モバイル活況の一方、販売高$300 Billionの壁、波乱万丈の2012年
暮れようとしている2012年、半導体業界は販売高がまたまた$300 Billionの壁に阻まれて、前年比2〜3%台の減少が見込まれているが、その中身は波乱万丈の要因を孕んでいる。世界経済停滞のなか、スマートフォン、タブレットはじめモバイル機器の新製品が次々と発表されて熱い活況を呈し、パソコンの低迷を大きく補う様相となっている。対応してNANDフラッシュがDRAMを初めて上回る見込みも出されて、モバイル機器の活況が引っ張る最先端プロセス、設計そして製造の新たな業界の移行モードが強まっている。
≪2012年の動きを振り返る≫
この1年の本欄のタイトル&ヘッディングから、半導体・エレクトロニクス業界の動きを振り返ってみる。
まずは、パソコンを押しやった感じ方が残るほどのスマートフォン、タブレットはじめモバイル機器の熱い活況ぶりである。
<モバイル機器熱い活況>
「半導体を核に、心待ち、夢中にさせる熱気、感動の創出」(3月)
…新「iPad」販売開始
「プロセス開発のテンポを煽るモバイル機器市場」(4月)
…TSMCからの28-nmノード生産が需要に追い着かない
「スマホなどモバイル機器が織り成す半導体業界hot spots模様」(5月)
…半導体需要が追いつかず、生産枠を先行して取り込んで確保
「マイクロソフトのタブレットに市場の響き、ブルータス お前もか!」(6月)
「こんどはグーグルからのタブレット、ますます慌ただしいアップデート」(7月)
…アップルiPadの半額以下の価格
「サムスンを軸に半導体業界のいろいろな動き、景観模様」(8月)
…スマートフォン、タブレットの伸びる勢いに大きく身を乗り出している韓国サムスン電子の振る舞い
「iPhone 5発売がもたらす活気、プロセス開発はじめ発揚の空気」(9月)
…アップルの株価も記録的な大台を突破した後の発売
特に米国で半導体・エレクトロニクス機器の製造を呼び戻す動きが目立っている一方、知的財産、すなわち特許関係の係争が活況のモバイル機器関連を中心に活発化している。また、特許の大規模な売買が目立ってきているが、新旧プレーヤーの交代、業態の変貌を色濃く映し出している。
<ものづくり回帰:知財戦略>
「実際に取り組んでこそのIP領域、新たな台頭、老舗の反撃」(4月)
…ものづくり、製造の回帰:IP、ノウハウの蓄積・拡充
「一気に熱気、次世代製造装置の"連携"と特許訴訟の"せめぎ合い"」(8月)
…ASMLが打ち上げたequity-plus-researchプログラムにインテルに続いてTSMCが出資を表明:アップルとサムスンの間の特許侵害を巡る議論の応酬
「特許係争が呼び起こすビジネスの活性化と"実態"」(8月)
…アップルとサムスン:アップルはデザイン特許、サムスンは通信技術特許が主体と、組み合う難しさ
「スマートフォン係争および市場、改めて見る顧客満足、価値観」(9月)
…知的財産の価値観というもの、新興市場がリードするなかでの顧客満足というもの、この両者のぶつかり合い、鬩ぎ合い
2012年の半導体業界グローバル販売高は、マクロ経済懸念が大きく覆いかぶさるなか、モバイル機器関連の健闘ぶりが目立ったものの、3年ぶりの前年比マイナスが必至という、以下のこの1年の経緯となっている。
<半導体販売高、$300 Billionの壁>
「半導体の微細化、市場拡大基調は永遠、問われる結集、国際交流の力」(2月)
…2011年は$298.3 billionとまたまた$300 billionには僅かながら届かず、しかしながら史上最高の前年、2010年から0.4%増となんとか面目
「米国だけ伸びた2月半導体販売高、際立つ優勝劣敗の市場模様」(4月)
「伸び基調が見える3月の世界半導体販売高、一方、目まぐるしい動き」(5月)
…前月比では1.5%増と小幅ながらも全市場地域がプラス
「マクロ経済懸念、本年後半の慎重な見方増す半導体業界」(7月)
「半導体販売高、モバイル機器活況の上半期、日本とアジアが戻す6月」(8月)
「マクロ経済難題山積の渦中、僅かに戻し基調の半導体販売高」(9月)
…7月の世界半導体販売高が発表され、前月、6月から0.2%増
「モバイル活況に立ちはだかるマクロ経済懸念:世界半導体販売高」(10月)
…本年1月から8月までの累計では前年に比べて4.6%減
