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改めて知るグローバルインパクトと我が国技術力の重み

海外の半導体・エレクトロニクス業界記事も、大方は東日本巨大地震関係で埋まっている状況である。東日本で生じた甚大な被害が、グローバルsupply chainへ与えるインパクトの規模と範囲の大きさ、広さを改めて感じている。当面は補い合いでカバーしていくしかないが、今回被害を受けた各社の復旧がなにしろ早急に求められている。東日本各社発の技術力が世界市場に占める、そして与える重みというものを、時間経過とともにますます知らされている。

≪インパクトの切り口≫

当面のビジネス確保に向けて、グローバルsupply chainへの影響、そして対策が、まずは取り沙汰される切り口であり、いくつか以下の通りである。

<グローバルsupply chain>

◇Slow package resin restart weighs on tablets (3月25日付け EE Times)
→tabletコンピュータで用いられるICs実装の要となる材料をほぼ独占的に作っていると考えられる三菱ガス化学が、電子材料生産子会社、Electrotechno Co. Ltd.(福島県西白河郡)での生産を4月中に以前の25%に戻す計画、tabletsに重荷となってのしかかる旨。

◇Supply chain hit by 'hoard' mentality (3月25日付け EE Times)
→日本での地震後、エレクトロニクスsupply chainが依然流動的、「顧客が安定供給確保を求めて、複数の半導体メーカーにおいて注文殺到となっている」(The Hongkong and Shanghai Banking Corp. Ltd.[HSBC]のアナリスト、Steven Pelayo氏)旨。

◇Digital compass makers unaffected by quake (3月24日付け EE Times)
→IHS iSuppli発。日本はディジタルcompass IC(GPSでの磁気誘導技術)生産の97%を占めており、その大手4社、AKM Semiconductor, Yamaha, Aichi SteelおよびAlpsでの影響について。

◇Shin-Etsu pleads for power; factory stays shut (3月23日付け EE Times)
→世界の300-mmシリコンウェーハ供給の20%を賄っていると言われる信越半導体(SEH)白河工場が、まだ十分調べられておらず動いていない状態、親会社、信越化学は、他のSEH拠点でウェーハ増産を図ろうとしている旨。

半導体・エレクトロニクス業界の世界の最大手からの反応例として、次の通りである。状況、実態を測りかねるところがまだ多く、明確なメッセージに至っていないニュアンスを感じている。

<グローバル最大手>

◇TSMC sees some impact from quake (3月21日付け EE Times)
→Goldman Sachsからのレポート。TSMCに地震によるあるインパクト、実質的な原材料在庫があって当座のインパクトはないものの、日本のいくつかのサプライヤが生産を地震前の水準に回復するのに何ヶ月か必要とすると思われ、長期的には代替のソリューション/供給元を求めている旨。

◇Nokia expects production disruption (3月21日付け EE Times)
→Nokiaが、今回の地震によりいくつかの製品供給能力にある程度の混乱を見込んでおり、日本から供給される関連部品および原材料の現在予測されている業界にわたる不足から生じるものである旨。量的なもの、あるいは詳細には言及していない旨。

さて最も重要な東日本地域にある各社からの状況発表である。日にちを追ってアップデートされている現時点であり、目に付いた比較的新しい発表ということで、以下挙げている。

<各社回復状況>

◇ルネサス、茨城工場7月再開、車向け半導体供給継続 (3月26日付け 日経 電子版)
→ルネサスエレクトロニクスが25日、東日本大震災で被害を受けた那珂工場(茨城県ひたちなか市)で7月から量産を再開、全工場が再稼働できる見通しとなった旨。それまでは在庫品のほか国内他工場での代替や海外の生産委託先からの調達を急ぎ、自動車大手などへの供給維持を目指す旨。

◇On Semi's Japan fabs ramping back up (3月25日付け EE Times)
→On Semiconductor社が木曜24日、地震後休止となっていた2つのfabsへのインフラサービスが今や回復、両方とも元に立ち上がりつつある旨。

◇Fujitsu restarts two back-end chip plants (3月23日付け EE Times)
→富士通が水曜23日、後工程半導体実装facility(宮城県のFujitsu Integrated Microtechnology Ltd.[FIM]工場)および半導体testing facility(福島県会津若松市のFIM半導体testing拠点)でのoperationsを再開、該地域での3つの前工程半導体fabsでの製造は依然停止している旨。

◇Sony says some production sites still idle (3月22日付け EE Times)
→ソニーが火曜22日、いくつかの製造拠点でoperationsを元に戻してきているが、6拠点で製造が一時中止のまま、また他も原材料および部品不足からoperationsを一時停止せざるを得ないところがある旨。

