300-mm fabが1つ、計画段階にさらに2つある旨。他のファウンドリー各社と競合するが、市場リーダー、TSMCに照準を合わせている旨。

インテルの今回の動きに対して、ARMの関わりが次のように取り沙汰されている。市場の反応に注目である。

◇TSMC expected to kick off Atom-core SoC production in 4Q09 at earliest(3月4日付け DIGITIMES)
→業界筋発。TSMCが、最も早くて2009年第四四半期にAtomコアSoCソリューション生産に入る見込み、一方、ARMは、TSMCとの長きにわたるコラボが今回のインテルとの新たな提携関係による影響されることはない旨。

◇Software a hurdle for ARM-based netbook hopefuls(3月5日付け EE Times)
→Qualcomm社などのベンダーが、IntelのAtomが席巻しているnetbook市場に強引に割り込もうと、ARMベース・プロセッサを用いている旨。

DRAM業界の再編が、台湾政府の動きを軸に引き続き進められている。なかなか予断を許さない情勢、状況のなか、以下の流れでTaiwan Memory Company(TMC)設立が発表され、今後の駆け引き、綱引きに注目である。先日のJEDECでも感じることであるが、DRAMメモリはデバイスの基本であるがゆえか、世界的、グローバルな摩擦調整局面ではいつも先陣に引っ張り出される、そんな宿命の繰り返しが頭に浮かんでくる。

◇Elpida objects to capacity sharing with Micron for Taiwan Memory(3月3日付け DIGITIMES)
→業界筋発。Elpidaは、台湾でのR&D teams共同設立、30-nm以降のさらに先端の技術開発でMicronと協力することには乗り気、しかしながらMicronが乗るプロジェクトでDRAM capacityシェアを失うことは是が非望まない旨。

◇Taiwan proposes new DRAM venture(3月5日付け EE Times)
→Dow Jones発。台湾が、台湾のDRAMメーカーのすべてを整理統合し、新会社、Taiwan Memory Co.を設立する旨。台湾政府が、Taiwan Memoryの50%以下を所有、Elpida Memory社あるいはMicron Technology社と提携関係を形成する旨。UMCの前vice chairman、John Hsuan氏が新会社を主導する旨。

◇Formosa Plastics and Nanya look to participate in Taiwan Memory(3月6日付け DIGITIMES)
→DRAMメーカー、Nanya TechnologyおよびInotera Memoriesの親会社、Formosa Plastics Groupが、Taiwan Memory Company(TMC)のchairman elect、John Hsuan氏と発表されたばかりの該DRAM entityへの関与可能性
について協議を進める用意の旨。


≪グローバル雑学王−35≫

イスラームの世界に触れてきて、9回目の今回が区切りとなる。新聞、テレビで見る遠くからの視点から、
  
『イスラームの世界地図』(21世紀研究会 編著:文春新書 224)

のお陰で実態が身近になる一方、その生活、文化、考え方など依然距離感が残るが、同じ地球人として縮める努力が今後ますます求められていくという感じ方である。以下は、イスラームの世界の女性が取り上げられている。

◎ベールの下の素顔

[コーランのなかの男と女]
・イスラームの世界の女性
 →男女の本質的平等 :コーランの第四九章「私室」第一三節

[四人の妻を娶ったら]
・西暦625年(イスラーム暦3年)、聖戦(ジハード)のはじまり
 →多くの未亡人と戦争孤児
 →残った男たちが未亡人たちを正式な妻として娶り、扶養することが最良という考え方に
・現在は、一夫多妻を法律で禁止した国(チュニジア)もあれば、現代社会では一人の妻を養うだけでも精一杯というのが正直なところ

[女性の身体は陰部である]
・イスラームでは、「手首から先と顔以外、女性の身体は陰部である」とされる。
・戒律に厳しい国では、女性は顔だけ、または目だけを残して、あとはすべてベールで覆っている。
・多くのイスラーム諸国では、ベールをかぶることは強制ではない。