「米国半導体業界、久々の販売高伸び率、leadershipの高まり」(11月)
…9月の販売高について、米国が2年以上ぶりの前月比伸び率
「3年ぶりマイナスの世界半導体販売高予測、急激な情報機器への流れ」(12月)
…長く立ち塞がる$300 Billionの壁突破
「米国の伸びが目立つ10月半導体販売高、ここ10年で最大の前月比増」(12月)
…どこかプラスの伸びはないか、好材料を探したく
上記の販売高にも出てくるように、米国のこの1年の半導体業界における積極的な取り組み&実績が目立つ結果となっている。大統領選挙が大きくアピールしたのかもしれないが、最先端技術を引っ張る意気ごみ、雇用の確保&増大など、前面に打ち出されている。
<米国の積極的な取り組み>
「米国の最先端半導体技術を引っ張る意気込みと改めて知る規模」(1月)
…米インテル社のアリゾナ砂漠に位置し14-nm線幅の半導体が製造される最先端工場の建設、大統領も訪問
「Obama大統領のニューヨーク州made-in-America半導体視察ズームアップ」(5月)
…made-in-America活動の一環
「減速、低成長基調の世界経済のなか、米国の半導体雇用の伸びの実態」(11月)
…米国の半導体雇用が他分野の伸びを上回って約250,000に達しているという発表
我が国の半導体・エレクトロニクス業界は、非常に苦しい局面が続いているこの1年であり、以下端的に示す通りである。上記の米国の取り組みに習って、我が国のこれまでの蓄積、成果をもとに着実な展開を図る国を挙げた強力な活性化が求められている。
<我が国の続く苦境>
「市場環境の刻々の急変、生き残りを賭けた連携と協調、新機軸の構築」(3月)
…エルピーダメモリが会社更生法の適用を申請
「清濁併せ呑む市場・顧客密着、苦境打開に向けて」(4月)
…我が国の半導体・エレクトロニクス業界の非常に厳しい状況
「我が国に圧し掛かる世界経済の構図、変わらざるを得ない半導体の世界」(5月)
…ルネサスエレクトロニクスが再建に向けた大幅な再構築
「控え目な伸びの世界販売高のなか、引き続く我が国半導体の試練」(7月)
…マイクロンのエルピーダ買収およびルネサスのMCU事業にさらに集中して工場の売却あるいは閉鎖と人員削減を大幅に行うという再建施策
≪市場実態PickUp≫
活況のモバイル機器をリードするAppleに向けたプロセッサ生産の受託について、様々な観測が年越しとなりそうである。
【Appleプロセッサ生産対応】
◇Taiwan's Unimicron could produce future Apple chipsets [Rumor] 12月27日付け Ubergizmo.com)
→台湾のcontract manufacturer、Unimicron Technologyが、Appleのカスタムプロセッサを擁するチップセット生産対応可能を示しており、Samsung Electronicsから引き継ぐチップセット受注を取り扱う新工場建設を計画している様相がある旨。
◇Digitimes Research: Loss of Apple processor orders unlikely to affect Samsung (12月28日付け DIGITIMES)
→Appleが長年のパートナー、Samsung Electronicsと縁を切る計画、すでにSamsungへの半導体発注を減らしており、プロセッサ製造のあるものあるいはすべてを新しいファウンドリーパートナーに移す運びとみられる旨。
プレーヤーが非常に限られていく14-nmプロセス製造対応について、Samsungのロジック用テスト半導体の取り組みが表わされている。
【Samsungの14-nm FinFET】
◇ARM, Cadence tape out 14nm FinFET test chip (12月24日付け EE Times India)
→ARM HoldingsとCadence Design Systemsが、FinFET技術を用いた14-nm dimensionsのテスト半導体のtape out、該設計はARMのCortex-A7プロセッサコアベース、該テスト半導体はSamsung Electronicsによる製造、またSynopsys設計ソフトウェアを用いている旨。