◇Toshiba's Iwate fab out until April (3月21日付け EE Times)
→東芝が、岩手県北上市の同社ウェーハfabについて、3月末までにある水準の稼働を取り戻す期待の旨。電力供給の回復後、テストoperationsをスタート可能という状況の旨。同社半導体facilitiesすべてについてlogisticsの短期的なインパクト懸念があると追加の旨。


≪市場実態PickUp≫

しばらくは地震のインパクト、そして復旧に向けた動きに注目せざるを得ないが、脈々と進展するグローバル市場の流れへの注視は並行させなければならない。半導体最大手、Intel社を巡る動きとして以下があり、ともに今後に目が離せないところである。

【Intel関係】

◇Chandrasekher exits Intel-Despite the executive departure, Intel says it remains committed to the ultra mobility group's business and will continue to make investments needed for Intel Architecture smartphones and handhelds. (3月22日付け Electronics Design, Strategy, News)
→20年以上のIntel社勤務を経て、同社ultra mobility group、senior vice president and general managerを辞任するAnand Chandrasekher氏。

◇Report: Intel's faulty chip slows PC production (3月25日付け EE Times)
→Taiwan Economic News発。Intelが見つけたSandy Bridgeプロセッサ用Cougar Pointサポート半導体での設計エラーが、PC supply chainにインパクトを与え始めており、今度はPCs用コンポーネントを供給する多数の半導体ベンダーでの2月および3月の半導体売上げを圧迫する様相の旨。

急速に盛り返して史上最高を記録した昨年、2010年の半導体市場のなかでのアナログ関係市場のランキング・データが発表され、Texas Instruments社の強さが改めて表われている。

【2010年アナログ市場】

◇TI lengthens lead in analog IC rankings (3月24日付け EE Times)
→Databeans社(Reno, Nev.)発。2010年のアナログIC市場、Texas Instruments社が販売高$6.2Bで首位をキープ、全体では$42.29Bの規模の旨。
・2010年アナログIC市場ベンダーランキング・データ、下記参照。
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/110324_databeans.png

当面注目のsmartphone市場について、大きな買収の動きである。市場シェアの今後の推移に注目である。

【smartphone市場】

◇AT&T's $39B T-Mobile buy could bring more balanced smartphone market share-The buy will see Dallas-based AT&T extend its 4G LTE (long term evolution) deployment to 95% of the US population to reach an additional 46.5 million Americans beyond current plans, including rural communities and small towns. (3月21日付け Electronics Design, Strategy, News)
→Gleacher & Companyからの今朝のレポート。AT&TがDeutsche TelekomからT-Mobile USAを$39Bで買収する動きは、smartphone市場シェアのバランスをもたらし、BlackberryおよびWindows Phone handsetsメーカーにはプラスとなる可能性の旨。

向こう5ヶ年計画では伸び率を落とし、質の強化が謳われている中国経済であるが、規模と品質の狭間にある現状についての以下の記事である。

【中国経済】

◇「『メイドインチャイナ』、先進国と開きある」中国商務部 (3月22日付け 13億人の経済ニュース[biglobe配信])
→中国国際貿易交渉代表を務める商務部の高虎城副部長は、「『中国製造(メイドインチャイナ)』と先進国の製品との間には、まだ開きがある。我が国の輸出品の品質問題は、非常に重視すべきだ」との認識を示した。
中国政府は、2011年を「輸出品クオリティアップの年」とすることを決定した。高副部長は、商務部、工業・信息(情報)化部、農業部、税関総署、工商総局、品質検査総局など各部門が共同で開催したテレビ会議において、問題となっている輸出品は、「メイドインチャイナ」のうちごく少数だが、それらが及ぼす影響は看過できない、と語った。

◇工業製品220種、生産量世界一に (3月26日付け 13億人の経済ニュース[biglobe配信])
→国家統計局が発表したデータによると、第11次五カ年計画(2006-10年、十一五)期間の大発展期を経て、中国の工業経済の力は著しく増強された。現在、220種類の工業製品の生産量が世界一となり、このうち粗鋼、石炭、セメントは長年にわたり首位をキープしている。
2009年に中国のセメント生産量は世界の生産量の60%を占めた。2010年には粗鋼生産量が世界の生産量の44.3%を、石炭生産量が世界の生産量の45%を、それぞれ占めた。


≪グローバル雑学王−142≫

このコーナーで早く読みたい、究めたいと思っていた世界各地のお酒に纏わるエピソードであるが、ぴったりの名前の本が目に入ったのが最近であり、次の書である。

『世界の酒』 (坂口 謹一郎 著:岩波新書 264)   
 …1957年 1月17日 第 1刷 発行
  2010年11月19日 第30刷 発行

著者は、日本の農芸化学者で発酵、醸造の世界的権威の一人、坂口 謹一郎氏(1897年 - 1994年)。時代も遡って1950年代始め、第二次世界大戦後まもなくの欧米諸国を当時の駆け足で回った旅行記である。各地それぞれのお酒の神髄は今も変わるものではないという前提で読み進めていく。旅の行程を★印で示しており、当時の雰囲気を辿れる一興もあるのではないかと思う。