[ベールのなかの女たち]
・女性のベール 
 →沙漠地帯で生活するには、もっともふさわしい服装
 →黒いベールは、強烈な紫外線を避け、地面からの照り返しから目を守るのに役立つ。
・身体を隠さなければならないのは身内以外の男性に対してだけ       

[雑用は男の仕事]
・レディーファーストの精神
 →イスラーム諸国では、雑事はほとんど男がする
 →バスや地下鉄の女性専用車両など、既に生活に根ざしているのもアラブ社会
・イスラームの教えでは、女性は守られるべき存在
・たくましい女性たちもたくさん
 →現代でも、インドネシア、パキスタンなどでは、女性の首相や大臣、政府高官を多数輩出

[結婚のときに離婚の契約]
・婚資金(マハル)という制度
 →結婚時に、離婚のときの金額をあらかじめ決めておく

[アルコールのない結婚式]
・結婚式 :花婿と花嫁が登場、そのそばで妖しく踊るベリーダンサー
       →「こうすれば旦那が喜ぶ」という意味合いがこもるという
      :のどを潤すのは、ビールではなく、コーラなど清涼飲料水
・サウジアラビアでは、結婚式は男女別々に祝う

[家族の大ネットワーク]
・アラブ人は長い名前
・電話帳には実に多くのムハンマド名
・女性は結婚後も苗字が変わらない 
 →その家族が一族のメンバーとして加わる、という考え
・アラブ人の人の見方 
 →どの家族に属するのかということで、その人間を判定

[離婚するには]
・離婚の申し渡し(タラーク) 
 →一方(通常は男性)が「離婚する」と宣言すること
 →三度目のタラークでは正式な離婚に
・子供をもってはじめて女性は家庭のなかで安定した地位につくと考えられている

締めとして、イスラームの世界の用語について、通読して印象に残るものの以下抜粋である。

【イスラーム用語小事典】から:
挨拶 …イスラーム教徒の挨拶(コーランにも定め)
      「アッサラーム・アライクム(あなたの上に平安あれ)」
      「ワ・アライクム・サラーム(そして、あなたの上にも平安あれ)」
アッラー …イスラームにおける唯一なる神の呼称
アラビア語 …全世界のイスラーム教徒はアラビア語で礼拝が義務
アラブ …遊牧民の意。一般に、アラビア語を話すイスラーム教徒。
アル=アルカーヌ・ル=ハムサ(五本の柱) 
    …イスラム教徒が実行すべき五つの務め
シャハーダ(信仰告白)
サラート(礼拝)
ザカート(喜捨、施し)
サウム(断食)
ハッジ(巡礼)
イスラーム …アッラーに絶対服従する、という意。
イード …イスラームの祭り
イード・アル・アドハー(犠牲祭) 
   …メッカ巡礼の最後の日に行われる動物供犠の祭り
イード・アル・フィトル(断食明けの祭り) 
   …イード・アル・アドハーに次ぐイスラームの大祭
回教 …一説によると、中国西域に暮らすイスラーム教徒、ウイグル人の漢字表記、回こつ、回鶻に由来するという。
カーバ神殿 …カーバとは、立方体という意。メッカにあるイスラームの最も神聖な神殿。
カリフ …アラビア語でハリーファ。後継者、代理者という意。
シーア派 …コーラン、預言者ムハンマドの言行録ハディースに加えて、血縁者である娘婿アリーとその子孫であるイマーム(最高指導者)の言行も拠り所とする宗派。イランが中心。
ジハード …一般には聖戦と訳されるが、もとの意味はイスラームのために努力するすべての行為。
スンナ派 …コーランと預言者ムハンマドの教えを拠り所にする宗派。イスラーム世界で圧倒的多数を占める。
ターバン …アラビア語でイマーマまたはターキーヤ。色により宗派、家系、王朝、職業が分かるようになっていたが、これも時代、地域によってさまざま。
ハラール …許されたもの :ハラール肉
ハーレム …「禁断の場所」という意、家の中の婦人専用の部分。
ファトワー …イスラーム法学者の権威(ムフティー)が文書で提出する意見
マホメット …預言者ムハンマドの英語で転訛した呼び方
ラマダーン …断食を行う月。イスラーム暦の9月。

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