◇Samsung delivers 14nm FinFET logic process and design infrastructure (12月24日付け DIGITIMES)
マイクロンのエルピーダメモリ買収について、各国の公正取引審査通過が順調に進んでいる。
【MicronのElpida買収】
◇Japan Fair Trade Commission clears acquisition of Elpida by Micron (12月22日付け DIGITIMES)
→Micron TechnologyがElpida Memoryの買収提案を進めてもよいと、日本の公正取引委員会(Japan Fair Trade Commission)が裁定、チェコ、韓国および米国も該取引を承認の旨。Micronは新年、2013年の前半に完了する見込みの旨。
Intelから、ゲームを楽しむユーザが回りの何かにぶつからないよう慮ったmicroprocessorと、安全に行き届いた特許内容と思う。
【Intelのゲーム機対応特許】
◇New Intel Patent Aims To Protect Both Gamers And Their Surroundings (12月26日付け Forbes)
→Intelが今月登録の米国特許8,333,661は、"ゲーム機のユーザとその周りにある物体の間でユーザがゲームを楽しんでいる間に衝突が起きないよう、あるいはその確率を下げられる"ようにするmicroprocessorを表している旨。このデバイスは、プレーヤーがある物体に衝突する危険にさらされれば警告を発し、直ちにゲームを中止する旨。
≪グローバル雑学王−234≫
それではデカップリング経済に如何に移行していくか、そのための4本の柱を、
『日本経済復活、最後のチャンス −変化恐怖症を脱して「3K立国」へ』
(三橋 規宏 著:朝日新書 350) …2012年 5月30日 第1刷発行
より見ていく。それらは、技術革新、新制度設計、自然再生および節電革命であり、それぞれに国を挙げた取り組みが進められている現時点であるが、経済&雇用浮揚にまず目が向いた政権交代が行われた現時点でもあり、意識的なアップデートが常に求められていくと思う。
I部 新しい日本に生まれ変わる
第4章 デカップリング経済のすすめ ≪後半≫
□実現のための四つの柱
・今回の原発事故から、原発抜きでデカップリング経済に移行する道を考える必要
→四つの対策が大きな柱に
1.イノベーション(技術革新)
2.新制度設計
3.自然再生
4.節電革命
□イノベーション
・新エネルギー技術
…太陽光発電、太陽熱発電、風力発電、バイオマス発電、地熱発電、廃棄物発電、小水力発電、燃料電池、ヒートポンプ
・省エネルギー技術
…軽薄短小型技術への転換、デジタル革命、ハイブリッド車、低公害車、省エネ設計のオフィスやエコ住宅
・リサイクル関連技術
…リサイクル材、廃棄物焼却に伴う熱エネルギー
□新制度設計
・環境税・インセンティブ税制
→税収中立を維持することが必要…バッズ課税、グッズ減税の原則
→新規企業が積極的に新エネや省エネ分野に参入できるようバックアップ
・補助金
→新技術支援に向け一定の助成金支給
・固定価格買取制度
→日本も送ればせ、2012年7月1日からスタート
・排出量取引制度
…CO2の排出量を市場で売買する制度
□自然再生
・農林水産業の復活
→農林水産物の自給率を高めることは、自然再生に留まらず雇用増、地域の活性化に
・環境保全型公共投資
→産業道路優先の考え方と決別、自然の流れを取り戻すための改修工事が必要
□節電革命
・経済成長は右上がり、化石燃料消費、CO2排出量は右下がりを達成する節電対策
□温暖化対策基本法の成立がカギ
・地球温暖化対策基本法案は、結局2年近くもたなざらしのまま今日に
→温室効果ガスの1990年比、2020年に25%、2050年に80%削減
・具体的な対策
1.キャップ&トレード方式による国内排出量制度の創設
2.地球温暖化対策税の11年度からの実施
⇒2012年10月から導入
3.再生可能エネルギーの全量固定価格買取制度の創設
⇒再生可能エネルギー法が成立、2012年7月から実施
4.一次エネルギー供給に占める再生可能エネルギーの割合を、2020年には10%に引き上げる