≪はしがき≫
・1950年の秋から1951年の春、戦後の欧米諸国を一回りしたときの旅行記
・欧米の10ヶ国 + 中国や朝鮮、台湾の酒の一項目
・酒は生きものが造り、その上に人間という微妙なセンスの動物が鑑賞
 −1956年12月 著者記

1 キャンチの国(イタリア)

★ローマの飛行場

□銘柄百四十三
・イタリアぶどう酒
 →北はピエモンテ、ロンバルディアから、南はシシリーの果てまで、18ヶ所の銘醸地別、有名な銘柄が143

□北の酒・南の酒
・ぶどうは概して、南方の産は糖分が濃厚、北方は薄い。酸だけはその逆、北の方ほど多い
 →できる酒も、北は軽くて酸っぱく、南は重くて甘い

□エスト・エスト・エスト(Est! Est! Est!!!)
・イタリアに多いマスカット種のぶどう
 →白からできる酒に特によいもの
  …モンテフィヤスコネのエスト・エスト・エスト→ローマ人のご自慢

□フィロキセラ禍
・フィロキセラというぶどうの根を侵す害虫
 →これに耐える力の強いアメリカぶどう
 …狐臭と呼ばれる特有な臭気
・ベレトリの試験場のぶどう酒研究
 →イタリア固有の欧州種のフィロキセラ耐性種を造りだすこと

□ラクリマ・クリスチ(Lacrima Christi)
★ナポリの港
 →赤酒より白酒の方がよい
・ヴェスヴィオの優美な姿を眺めながら酌むナポリのラクリマ・クリスチの味
・ポンペイの廃墟で、偶然見つけた昔の酒屋 
 …狭い土間に並ぶ素焼きの大がめ
  →今も中国の田舎の居酒屋に見られるそのまま
  
□イタリアの学風
・有名な斜塔のピサの町には世界最古の農科大学
 →醗酵学と植物病理学をいっしょに研究
  →両者、実はいずれも微生物を扱うという点でずいぶん近い

□キャンチ(Chianti)
★フィレンツェ(フロレンス)の古都
 →名酒、キャンチの産地

□名物マカロニ
フロレンスでは、キャンチのほかにブロリオというマスカットで造った白酒も名物
 →マカロニ、スパゲッティにはこの白酒が大変よく合う

□ヴェルモット
 →イタリアが本場
 →赤もあるが、主に白酒を土台、これににがよもぎ、草根木皮、香料、多いものは80種も
 →これにブランデーを加えて、アルコール分を18-20%にした一種のリキュール

2 ミュラー・チュルゴー(スイス)
  
★ミラノを昼ごろ発つと、夕方6時頃にスイスのローザンヌに
 →レマン湖岸の古い町、いかにも静養地

□酒と言葉
・いわゆるスイスのリヴィエラ …フランスのローヌ河上流のジュネーヴ、ローザンヌ
 →一般に酸味が少ない
・ドイツ近くライン河の入り込んだ地方 …チューリッヒ、バーゼル
 →芳香高く酸味の強いライン・ワインのタイプ
・スイスは、葡萄酒のヴァラエティーに恵まれた国
 →通用する第二国語が仏、独、伊の三通りに変わる
 →酒質の移り変わりと一致しているように見える

□シオンの谷間
★ローザンヌからヴァレーの谷
 →この谷の奥に、古城をいただいた二つの岡を囲むシオンの町
  →モダン葡萄酒醸造場
・ラクレットという自慢の料理
 →溶けたチーズを茹でた馬鈴薯にぬって食べる
・山の食べ物としてサラミという干し肉に近い堅さのハム
 …肉のかつおぶし

□軍国スイス
・四十何才までの男子は全部兵役の義務
 →年に1回ずつ突然演習に引っ張り出される
・ヴァチカンを守る兵士も、古来スイスの傭兵

□チーズのペニシリン禍
★フリブルグからベルンへ
・世界有数の酪農試験場 →盛んにチーズの研究
★ベルンからインターラーケン →ベルンアルプの大観をほしいまま
★チューリッヒ →同じ名の湖の岸にある美しい街

□マギーという調味料
・マギー …日本のアミノ酸醤油そのもの
 →もともと日本の醤油をまねたもの、キッコーマンの持ち主の「茂木」からその名が出ているという説も

□うま味の本体
・世界的に最も普通に使われている料理の調味料
 →油類。醤油に油の字をつけてあるのは油の代用品という意味?

□陽の光を飲め
・スイスの飲料でもう一つ →果汁、主として林檎汁
 →政府自身で盛んに宣伝

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