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ゲーム機向け半導体が世界を引っ張る時代へ〜クラウド利用で投資加速

「プレステVR(仮想現実)をやっていると頭がクラクラしてきて気持ちがいい。でも完全に酔っぱらった状態になるので、アブナイかもしれない。1日6時間以上やることは年がら年中であり、こんなに夢中になってしまってよいのかしら、と深く思い悩むこともあるのよ」。

これはVRゲーム機にはまっているある女性記者の談話である。それを聞いていてなんと恐ろしいことかと思ったが、今やゲーム人口は世界の全人口の3分の1となっていることを聞きつけて、これまたのけぞるほど驚いてしまった。

しかもハードウエア、ソフトウエアを含めてのゲーム市場は15兆円に達しており、もはや見逃すことのできないほどの産業になっているのだ。ちなみに大衆娯楽の王様と言われるパチンコ市場は、最高ピークで30兆円までいったが、最近では、ブームは一気に下降しており、おそらくは20兆円市場まで下がっているだろう。ゲーム市場がパチンコ市場を抜く日はもうすぐそこまで来ているのだろう。

ここにきては何十万人も参加するゲーム大会では20億円の賞金も出るご時世であり、いやはやすさまじいゲームのストリームが世界を襲っている。日本国内においても「ドラゴンクエスト」のゲーム大会が秋葉原のベルサール(貸し会議場)で開催されるなど、盛り上がりをみせている。eスポーツ関連は巨大ビジネスにのし上がってきたのである。

さて一気に肥大化してきたゲーム市場においての変化は、何といっても専用のゲーム機を使わないでクラウド上にアプリを置いて行う方式が流行すると言われている。現在においても「艦隊これくしょん」などが登場し、人気を集めている。ゲーム機マーケットはソニーがプレステ4でぶっちぎりのトップにあり、任天堂もスイッチなどで大健闘しており、マーケットシェアは日系がトップを張っているのだ。

ただし半導体ということになればまた別の話になる。ちなみにプレステ4のアプリケーションプロセッサがかなりスタンダードなAMD製であり、CPUコアはJaguarと呼ばれ8コア構成、GPUコアはRadeonと呼ばれている。メモリは当初、GDDR5で8GBが搭載された。任天堂のゲーム機向けLSIを作っているのが、日本のファブレス半導体ベンチャーのトップであるメガチップスであることはつとに知られている。

さてゲーム機を使わないでクラウドを中心にゲームビジネスが展開していくのであれば、ゲーム専用のデータセンターも必要になってくる(編集室注1)。世界のデータセンター関連市場は2020年に22兆円が予想されているが、このうちゲームに充てられる専用データセンターも増えてくるのは間違いない。インテルのCascade Lake、Ice Lakeの量産が始まれば、グーグルを先頭にAmazon、Facebook、Appleなどは超低消費電力の高速データセンターの建設をスタートすることは間違いない。まずは何の用途に使うデータセンターであるかだが、かなりの投資がゲーム向けに投入されるというのだ。

そしてまたプロまたはプロまがいのゲーマーは、そこら辺にあるキーボードを使ったりはしない。滑らかで、ソフトで、指のわずかな動きも見逃さない超高性能のキーボードをお使いになるのだ。このキーボードで重要な半導体は日本勢が圧倒的な強みを持つといわれている。

「スマホでゲームをやるのは、ど素人です。ゲーム機を使う人はまあまあです。ホントにのめりこんでいる人はパソコンを使うのよ。それもプロユースの専用PCであり、CPUもハイグレードなものが入っているのです(編集室注2)。もっともっと高度な半導体を開発してほしいわね。」(前述の女性記者)

そしてまたゲームの加速は専用ゲーム機であっても、データセンターのクラウドを中心とする仕掛けであっても、膨大なメモリを必要とすることは間違いない。つまりは世界のゲーム市場が30兆円〜40兆円に達するのは時間の問題であり、これもまた3D-NANDフラッシュメモリ、そしてDRAMの膨大な量産を必要とする。現状にあってメモリは市況の急速ダウンで年内いっぱいは全くダメとも言われているが、世界の熱狂的なゲーマーたちが「メモリ一大回復」のカギを握っているのかもしれない。

産業タイムズ 代表取締役社長 泉谷 渉


編集室注)
1. クラウドに使われるデータセンターでは仮想化技術を駆使し、顧客ごとにVM(バーチャルマシン)が割り当てられている。このためゲーム専用のデータセンターというよりもゲーム向けのVMを割り当てられていることになる。AmazonのAWSやMicrosoftなど大手のパブリッククラウド業者は、VM技術とセキュリティ技術を駆使し、世界各地にデータセンターを数十カ所すでに構築しており、それらを全て光ファイバでつないでいる。特に、Microsoftは日本だけで東西2カ所に大巨大なデータセンターを持っている。まるで世界的な通信業者の光ケーブルを設置する規模に匹敵する。
2. ゲーム向けのパソコンは、CPUに負担をかけずにGPU(グラフィックスプロセッサ)をアクセラレータとしてフル活用している。Nvidiaが最近AI(人工知能)でもてはやされているが、実はゲーム機用途の売り上げが圧倒的に多い。このグラフィックスカード(ボード)をPC内のスロットに差し込むことで、きれいなグラフィックス画像を高速に描くことができる。

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