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8インチウェーハの復権が見えてきた!!〜パワーデバイス上昇が追い風〜

「これはどうしたことだ。8インチウェーハの需要は急落すると思っていたのに、再上昇の気配すらある。まさにサプライズだ。」
 8インチのシリコンウェーハ供給で、月産40万枚の設備能力を持つ、コバレントマテリアルの香山晋社長の談話である。

日本の半導体メーカーの8インチライン一覧


 日本国内の半導体工場は、非常に歪んだ構造論の中にある。先端LSIを製造するファブは、当然のことながら300丱ΕА璽呂妨かって加速してきた。一方、5インチ、6インチのラインもディスクリートやアナログ製造に適していることからかなりの数が温存されてきた。一方において、8インチウェーハラインが極端に少ない。それでもトータルでいえば、月産100万枚強のファブが全国に点在している。この8インチファブは、ここにきて遊休ラインが目立ち始め、今後も減少の一途をたどると思われていた。ところが、再上昇に向かうという異変が起き始めているのだ。
 東芝は、四日市工場にあるフラッシュメモリーの生産ラインをディスクリート専業の加賀東芝に移し始めている。四日市の8インチは2棟あり、月産6万5000枚。あろうことか、これを加賀東芝に移し、パワーデバイスを量産するというのだ。また三菱電機は、ルネサステクノロジから熊本工場の8インチライン、月産6万枚を手に入れた。これをIGBTなどのパワーデバイスの量産に転換するというのだ。ちなみにIGBTの世界では、三菱電機は断トツの世界チャンピオンの地位にある。
 現在、現状においてセイコーエプソンの山形・酒田、ソニーの鹿児島・国分など8インチウェーハの遊休ラインはかなり多く存在する。これらを買収しようとして鵜の目鷹の目で狙っているのが、パワー半導体業界だ。国内でいえば、東芝、三菱電機、富士電機、新電元工業、サンケン電気、日本インター、ロームなどが有力なパワーデバイスメーカーであるが、このうち何社かは既存ファブが満杯状況となっている。新工場立地よりは、既存ファブを買った方が安いのは当然であり、国内に残る8インチファブに熱い視線を注いでいるのだ。もちろん、トヨタやデンソーなどの自動車関連もパワーデバイスを強化しており、8インチウェーハファブを入手したいとの希望がある。
 パワーデバイスは、いまや2兆5000億円を超えるマーケット(半導体産業新聞調べ)となっており、何かと話題のNANDフラッシュメモリーの市場、1兆8000億円を鼻で笑い飛ばすほどになってきた。これまでは5インチ、6インチファブが多かったが、ここにきて車載、デジタル家電、PC、エアコンなど、加速度的にパワー半導体の需要が増えていることから、8インチ採用に傾斜してきたのだ。
 年老いた女優が最後のステージを飾るような華やかさが、8インチウェーハにはあると言ってよいだろう。


産業タイムズ社 専務取締役 編集局長 泉谷渉

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